映画を見ながら、普通にポップコーンとソーダを飲んで過ごしていた。
いやまぁ、せっかく来たんだし? あたしだって。
中身はなんで客が居ないんだろうと疑いたくなるくらい結末が良かった。
少し妹とキスしてたから途中経過は見逃したけどね!
金髪少女がショート女の子をこそこそ付いていくんだけど、突然路地裏に引きずり込まれるんだよね。ショートちゃんが。
は!? となった金髪が走って見てみると、ショートは変な男に抱きしめられてて……。
男を速攻で吹き飛ばすと、金髪が気持ちを全部吐くの。
金髪になった理由とか、実はストーキングしてたとかその他諸々。
聞いたショートはどうなると思う?
『私も、退学して君に付いていきたい』っていうんだよ。
意味わかんないよね? うん、あたしもわかんない。
そして、金髪が『僕と同じ道を歩いたらダメ』って言って……熱いキスを交わしてそそくさと金髪は帰るの。
そう、あたしが言いたかったのはキスシーンが良かった。
既視感を……あれ、なんで感じたんだろ。
映画を見終わった後、通路に店員が立っていて、チケットを回収された。
次はレストランというやつだよね。
真っ暗になった空を見上げ、あたし達は手を組み、予約していた店に向かっていた。
『おっお腹すいたけど、私寒いよ……』
「キスすれば暖かくなるかもとか考えてない?」
「……考えてた」
図星か。じゃあしちゃおうかな。
「じゃあ少ししよ」
立ち止まり、舌を交えた軽いキスを交わす。
「……お姉ちゃんからだと、温度は変わらないや」
「凄く悔しい」
内心落ち込みながら、あたしは歩き始めた。
「そういえば、昨日とかずっと私に対しての口数少なかったよね? なんで?」
昨日というか何ヶ月も前からだよね。
「そりゃ、話しかけても素っ気ない返事だったから落ち込んじゃった」
「あ〜……内気だったから、ごめんね?」
「こんなに変わるって怖い」
理解不能だったけどね、最初の方は。
本買って来ても「要らない」とかご飯一緒に食べようとしても「1人の方が」って。
トドメは酷かった。一緒に外食しようと誘ったら「お姉ちゃんの事、嫌いだから……でも行こうかな」って言われて……1日ベットの上で泣きました。
嫌々行かれても、困るから複雑な気持ちで拒否する側になった。女は嫌いって言葉に敏感。
風がビューと吹くと、向かい風が吹く。
あたしは足を止め、声をかけようと振り向くと
『さっむ、お姉ちゃん盾にしよ』
見惚れる暇すらなく、盾にされてしまった。
「さりげない姉の使い方」
「私の温度分けてあげるから、お姉ちゃん頼む〜」
ギューっと、抱きしめられても、不幸かなジャケットで温度が伝わらない。
「はいはい、お礼は気持ちでいいよ」
「ありがと……」
「だってもう着いたから」
スズメは驚くけど、右を指差す。
白縁という看板が立てかけられたドアがある。
「そんな、騙された」
「詐欺師じゃないから」
頰をいたずらに膨らませる妹を横目にあたしは気にせず入店します。
店内は受付が右手にあり、完全予約制らしい。
『すみません、予約入れた朝霧……』
黒い服を着た店員に「お待ちしておりました」と案内され、スズメを引き寄せながらついていく。
角を左にまがり、襖で仕切られたような部屋が沢山ある。
中には宴会をしているのか騒いでるようだ。
「こちらです、夜はお楽しみでしたね」
「まだだから、それに知ったような素ぶりやめて」
変な店員だなぁと思いつつも、部屋に入ると、テーブルと囲まず、並んで座る。
「なんで向かい合って座らないの」
「隣だと私が「あーん」ってされる事もする事も出来るから!」
「ドヤ顔で言われても困る」
さて、畳と襖と木の机に立てられた巻き物みたいなメニュー表。忍者屋敷に見えるね。
「お姉ちゃん、これなんて読むの?」
巻き物を開き、妹は読めない字を指差す。
うん、店の名前だねこれ。
「はくふちだよ」
「知らなかった」
そんな感じで料理名すら笑いを掻っ攫うこの店に驚いたのはここだけの話だ。