「はい、先パイ」
スーツのボタンを留め終わった先輩に、サンドイッチが入った巾着を手渡す。丁度良い入れ物が見つからなかったので、わたしのお弁当を入れてきたものだ。
男の人が持つにはちょっと女の子っぽいかもしれないけど、ラップで包んでそのまま渡すよりは少しはマシだと思う。もっともこの巾着のおかげで、一部の女子社員にわたしたちの関係が速攻でバレてしまうことになるのだけれど、それはまた別の話。
「これだったらホームとかでも食べられるでしょ?しっかり食べてお仕事頑張ってきてくださいね」
「お、おう。ありがとな」
なんだか新婚さんみたいなやりとりに思わず顔が綻ぶ。先輩もちょっぴり苦笑いを浮かべているから、たぶん似たようなことを考えているのだろう。
だったら・・・・・・と、わたしの中でイタズラ心が沸き上がる。
「あ、待って先パイ、ネクタイが」
そう言って先輩のネクタイに手を伸ばす。先輩は予想通り身を屈めてきてくれた。
「おっ、すま・・・・・・んっ」
先輩、どんな顔するかな?そんなことを考えながら、軽くネクタイを引いて唇を重ねた。
「いってらっしゃい」
すぐに身体を離して先輩を見ると、驚いた顔で先輩がわたしを見ていた。そんな先輩の反応を可愛いと思いながらも顔が熱くなってくる。
先輩に手を振りながら笑顔を浮かべたつもりだけど、ちゃんとできているだろうか。
「いってきます」
先輩の顔が少しだけ笑顔に綻ぶ。踵を返してドアを開けると、眩しい朝日に先輩のシルエットが浮かび、軽やかな足取りで玄関を出て行った。
「ふう・・・・・・」
一息つくと急に部屋の静けさが耳につく。先輩のいなくなった部屋はがらんとしていて、少しだけ寂しさがこみ上げてきた。
「ひぁっ!?」
不意に足元を撫でた柔らかな感触に思わず変な声を上げてしまう。
足元を見ると、ふみちゃんが「どうしたの?」と言うような顔でわたしを見上げていた。
「そうだったね。ふみちゃんもいるんだもんね」
「にゃあ」
しゃがんでふみちゃんの頭を撫でてあげると、ふみちゃんは目を瞑ってごろごろと喉を鳴らす。
「ふみちゃん可愛い」
やっぱり猫飼いたいなぁ、なんて考えていると、前にこの部屋に来たときのやりとりを思い出して顔が熱くなる。
(わたしも猫ちゃん飼いたいにゃ~)
(飼えばいいじゃん)
(うちのマンション、ペット禁止なんですにゃ~。・・・・・・あ、そっかぁ、わたしも先パイに飼われちゃえばいいんだにゃ~)
(っ!?)
―――わたしってほんっとバカ!
いくらお酒が入っていたとはいえ、あんなのほとんど告白してるのと一緒じゃない。しかも語尾に「にゃ~」を付けるとかね、今更ながら頭が沸いてるとしか思えない。
そういえばあのときの先輩、かなり慌ててたっけ。そりゃそうだよね、いきなり「お嫁に貰って」みたいなことを言われたら誰だってびっくりするよね。でも・・・・・・
「いつか、本当に先輩に飼ってもらう日が来たりするのかな・・・・・・」
独り言のように呟くと、不思議そうな顔をして見上げているふみちゃんと目が合った。
「・・・・・・」
バカなことを言っているのを見透かされているようで、再び顔が熱くなる。
「さて・・・・・・」
照れ隠しのように(実際、照れ隠しだ)わざと声を出して立ち上がる。
「お片付けとお洗濯しないと、ね?ふみちゃん」
ふみちゃんは相変わらず不思議そうな顔で見上げていた。
わたしは気を取り直してキッチンに向かうと、残ったサンドイッチを平らげて本格的に片付けに取りかかる。
「♪~」
無意識に鼻歌が出てくる。昨夜のことは予定外だったけど、勇気を出してみて良かったと思う。
そういえば、先輩もわたしのことを好きだって言ってくれたけど、いつからわたしのことを想ってくれていたのだろうか。先輩はこれまで全くそういう素振りを見せてなかったけど、きっと先輩としての立場を守ろうと頑張ってくれてたんだろう。
「先輩、優しいよね・・・・・・」
ぽつりと独り言が口からこぼれる。気が付けば入社してからのほとんどの時間を先輩と過ごしている。
いつも隣に先輩がいて、多少過保護なところもあるけれど、わたしのことを気に掛け、そして守ってくれていた。
飲み会のときは、どんなにわたしが酔っぱらっても絶対に見捨てたりしないし、気が付けば先輩の背中ということもしばしばだった。しかも絶対にヘンなことなんてしようとはしなかった。
そんな先輩だからこそ、わたしは惹かれていったのだと思う。
「よし・・・・・・っと」
洗い終わったお皿の最後の一枚を水切りに移す。水切りの中で触れ合った食器がかちゃりと軽い音をたてる。
キッチンのタオルで手を拭いてベッドに向かう。そこには先輩がシャワーを浴びている間に畳んでおいたわたしの服が置いてあった。
「1回目」は服を脱がないでしてしまったから、上着もスカートもしわくちゃになっている。しかもスカートはわたしの中から溢れた先輩のアレで汚れてしまったから、洗濯とアイロン掛けもしないと帰ることもままならない。
「ついでに洗うものはないか・・・・・・な・・・・・・」
ベッドに腰掛けて周りを見渡すと、シーツの上で視線が止まり、急激に顔が熱くなってくる。
そこには昨夜の残滓が点々と残っていて、特にベッドの真ん中あたり、わたしのお尻があったあたりにはひときわ大きな染みができていた。
「~~~っ!!」
わたしはそれを正視するのに耐えきれず、声にならないうめきを上げてベッドに倒れ込むと先輩の枕に顔を埋める。
―――あ・・・・・・、せんぱいの匂いだ・・・・・・
枕に顔を埋めたまま昨夜のことを思い出す。
―――いっぱい、しちゃったなぁ・・・・・・
3回までは憶えている。でも、その後はよく憶えていない。いつの間にか二人とも疲れ果てて寝てしまい、気が付いたら朝になっていた。
ただひとつはっきりしているのは、身体を重ねる度に自分が乱れていったということだ。はっきりとは憶えていないけど、最後の頃はわたしから求めていたような気がする。
―――わたしって、あんなにエッチだったんだ・・・・・・
最初の彼との初めてのセックスは痛いだけで快感なんてなかった。
その彼とは何度か身体を重ねたけれども、お互い若かったし、わたしも恥ずかしさの方が強かったから快感を感じる余裕なんてなかったような気がする。
結局、その彼とは別々の大学に進学したおかげで、なんとなく距離が開いていつのまにか消滅してしまった。
大学に入ってしばらくのころは、まだ付き合っていたから男の子からの誘いは断っていたけれども、お酒を飲めるようになってからは、わたしが隙だらけになるのを狙ってくる人たちが増えてきて、よく友達に注意されてたっけ。
最後にセックスをしたのはいつだっただろう。その彼との最後のセックスがそうなのだけれども記憶の糸を手繰ってみてもよく思い出せない。
―――きっと先輩だからなんだろうな・・・・・・
先輩と一緒にいると、なんというか安心する。
いつも、ちゃんとわたしのことを見ていてくれるから、そのことを知っているから、ついつい素の自分が出てしまう。安心して自分を委ねられるから、先輩との初めてのセックスでもあんなに気持ちよかったのかもしれない。
「せんぱい・・・・・・」
先輩の枕を抱いたままぽつりと呟く。先輩の匂いで昨日の夜のことが再び思い出されて、おなかの奥にきゅうっと甘い疼きが沸き起こる。
何度も注ぎ込まれた身体の奥には、まだ先輩の温もりが残っているような気がした。それを意識すると、またじわりと疼きが大きくなる。
先輩のワイシャツを着ているという事も、先輩に包まれている気がしてわたしの気持ちを昂ぶらせる。これまでオナニーなんてしたことなかったのに、自然と右手が乳房に伸びていく。
「ん・・・・・・」
ワイシャツ越しに乳房を掌で包み込むと、それだけでぴくりと身体が震えた。身体の感覚が敏感になっているのがはっきりと分かる。
―――きのう、あんなにしたのに・・・・・・
先輩のベッドでこんなことしたらだめだ、そう頭では分かっていても気持ちを抑えることができない。
「んっ、んっ」
先輩がしたように乳房を揉むと緩やかな快感に混ざって、時折ブラの裏地とこすれた乳首から電流のような快感が走る。
それでも服の上からの刺激はもどかしく、わたしはワイシャツのボタンを外しブラのホックも外してしまう。
「あぅっ」
ブラの下に手を差し込み指先が乳首に触れた瞬間、電流のように快感が走った。
「はっ、あ・・・・・・、あんっ」
すでに硬くなり始めていた乳首を指先で転がすと、乳房全体に甘い感覚が広がっていく。乳房の中から芯を持ったツクシのように、むくむくと乳首が起きあがり、その硬さを増していく。指先でつぶすようにして乳首を転がすと身体がふるえるような快感が走る。
そして、その切なくなるような快感は子宮へと降りていって、じわりと温もりを溢れさせてくる。
「んっ、せんぱい・・・・・・」
先輩を意識することで一層、興奮が強くなる。一方で自分で得られる快感の限界がもどかしく、もっと強い快感が欲しくなって無意識に腰をくねらせてしまう。
そして、その欲望を満たすために自然と手が下腹部へと降りていく。
ナイロン地のショーツ越しに、ふわりとした陰毛を感じながら恥丘のカーブに沿って谷底へと指を進める。
―――こんなに・・・・・・柔らかかったんだ・・・・・・
初めて自分で意識して触れた性器は、ショーツ越しにも分かるほどの他のどことも違う柔らかさを持っていた。
クロッチの中心に当てた中指をそっと動かしてみる。
「はぁ・・・・・・」
たったそれだけの動きで、ため息にも似た声が漏れた。中指がほんの少しクロッチに沈んだだけなのに、指先の神経はわたしの性器の形をはっきりと伝えてくる。ふっくらとした大陰唇、縦長の亀裂の真ん中からは柔らかいグミのような小陰唇が少しだけ顔を覗かせている。亀裂に添えた中指を動かすと、クロッチがぬるりと滑り、じわりと濡れが染み出してくるのが感じられた。
もっと感じたい、その欲望がクロッチのサイドから指先を潜り込ませる。
「んっ・・・・・・、はぁぁぁ」
指先が性器に触れると安堵にも似た喘ぎが漏れた。そこはすでにわたしの中から溢れたものでぬるぬるになっていて、簡単にわたしの指を滑らせる。
「あぁっ!」
縦割れの中に埋めるようにして中指の腹を滑らせると、胸では得られなかった強い快感に身体が震える。
わたしは快感を貪るように何度も指を往復させる。指を滑らせる度に抑えきれない喘ぎが漏れ、腰をくねらせる。
なんだろう、今までオナニーなんてしようと思ったことすらなかったのに・・・・・・。昨夜の先輩とのセックスで、自分の中で何かの回路が繋がってしまったような気がする。
手の動きを大きくすると必然的にショーツの存在が邪魔に思えてきて、ショーツを脱ぎ去るとついには下半身を晒してしまう。指の動きはさらに大胆になり、足が徐々に開いていく。
足を開いたことでうっすらと開いた縦割れから濡れをすくい、指先を上へと滑らせる。縦割れが終わり、陰唇が合わさるあたりにオデキのような小さな肉が盛り上がっている。
「んんっ!」
そこに濡れた指先が触れた瞬間、身体がぶるりと痙攣し、乳房を覆っていた左手がぎゅうっと膨らみに食い込んだ。
再び、その肉の膨らみに指先を触れ、指の腹でゆっくりと左右に転がしてみる。ぬるぬると滑る涙形の膨らみの下には芯のようなものがあり、肉の鞘の下で転がされるたびにぴくんぴくんと腰が跳ねる。
「はっ、ああっ!」
触れていたとこらから突然、電流のように強い快感が身体の中心を駆け抜けた。
―――な、なに!?今の・・・・・・
もう一度、おそるおそる触れてみると小さな肉粒みたいなものが、鞘の中から顔を覗かせていた。そこを指先が撫でると、ぎくんと身体が震えてお尻が浮いてしまう。
―――だ、だめ、これ・・・・・・気持ち・・・・・・い・・・・・・いっ!
より触りやすいように、より快感を求めて足が開いていき、綻んだ性器から溢れ出た濡れがつぅっとお尻の方に流れていく。
「せんぱい・・・・・・、せんぱい・・・・・・」
うわごとのように先輩を呼んでしまう。激しい濡れが指に絡みつき、ぬめる粘膜を刺激する。
いつの間にか足が大きく開いている。それはまるで先輩を迎え入れるようとしているかのようだ。
―――挿れるぞ
頭の中で先輩が囁く。
「せんぱい、来て・・・・・・」
思わず声が出て、同時に指先に力を入れる。
「ん・・・・・・、ああっ!」
中指と薬指が、いとも容易くぬるりと膣の中へと飲み込まれた。
初めて触れた膣の中は、自分のものとは思えないほどの熱を持っていた。複雑に襞が折り重なって、中に満たされた粘液と一緒になってわたしの指を包み込む。意志とは関係なしに、時折ひくんひくんと震える膣の中は、そこだけまるで別の生き物のようだった。
「あっ、あっ・・・・・・」
膣に挿入した指を動かすと、自然に喘ぎが漏れる。昨夜ほどではないけれども、膣の中が満たされた満足感と、同時に自分の指では満たしきれないもどかしさが交錯する。
そのもどかしさを消し去るために、わたしは挿入した二本の指をぬかるんだ膣の中で彷徨わせる。襞の一枚一枚を数えるように膣の中を愛撫する。指を動かすと膣から押し出されたぬめりが指を伝ってシーツへ滴り落ち、動きに合わせて粘りつくような水音を立てる。
その水音は、静まりかえった先輩の部屋の中では想像以上に大きく響き、わたしの羞恥心を煽ってくるのだけれども指の動きを止めることはできなかった。
「あっ、あんっ、やだ・・・・・・、もう・・・・・・」
度重なる刺激に絶頂がもうすぐそこまで近付いてきている。先輩のアレに見立てた二本の指を根本まで挿し込み膣壁を刺激する。でも、わたしの指だと短くて、先輩のように奥までは届かない。
そのもどかしさを補うために、わたしは胸を刺激していた左手を下腹部へと這わせ、クリトリスを転がした。
「やっ、せんぱい、来ちゃう、きちゃうよ」
昨夜の先輩を思い浮かべながら両手を動かす。膣がひくひくと収縮をして、その奥が風船のように膨らむのが感じられた。そして、左手の中指がクリトリスをぐりっとつぶすようにこねた瞬間、目の前に火花が飛んだ。
「あぁっ!、せんぱい、ダメ、い・・・・・・くぅぅぅ!」
指をくわえ込んだ膣口がきゅうっと収縮し、指の根本を締め付ける。そのあまりにも強い快感に身体が反り返り腰を浮かせてしまう。
がくんがくんと何度か痙攣のように身体が震えてからやっと絶頂の波が引き始め、どさりとベッドに腰を落とし荒い息を吐く。
先輩を想いながらしてしまった初めてのオナニーで、こんなに感じてしまうとは思ってもみなかった。しかも先輩とのセックスを思いだして、気持ちが昂ぶったあげくに先輩のベッドでしてしまうなんて・・・・・・。明日、どんな顔して先輩に会えばいいんだろう。
「う~~~」
恥ずかしさと自己嫌悪で、先輩の枕を抱きしめてベッドの上をごろごろ転がっていると「にゃぁ~お」とふみちゃんの鳴き声が聞こえた。
視線を落とすと、ベッドの下からふみちゃんがわたしを見上げていた。そうか、この子がいたんだった。
「先パイにはナイショだよ」
わたしは身体を起こすと、ふみちゃんの頭を一撫でして立ち上がる。
「よし!」
ぱちんと両手で軽く頬をたたいて気合いを入れる。とりあえずシャワーを借りて洗濯をして、と頭の中で段取りを決める。
あ、そうだ。一度帰ってきてから晩ご飯も用意しておいてあげようかな。先輩、喜んでくれるかな。
そして、先輩が帰ってきたら朝の続きで、定番のアレをやってみるのだ。
「お帰りなさい。ご飯にします?お風呂にします?それとも・・・・・・」
先パイ、どんな顔するかな?
「先輩と後輩ちゃん~しっかり者のつもりだが意外と流されやすい可愛い後輩~」を読んで頂きありがとうございました。浅倉椎です。
前回「気長に待ってね」などと言っておりましたが、まさかの最短投稿間隔です。
今作は前作を投稿した後、年末年始で里帰りしたはいいもののあまりにも暇になったので「もしかして後輩ちゃん1人称でも書けるんじゃね?」と思いついてスマホのメールを使って書いたものに加筆修正したものです。
はっきりいって女性の心理は分からないので「それはないわ」みたいなところがあるかもしれませんが、その点はご容赦ください。
先輩と後輩ちゃんシリーズ、あと1回くらいは書けそうですけど、今度こそ何時になるか分かりません。もしも、続きを期待しているという奇特な方がry
さてさて、次作はホントにニセコイものに戻ります。連載が終わってだいぶ経って今更感がビシビシですが書きたいものはしょうがないのです。
ではでは