ティアマトの番 作:Ω2
彼女を見たのは必然だった。
原初の母にして、創世の神。
七つの人類悪のひとつ、『回帰』の理を持つ獣。
名はティアマト。
その姿を。存在を。俺はカルデアのスタッフの一人として見ていた。
皆が彼女に畏怖をする。美しくも恐ろしいと。
あれは存在してはならない存在だと。
だが俺は違った。
恐怖など微塵もない。あるのはただ圧倒的な衝動。
彼女の●●になりたいと。
平静を装っていたが、俺は狂おしくそう感じていた。
やがて彼女が倒れる。数多の女神。英霊。
そして人類最後のマスターとその盾なる少女達の手によって。
「」
ロマニ・アーキマンの宣言と共に、カルデア内にも歓声が巻き起こる。
やったと。これでこの世界は救われたと。
だが俺はただ一人怒りを感じていた。
何故だ。何故殺した? 何故彼女を――何故何故――
冥界の深淵に落ち、消滅していく彼女を俺はただ見送る事しか出来ない。
『Aaaaaaaaa』
「!」
だがその時、俺は
そして頭に直接声が聞こえた。
『見つけた』
と。
「……」
ロマニ・アーキマンから数時間だけの休息を与えられた為、俺は自室のベットで横になっていた。
これより数刻の後に人類の命運を決める最後の戦いが控えているというのに、高揚感も不安もない。
あるのは喪失感。
彼女をもっと見ていたかった。その想いが、溢れて仕方がない。
眠らなければならない。起きれば過酷な労働が待っているのだから。
目を閉じる。脳裏に浮かぶのは、彼女の姿。
美しくも醜い彼女。
俺はお前を――
『Aaaaa』
「!」
意識が戻る。
瞼を開くと、そこは住み慣れた自分の部屋ではなかった。
存在そのものが虚数である泥の世界。命が消え、生まれる場所。
『母なる海』
この世で最も神聖で、邪悪な場所に俺は立っていた。
そして、その中心に彼女が立っていた。
『Aaaaaaaaaaaa』
ティアマト。原初の神。全ての母。
カルデアのマスターとそのサーヴァントであるデミサーヴァント達の起こした『奇跡』によって消え去った彼女が。
俺を、俺だけを見ていた。
「っ」
どくんと。心臓が鷲掴みにされた衝撃を、俺は感じた。
喉がかわく。そんなに遠いわけでもないのに、彼女との距離が絶望的にあると感じてしまう。
ティアマトが両手を広げる。愛しい我が子を迎ようとする母の顔だ。その顔で俺を見ている。
「あー」
今すぐにでもそこに行こう。彼女に抱き締めてもらいたい。
何故、彼女が生きているのか?
どうして自分はここにいるのか?
疑問は幾つも沸いた。
だが、どうでもいい。
今は彼女の元に行きたい。ただそれだけが俺の意識を支配した。
だが……
「!」
一歩を踏み出そうとし、俺は見た。
彼女の足元から黒い泥が広がっていくのを。
これはただの泥ではない。ケイオスタイド。この泥に触れてしまえば、細胞クラスのギアス……
だが、それがなんだというのだ?
俺は躊躇いなく一歩を踏み出した。泥が足に絡み付き、俺の何かを変えていく。だが構わない。俺は更に一歩を踏み出した。
一歩。一歩。踏み出す度に、ティアマトの顔に喜悦が走る。
感じてくれているのだろう。俺の変異を。
やがて彼女の前にたどり着いた泥はもう全身に絡み付いている。
『Aaaaaaaaaa』
彼女が俺を見ている。期待しているのだ。待っているのだ。俺の次の言葉を。
ああ。言おう。今こそ言おう。あなたにこの言葉を捧げよう。
「俺をあなたの子供にしてくれ」
『Aa!!』
感極まったのか女神からの抱擁を受ける。
「!」
瞬間。俺の脳は蕩けた。圧倒的な愛と、彼女の持つ神性が俺を直接狂わせ始めたのだ。
「ん」
唇を吸われ、脳も一緒に吸われているという愉悦を味わう。
快感が止めどなく溢れ、意識が、全てが、
彼女の『子供』として再構成されていく。
「吸う」
故に理解出来る。彼女が今求めていることを。
俺は食らいつくように彼女の乳房に顔を埋めた。
乳首をくわえ、吸い付く。
人間でいう母乳が彼女の胸から俺の口内に供給される。
だが普通の母乳ではない。これは泥と同じだ。一滴でも触れれば、その者の本質を狂わせる禁断の蜜。
それを俺は嚥下する。生まれたての赤ん坊のように激しく。貪欲に。
何度も何度も何度も。
『Aa』
「……!」
一体どれ程の長い間そうしていたのか。ティアマトが俺の逸物に触れたことにより、俺の意識はようやく帰還する。
視線を送ると、そこは大惨事になっていた。快感が強すぎて気がついていなかったが、壊れた蛇口のように。止めどなく精液が発射されている。
打ち出された白濁の液はティアマトの腹を彩り、彼女の紋様と背徳的で淫靡なコントラストを完成させていた。
その事に、俺は罪悪感を抱く。美しい彼女を汚してしまった。その事実が、俺の胸を締め付ける。
『』
「!」
だが、俺に触れていたティアマトの手が逸物を扱き始めたことにより、俺の罪悪感は快楽に消えた。
自慰を知らない幼子に性の手解きをするかのような、緩やかな優しい扱きに、俺は更に蕩けていく。
「ああああ」
精液が止まらない。快楽が止まらない。愛が止まらない。
俺は彼女の望むままに精を吐き出し続ける。
『Aa』
「あ。」
やがて逸物が解放される。俺は足腰に力が入らなくなり、泥の海の中に背中から倒れる。
痛みはない。泥が優しく俺の身体を抱き止めてくれたから。
「ティアマト……」
全身に力が入らない。原初の母の愛に、俺は酔いしれていた。
『Aaaaaaaaa』
だがティアマトの愛は終わらない。最後の仕上げとばかりに、俺の身体に覆い被さってきた。
重なる肌の心地よさに、また精が吹き出る。
『Aaaaaa』
ティアマトの手が俺の逸物を掴む。そしてその先端を自らの性器にあてがう。
「ま、待ってくれ」
その時、俺は初めてティアマトに恐怖した。今でさえ、死と再生を繰り返すような快楽に翻弄されているのだ。
原初の女神と一つになんてなれば――
『』
くすりとティアマトは笑う。怯える俺の様子を愛しそうに見つめ、
彼女は俺の性器を自らの中に――
導いて――
「」
世界が、飛んだ。
快楽快楽快楽快楽快楽快楽
未来永劫、魂の従属を約束させられる悦楽。
生物としての本能が叫ぶ。
ここが帰る場所だと。
全てが生まれ落ちた原初の母の性器と俺は一つになっていた。
永遠の絶命と永劫の絶頂を同時に味わい、俺の全ては彼女の中に溶けていった。
……………
…………
……
漆黒の海。全ての命が帰り、そして新たに生まれる海の中で、『俺』は自己を認識した。
「ああああああ!!!」
生命の海の中から俺は現世に新たに『生まれ落ちた』
「はー! はー!! はー!!!」
手がある。足がある。この身は人の姿をしている。
だがこれは同じ形をしているが、かつての人間であった時のモノとは大きく違う。
『……できた』
ティアマトの言葉が、これまで認識できなかった彼女の言葉が俺が認識できる言葉に変換される。
『気分は、どう?』
「最高だ」
俺はティアマトを抱きしめ、満たされた想いで彼女の背中を撫でる。
『良かった』
そんな俺を彼女は抱きしめ返す。
「ティア」
ティアマトではなく、それを短縮した愛称を自然と口にしていた。相手は神にして原初の母。ただの人間である俺がそんなことを口にするなど許されるはずがない。
『うん』
だがティアマトは激怒するどころか、歓喜した。
当然だ。俺はもう人ではなく、彼女と
ティアマト……ティアの抱擁に身を任せながら、俺は自分と彼女の現在の状態と状況を理解していた。
カルデアの攻撃により、ティアの霊基に異常が発生している。
そのため、ステータスの大幅な低下やスキルの劣化が起こっている。
だが一番問題が発生しているのは生殖機能だ。
本来なら無性生殖であるはずの彼女は今、性がなければ生殖が出来ない。
(だから……)
そう。だから自分が選ばれた。ティアマトの番として。
人の身は保ってはいるが、この身は既に母と同じ『回帰』のビーストクラスを持つ人類悪の一つと化している。
全身に広がるのはティアへの愛しさと、ティアマトの番としての本能。
即ち、犯して孕ませる事。
「子供を作ろう」
『うん!』
ティアを生命の海の上に押し倒し、俺は躊躇いもなく逸物を彼女の性器に結合させる。
『ああああ!!』
ビクン! と彼女が性の悦びに震える。俺もまた先程以上の快感を感じるが、ティアマトの番として最適化された身体は、さっきのような無様な射精はしない。
自分とティアの快楽の為、腰を震わせながら俺は自らの為すべきことを再確認する。
優先すべきは、カルデアの抹殺。だがこれは即時行動は不可能。ビーストとはいえ、母と自分の力は彼等に遥かに劣っている。
ではどうすればいいか?
(一つある)
それも、今の自分におあつらえ向きな方法が。
それは、ケイオスタイドを使用したサーヴァントの隷属化による戦力増強。
だが簡単にはいかない。一つの間違いが即刻死に繋がる。
『Aaaaa』
「大丈夫だ」
不安そうに俺を見る母であり番であるティアの髪を優しく透きながら、俺はここに誓いを立てる。
必ず、どんな方法を使っても――
「俺がお前をもう一度全ての母にさせてやる」
次回からサーヴァントの悪堕ちが始まります。