ティアマトの番 作:Ω2
これが孔明の罠か!?
母の中に還りたい。
それが反英霊ジャック・ザ・リッパーの願いだった。
だからこのカルデアに始めて召喚された時、ジャックはマスターであり、自分のおかあさんになってくれるかもしれないあの人を襲った。
もっともそれはあの人の傍にいた大きな盾を持った女性に防がれてしまったが。
だけど、あの人はお母さんだった。
私に襲われたというのに、怖がらず私に近付いてくれて、手を伸ばしてくれた。
「解体は勘弁だけど、よろしくねジャック」
繋いだ手は温かかった。
願いは叶わなかったが、私達は救われた気がした。
「本当にそうか?」
……
「う、」
目が覚める。
まず感じたのは、凍えるような寒さだ。
「?」
どうしてか、自分は服を着ていない。寒いのはそのせいだろうか?
いや、違う。足元に広がる泥と。身体にまとわりつく泥のせいだ。それに体温を奪われていっているようだった。
「ジャック」
名前を呼ばれた。見ると、男が泥の上にあぐらをかいて座っていた。
「誰?」
見覚えがあったような気がする。とても大切なことが男との間にあったような気がするのに、思い出せない。
「おかあさん?」
「いいや。違う」
違った。ならこの男は――
「……」
ダメだ。頭がボーッとして上手く考えられない。
「お前の母ではないが、お前を愛している存在だ」
「?」
おかあさんではないのに、私達を愛してくれる?それは一体なんなのだろう?
「教えてやる。おいで」
「うん」
何か大事なことを忘れているような気がするが、ジャックは従った。従わなければならない。どうしてか、そういう気持ちになったからだ。
近くに行き、男の上に座ると、優しく抱き締めてくれた。
温かい。凍えた身体に温かい何かが流れ込んでくる。
それがたまらなくて、もっとほしくて、ジャックは男の身体に自分の身体を擦り付ける。
温かい。肌と肌が交わる度に温もりと『何か』を感じる。
「ふ、は」
『何か』は胸と乳首が触れ合った時、電流となった。
「あ。今の――は?」
なんだったのだろう? 分からない。だがもっと欲しい。
「はあはあはあ――あれ?」
一際温かいものを下腹部に感じ、ジャックは視線を落とす。
そこには、男の逸物がそそり立っていた。
「なに、これ?」
「ジャックを温かくするものだよ」
「そう、なの?」
「ああ。これがあるところと、同じところをこすり付けてごらん」
「同じところ――」
ジャックは言われた通りに、自分の足の付け根と、男の逸物を合わせ、擦りあげた。
「ふあっ!?」
先程感じた以上の電流をジャックは感じた。
「な、に? これ?」
「快楽だジャック」
「かい、らく?」
「気持ちいいということだ」
「気持ちいい――」
口に出すと、背筋にぞくりとしたものが走る。
この感覚が、この温かくも痺れるような堪らない感覚が気持ちいい。
「気持ちいい。気持ちいいよ!」
凄い。口に出せば出す程、どんどんよくなっていく。
「もっと、もっともっと!!」
もう止まらない。止まりたくない。もっと早く、強く、自分のあそこを擦り付ける。
どんどん温かくなる。どんどん気持ちよくなる。
やがて堪らなくなり、
「んぅ!?」
ジャックは背を反らして、身体を震わせた。
「はぁ! はぁ! はぁ!」
脱力したジャックは口の端からこぼれる唾液に気付くことすら出来ずに、男の腕の中で全身を満たす余韻に、ただ恍惚としていた。
「いったか?」
「イッタ?」
自分はどこにも行っていないのにとジャックは首を傾げる。
「気持ちいいのが溜まると、そうなるんだよ。嫌だったか?」
「嫌じゃ、ない」
むしろよかった。また味わいたくなる程に。
「そうか。なら、ご褒美だ」
「ん」
唇が塞がれる。
(これも、いい)
先程よりも気持ちいいはない。だがどうしてか、こうしていると安心する。
『舌を出せ』
頭の中に男の声が響く。それは異常な事のはずなのに、ジャックは気付かない。気にもしない。
ただ頭の中にさえ感じる温かさと『気持ちいい』に、うっとりと目を細めただけだ。
(こう、するの?)
男の言葉に従い、彼の口内に舌を入れる。
『いい子だジャック』
(ん!)
褒めるように、男の舌がジャックの舌と絡み合う。
(いいよ……これ)
凄い。また新しい『気持ちいい』だ。
今度のは、グツグツと煮えるシチューのように、ゆっくり、優しく、ジャックの身体を蕩けさせる。
『さあ、受けとれ』
(ん)
何かが流し込まれる。最初は唾液かと思った。
(なんだろう、これ?)
だが違う。もうほとんど働かない思考が、私達の誰かに警告される。
これは、そんなものよりも更に危険で、邪悪で、絶対に触れてはいけないものだと。
だがジャックは、
(――どうでも、いい)
抵抗所か、与えられるものを嬉々として飲み込んでいく。
やがて警告を発していた私達の誰かも静かになり、これを飲むことが私達の総意となった。
(あ…‥)
凄い。舌と舌を絡み合わせているだけで、さっきよりも、気持ちよくなれた。
(もっと、欲しい)
だがジャックの快楽への欲求は収まる所か、更に激しくなっていく。
(ん!)
気がつけば、ジャックはまた、男の逸物に自らの性器を擦りつけていた。
「ん、あ、うぅー」
始めて味わう快楽の虜となった少女は一心不乱に、腰を振り、舌を絡み合わせ、沸き上がる官能の味を貪る。
(あ――)
また、くる。また、イク。
唇が離されたジャックは、男の腕の中で三回目の絶頂を迎える。
「イク!!」
自然と叫んでいた。「気持ちいいと」同じだ。口に出すともっとよくなる。
「はあ! はあ! はあ!」
「上手にイケたな。えらいぞジャック」
荒い息を吐くジャックの頭を、男は優しく撫でる。
「どう、して?」
「ん?」
呼吸を整えながら、ジャックは男に尋ねる。
「どうして、こういうこと、するの?」
「嫌だったか?」
「違う」
むしろ逆だ。
「どうして、こんなに幸せにしてくれるの?」
そうジャックは幸せだったのだ。
初めての『気持ちいい』。始めての行為。
どれもジャックに強烈なまでの幸福感を与えるものであった。
だから「どうして?」と思う。
どうして、この男はここまで自分にしてくれるのだろうかと。
「くく」
男は笑った。まるでその言葉を待っていたと言わんばかりに邪悪な笑みを浮かべるが、今のジャックにはそれを認識する事は出来ない。
「それはなジャック」
だからこの後の言葉を、
反英霊ジャック・ザ・リッパーに引導を渡す一撃を、無防備な心で受け止めてしまった。
「お前を愛しているからだよ」
「――」
その言葉は、ジャックにとって致命的だった。
反英霊ジャック・ザ・リッパー……
その正体――否。本質は堕ろされた胎児達の魂の集合体として生まれた悪霊のような、ひどく不安定な存在なのだ。
彼女達にあるたった一人の望みは『母親の胎内に帰る』のもその為だ。
愛を知らないまま、この世に生れ落ちる事の出来なかった悲しき意識の集合体。
その彼女等が唯一愛される可能性がある場所。それが母の胎内なのだ。
母の胎内に帰りたい。その願いは言い換えるならば、愛の渇望と言ってもよい。
「さあ、ジャック。俺を
そんな悲しき存在が、自分達の全てを満たして有り余る愛を注いでくれる相手に出会ってしまうとどうなるか? 結果は火を見るよりも明らかだ。
「お――」
初めてジャックは男を真の意味で
そして呼ぶ。決して呼ぶはずのないその呼び名を。
「
それはあり得ない事であった。奇跡と言ってもいい。
彼女達の中には存在しないはずの父という概念をジャックが理解したのだから。
そしてその奇跡は、同時にジャックの存在が後戻りが出来ない所までに、変容した事を意味する。
「そうだ。よく呼べたなジャック。これで
「準備?」
「ああ。御覧ジャック」
「うん」
男の指示に素直に従い、ジャックは男の指を指す場所――自らの臍の周りに視線を落とす。
そこにはいつの間にか紋様が浮かんでいた。淡い青色の紋様は、見る者を虜にする程神秘的で、そして淫靡だった。
「これはティア……お前の
「んぁ!」
男はジャックの下腹部に手を伸ばし、慈しむようにそこを撫でる。それだけでジャックは軽い絶頂を極め、びくりと身体を震わせた。
「ジャック。俺達は本当の親子ではない」
「う……」
「泣かなくていい。それは今だけだ」
「え?」
「本当の親子になる方法がある」
「どうやるの?」
「分かるはずだぞジャック。今のお前なら?」
「今の、私達なら?」
「ああ」
男がもう一度撫でると、ジャックに刻まれた紋様が青から赤へと変化する。
「あ……」
それと同時に、幼い殺人鬼の瞳からは完全に意思の光が消失した。
「――うん」
にこりとジャックは笑った。そして男から身を離すと、泥の上に仰向けに寝転がる。
「分かるよ」
そう言いジャックは自らの幼すぎる性器の秘裂に指をかけ、広げる。
「来て」
先程まで快楽すら知らなかった少女は一流の娼婦の妖艶さと共に、男を誘う
「おとうさんとひとつになりたい」
「いい子だジャック」
男が動く。少女の誘いを受けて。
自らの性器を、幼く未成熟なそれに合わせ――
「受け取れ」
一気に挿入した。
「……あ」
純潔の証たる膜を破りながら、狭いジャックの膣内をこじ開けるように、男は彼女の奥に進む。
「あ、ふ、う……」
初めての性交。しかしジャックの顔に苦痛はない。
ただ虚ろな瞳で、嬉しそうに男の挿入を受け入れる。
やがて男の肉棒は長さに余裕を残しながら、ジャックの最奥に到達した。
「一番奥まで入ったぞジャック」
「うん。感じるよ」
ジャックの瞳に再び意識の光が宿る。
「おとうさんとひとつになってる」
だがそれはこれまでのジャックとは違う。
「周りの泥も喜んでる」
周りのケイオスタイドがただの泥ではなく、意思のある物だという事を理解しているのか、ジャックは近くの泥を手で掬うと、自らの口に流し込む。
「とっても、甘い……」
恍惚とした吐息を一つ吐くジャックに、不覚にも劣情を感じた男は、『仕上げ』を行う為に、腰を動かし始めた。
「う! 激しいよおとうさん!!」
処女相手では許されない猛然とした勢いのピストン運動。だが、ジャックは痛がる所か、自らも腰を動かし、湧き上がる快楽の従僕となる。
「もっと! もっと激しくして!!」
「いいだろう。行くぞ」
「うん!」
異常な熱がジャックを支配する。これまで蓄積された温もりが一気に燃え上がったかのように、少女の身体を焦がし、犯す。
「おとうさん! おとうさん!! おとうさん!!!」
狂気さえ感じる勢いで男とジャック……否。二人の獣は絡み合う。
周りの泥も歓喜しているのか、彼等の周りを波打ちうねる。
「ああ! ああ!!」
「はあ! はあ! はあ!」
最早互いは言葉すら発する事が出来ない。ただ内より湧き上がる欲望と劣情のままに、相手を貪るしか、彼等には出来ないのだ。
やがて獣の饗宴も佳境に入る。
「あ、う! は、あ!!」
ジャックの吐息が小刻みとなり、背中が反りかえる。
(だ、め! こわい!)
その瞬間。ジャックは恐怖を感じた。迫り来る何か。これが臨界に達してしまえば、自分の中にここまで蓄積された『温かい』と『気持ちいい』が全て爆発してしまう。
それ程までの快楽が来てしまう事を、本能的にジャックは感じ取っていたのだ。
だから恐怖する。
恐怖すら知らないはずの幼い殺人鬼は為す術なく、内から湧き上がる全ての感情、衝動に、無防備に晒されるしかない。
こわい。それがたまらなく怖――
『大丈夫だジャック』
と、不意に頭の中に声が聞こえた。
『怖がることはない。
(ほんとう?)
『ああ。ジャックはただ受け入れるだけでいい』
(受け入れるだけ……)
感情を。衝動を。そして『おとうさん』を。
ただ受け入れるだけでいい。
『安心しろ。俺はお前の傍にずっといる』
(うん……)
もうジャックに恐怖はない。恐怖は全て幸福に変わった。
怖がる必要などなかった。私には『おとうさん』がいるのだから。
(イクよ。おとうさん)
『ああ。一緒にいこうジャック』
「あ」
そうしてジャックは絶頂した。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
気持ちいい……そう理解する事すら出来ない。
許容量を超えた快楽は、ジャックの意識を粉微塵に吹き飛ばし、これまでの彼女の全てを殺しつくす。
だというのに――
(――幸せ)
自らの全てが殺され、蹂躙されている。それをジャックは幸福と共に受け入れていた。
自分の全てを殺す絶頂感も。胎内に感じる父の性も。
全てが幸せ。
「お、とう、さん」
幸せで、どうしようもなく幸福で、そしてそれを与えてくれた父が愛しくて仕方がない。
「だい、すき……」
最後の一歩。真の意味で獣へと堕ちるその一歩を反英霊ジャック・ザ・リッパーは幸福と共に踏み出したのであった。
「やれやれ」
ジャックを
想像以上に消耗が激しい。英霊一人を堕とすのに、ここまで魔力を使わされるとは。
(だが……)
確かに堕とした。反英霊ジャック・ザ・リッパーを。
(計画通りに行った事を、今は喜ぶべきか)
だが改善しなければならない所は山のようにある。
正直に言うと、今回ジャックを首尾よく堕とせたのは、相性がよかったからだ。
形はどうであれ、ティアマトの番である俺は『愛を与える者』という性質を持っている。
そしてジャックは『愛に飢える者』
彼女を堕とすのに、俺は圧倒的なまでの優位な立場であった。
事実、俺の浸食と洗脳にジャックは大した抵抗をしなかった。
だというのに、この疲労。
次からはもっと効率的に攻めたいものだ。
(まあ、問題ないか)
少なくとも、次回からは
(そうだろう
返事はない。だが、確かにジャック・ザ・リッパーは俺の中にいる。
カルデアとの契約を完全に上書きした為、ジャックはただ霊基として俺の中に在るだけだが、それも今だけだ。
すぐに受肉させてやる。
そしてそれは皮肉にもジャック・ザ・リッパーが渇望する望みを叶える事となる。
「喜べジャック。お前の望みはようやく叶う」
ケイオスタイドの中に自ら身を沈めながら、俺はこれから起こる事に、心からの愉悦の笑みを浮かべるのであった。
次回アサシン・ザ・ビーストが爆誕します。