皆さん、ご機嫌麗しゅう。
こちらは元気です。皆さんも元気でしょうか?
……寝起きでうまく回らない頭で適当な事を考えつつ、目の前に出された朝食を口にする。この世界の捕虜がどういう扱いを受けているのか分からないが、この軍での扱いは一般的な生活よりも良い食事を受けることが出来ていた。
食事をする所は天幕で覆われていて外を見ることは出来ない。
複数人が食事をするのにはまったく問題ないぐらいのスペースがある。もちろん、ここも女性兵士の皆さんが建てたわけだが、ここには俺以外の男性の姿は見えない。なんだか俺一人だけ隔離されているみたいで心細い。
品目は硬めの黒パンにスープ。そしてちょっとしたドライフルーツてきな乾物。俺が今まで生活していた村での食事が、自分たちで作った野菜にあれば麦飯をなんてものだったからな。勿論、収穫量が少なければ自分で食べる量も当然減ってしまう。
それに比べてここでの食事は、朝と夕の2回確実に口にできるんだから良いもんだ。
黒パンをスープに浸して柔らかくし、口に運ぶ。
「うん……うん」
「ほえぇ。珍しい
「うん?」
対面に、俺が食べている食事よりもちょっと品目が多い配膳が置かれた。
釣られて上を見ると、ふわっとしたツインテールが特徴の女性の姿があった。
ミリナもそうだが、この女性もまた軍隊にいるのが似つかわしくないなぁと元の世界感覚で考えてしまう。そして何より目がいってしまうのがその胸の大きさだ。とてもじゃないが、兵士としてトレーニングをしていると思えないぐらいの塊。体の動きに合わせてぷるんぷるんと動き、腕でむにっと潰れてはまた同じ形に戻っていく。
「おぉ……」
「そんなに見たって食べ物を恵んであげませんよぉ?」
「え……? あ、いえ! 食べ物を見ていたわけではなくて」
「ほぇ? では、何を見ていたんですかぁ?」
「あ、そのぉ……い、いえ、やはり、美味しそうだなぁ……なんて」
さすがにド直球に胸を見ていましたなんて言えるわけがない。
いくらこの世界の女性の貞操観念がおかしいとはいえ、まだ開けっぴらに初対面の女性に下ネタをぶつけるのは恥ずかしい。
まぁ、いくら俺が悩んでいたところでどうせ向こうから言ってくるだろ。セックスするぞとか、今日は私と寝るぞとか。
……この軍にいる男の身としては、もしかするとこの女性とも
「もぅ……そんなに美味しそうにされると、こっちが悪い事してるみたいじゃない。んー……はい、あ~ん」
「え……あ、あーん……ん」
美味しいです(単純)
もぐもぐと味わっていると、今まさにあーんをしてくれた女性が何やら驚いたように目を見開いている。まさか男が食べてくれるなんてとか考えてるに違いない。何も気にせず食事を続けるとしよう。
「ちょ、ちょっとぉ! 何知らんぷりして普通に食べてるの!」
「んぇ? ……ふぅ。いえ、こうやって皆さんの要望に応えるのも勤めかなぁと」
俺としてはご褒美みたいなもんだから何の感慨もなくこんな台詞を口にしていた。
可愛くて巨乳な人からのあーんを断る男はいない! と熱く心の中で叫んだところでこの世界の男性諸君はそもそも女体に神秘を感じていないようだからな。
そろそろ食べ終えるぐらい小さくなったパンをスープに浸していると、呆れたように溜息を吐かれた。何故だ。
「はぁ……中尉から話は聞いてたけど、まさかここまで普通じゃない感性を持った男がいるなんて」
さーせん。そもそも貞操観念自体違います。
たまに他の男性の様子が気になって見るのだが、最初のころからそんなに環境が良くなっているとは言えなかった。まぁ、しっかり食事をとることはできるし、体もそれなりに清潔にさせられているからそうそう簡単に体調を崩す事は無いだろう。
問題は精神か。
誰を見ても暗い表情をしているんだから、もし俺があそこにいたら完璧気を病んでいただろうと自信を持って言える。もうどうしようもないのだから逆に諦めてしまえば楽になるのに……どうしてこの世界の男性はそこまで性に対して悲観的なんだろうか。
こちらから好みの女性を指名することができないという難点はあるものの、セックスをするだけで一日しっかり飯が食えて安寧な時間を過ごすことができる。大体の危ない事――夜盗やらたまに出てくる獣の撃退等――は女性兵士の皆さんがやってくれる。
指名があればいつでもセックス。なければずっとのんびり。
なんて素敵なスケジュールなんだ。
「ごちそうさまでした」
「……ねぇ、君っていくつなの?」
俺の食事量よりも多い配膳だったのに、気付けばすでに半分も無くなっている事に驚きながら質問に答えようとして、ふと何歳だったかなと疑問に思ってしまった。
「……18、です」
「18!? 若いだろうとは思ってたけど、まさかそこまで若いなんて……中尉も良い男を見つけたものね」
「えっと、やっぱり、その……自分みたいなのは珍しいんですか?」
「当たり前でしょ。性行為は嫌がらないし、なんだったら自分から積極的に腰を振って気持ち良くしてくれるって話でもちきりなんだから。耳にしたときは妄想かなんかかと思ったけど……君と一緒に寝た奴全員が同じ事言うもんだからねぇ」
「あ、あはは……」
まるで珍獣みたいな扱いだけど、腰を振ってるって事を否定できるわけでもないので笑ってごまかしてみる。そりゃ俺だって気持ち良くなりたいし、気持ちよくなってもらいたいって勝手に思ってたが故の行為だった。
……周りの男どもの状態を鑑みるに、別にマグロのように横たわったままの状態でも勝手に向こうが気持ちよくなろうとするんだろうけども。それだとこっちのペースで事を進めることが出来ないだろ? 女性優位の世界なんだ。そのまま女性にペースを握られたままってのには黙ってられんと奮起してみた結果『セックス中だったら大丈夫だろう!』という結論に至ったのだった。
うーむ……我ながらなんて短絡的で頭の悪い発想だろうか。
「ごちそうさまでした。……えっと、もしかして今日のお相手は」
「そ、私。あんまり気持ち良くしてあげる自信は無いけど、中尉がお勧めしてくれたからには断るわけにもいかなかったの」
「なんとお呼びすれば?」
「リリア。一応軍曹って立場だけど、階級は気にしないで」
「わ、わかりました」
今までの女性と違ってガツガツ迫ってこない。
俺の感覚からすればこれぐらいの女性が普通のような気はするが、他の皆さん方の対男性用常時展開型下ネタ攻撃を思い出すと、ね。軍曹ってことは結構上の人だとは思うが、この雰囲気だけで俺の癒しになってくれる。
実際に事が始まるとどうなるかはわからないけれども。
「あ、君に伝えることがあるんだけど。このまま本国に戻ったら、君、結構良い扱いされるって」
「え、それって」
「中尉が君の事を慮ってるみたいでね。それに、短い間だけど君の働きは今までの男性の中でも特に顕著だって事で、上に上申して君の待遇をかなり良いものにしようとしてるみたい」
「そう、ですか……」
あまりパッとこない。
ただ単純に、女性と何回もセックスしてるだけなんだから働いてるって感じはない。俺も俺で気持ちいいですし。まさにウィンウィンな関係じゃないかと満足してたんだが。
……これ以上の待遇ってことは、衣食住の環境でも良くなるってことか?
「それじゃあ、お堅い話は抜きにして。早速だけど私のお相手してもらっても良い?」
「え、今からですか?」
朝食を食べ終わってまだ間もない今から運動するのは気が引ける。
ちなみに、食事後すぐに運動すると脇腹が痛くなる症状に苛まされたことがある人はいるんじゃなかろうか。これにはいくつか通説があるらしい。例えば胃の中に残っているものが上下に動くことで起きる痛みだとか、運動することで消化に必要な酸素を供給する事が出来なくなるからだとか。
まさにその項目に当てはまりそうなことになりそうな事をしたいと思わないのは生理的反応じゃないかと勝手に納得していた。
――ミシッ
「え?」
「……ね、今から、良いでしょ?」
今まさに起きたことを説明するぜ……
口元を少しにやつかせ、何気に小悪魔的な笑みを浮かべていたと思っていた目の前の女性が手に持っていたフォークがいつの間にか真っ二つに折れていたんだぜ……自分でも何を言ってるか分かってない。だが、一つだけ理解できることがあるとすれば、この女性に俺は決して逆らってはいけないという事だろう!
それにしても良い笑顔。いやぁ……本当にこの世界にいる女性は力が強くて頼りになりますなぁ(白目)
「……はい」
「そうそう。男の子は素直なのが一番だからね。私だって、好きで可愛い子をいじめたくないから、ね?」
こ、怖ぇぇ!
最初のぽわぽわした感じは一体どこに消えてしまったんだ! これが軍曹の威圧感。飯食ってセックスに流れる動きがちょっと強引過ぎやしませんかねぇ。いやまぁ、これがこの世の常識的な流れなんだろうけど。
……離れたところで朝食をとっていた男連中はもちろん真っ青な顔をしていたけど、女性士官たちも引き攣った表情をしていたのはどういう事なんだろうか。マリッジ中尉にもそこまで酷い顔をしてなかったと思うんだが。
「じゃ、行こうか」
「……はい」
綺麗に完食して綺麗になったトレイを近くの女性士官に渡すと、すぐにガッチリと左手首をリリア軍曹に掴まれてしまった。こうして近づいてみると彼女の身長はそこまで高くない。むしろ俺の方が頭一つ分ぐらい高いぐらいなのだが、下から覗きあげてくる彼女の表情はニッコリと俺のことを見て微笑んでいた。
正直、この笑顔は良いものなのかどうかがわかりません。
絶対にこの右手を振りほどくことはできないだろうが、そこまでの圧迫感を感じないから痕が残るようなことはないだろう。と言うか、環境が良くなると言ってたんだからそのあたりは考慮してくれているのかもしれない。
かもしれない(震え声)
幻聴だろうが、耳のすぐ近くでドナドナが流れている気がした。