※この作品はR-18です。

"GIRLS und PANZER" R-18版短編集   作:キルロイさん

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第一章 『筆下ろし』 島田愛里寿の場合
前編


わたしがチーズを嫌いになった理由?

そんな事を聞いてどうするのよ。誰でも食べ物に好き嫌いはあるじゃない。

わたしだって普通の女の子だから嫌いな食べ物はあるよ。

戦車に乗って颯爽と走り、身を乗り出したまま砲撃しあう女の子は普通じゃない?

普通だよ。ホントに普通の女の子だよ。

 

えっ? チーズを嫌がる姿が普通じゃない?

貴方がブロックチーズを食べている時に、わたしがチーズに怯えているように見えた?

よくわたしの事を見ているわね。

じゃあ、貴方だけに特別に話してあげる。

わたしが経験した不思議な話だよ。

 

その前に、わたしって字をキレイに書く事が苦手なの。

作文を書くと原稿用紙のマス目に字が収まらないし、数字だって1と2と7と9の区別が出来ないっていつも言われる。

文章も文字か暗号か分からないって言われた事もある。

 

習字だと慣れていない筆で書くからもっと酷い。

女の子にしては字が汚いってわたしも思っていた。

それが理由で書道教室に通っていた時期があった。

そんなわたしが逃げ出したくなるような行事が何度かある。

その一つが書き初めなのよ。

 

新年にふさわしい言葉を選び、市販の墨汁液を使わずに硯で炭をゴシゴシ擦る。

姿勢を正して半紙に向かい、心を落ち着けてから筆を握り一文字ずつ心を込めて書いていく。

そこまで努力しているのに、わたし自身が恥ずかしくなるような文字の羅列が半紙に表れる。

もうホントに嫌になる。

 

えっ、市販の墨汁液を使わない理由?

よく分からない。

書道の先生は、特別な日に限って「それを使ってはダメ」って言われたから、何かこだわりがあるのかもしれない。

 

そして、あの年も書き初めをした。書かされたって言うべきかもしれない。

イヤイヤながら書いたから、その時の心の醜さが文字として半紙に写し出されていたのよ。

わたしにとって非常に稀に見る、恥ずかしさを通り越して目を背けたくなる程の出来の悪い文字だった。

素直に反省するべきだった。でも、わたしは反省しなかった。むしろ八つ当たりしちゃった。

 

わたしは、この日のような特別な日にしか使わない筆を握りしめた。

わたしが大学に進学したお祝いに頂いた、わたしのために特別に作られた筆だった。

大切にしなければならない筆、でもその時のわたしには存在自体が迷惑な筆だった。

だからわたしは筆に向かって思いっきり叫んだ。

 

「書道なんてだーいきらい! アンタもだーいきらい! アンタなんてこの世から消えてしまえ!」

 

そう言ってから、わたしは家の片隅に置かれていた箱の中に筆を突っ込んだ。

何の箱かって?

お正月に飾り付けたしめ飾りや鏡餅のお飾りを集める段ボール箱が用意されていたのよ。

集めたお飾りは、わたしの家が玉串料を納めている神社の祭事の一つであるどんと焼きで燃やすのよ。

 

わたしは、書き損じた書き初めと一緒に筆をその箱に入れた。

どうせ、書き初めを燃やすからこの筆も一緒に燃やしてしまえ。

そうすれば、わたしは習字をする事が出来なくなるから、無理にやらなくてもいい。

本気でそう考えていた。

今、思い返せば子供っぽい考えだけど……。

だってあの時、わたしは13歳だったんだもん。

電車で学割運賃が適用されるうちは子供だっておばさまが言っていた。間違いないよ。

 

そして、どんと焼きの日になった。

燃え盛る炎へお正月飾りが次々と投げ込まれて燃え盛り、その煙が空高く立ち上っていた。

その光景を見ていたわたしの心は青く晴れ渡った空のように澄んでいて、赤く輝く炎のように心を躍らせていた。

 

ちょっと、文学的に言ってみた。どうかな。

でもね、考えが甘かった。

異変はわたしが学園艦に戻ったその日から始まった。

 

 

 

   ◆◇†◇◆

 

 

 

その日から不思議な夢を見るようになった。

初めて見た時はわたしの頬っぺたを、ネコのしっぽがサラッサラッって撫でる夢だった。

夢である筈なのに、リアルに撫でられたような感じがした。

もちろん、朝になって目覚めてもネコなんて私の部屋にはいない。

でも、本当に撫でられたような感触だった。

 

次の日の夜、同じような夢を見た。

今度はお母様がわたしの唇と鼻の下を綺麗な指先で丹念に撫でる夢だった。

朝になって鏡を覗き込むと、撫でられた部分にリップクリームのような何かが塗られていた。

 

不思議な夢は、その後も見るようになった。

撫でられたのは耳たぶや鼻、額だった。

撫でる人もお母様やお手伝いさん、大学選抜隊の小隊長達のメグミ、アズミ、ルミだった。他にも私が知っている人達が現れた。

 

一週間ほどそんな状態が続いたけれど、私はそれに慣れちゃった。

お医者様に相談する事も考えたけれど、「貴方は疲れているだけだ」と言われるだけだと思ったから相談するのを止めちゃった。

 

でもね、どんどんエスカレートしていった。

 

撫でられた所はだんだん下がっていった。

顔だけではなく、肩、鎖骨、胸元、おへそ、脇の下や脇腹も撫でられた。

そして、おっぱいも撫でられた。

 

さすがにおっぱいをクリクリッって撫でられた時は、わたしもおどろいて飛び起きちゃった。

当然だけれど、寝室には誰もいなかった。

撫でられたところを触ると、いつものリップクリームのようなものではなく粘り気のある液体が塗られていた。

なんだろうと思って指で掬い二本の指の間を広げてみると、糸が引いていた。

何か気持ち悪くなって、テッィシュで拭き取っちゃった。

 

その日はそれで終わったけれど、次の日からおっぱいが集中的に責められるようになった。

乳首をサラサラって撫でられたり、ツンツンって突かれたり、クリクリって摘まれたり、おっぱいを丸ごと掴まれたり……。

朝、起きるとネバっとした液体が掛かっていた。

 

変だって分かっていたけれど、誰にも相談出来なかった。

だって、お母様やお医者様に「夢の中でおっぱい揉まれています」なんて言えないよ。恥ずかしいもの。

 

もちろん抵抗しようとした時もある。

おっぱいを揉まれていた時に脚蹴りしようとした。でも相手にダメージを与える事は出来なかった。当たり前だよね、夢だもの。

 

そんな事が続くから、わたしは寝るのが段々怖くなってきた。

夢を見るのが嫌になってきた。

 

寝つき易くするためにブレンドされたハーブティーを飲んでみたり、日中に活発に運動して体を疲れさせてみたり、他にも色々してみたけれど効果がなかった。

 

必ず、毎晩同じような夢を見ていた。

そんな事が続いて、わたしは睡眠不足になり頭がおかしくなってきた。

 

このままじゃダメだと思って、実家にいるお母様に相談しようとした。

 

だけど……

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