「38.7℃、ですね」
「うぅ〜・・・」
体温計を見てセラはため息をつく。そして、そのセラの目の前には頭に冷やしたタオルを乗せて、ベッド具合悪そうにセラを見つめるイリヤがいた。
「最近少し肌寒いのにあんな薄着で過ごしているからですよ。イリヤさん」
「ふぁ〜い・・・」
「とにかく、今日は安静にしててくださいね。私も今日は家にいますから」
セラは言うと、薬と水を置いて部屋を出ていった。
セラが出ていった後イリヤもため息をつき、天井を見た。枕元にいたルビーがふわりと浮きイリヤの目の前に現れた。
『珍しいですねぇ。イリヤさん。風邪ですか?
なぁんか前にもこんな所ありましたねぇ』
「うん。不覚だったよ。っていうか、クロが悪いんだよ。寒いとかなんとか言ってさ私の毛布まで巻き取るんだもん」
ルビーに頬を膨らませるイリヤ。
「しょうがないでしょ?一人用のベットを2人で使ってるんだから」
ドアの開く音と共に毛布を巻き取る犯人クロエが入ってきた。
「クロ?学校は?」
「休んだわよ。学校で魔力切れても困るからね」
クロエは肩をすくめて言った。
「ダメだよ、学校行ってる以上行かなきゃ」
「なぁにいい子ぶってんのよ。風邪引いてるくせに」
「う・・・ぐ・・・」
図星のイリヤはそっぽ向いた。
『あぁ、イリヤさん。タオル落ちましたよ〜』
「あ、ごめんルビー」
ルビーは落ちたタオルを拾い上げてクロエに手渡した。
渡されはクロエはため息を付きながらも水の入った洗面器にタオルを浸した。
「まぁ、私だって悪いと思ってるわ」
「何を・・・?」
ジト目でクロの方を向く。たが、クロの顔は少し申し訳なさそうだった。
「その・・・私のせいで風邪引いちゃったこと」
「・・・・・・・え?」
クロの言葉にイリヤは目を丸くした。
「え、あ、いや、こっちこそ、ごめん・・・」
クロエの意外な言葉にイリヤは何故か罪悪感にさいなまれた。一方ルビーは必死に笑いを堪えているわけで。
『そうえば、イリヤさん。現状イリヤさんの体は少し弱体化してますね』
「え?どういうこと?」
『はい。風邪による体の容態の弱体化ですね。魔力も少し落ちてますね。最近の特撮に出てる、あのバ○スターがいるみたいですね〜』
ルビーは何処から出したのか赤白を貴重とした操作バーの着いた聴診器を装備していた。その聴診器から映像を出しながら言った。
「なんかその聴診器危ないかもしれない。ルビー」
『はい?大丈夫ですよ〜。それよりもですよ。この気に試してみたい事があるんですけどいいですか?』
そのルビー言葉に二人はしかめっ面を作った。
「え〜、ルビーのこの状況のお試しとか信用度ゼロなんだけど」
「確かにそうね。アンタがまともだった試しがないわ。」
ガーン、とルビーの頭に表示、された訳ではないが。弱々しくベットに着地した。
『うぅ、酷いです。いつもはいがみ合ってばかりなのにこういう時に限ってお二人は息ピッタリなんですから』
「(だってホントなんだもの)」
その瞬間二人は心もシンクロした。さすがにルビーもイリヤを悪くさせることはしないだろう。ため息混じりにクロエが口を開いた。
「それで?アンタの言う試したい事って何よ」
『はぁぁい!それがですね!!』
一瞬で元のテンションに逆戻りしたルビーを見て、二人はまたため息をついた。
『今回は魔力増加による体の回復を試してみたいのです』
「魔力の増加?」
『はい。もしかしたらクロさんがイリヤさんの魔力を吸い取っているから体の免疫が弱まってしまったのではないかと』
「それで?」
『ですので、イリヤさんに魔力を一時的に返し、イリヤの回復を速める、というのが今回の作戦なのです』
クロエは顎に指を置き考えた。確かにそれは一理ある。魔力が足らないのなら足せばいい。それはクロエと同じ原理になるだろう。でも、イリヤに魔力を返したら自分の魔力はどうするのかと。もしかしたら、少量の魔力では済まない場合があるかもしれない。だとしたら、その条件は・・・
「降りるわ。その作戦」
『そんな!何でです!?』
「魔力の量が分からなければ私は供給できないわ。もしかしたら私が消える程の量だったらどうするのよ」
ルビーは驚いたように体を揺らすとクロエに慌てて寄り付めた。
『そこはご安心下さい!その魔力は私がカバーしますので!』
「どうやってよ」
『私がクロエさんに魔力を供給し続ければいいんですよ。ブレスレットとか何かに姿を変えますから〜!』
泣いてすがるような声でルビーは言う。そして、そんな二人を見かねたイリヤが上半身を起こし二人を静止させた。
「も、もういいよ二人とも。私は大丈夫だから、ただの風邪なんだから寝てれば治るよ。あはは・・・」
乾いた笑みを浮かべイリヤは言った。
「イリヤ・・・」
『イリヤさぁん・・・』
「だから、クロも学校・・・に・・・・行かな・・・」
「イリヤ?・・・イリヤ!」
頭が働かない。体が熱い。目が霞む。なんか名前を呼ばれたけど、よく分からない。イリヤの意識はそこで途絶えた。
「う・・・ん・・・あれ?私・・・は?」
イリヤが意識を無くして二時間後、目覚めた意識と共に目の前にあったのはクロエの顔だった。まさにキスの一秒前。
「・・・・・・・・・・・・・・え?」
「あ、イリ・・・ャ」
顔に汗を滲ませ焦りの表情を隠し切れないクロエと、目覚めのキスをされかけて目を丸くしているイリヤというなんとも傍から見たら完全にアレな光景にしか見えない絵が完成していた。
「何やってるの?クロ」
「え、あ、いや、ルビーに言われてそのイリヤに魔力を分け与えようと・・・」
意識が無くなっているうちに済ませるというクロエの作戦が成功しなかったため、クロエの目は魚のように泳いでいる。
「なんで、キスなの?」
「ぅえ?だ、だってキスの方が私らしいというかなんというか、実はキスの方がいいというかなんというか」
限界まで赤くした顔を隠しながらクロエはゴニョゴニョと呟く。というか、さっき利害が一致していたのに何故かクロエはルビーの作戦に乗っていることにイリヤは気づいた。
「うぇ!?クロ!やっぱりルビーに付いたのね!」
「ち、違うわよ!よくよく考えたら風邪で魔力が落ちるならこれ以上供給源を無くすのは良くないと思ったの!」
それもそうだ。自分のためにやってくれている事を嫌だと断るのも悪いと感じた。
イリヤは頷くとクロエの首を手を回した。
「わ、わかった・・・い、いいよ。クロならいつもの事だと思えば・・・多分大丈夫、だから」
真っ直ぐと見つめられクロエは言われた。その目には嘘は無かったが、羞恥心が見えている。それと同時に自分と同じ気持ちなのだとクロエは理解した。
ゴクリと唾を飲み込み、イリヤの唇をよく見据えた。
艶めかしくて、甘そうで、柔らかい。そのイリヤのいつもの唇が今回は一段と違って見えた。
「じ、じゃぁ、する・・・わよ?」
「・・・・・・・うん」
クロエはなるべくいつも通りにイリヤにキスをした。
口の中を舐る舌の動き方をいつも通りに、でも今回は吸われる方なので、少し控えめに舌を動かした。
「・・・・ぅんっ・・」
イリヤも、何故だか今回はキスの味が違った。いつもは吸われているから分からなかったが、今は何故だかクロエの口の中が甘く感じた。
魔力のせいなのか?それとも、自分がおかしいのか、風邪っぴきのイリヤには分からなかった。
「ん・・・ぅん・・・んん」
「ん・・・・・・んちゅ・・・・・・・っは」
数十秒二人はお互いに口を舐ら回した後、二人は唇を離した。
「ど、どう?イリヤ」
「どうっていわれても分かんない」
息を荒くし、二人は口の周りの唾液を拭った。
「・・・・・・・」
さっきまで、頭が痛かった。それなのに、今は頭がぼぅっとする。イリヤの目にとまるはクロエの顔ではなくその唾液で濡れた艶めかしい唇だった。それだけが、目に留まってしまう。
「ク・・・ロ?」
「何?イリ・・・・・・・んむ!?」
突然クロエはキスをされた後、グルリとイリヤとクロエの体位が逆転した。
「クロ・・・・・なんか甘い」
「ふぇ!?な、何言ってんのよ!イリヤ!」
・・・・・・・
「あ、あ、ああああ・・・・・」
ドアの前に立ち尽くす一人の女性。その女性は見てしまった。病人の小学五年生が、ベッドで営む百合の光景を。
「こ、こ、これは・・・ぜひ写真に収めて、お嬢様成長記録にのせなければ・・・」
言って、セラは自室からカメラを取りに行った。
・・・・・・・
「ん・・・んんっ!・・・んぅ・・・」
舌を動かす度に体が溶けていくような感覚にさいなまれる。それはイリヤとクロエどちらも同じだった。
「ん・・・・・・・ふぁ!」
突然のことに体が、ビクリと反応してしまった。
感覚がした方を見ると、イリヤがクロエの服の中に手を入れていた。しかも横っ腹の方から撫でるように、
「んぅ、クロの肌スベスベ〜・・・エヘヘ」
クロエの脇から下腹部までをゆっくりと確かめるかのようにイリヤは撫で回す。
「や・・・ちょ、イリ・・・ヤぁっ!」
背筋に寒気のようか快感が走る。これから自分が何をされるのか、分かるような分からないような。それでも何をされても受け入れてしまうかも知れない自分がいた。
「(だめ、こんなんじゃ!私がイリヤに・・・イリヤにぃ・・・!)」
「クロぉ?いいよね?体からも、魔力貰って・・・」
「え!?ちょ、ちょっと待って!ダメ!・・・・・ダメぇ!」
クロエの静止を聞かずにイリヤはスルスルとクロエの服を、脱がしていく。
ところが、クロエのブラジャーが現れるすんでのところでイリヤの手が止まった。
「・・・・・・・イリヤ?」
「はぁ・・・はぁ・・・ふにゃぁ・・・・」
その後、イリヤはゆっくりとクロエの隣に倒れ寝息をたてた。
『いやぁ〜、危なかったですねぇ。クロエさん』
イリヤの髪の中からルビーが出てきた。
「ルビー」
『イリヤさんが、眠ったのは極度の魔力の増加によるものでしょう。そして、魔力も無事に増えました。これで体の免疫が多少は強くなったのではないかと』
「あぁ、そう。よかった」
汗だくになっている自分の体をみてクロエはまだ胸の鼓動が収まらない。あのママだったら、イリヤに・・・・
「ん、ちょっと待って。ルビーアンタ、私の言ったこと守ったわよね?」
『えぇ、そりゃモチロン!「アンタの言う事聞く代わりに今からすることは全て忘れなさい!」ですよね?』
また、クロエのセリフを使って答えたルビー。
『私の代わりに録画してくれてる人がいますからねぇ〜』
「え?」
ルビーが向いた方をクロエも向くと、ビデオカメラを持った息の荒いセラがドアの隙間から見えていた。
「セッ、セラ〜〜!!!」
「クロ・・・うるさ〜い・・・」
終わり。
風邪ひいたって言ったら、キスで治すのがアインツベルン家のやり方だそうです。
『いやはや、クロさん。何だかんだ言って私の百合作戦に乗っていただきありがとうございます〜。実の所、私が魔力をわけ与えれば済む話なんですがね』
「も、もう言わないで....恥ずかしい.....」