律子は羞恥と怒りでますます顔を赤くする。
(もう・・やめて・・・・・)
「○○○駅~。お降りの方は・・・・」
律子が、意を決して振り返ろうとしたとき、電車が目的地に着き多くの人が降りていった。
律子もその波に飲まれるように駅に降りた。
何とか、混雑から離れ、トイレに駆け込んで、便座の上に腰をおろして、少し落ちつきを取り戻した。
律子は屈 辱 的な思いで胸がいっぱいになっていた。
(あんな卑劣な行為 許せない・・)
そう思いながら用を足そうとパンティをずらして、何気に律子の大事な部分を覆っていた股 布のあたりを見て、愕然とした。
(ぬ・・濡れてる!?)
(あんな卑 劣な行為で濡れるはずがない。実際、感じてはいなかったはず・・・・)
そう自分に言い聞かせると律子は、自分のパンティを汚らわしいものでも扱うように脱ぐと、トイレの隅にある汚 物いれに突っ込んだ。
—
「須田の奥さん?」
夫の会社の応接室で待っていると、夫の上司である樋口が現れた。
「須田は、もう出てしまったから、俺が預かっておこう」
少し乱暴な口調に律子は驚いたが、手に持っていた鞄を樋口に渡した。
樋口は鞄を受け取る際に、嘗め回すような視線で律子を見ていた。
律子はその視線を感じて、嫌悪感が走った。
(ほう。あいつにしては、綺麗すぎる奥さんじゃないか)
「そ・・それじゃ 私はこれで・・」
「いやいや。あいつも隅におけないな。こんな美人の奥さんがいたなんてな」
席を立とうする、律子を目で制すると樋口が話しを続けた。
「まぁせっかく こんな美人が来てくれたんだ。お茶でも飲んでいきなさい」
半ば、強引に机の上にお茶を差し出した。
その時、律子の身体が強張った。
(あの手の甲の跡は・・・)
お茶を差し出した樋口の手の甲にくっきりと爪で強く抓られた跡がついていた。
一瞬で、今日の電車の中の行為が脳裏を駆け巡った。
確信はないが、脳が目の前のこの男が、痴漢の正体ではないかと直感が働く。
そう思うと怒りと羞恥心が同時に身体の中から沸き起こった。
「おや。奥さん どうしました。そんなに顔を赤くして」
「い・・いえ・・・そんなことより、課長さん 電車通勤ですか」
律子は、勇気を振り絞って聞く。
もうあんな屈辱的な思いはしたくなかった。
「そうですよ。それが何か?」
「その手の甲の傷、どうされたんですか?」
「なんでもない・・・」
樋口はギラっとした瞳を律子に向けた。
律子はその瞳を見て、追求したことを後悔しはじめていた。
(そうか。この奥さん、今日のあの女か)
樋口は手の甲の傷を愛おしいそうに撫でながら、思い返していた。
そして、目の前の律子をじっと眺めていた。
そう思い返せば、肩まである艶やかな髪、背後からでも伺うことができる豊満な胸。
かすかに香る香水の匂いで確信を持った。
そして、指先に残っていた湿り気を思い出していた。
(上玉だったよ。奥さん。少し弄ってやっただけであれだけ濡らすんだからな)
「い・・・いえ 私の勘違いです。すみませんでした」
律子は目を合わせるのが怖くなり、うつむいたまま、謝罪する。
「奥さんは濡れやすいんですね」
「へ・・?!」
律子は顔をはっと上げて、樋口の顔を見る。
そこにはヌタっとした卑 猥な笑顔をしている樋口がいた。
「ど・・どういう意味ですか」
(もしかして、やっぱりこの人が、痴漢・・・)
「奥さんが綺麗すぎるからですよ。
あれだけいやらしい格好で電車に乗ってこられたら、誰でも触りたくなるでしょ」
「い・・いやらしい格好。普通です!それよりあんな卑劣なこと。よくも」
律子は顔を真っ赤にして、しかし怒りを抑えながら訴えた。
「よくも? 何を言ってる。自分から誘っておいて」
「誘ってなんかいません!」
樋口は、律子を怒らせて楽しんでいるかのように笑顔を浮かべていた。
「ほぉ。しかし、あんたの大事な部分はじっとりと濡れてたぞ。感じていたんだろ 奥さん」
「そ・・そんな・・」
律子は、トイレで見た自分のパンティを思い出して視線を下に落とす。
怒りと恥ずかしさで軽く震えていた
(図星か。奥さん。その姿、ゾクゾクしてくるね)
「強引に弄られば、感じてなくても濡れます」
律子は無駄な抵抗をする。
樋口はそんな真面目な律子の行為にさらに苛めたくなる衝動がムクムクと湧き上がっていた。
「やっぱり感じていたんだな・・・」
「そ・・それは・・・!?」
(この奥さん おもしろい女だ。 あいつの奥さんにしておくのはもったいない)
「まぁ 奥さん 今日のことは、内緒にしておいてあげますよ」
「な・・内緒って」
「痴漢に弄られて感じた卑猥な女だと思われたくないでしょ?」
樋口は楽しそうに律子を言葉で責める。
律子は羞恥と怒りでますます顔を赤くする。
「で、さらに俺は、奥さんの夫の上司だ。 その上司を痴漢で訴えるとでも?」
「そ・・そんな卑怯です。」
律子はもう涙をうっすらと瞳を潤わせていた。
(ほぅ。その顔もたまらないな。)
樋口は肉棒がビクンとなるのを感じていた。
「さ。今日のところは、これで。俺も忙しいから」
「か・・課長さん!」
席を立とうとする樋口に、声をかける。
「須田のことは、悪いようにしないよ。 奥さん次第だがね」
樋口はまた、ヌタっとした笑顔を残して応接室から出て行った
残された律子は、少し呆然としながら今朝から今までの出来事を振り返っていた。
ずっしりと重く感じる身体を引きづるように、家路についた。