翔太はスマホを切ると、少し溜息を吐く。
目の前には、ミヨと優の2人の少女の姿があった。
「ねえねえ・・・今の電話誰なの・・・新しい彼女?」
「優さんったら、失礼な事聞いちゃダメよ、彼に彼女なんて居るわけ無いでしょ」
(ミヨさん・・・貴女の言いかたの方がずっと失礼だよ!)
と、翔太はツッコミたかった。
「それ以上に、どうして2人で家にくるわけ?」
「近所だし良いでしょ?」
ミヨが素っ気なく言う。
「うら若き乙女が、1人で寂しい想いをしている殿方の家に華を咲かせようと思って来てあげているのよ、少しは感謝しなさい」
京子並に際どい発言をする優に翔太は言い返さす言葉が見つからない。
「まあ・・・別に良いけど、ちなみに博士が、君達のどちらかと会って見たいといっているけど」
「薬で若返ったのは感謝しているけど・・・会いたいなら自分から私達に会いに来れば良いのでは無い?」
「そうよね、どうして研究室まで行かなければならないの?」
「チョー、メンドイわねぇ・・・」
ミヨの発言に翔太が驚いた。
(本当に数日前まで、高齢者だったの・・・?)
完全に世間の流れに乗ってしまっている適応力は驚く物があった。
ふと・・・何気なく時計を見ると、既に昼過ぎだった。
「そうだ、何か食事作ろう。何が食べたい?」
「あ・・・結構よ、私が料理作るわ」
優が立ち上がって言う。
「いえ、料理は私が作ります、しばらく作っていなかったけど腕は確かよ」
「お婆さんは、座っていて一人暮らしではあっても常に材料から作る腕前は、結構自身あるのよ」
「あら・・・そう?私は魚を裁いたりした経験があるのよ。薪でお風呂を沸かしていた時代に生きていた者の腕前を甘く見ないで欲しいわ」
「何を言っているの?殿方の頭にチョンマゲが乗っていた時代と今と現代は違うのよ。それとも・・・黒曜石を包丁代わりに使っていた石器時代かしら?」
「私なりに時代に適応しているわよ。貴女IHの使い方知っているの?」
「え・・・何それ?」
流石に少し早く若返っただけではあるミヨに、少し軍配が上がった。
翔太の家と倉田家は、コンロはIHコンロだった。
優が戸惑う姿を見て、ミヨは少し勝ち誇った笑みを浮かべる。
「そんな事も知らないで台所に立とうとしてたの?それじゃあ・・・材料を用意しても鍋やヤカンを冷たいままの状態にしているだけよ」
そのミヨの言葉に翔太は
(つい・・・数日前まで風呂のシャワーの使い方も知らなかったくせに)と、言おうと思った。
ミヨが優を招いて島崎家の台所にあるIHコンロの使い方を教える。その姿を見ていた翔太は、伊達に長年台所に立っていただけはあるな・・・。と、少し感心させられる。
新しい物が入って来たら直ぐに使い方を飲み込む凄さは凄いと・・・感心させられる。
ちなみに翔太は・・・数年前に家にIHコンロが来てから、中々使いこなせなく。最近やっと使えるようになったばかりである。
いざ、使い方が分ると、実年齢90歳と60歳の少女達が食事の支度を始める。小柄とは言え・・・慣れた腕前で食事を作る腕前は見事だった。
台所で僅か30分程で、見事なまでの料理が並べられた・・・。
プルル・・・
京子のスマホに翔太からの着信が入る。
「おう、どうした?フリーター専門職の人生を謳歌しているショータ君」
相変わらず姉のイヤミにはイラッとくる物があった。
(よくも、まあ・・・人の悪口が次から次へと出てくる物だな、この人は・・・)
「姉ちゃん、食事はまだでしょ?」
「そうなんだよ、ウチの亭主と娘が何も作ってくれなくて困っているんだよ、どうしたら良い?」
「て・・・普通、主婦が料理を作るのだろう?娘にも作らせているのかよ!」
「ウチの家庭の事情は、ウチでの事だ。誰にも言われてたくは無いね」
「まあ・・・別に良いけど」
「で・・・何か話があったのでは無い?」
「ああ・・・ちょっと料理を作り過ぎたから、家で食事しない?」
「良いね。じゃあ・・・今から行くぞ!」
京子はスマホを急いで切った。
改めて食堂を見ると、ミヨと優が張り切って作った料理は、約10人分以上の量だった。
「ちょっと作り過ぎちゃったね・・・」
「ウチの家族も呼ぼうか?」
優がスマホの画面を開いて、自分の家族に連絡をする。
しばらくして二家族が島崎家に集まって、小さな食事会が行われる。
家の中では夕方近くまで賑やかな時間が続いていた。