※この作品はR-18です。

天才橘博士の珍発明   作:Mr,J

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第12話

介護職員の北原茂は、住宅街の一角にある小さな民家へと車で訪れた。住宅街の端にあり、目の前には山が佇んでいた。山の斜面に建てられた民家でもあり、車から降りて反対側を眺めれば、目の前には海が広がっていた。

茂はお見舞い用に小さな花束と菓子折を携えて、玄関前に立つ、玄関には『杉浦』と表札があった。

玄関のインタホンを鳴らすと、向こうから「はい」と、女性の声が聞こえた。

 

「あ・・・こんにちは叔母さん。茂です」

「あら、こんにちは、どうぞ入って」

 

そう言われて茂は家の中へと入って行く。

玄関のドアを開けて茂は、家の玄関先の処で、還暦を迎えた中年の女性と対面する。

 

「何か・・・先日は、ウチの介護職員が迷惑を掛けてしまって、すみませんでした・・・」

 

そう言って茂は、菓子折と花束を持って謝る。

 

「気にしなく良いのよ、別に・・・娘が勝手に言った事だから・・・」

「ちょっと藍さんと会っても良いですか?」

「ええ・・・どうぞ、あ・・・何なら、しばらく留守を預かっても良いかしら?ちょっと買い物をしたいから」

「分りました。じゃあ・・・留守番を兼ねて藍さんと、話しをしてます」

「お願いね・・・」

 

茂は家に上がると、スリッパを履いて奥にある部屋へと向かう、部屋の戸を開けて「こんにちは」と、声を掛けると。介護用のベッドを少し上げて、外の景色を眺めている40代位の女性がいた。

 

「あら・・・こんにちは」

 

女性は茂に気付いて挨拶をする。

 

「しばらく振りだね、藍ちゃん」

「そうね・・・」

 

藍と呼ばれた女性は静かに答える。

 

「今日は、何の用で来たの?」

 

彼女は外を見ながら言う。

 

「何か・・・ウチの職員がふしだらな行為をしたせいで、迷惑を掛けてしまって、謝りに来たんだ」

「気にしないで・・・私が、ただ・・・勝手に怒った事だから・・・」

「辛かったんでしょ?」

「別に・・・、私は嫌になったの・・・こんな人生に・・・」

 

藍は涙を堪えて言う。

彼女とは幼い頃から親しく、何時も自分を世話してくれて実の姉の様に中が良かった茂は、藍が半身不随になった経緯を親から幾度も聞かされていた。

 

~14年程前・・・

 

高校まで、普通の人生を歩んでいた藍に悲劇は突然起きた。部活で帰りが遅くなって自転車で帰宅している途中、トラックを運転していた男性に後ろからぶつけられて、彼女は打ち所が悪く、脊髄を損傷した。命に別状は無いものの、彼女は首から下が麻痺して、自分一人では動けない身体になった。

 

事故を起こした男性は、深く詫びたものの、当時は今ほど飲酒に対しての罰則は厳しく無く、反省だけで済まされ、その後も普通に生活をしている。

藍は高校を中退し、成人式も出席せず・・・中学、高校の同窓会にも一度も出席せず、ずっと部屋で外の景色を見る日々を送っていた。

 

過去・・・彼女とは親しかった友人達も、若い時期は遊びに来てくれていたが・・・家庭を持つようになり、家に来る回数も減り、今では・・・ほとんど来なくなってしまっている。

人前ではあまり口にはしないが・・・藍は自分の周りの友達や後から産まれて来た子供達が・・・自分よりも先に結婚して、新しい家庭を築いて暮らしている事が羨ましかった。

 

「どうして、私だけ・・・」

 

彼女は周りに人がいない時に、そう呟く事が多かった。

 

「ねえ・・・藍ちゃん」

 

茂が声を掛けた。

 

「何・・・?」

「もしも・・・人生をやり直す事が出来たら、どうかな・・・?」

「そうね、もう一度・・・あの頃に戻って、新しい人生を歩んで見たいわ」

「分かった・・・ちょっと、相談して見るよ?」

「え・・・?どう言う事?」

 

茂は部屋を出て、誰かに電話を掛ける。

 

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