プルル…
電話の音に気付き、本の書物に埋もれていた橘博士がスマホを取り出して電話に出る。
「どうしたのだ?」
「あの…薬を人に飲ませたのですが…」
「おお!で…結果はどうだった?」
「若返るに…若返りましたが…」
「実験は成功だったのだな、やったなー!」
博士は嬉しそうに言う。
「ただ…コレ、何歳位まで若返るのですか?」
「一応…18歳位の若さまで若返るはずだが…どうした?」
「若返った人、子供の姿になってしまいましたよ」
「なに…それは変だな?どんな人に使ってみたのだ?」
「近所に住むお婆さんですが…」
「また…意外な人物を選んだな…」
「戻すやり方とかは無いのですか?」
「若返ったら戻る事は無いのだ…その年齢の姿から、また人生を送る事になる」
「え…て、言う事は…?」
翔太はミヨを見て唖然とする。
「90歳のお婆さんを10歳くらいの子供にしてしまって、その子が…あと80年生きるって言う事は?」
「まあ単純計算で行くと約170歳じゃな、私の予測だと200歳の壁は固いかな?って事じゃな、まあ…人類史上初の超年齢の人間を生み出してしまったって事だよ君は。ハハハ…」
「笑い事じゃないですよ、こうなるなんて聞いてなかったですよ。どうするんですか、これから」
その時、電話している翔太に少女になったミヨが飛びついてきた。
「ねえ、さっきから誰と会話しているの?」
「ちょ…ちょっと、ミヨさん」
ミヨはスマホを奪って電話にでる。
「は~い」
「お…美少女に生まれ変わった高齢の方か?」
「元高齢者、今は素敵な人と優雅な一時を満喫中の清楚系美少女よ宜しくね」
「ふむ…今の貴女の姿を一目見たいのだが…画像を後で送って欲しいな」
「勿論送るわよ、ついでに恋人とツーショットの画像も送ってあげるわ、なんならイケナイ写真とかも入れてあげましょうか?1枚1000円で」
(どこが清楚系美少女だ)
翔太はツッコミを入れたかった。
「また連絡するわね」
そう言って電話を切ると、ミヨは翔太に飛びつく。
「フフ…子供に若返るなんて夢みたい」
「まあ、そうですね」
「ねえねえ…今からラブホ行きましょう」
「え…?」
翔太は耳を疑った。まさか…ついさっきまで寝たきりの老婆が若返った後に、まさかラブホなんて言うとは思ってもいなかった。
「生涯一度でも行きたかったの」
やはり…高齢者だったと言っても中身は人間。思うものは皆同じ…だと感じた。
ゲームのRPGとかで言えば、疲労だったキャラの体力が全回復して大暴れしまくる現象に何処か近い物を感じる。
「気持ちは分かりますが…ミヨさん、貴女は今は子供の姿なんです。ラブホ入るには年齢確認が必要なんです。未成年の姿では難しいですよ」
「年齢確認なら、ちゃんと証明できるのがあるわよ。高齢者カードとか…」
写真付きのカードを出すが、写真の顔と現在の顔は明らかに別人。そもそも高齢者がラブホに入るのか…?と、言う部分に疑問が行く。
そもそも…現在の姿で行って、90歳だったと受付の人に言って、信用して貰えるのかが…疑問だった。
「今は落ち着いて、今後の状況に付いて考えましょう」
「どうして?」
ミヨは不思議そうに首を傾げる。そのあどけない姿に翔太は一瞬ドキッと胸が高鳴った。
「貴女はついさっき幼い姿になったのですよ、現在の姿は貴女の息子夫婦も知らないのです。それに子供となると、義務教育とかも受ける必要がありますし…色々と生活環境も変えていかなければならないのです」
「高齢で介護を無理矢理させらていて、それが解放されたかと思えば、今度は義務教育か…なんか日本の生活基準て面倒くさいわね」
「まあ…おかげで世界でも高水準の教育環境だと世界からもうらやまれていますが…」
「せっかく子供になれたから、現在の暮らしを満喫したかったのに…」
着付けの鏡を見ながらミヨは自分の長い黒髪を手で撫でる。
「あ…枝毛」
それを見ていた翔太は、女性は幾つになっても女性なんだな…と、感じた。
「ちょっとシャワーを浴びて来るね」
そう言ってミヨは浴室へと向かう。