※この作品はR-18です。

天才橘博士の珍発明   作:Mr,J

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第6話

市営の駐車場に車を停めた京子は、近くの線路の遮断機を渡って線路沿いにある古いアパートへと向かう。

アパートの2階の奥の部屋へと進み、表札に「雨宮優」と手書きで書かれた部屋の前に行くと、立ち止まり玄関のチャイムを鳴らす。

 

室内から「どうぞ」との声が聞こえると、京子はドアを開けて中へと入って行く。

室内には窓際の奥の部屋に年配の女性が1人寝込んでいた。

彼女は京子に気付くと上半身を起こして京子を見る。

少し膨よかな体型の女性だった。

 

体を起こすとケホ…ケホ…と咳込む。

 

「いらっしゃい…」

「調子はどうですか?」

「あまり良くないね、私は…もう長く無いかもしれない…あと3年くらいかも」

「3年前にも同じこと言ってたわね」

「え…そうだっけ?」

「私って…どうしてこうなっちゃったんだろう…」

「私が仕事に入った頃は、素晴らしい上司で憧れの存在でした…」

「よしてよ、今更昔の話は…」

「現場で働く雨宮先輩は、綺麗で皆の憧れの的でしたよ」

 

「もう昔の話よ…、本当は、キャリアウーマンなんて柄じゃ無かったし…。あの頃は、ただ…ガムシャラに働いて結果だけを求めていただけ…。私は学生時代、体育系で陸上選手を目指していた…。その想いはずっと引きずっていた。高3の夏、全国大会前に足を痛めて、出場出来無くなった事は…私の中では大きな未練として残っているわ…」

 

雨宮優は、タンスの上にある写真を見る。

 

「あの時から私の人生の歯車は全て狂い始めたのよ、仕事場に着いても…上司の言葉だけ従って、愛人にもなって…相手の家庭を崩壊させてしまったし。出世の為に体を捧げたりもした…。酒やタバコに溺れた。不況でリストラに合い、病を患ってしまい…その末路が今こうして現れているの…。私は堕ちるところまで堕ちた人なのよ。もう一度学生時代に戻って全てを1からやり直せたら…て何時も思っているわ…」

「分かったわ…」

「ごめんね、くだらない話をさせてしまって…」

 

京子はホコリ塗れの写真立てを取る。写真には今とは別人の、若かく美しい優の写真が写っていた。

 

「これ…ちょっと借りるね」

「どうぞ…」

 

ケホ、ケホ…と咳をする。

 

「ちょっと弟に相談して来るわ。もしかしたら人生をやり直せるかもしれないよ…」

「え…?」

 

京子は玄関へと向かう。

 

「じゃあね」

そう言って京子はアパートを後にした。

 

 

〜倉田家…

 

薄暗い室内の中、誰かが家に戻って来て家の灯りを付ける。

急に眩しくなった室内に翔太は目を覚ます。

家には年配の女性の姿があった。

 

「あ…真由美さん今晩は」

「あら…翔太さん、こんな時間まで家に居てくれたの?」

「あ…ちょっと大事に話があったので、帰りを待って居ました」

「大事な話…?」

 

真由美が、ふと…視線を横へと向けると、見知らぬ少女の姿があった。

 

「そちらの娘さんは」

 

ミヨは目を覚まして、真由美に気付くと…

 

「あ…真由美さんお帰り」

 

と、いきなり自分の名前を当てる。

 

「あ…貴女はどなたですか?」

「え…?私はミヨです」

「はい…?」

 

ちょっとミヨの言葉に全て受け入れられない真由美は、状況が上手く呑み込め無かった。

やがて…主人の啓介が帰宅して来て、2人を前に翔太が事の詳細に着いて説明を行った。

 

「そうですか…母、ミヨが子供の姿に…」

 

翔太は、啓介に殴られる覚悟で居た。

 

「そっか…子供になってしまったら仕方ない、じゃあ…介護はもう必要無いから断ろう」

「そうね…費用も掛かるから、早めに連絡しないと…あと、学校に行く為の入学願書を作成しましょう」

「それよりも役所へ手続きだよ」

「住民票には娘って書いた方が良いかしら?」

「30歳年上の娘か…ちょっと無理があるな…」

 

夫婦の深刻な状況を想定していた翔太は、特に深刻そうな雰囲気が感じられない状況を見て話し掛ける。

 

「あの…ミヨさんの件、大丈夫ですか?」

「まあ…子供になってしまったのなら仕方ない…これからは母を娘として育てるよ」

「私達には子供が出来なかったし、ちょうど良いかもしれないわね」

 

その言葉にミヨも口を開いた。

 

「まあ…確かに啓介と真由美には子供が出来なかったな」

 

その言葉に啓介は照れながら

 

「どうしてでしょうね…」

と、答える。

 

一連の事が済むと、翔太は席を立つ

 

「じゃあ…僕はこれで失礼します」

 

帰る時、ミヨに一枚スマホで写真を撮らせて貰った。

 

「博士に後で画像を送らないとね」

「そうだったね。ツーショットはどうする?」

「次の機会にしましょう」

「分かった」

「それでは…これで」

 

そう言って翔太は、倉田一家と別れの挨拶をして帰る。

家に向かう途中、翔太は改めてミヨの写真を見て…つい見惚れてしまった。

 

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