和式便所にしゃがみ込み、私は空間と一体となる。薄板一枚隔てたその先に思いを馳せるべく、五感から得られる全ての情報に集中。
それが最近の私の日課です。
カツン、カツンというタイルと靴がたてる音が私に来訪者を報せます。
その足音は私の部屋を通り過ぎて一つ奥の扉を選びました。足音の主が扉を閉め、鍵を横にスライドさせ、衣擦れの音が聞こえたあたりで大抵私の中のスイッチが入ります。
無意識のうちに右手が陰核に伸びたのを自覚した頃に左手を胸へと向かわせます。
自分の体を優しく指でいじめて間もなく待望の時間はやってきました。
じょぼじょぼという尿が水面とぶつかる下品な音。その瞬間、私の体の奥底からこらえがたい幸福感が湧き出して全身の末端までその感覚で満たされていきます。
「んっ……!」
自分の口から漏れそうになる嬌声を、まくり上げた服を噛み締めることでやりすごし陰核と乳首が生み出す快楽に没頭します。
しかし、放尿はそう長く続くものではありません。細かい絶頂をようやく数度繰り返した頃にはもう、私の大好きな音は勢いを失い始めその後決まって聞こえるトイレットペーパーの芯がカラカラと回転する音で私は我に返ります。
そう、私はどうしようもないおしっこフェチなんです。
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今日も鎮守府の朝は早い。それは「私」こと伊8にとっても、その同僚と言える潜水艦寮の住民にとっても同じことです。
私は日課をこなすためにただでさえ早い艦娘たちの起床より早くに起床し、頭を起こしてから姉妹たちの起床を見計らってトイレに向かいます。
五つ並んだトイレの中から選ぶのは決まって真ん中です。理由はあとから誰がどこに入っても最悪でも二つ隣りまででおさまるからです。出来るだけ近い方が臨場感が上がりますからね。
朝の起きがけほどトイレ需要が高まるタイミングはありません。ご多分に漏れず今日も程なくして小走りに誰かがやってきました。入口から一番近いトイレを選んだその人はやや乱暴に扉を閉め、一瞬で服をおろしたように感じられますから、恐らく焦っているのでしょう。
そんな予想に違わずかなり勢いよく放たれたおしっこは、その勢いとは裏腹にほとんど水音をたてません。和式便所のかなり前にしゃがんで便器の奥面におしっこを当てているからだと思われます。
私は伊号潜水艦であれば和式便所の使い方だけで区別がつきますが、こんなことをするのは私の知る限りイムヤしかいません。恐らく派手な水音を嫌った結果なんじゃないかと思います。
しかしその工夫には大きな欠陥が存在します。大きな音がたたないことによって放尿本来の「シー」という音がかえって鮮明に響いてしまうことです。
一晩かけて膀胱に蓄積されたその量はとても多いようで、その放尿音も当然長く聞こえてきます。その様子に耳を傾けるだけで私はやはり軽く達してしまいました。
……私なら水音をたてる方を選ぶ、と頭の中で非難しながらも私はありがたくおかずにさせて頂いている身分なのでそれ以上好き勝手言うのはやめておくことにします。
やがてイムヤが出ていく雰囲気になると私もそろそろ出ようかとしました。しかし次の足音が聞こえたため思いなおしてもう少し居座ることにしました。
次の足音は私の向いている壁のまさに向こうに入りました。その人はイムヤとは対象的にびちゃびちゃと水音をたてながらしています。それはつまり便器に対してかなり浅くしゃがんでいるということ。
これはしおいだけの特徴です。
……と、どうやら聞き耳をたてていられるのもここまでのようです。放尿が終わってもトイレットペーパーを使う音がしなかったからです。こういう時はさっさと立ち去るに限ります、私にそういう趣味はないですから。
たれ流された愛液をできるだけ素早く拭うと、ズボンを上げると同時にトイレの水を流して扉を開きました。洗面所までくれば一安心ですから、ここでようやく落ち着いて手を洗います。
今朝はこの辺にしておいて部屋に戻りましょうか。
*****
部屋に戻ると姉妹たちはいそいそと制服に着替え始めたり、その物音でようやく目覚めた様子の子もいたり様々でした。
「おはようなのね。ハチは今日も調子が悪そうなの」
「そんなことはないんだけど……」
食堂に向かうために着替えようとしていると、イクに話し掛けられました。どちらかというと清々しい朝を迎えられたと自分では思っているのですが。
「もしかして、あれからまだ来ないの?」
「あー……えーと、そうなんだよね」
「それは辛いわよねぇ」
話に入ってきたイムヤにそう言われます。
私のトイレが長い理由もたまに漏れる声も、姉妹たちのあいだでは私が便秘がちだからということになっています。ある日、喘ぎ声が少し大きくなってしまって「トイレで苦しそうだったけど大丈夫?」と言われてしまった時の嘘だったのですが思ったより信用されてしまいました。
「私、お腹緩いからハチさんと足して2で割りたいなぁ」
いつの間にか帰ってきていたしおいにそう言われます。でもごめんなさい、本当はどちらかというと私も緩い方なんです。だから多分、足して2で割っても大して変わらない。
「じゃあ、朝ご飯は食物繊維たくさん摂るのね!」
「……うん、そうするわ」
そんなの絶対腹痛の原因になりますけど、身から出た錆なので甘んじて受け入ることにします。困ったことに女所帯の鎮守府ではそういう要望も多いのか、やたらと便秘対策メニューも充実しているのです。
着替え終えた私は、とりあえず部屋をあとにすることにしました。