クロスアンジュ-青年から少女に転生した者-(完) 作:森島響
(アルゼナルの基地入口前にて。心の中で謎の声と会話中のミナ)
??『私が誰かだって? おっとすまない。 名乗りもしないで急に話しかけてきたのは失礼だったね。 しかし、まだその時じゃないのだよ』
ミナ『どういうこと? 名前ぐらい名乗るのは当然じゃないの? それと、何で私の名前を知ってるの?』
??『知ってるも何も…私は“神様”だからね。 神様なんだから全て知っているのは当然だろう?』
ミナ『か…神様? まさか、この世界を作ったのは自分だとでも言うの!?』
??『その通りだよ。 しかし、この世界だけじゃない。 君が前世で住んでいた世界も私が関わっている』
??『もちろん、君の本当の名前も、君の前世の記憶などもなんでも知っている』
ミナ『!? な…!?』
??『聞きたいかい? だが、それを知ってしまったとき…』
??『場合によっては君はアンジュといるのが更に居心地悪くなっていく』
ミナ『え…? それって一体どういう…!?』
??『それでも知りたいというのなら、今から全て時間の許す限り話してあげよう』
ミナ『………』
(ミナが謎の声と心の中で対話していた頃)
モモカ「あの…アンジュリーゼ様」
アンジュ「何? モモカ」
モモカ「その…隣の部屋の…ミナさんでしたよね?」
モモカ「私をここに居させることに頭を下げてくれたお礼をしたいのですが…」
モモカ「そのミナさん、まだ部屋に戻っていなくて」
アンジュ「私があの子の行方知るわけないでしょう? 気になるなら、捜しに行ってくれば? 私は一人でも平気だから」
モモカ「ダメです! そもそも、真っ先に私を助けてくれたのはアンジュリーゼ様で…」
モモカ「それに続いて、ミナさんも勇気を出して頭を下げてくれたのですよ!?」
モモカ「そんな彼女をアンジュリーゼ様は放っておくのですか!? 現にこれまでにも、アンジュリーゼ様ご自身も彼女に色々助けてもらったとも聞いておりますし」
アンジュ「……もう、分かったわよ! 一緒に捜してあげるわよ! それでいいんでしょ!」
モモカ「それでこそ、私の尊敬するアンジュリーゼ様です!」
(アンジュとモモカがミナを捜しに出かけようとしていた頃)
ミナ『いいわよ。 私もこれ以上、ここのみんなに迷惑かけられないし』
ミナ『それに…早く元の記憶を取り戻したいとも思っていたしね』
??『ほう…そうか。 では…』
(話し始めるのに、少し間を置く声の主)
??『西暦2016年2月。 ミナ、君は28歳の誕生日を迎えた。 いや…ミナというのは今の仮の名前だったね』
??『君の本当の名前は…夏木未央(なつきみお)』
??『君の住んでいた街は…5年前、予想だにもしていなかった大震災の被害に遭い、原発が爆発して汚染された』
ミナ『え…? 大震災…? 原発…? 汚染…?』
ついに謎の人物によって明かされた私の本名。夏木未央…それが私の前世の名前…。何だか元から女の子だったのかな、と錯覚したくなる名前だった。
それより…。急に、今、私がいるこの世界とは全く別世界の不吉な単語が次々と出てきて、頭が混乱していた。
??『どうやら、頭が混乱しているようだね。無理もない』
??『だが、これは紛れもない事実なのだよ。 先を知るのが怖いなら、この辺で話を止めるが君はどうしたい?』
ミナ『……大丈夫。 いいから話を続けて』
??『いい根性だ。 1988年2月、前世の君は男としてこの世に生まれ…』
??『父親以外、男性がいないという全員女性の家系に加わる』
??『そう、君には姉と妹がいた。 他には君を生んだ母親、その母親と結婚した父親の方の祖母の6人家族の中で君は育った』
??『君の父親は、姉にばかり溺愛し、母親にも過保護にされていた君は、祖母に面倒を見てもらう子だった。 いわゆるおばあちゃんっ子と言うのだったかな?』
??『2005年夏。 君は高校3年。 将来の進路について父親に追い詰められていた』
??『同じく、その年の5月。 君の面倒を見ていた祖母が脳梗塞を患い、それから寝たきり状態の植物状態になる』
??『君は、これまで誰かに助けてもらわないと何も出来ないダメな男だった。 その状況に焦りを感じて…』
??『君は父親に大反対されていたにも関わらず、その反対を押し切って誤った進路に進んでしまう』
??『その誤った道に進んだ結果。 2008年春。 君は進級先の学校を無事に卒業したが…』
??『その後路頭に迷い、病に倒れていた祖母の看病もしないといけなかった影響で仕事に就けずにいた』
??『それに付け加え、ダメな兄を持って軽蔑していた身内からの無言の圧力、時には言葉の暴力を浴びせられることも多々あった』
??『そんな中。 ついに2011年秋。 君の祖母が安楽死を選択した君の父親の手によって亡くなる』
??『唯一心の拠り所が無くなった君は、その寂しさと精神的ストレスを解消するために、身内から隠れて女装に目覚める』
ミナ『……もういい! もう止めて!!!』
次から次へと私の前世の出来事を語り始めていく上に、私自身の前世の恥ずかしい隠れた性癖まで知っていたため、精神が崩壊しそうだった私は話を止めるよう訴えた。しかし、それでも声の主は話を止めようとしなかった。
??『女性になりたいと心の片隅で思っていた君は、姉や妹の破廉恥な下着をバレないようにこっそり拝借し…』
??『誰かに見られたいと思いながら、毎晩自慰行為に及んでいた』
??『その証拠に…今、こうやって女性に生まれ変わって、今は亡きゾーラやサリアと交わった性行為はより快感だっただろう?』
ミナ『止めてって言ってるでしょ!?』
??『そして…君の本名についてだが…』
??『君はある女性の生まれ変わりなのだよ。 夏木未央をカタカナにすると…“ナツキミオ”になる』
??『さて、何か違和感に気付かないかい?』
ミナ『……え?』
ミナ『…ナオミ…?』
そう。ナオミというのは、前にサリアにこっそり聞いたのだが、ゾーラ隊長達より少し前に戦死したアルゼナルの新人メイルライダーだった。
その彼女のライダースーツが更衣室に血まみれでロッカーの中にあったのを思い出した。そのナオミという名前が、偶然なのか私の本名に混ざっていたのだ。
??『私は別次元の世界…彼女が生存していた世界で彼女と対決して敗れた。
??『そこにはアンジュも一緒にいた。 私の手から世界を救った彼女はアンジュと一緒に、世界を回る旅に出た』
??『しかし、その道中、不慮の事故で命を落とした…はずだった』
??『しかし、何の因果か、彼女の魂だけは様々な世界を彷徨い続け…』
??『その先で君の身体に転生したんだよ』
ミナ『…え? ナオミさんが…私の身体に…?』
??『その証拠に、これまでドラゴンと戦ったりした時、アンジュの思考が君の脳内にも流れ込んできただろう?』
??『それはナオミの魂が君に共鳴していたからだ』
ミナ『な…? そんな…』
ミナ『それじゃ私は…ナオミさんの代わり…? だからここに飛ばされた…? 気付きもしないうちに…?』
その衝撃の事実に、更に頭を悩ませた私。そのときだった。聞き覚えのある声が私を呼んでいる声が聞こえた。
モモカ「…さん! ミナさん!」
アンジュ「ミナ! 返事をしなさい! ミナ!」
??『…どうやら、アンジュ達が君を捜しにやって来て君のことを見つけたようだ』
??『どうやら私はここまでのようだから、これにて一旦失礼するよ。 また近いうちに直に会うことになるだろうが』
ミナ『待って!!』
アンジュ「・・・ミナ!」
ミナ「…アンジュ…モモカさんまで…。 二人とも…どうしてここに…?」
アンジュ「モモカが貴女に助けてもらったお礼したくて捜しに来たのよ。 そしたら、貴女がここで倒れていたのを見つけて…」
ミナ「…アンジュ…モモカさん…私…私…」
アンジュ「!? み、ミナ!? ど、どうしたの!?」
モモカ「アンジュリーゼ様! とりあえず、医務室に運んでマギー先生のところに連れていきませんか? ミナさんに何があったのか分かるかも…」
アンジュ「…そうね。何だか精神が落ち着いていないようだし」
私は再び意識を失い、アンジュとモモカさんに運ばれながら医務室に向かっていた…。そんな中、私は未だに謎の声が言っていた事実を受け止められずにいた…。
To be continue・・・。