クロスアンジュ-青年から少女に転生した者-(完) 作:森島響
私が、アンジュと愛の告白を交わしてから数日が経っていた。そんな中、久々にドラゴン討伐任務に就いていた私。
サリア「アンジュ、またも命令を無視。 独断専行」
ロザリー「いい加減にしろ、銭ゲバ! てめーが報酬独り占めしてるせいで、こっちはおまんまの食い上げだ」
またしても命令無視をしたアンジュに対して、サリアとロザリーが苦情を言っていた。私はそんなアンジュを庇おうと、とっさにフォローに入った。
ミナ「まあまあ。 確かに命令無視したのは良くないけど…銭ゲバは言い過ぎじゃないかな、ロザリー」
ロザリー「何だよミナ!? てめー、そいつの味方してんのか!?」
クリス「うまくフォローに回ってるけど、アンタだって報酬独り占めされてる側なんだよ? そんなんで本当にいいの?」
サリア「貴女、例の侍女さんが来てからそうだけど、すっかりアンジュと仲良くなってるわよね? 一体何があったのかしら?」
ミナ「い、いや、そんな深い仲じゃないんだけど…」
この流れでロザリーとクリスに反論されるのは当然だが、サリアにまでアンジュを庇ったことを咎められた。
それよりも、最近あまり絡めていなかったせいか、サリアの目付きがいつにも増して怖かった。もしかしたら、例のアンジュとの浮気がバレているんじゃないかと思い、私は目を逸らしてしまった。
アンジュ「ミナ、無理にフォローに回ってもらわなくてもいいのよ。 ん、迷惑料」
(ミナはアンジュにそう気遣いされ、同時に一応悪気はあったのか、ロザリー達に迷惑料を渡すアンジュ)
エルシャ「喧嘩はダメよ~。 それと、ミナちゃんもアンジュちゃんを庇うなんて優しいわね」
ミナ「そ、そんなことないよエルシャ」
(先程アンジュを庇ったことをエルシャに褒められ、ちょっと照れるミナ)
サリア「これ以上隊の連携を乱すなら」
アンジュ「罰金でも処刑でもお好きに。 それで貴女達の気が晴れるなら」
ミナ「ちょっとアンジュ…」
アンジュ「部屋に戻るわよ、ミナ」
ミナ「あ! ちょっと待ってよ!」
サリアに隊の連携を乱す行動を取るなと注意されながらも、気にもしていないのか、開き直って部屋に戻るアンジュ。私も一緒に部屋に戻っていった。
―――――その日の夜―――――
サリア「本日の死亡者、ゼロ」
(ヴィヴィアンが寝ている中、蛍光灯を点けながら自室のPCで日誌を書いているサリア)
(数分後、司令室。何か話し合いをしているジル含む、サリアにメイ、ジャスミンにマギー。そしてジャスミンのペットのバルカン)
ジャスミン「タスク…生きてたんだね、あのハナタレ坊主」
マギー「アンジュを助けたのがアイツだったとはね」
サリア「アンジュは男と2人っきりだったってこと!?」
メイ「2人っきりじゃなくて、ミナも一緒にいたんじゃないの? アンジュを助けに独断で島に向かったって聞いてるけど」
サリア「そ、そうだったわね…」
メイ「あれ? どうして顔赤いの?」
サリア「うるさい!」
(アンジュだけじゃなくミナもタスクという男と一緒だったことを思い出し、エッチなことを妄想したのか、顔を赤くしていたことをメイに指摘され、メイを怒鳴るサリア)
ジル「お前達、静かにしろ」
ジル「…っで、アンジュをヴィルキスから降ろせと?」
サリア「あの子の行動はいつか危機に陥れる。 それに…彼女と一緒に行動を取ってるミナにとっても良くない」
ジル「そうなる前になんとかするのは隊長の役目だ。 お前ならやれる」
(ジルにそう言われながらも、不満そうな顔をしているサリア)
―――――翌日。食堂にて―――――
(エマ監察官にアンジュにだけ美味しそうな料理を出すのは止めろと注意されているモモカ。しかし、アンジュは気にしていないらしく、それに対して諦めたのか溜息をつくエマ)
ヒルダ「ナメられてんのよアンタ。 隊長代わってあげようか?」
流石に冗談だろうが、アンジュにナメられきっていることを指摘され、隊長を代わろうかサリアに申し出てきたヒルダ。
そのことに機嫌を悪くしたのか、険しい顔しながらヒルダを見ているサリア。一緒にノーマ飯を食べていた私はすかさずサリアのフォローに回った。
ミナ「サリア。 ヒルダの冗談なんか気にしない方がいいよ」
サリア「…ご馳走様」
(ミナの優しいフォローなど聞こえていなかったのか、そう言って食堂から立ち去ってしまったサリア)
―――――ジャスミンモールにて―――――
サリア「いつもの」
ジャスミン「…一番奥」
(煙管(きせる)を吹かしながら、サリアに何かを注文され、一番奥の試着室に誘導させたジャスミン)
アンジュ「流石に毎日メイド服だけというのは良くないわ」
ミナ「私達がモモカさんのために可愛い服選んであげるね」
モモカ「べ、別に気にしていませんのに…」
私はアンジュと一緒に、ずっとメイド服しか着ていなかったモモカさんのために服を買いにジャスミンモールにやって来た。そこに、前に私だけが知っている“例のアレ”をするためにサリアが来ているとも知らずに。
アンジュ「ジャスミン、試着室借りるね」
ジャスミン「一番奥を使いな」
ミナ「これキャッシュ」
ジャスミン「まいど…って…あ」
(サリアのことを思い出し、気まずそうな表情を浮かべるジャスミン)
サリア「美少女聖騎士プリティ☆サリア~ン!」
(シャッ!)(アンジュがサリアのいる試着室のカーテンを開けた音)
サリア「…」
アンジュ・ミナ・モモカ「「「…」」」
(シャッ!)(何かを察して、何事もなかったかのようにアンジュがカーテンをそっと閉めた音)
アンジュ「使用中だったわ」
ミナ「そのようだったね…あ、アハハ…」
サリアの趣味のことを一足先に唯一知らされていた私は、より一層気まずい笑いをしてしまった。それ以上に、コスプレをアンジュとモモカさんに見られたサリアは、もっと気まずい気分になっているだろう。
サリア「見られた…ミナはまだいいとして…こんなの皆に知られたら…」
サリア「…こうなったら…」
(ミナの言うとおり、試着室内で余計気まずい気分になっていたサリア。それと同時に、何かを決意していた)
―――――その日の夜、風呂場にて―――――
サリア「殺す!」
ミナ「!? ちょ、ちょっとサリア!」
アンジュとモモカさんと一緒に風呂に入っていた私の制止も聞かず、アンジュにサバイバルナイフで斬りかかるサリア。
そのサリアの攻撃を洗面器でガードしたアンジュ。アンジュの背中にはモモカさんが怖さで隠れていた。
アンジュ「貴女がどんな趣味を持っていようと私には関係ない」
アンジュ「それと…ミナやモモカにまで危害加えようとしないで!」
サリア「貴女にナイフを向けはしたけど、ミナ達にはそんなことはしてないでしょ!?」
ミナ「ふ、二人とも止めなよ!」
アンジュ「ミナはモモカと一緒に下がってなさい」
アンジュ「サリア…貴女も私に落ちてほしいんでしょ?」
私の必死の制止など無意味だったのか、モモカさんと一緒にアンジュに下がれと言われた私。それと同時にアンジュは、サリアを素っ裸にさせて湯船に向けて放り投げた。
アンジュ「殺されたくないから、一人で戦う」
その一言に今まで溜まっていた堪忍袋の緒が切れたのか、アンジュに掴みかかるサリア。アンジュもそれに応戦する。
その喧嘩の中、サリアはアンジュに小ぶりな胸を揉みしだかれて、頬を赤くしながらとっさにアンジュから離れた。私とモモカさんはそんな2人のことをすっかり見ていることしか出来ずにいた。
ヴィヴィアン「おろ? これは一体何の騒ぎ?」
ミナ「ヴィヴィアンにエルシャ。 これは…」
モモカ「お願いします! お二人を止めてください!」
モモカ「訳は言えませんが、突然喧嘩に発展してしまって…」
エルシャ「あらあら。 仲良いわねー二人とも」
ヴィヴィアン「協力しちゃうよ! これあげる!」
ミナ「え!? ちょ、ちょっとヴィヴィアン達まで…」
遅れて風呂場にやって来たヴィヴィアンとエルシャに事情を説明した私とモモカさん。
しかし、この状況を楽しんでいるのか、モップをアンジュとサリアに手渡したヴィヴィアン。その影響で喧嘩は更に悪化してしまい、私とモモカさんはもう止めようがなかった。
ジル「明日までに反省文50枚!」
(数時間後、司令室にて。喧嘩騒ぎを聞きつけたジルに、罰として反省文50枚を提出するよう言い渡された傷だらけのアンジュとサリア)
―――――翌朝―――――
モモカ「アンジュリーゼ様。 朝食の用意ができました。 ここに置いておきますね」
アンジュ「ん…」
(寝起きなので、モモカのその一言に空返事で応答するアンジュ)
モモカ「反省文なら私が全て書き終えましたので」
(部屋の窓際にはモモカが書き終えた反省文が置いてある)
モモカ「アンジュリーゼ様、聞いてます?」
モモカ「…って、アンジュリーゼ様!?」
アンジュ「はぁ…はぁ…」
(異変に気付き、アンジュの顔を覗くモモカ。顔を真っ赤にして苦しそうにしていたアンジュ)
対策会議室に集まっていた第一中隊メンバー。もちろん私も一緒にいた。
ヴィヴィアン「風邪!?」
サリア「なんでも、昨夜の私と風呂場で喧嘩した影響で湯冷めして、それで…だそうよ」
ミナ「…やっぱり私があのとき止めておくんだったかな…」
アンジュが風邪を引いたことを知って、やはりあのとき喧嘩を止めてあげるべきだったと後悔した私。
ロザリー「休んだら罰金いくらだっけ」
ヒルダ「一日100万」
クリス「破産しちゃえ」
サリア「ちょっと…貴女達…」
(アンジュが風邪を引いたことで嬉しそうに嘲笑っていたヒルダ達を注意しようとしたサリア)
(アンジュが風邪を引いて数日が経ち…)
サリア「アンジュがいないことで、規律が戻ってきた気がする」
(そうサリアが言っていた裏で、ゾーラが使用していた寝室でロザリー、クリスと一緒にレズ行為していたヒルダ。そんなサリアは、整備室にてパラメイル整備中のメイと会話している)
メイ「ねぇ知ってる? アンジュのヴィルキスはボロボロで、いつも整備が大変なんだ!」
メイ「仕方ないよね、稼ぎも危険も独り占めしてるもんね」
サリア「…何が言いたいの?」
メイ「だからね…整備してると分かるんだ。 もう誰も死なせないって」
メイ「アンジュが入ってから誰も死んでないよね、うちの隊って」
(別時刻。自室で眼鏡を掛けながらPCを開いて例の日誌を書いていたサリア)
サリア「アンジュが入ってから、死亡者ゼロ…」
サリア「…考えすぎよ…」
(更に数日経ち…)
サリア「アンジュは休み、6機で編隊を組むわ」
ミナ「サリア、私は…?」
サリア「ミナは何か不測の事態が起きたときに備えて、離れた場所で待機」
サリア「私達に何かあったら、敵を攻撃して」
全員「イエス・マム!」
新種のガレオン級のドラゴンがシンギュラーから出現したと報告が入り、アンジュを除いた私達第一中隊メンバーは出撃した。
―――――一方、その頃―――――
モモカ「行ってはダメです!」
アンジュ「どきなさい…アンタを養うのにお金がかかるの!」
(そうやり取りをしていたら、高熱の影響でモモカに倒れかかる下着姿のアンジュ)
サリア「目標を確認!」
(シンギュラーから2本の角を生やしたドラゴンが現れる。そのままドラゴンは陸地に降り立った)
ヴィヴィアン「デカ!!」
エルシャ「あんなの見たことないわ」
ヒルダ「初物か」
ミナ「みんな! 油断したらダメだよ!」
サリアの指示通り、唯一人、離れた場所で待機していた私はみんなに注意を促した。
ヒルダ「札束風呂で祝杯といきましょうか」
(司令室で不安そうに見ていたジルとエマ)
(一斉に攻撃を仕掛けるが、あまりのドラゴンの硬さに焦りを感じ始めるサリア)
サリア「増援を要請する!」
ヒルダ「増援なんか呼んだら取り分減るだろうが!」
ヒルダ「ゾーラなら初物相手でもビビったりしなかったのにね」
ヴィヴィアン「髪の毛がピリピリする…」
ミナ「…みんな…」
私がそう心配しながら見ていると、ヒルダが突破口を見つけたようだ。
ヒルダ「なるほど、ぷよぷよじゃないか。 狙いは腹だ!」
ヒルダが腹を攻撃しようと態勢を整えた頃、角を攻撃していた他のメンバー。そのときだった。ドラゴンの角が光り出して、攻撃を仕掛けてきたのだ。
サリア「重力!?」
サリア「…くっ!」
そうだ。これは高重力攻撃だった。
サリアがそれに気付くが時既に遅し。ドラゴンの高重力攻撃の範囲が広すぎて、不測の事態に備えて離れていた場所で攻撃の準備に入ろうとした私含め、全員重力に押し潰されて地面に機体ごと叩き付けられてしまった。
ミナ「ああああっ!!!」
(激痛で悲鳴を上げるミナ)
ヴィヴィアン「皆を離せ!」
(ヴィヴィアンが重力に逆らって攻撃を仕掛ける。しかし、そんな中、クリス機が重力攻撃の影響で限界を迎えようとしていた)
ヒルダ「動け…いくら金かけたと思ってんだ」
サリア「部隊の全滅だけは避けなければ」
ヴィヴィアン「皆を…離せぇぇぇ!」
ミナ「ヴィヴィアン! 早まったらダメ!」
そのときだった。見覚えのある機体がこちらに向かって飛んで来るのを確認できた。それはヴィルキスだった。
サリア「…アンジュ!?」
アンジュ「うー…とっとと終わらせよう…」
(数時間前…回想)
モモカ『どうしてもというなら、この格好で行ってください』
(モモカの提案で下着姿の上に冷えピタ、マスク、マフラー、半纏という厚着をさせられているアンジュ)
サリア「来るな! アンジュ!」
アンジュ「大丈夫よ、いつも通り私一人で」
私が何か言葉を発しようとしたそのときだった。
サリア「死にたくなければ隊長の命令を聞きなさい!!!」
ミナ「サリア…」
サリアにそう言われた途端、急に動きを止めたアンジュ。どうやら言うことを聞く気になったらしい。私もこんな状況だったのに、少しホッとしていた。
サリア「そのまま右へ!!」
そのとき、またドラゴンが高重力攻撃をしてきて、私達は再び地面に押し潰された。
アンジュ「なんか落ちてない…!?」
サリア「気のせいよ」
サリア「……! 今よ! 蹴れ!」
サリアの的確な指示通り、アンジュのヴィルキスがドラゴンの角を破壊し、ドラゴンは倒れた。それと同時に私達は重力から解放された。助かったのだ。
(アルゼナルに帰還。大量の報酬を受け取っているミナ達第一メンバー)
ミナ「アンジュだけ報酬少ないね…」
(助けてもらったのに一人だけ報酬が少ないアンジュを気遣うミナ)
アンジュ「迷惑料。 アンタの命令に従ったおかげで取り分減ったんだから」
サリア「べ、別にいいわよ」
アンジュ「変な趣味、バラすわよ」
ミナ「あ、アンジュ!」
サリア「…! わ、分かったわよ! 渡せばいいんでしょ、渡せば!」
例のコスプレの趣味をみんなにバラすと脅され、私はアンジュに注意するが、それに焦ったサリアはあっさりアンジュに迷惑料を払った。
サリア「どう? 満足? こうして大金を手にすることが出来たのもアンジュが助けに来てくれたおかげよね」
サリア「…だから…もうアンジュを狙うのは止めなさい」
サリア「私達はこのチームでうまくやっていかなくちゃいけない。 アンジュもそれでいいわね?」
ヒルダ、ロザリー、クリスに今回の件をきっかけにもうアンジュをイジメるのは止めるよう言うサリア。アンジュもそれに了承した。
クリス「いいよ…アンジュが来てくれなかったら死んでた」
ロザリー「…私もいいかな」
ヒルダ「…! 裏切り者!!」
ロザリーとクリスが和解したのと対照的に、そんな二人に罵声を浴びせてその場を立ち去ってしまったヒルダ。
エルシャは嬉しさのあまり、アンジュに抱きついていた。私も、その光景を微笑ましく見ていた。
(数分後、風呂場にいたヒルダを除く第一メンバー。アンジュを湯船に放り投げる)
アンジュ「何すんのよ!?」
エルシャ「今までのことお湯に流すの」
その途端、私達は一斉に湯船に飛び込んでアンジュと裸で楽しく遊び呆けた。今までのことがまるで嘘のように。きっと、この先私は二度とこの思い出を忘れることはないだろう。
(その頃、自室で窓際にて何か物思いに耽っていたヒルダ)
(一方。風呂から上がり、自室に戻っていたアンジュとモモカ)
モモカ「マナの通信です」
シルヴィア『助けて…アンジュリーゼお姉様!!』
アンジュ「シルヴィア…」
To be continue…。