※この作品はR-18です。

クロスアンジュ-青年から少女に転生した者-(完)   作:森島響

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第15話『裏切りの故郷』

 大変なことが起きた。アンジュがアルゼナルを脱走した。アンジュだけじゃない。ヒルダもだ。モモカさんもアンジュについて行ってしまったらしい。

 

 なぜアンジュがそのようなことをしたのかは分からない。でも、何か理由がなかったらそんなことしていなかったはずだ。

 

 私はジル司令の命令で、そんなアンジュを連れ戻すようにレプリカヴィルキスに大量の燃料を詰め込み、アンジュの生まれ故郷、ミスルギ皇国にやって来ていた。

 

ミナ「アンジュ…待っててね。 必ず連れ戻すから…」

 

(ミナがミスルギ皇国に着いた数時間前の夕方)

 

アンジュ「まだ休んでなさい、動くのは夜になってから」

 

(隣にいるモモカにまだ休むように告げるアンジュ)

 

アンジュ「会えたかな…ヒルダ…お母さんに」

 

(一方その頃…)

 

(故郷、エンデラントに戻っていたヒルダ)

 

ヒルダ「ママ…」

 

(木に生えていたリンゴを手に取り、自身の母親のことを呟く)

 

(場面は再びミスルギ皇国に戻る。アンジュを捜すために国を歩き回っていたミナ)

 

ミナ「…ん? 何の音だろう? パトカーのサイレン?」

 

 私がいた場所から、数キロ離れた道を大勢のパトカーが走り去っていくのを目撃した私。どうやら、何か事件があったらしい。私は近くにいた一般人に事情を聞いた。

 

ミナ「あの、すみません」

 

ミナ「私、今日この国に観光でやって来た者なんですけど…今のパトカーの群れ、何か事件でもあったんですか?」

 

「ああ、そうなんだ。 実は、アルゼナルに飛ばされたはずの元皇女様がこの国に戻ってきているらしいわよ」

 

ミナ(アンジュのことだ…)

 

「その元皇女…アンジュリーゼの昔の知り合いがアンジュリーゼと出会って通報したらしいのよ」

 

「だって、アンジュリーゼは生まれて16年間、自身がノーマだということを私達に隠して生きてきたんですもの。 通報されるのは当然というものだけど」

 

ミナ「え…? アンジュが…?」

 

「何? 貴女、あの女と知り合いだった子? それはショックだったでしょうね」

 

「別の場所から観光にやって来た途端、元皇女がノーマでこの国を追い出されていたことを知っちゃったんですもの」

 

ミナ「え? ま、まぁ、知り合いというか何というか…彼女とは色々ありまして…」

 

「…? あ! ちょっと貴女! 待ちなさい!」

 

 私は、アンジュと同じアルゼナルの仲間だとバレないように、その場を無言で離れた。なぜかというと、女性が怪しんできたからだ。流石に知り合いでは誤魔化せないというのもあったが。

 

ミナ「アンジュ…無事でいて…」

 

(その数時間前…)

 

(ある人間に会うため、モモカと一緒に某所にやって来ていたアンジュ)

 

アンジュ「ここだわ…モモカ、お願い」

 

(アンジュに言われ、マナを使用するモモカ。ある人間がいる部屋の鍵を解錠する)

 

??「誰?」

 

アンジュ「久しぶりね、アキホ」

 

アキホ「アンジュリーゼ…様」

 

(彼女はアンジュが皇女時代、所属していたアメリア部の後輩女子部員だ。そのアンジュと再会し、驚きを隠せないアキホ)

 

アンジュ「機体の整備? 相変わらず熱心ね」

 

アキホ「は…はい…髪…切られたんですね…ひっ!」

 

(アンジュが近づいた途端、手に持っていたランプが割れ悲鳴を上げ、怯えてしゃがみ込むアキホ)

 

アキホ「…許して…」

 

(アンジュの後ろで、この光景を不安そうに見つめているモモカ)

 

アンジュ「ノーマになっても、私は私。 何も変わってないわ。 危害を加えるつもりはないわ。 だから顔を上げて」

 

(そう言われ、顔を上げるアキホ)

 

アンジュ「私が何かするとでも思ったの? 友達である貴女に」

 

アキホ「友…達…ですよね…あはは…」

 

アンジュ「私のことは誰にも知らせないで」

 

アキホ「はい…絶対言いません」

 

(そう言っていたが、後ろで何か機械を弄っていたアキホ。どうやらアンジュがここに来ていることを通報したらしい)

 

アンジュ「…やっぱり、貴女もそうなのね」

 

アキホ「来ないで!! 化け物!!」

 

(彼女が本性を現した途端、好き勝手できないように彼女の足元を蹴り払ってバランスを崩し、彼女を縛り付けるアンジュ)

 

アンジュ「モモカ、行くわよ、皇宮へ」

 

モモカ「はい!」

 

(アキホが整備していたアメリア用の機体を奪って皇宮に向かうアンジュら)

 

アンジュ「ありがとう、モモカ。 貴女は、貴女で」

 

(アンジュが運転する後ろで嬉しそうな表情を浮かべているモモカ)

 

(その数時間前…再びヒルダサイド)

 

(実家に着いていたヒルダ)

 

インゲ「あら、どなたかしら?」

 

ヒルダ「ママ…私…」

 

(母親に再会できて涙を浮かべているヒルダ)

 

インゲ「娘のお友達?」

 

インゲ「…ゆっくりしてって下さいね、あの子、もうすぐ帰ってくるから」

 

(微妙な反応をされながらもそう言われ、嬉しそうな表情をしたあと、外に出て嬉し涙を流すヒルダ)

 

ヒルダ「帰ってきたんだ…私」

 

(再びアンジュサイド。皇宮が間近に迫っていたところまで来ていたアンジュら)

 

(カカッ!)(アンジュの傍で大量にライトが光り出した音。そこには大量の機体に乗った警官が待ち受けていた)

 

モモカ「どうしましょう…」

 

アンジュ「強行突破よ!」

 

(持っていたライフルを警官に発砲しながら強行突破するアンジュら。その弾丸をマナの光で防御する警官達)

 

アキホ「絶対…捕まえてください…」

 

(パトカーの一機の後部座席に乗っていたアキホ)

 

(アンジュが警官達の罠を強行突破していた頃…)

 

ミナ「はぁはぁ…ここまで来ればもう大丈夫…のはず」

 

 私は、先程事情を説明してもらった一般女性に怪しまれて逃げてきた。

 逃げ着いた先は人気(ひとけ)が少ない森の中だった。そのとき、誰かが声をかけてきた。聞き覚えのある声だった。

 

タスク「…そこにいるのは…もしかしてミナかい?」

 

ミナ「!? た、タスク? ど、どうしてここに…?」

 

タスク「それはこっちの台詞だよ。 君こそどうしてここに…?」

 

 その声の主はタスクだった。以前、私とアンジュを助けてくれたあの無人島にいた青年だった。私はタスクに事情を説明した。

 

タスク「そうか。 君もアンジュを…」

 

タスク「僕も同じさ。 ジルに頼まれて、アンジュを救出しに来た」

 

ミナ「ジル司令に? タスク、貴方、本当に一体何者?」

 

タスク「前にも言ったろ。 俺はただのタスクだって。 それはひとまず…やっぱりこうなったか」

 

タスク「…っま、彼女らしいか」

 

 私は、アンジュを救出するため、タスクと行動を共にすることにした…。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

(タスクと再会し、一緒にアンジュを捜索中のミナ)

 

ミナ「ねぇタスク。 あれ、パトカーの群れみたいだけど」

 

タスク「本当だ。 何か揉めているみたいだ」

 

 私とタスクは、警官にバレないよう、近くの茂みまで来てみた。

 

「おい、いたか?」

 

「ダメだ、見失った」

 

「そうか…。 クソッ、あの皇女、 まさか爆薬まで隠し持ってたなんて」

 

「撒かれてしまったけど、捕まるのも時間の問題さ。 なぜなら、あの皇女が向かった先では今頃…」

 

「おい! そろそろ別のところに移動するぞ!」

 

(一般警官達が何か言いかけたところで、別の場所に移動するパトカー)

 

タスク「皇女…? アンジュのことだ」

 

ミナ「爆薬とか、何だか物騒な単語が聞こえてきたけど…」

 

タスク「彼女のことだし、恐らく、ついさっきここを通り過ぎるときに一戦やり合ったんだと思う。それより…」

 

タスク「あの警官の一人が何か言いかけたところで移動しちゃってよく聞き取れなかったけど…アンジュが向かったこの先は例の皇宮だ。 何か罠が仕掛けられているのかも」

 

ミナ「だったら早く向かった方がいいんじゃないの?」

 

タスク「そうだね」

 

タスク「…じゃ、ここから先は二手に分かれて行動しよう。 君は皇宮の反対側を。 僕は向こう側に行く」

 

ミナ「分かった! 気をつけてね」

 

タスク「君こそ」

 

 私とタスクは、それぞれ別ルートで皇宮に向かった。

 

(再びアンジュサイド。数時間前)

 

(警官達とドンパチ騒ぎを繰り広げ、皇宮に向かっていたアンジュとモモカ)

 

アンジュ「ここを抜ければ、皇宮の正面に出られるわ」

 

(そうモモカに話しかけるアンジュ)

 

(その頃、皇宮の一室でアンジュ達が来たのをモニターで監視していたアンジュの兄、ジュリオ。傍には近衛長官のリィザもいた)

 

(皇宮に到着)

 

モモカ「アンジュリーゼ様!」

 

アンジュ「あれは…」

 

シルヴィア「お姉様!! アンジュリーゼお姉様」

 

アンジュ「シルヴィア!!」

 

(妹のシルヴィアと再会したアンジュ。しかし、人質に取られていて警備兵に首を切られそうになっていたシルヴィア)

 

(アンジュらが皇宮でシルヴィアと再会していた数時間前…再びヒルダサイド)

 

ヒルダ『やっぱ気づかないよね…こんな大きくなっちゃったんだもん』

 

(実の母親と再会でき、心の中でそう思っていたヒルダ)

 

インゲ「アップルパイが焼けたわ」

 

(外のダイニングテーブルで座っていたヒルダに、キッチンで焼いたアップルパイを持ってきたヒルダの母親。それを見て嬉しそうな表情を浮かべるヒルダ)

 

??「ただいまママ!」

 

インゲ「ヒルダ! 学校早かったのね」

 

ヒルダ『!?』

 

(嬉しそうな表情から一転。急に学校から帰って来た妹らしき女の子を自分と同じ“ヒルダ”と名前で呼んだ母親に驚愕の表情を浮かべるヒルダ)

 

インゲ「そうだわ。 ヒルダ、お友達が…」

 

ヒルダ(妹)「…ママ。 この人誰?」

 

(学校から帰って来た妹に、昔ノーマだからと捨てた実の娘だと気付いておらずに紹介するヒルダの母親。しかし、当然知っているはずもなくこの人は誰だと母親に聞くヒルダの妹)

 

ヒルダ「どうして…なんでこの人がヒルダなの…?」

 

インゲ「…?」

 

(そう言われても、やはり昔捨てた実の娘だと気付いていないヒルダの母親)

 

ヒルダ「ヒルダは私! ヒルデガルト・シュリーフォークト!」

 

ヒルダ「11年前に離ればなれになったママの娘よ」

 

インゲ「…!」

 

(そう告白し、ついに思い出す表情を浮かべる母親)

 

インゲ「…生きていたの…?」

 

(数秒間が空き…)

 

インゲ「なんで来たの? 帰って」

 

ヒルダ「え…?」

 

インゲ「関わったらダメよ、ヒルダ。 コイツはバケモノよ…」

 

(妹に目の前にいる本物のヒルダに関わったらいけないと忠告する母親。そう言われ、マナの光を使う妹。しかし、ノーマなのであっさりマナが割れる)

 

ヒルダ(妹)「ノーマァァーーー!」

 

(その途端、恐怖で倒れ込んでしまった妹を支える母親)

 

インゲ「…やっと悪夢を忘れて幸せになれたの」

 

(ヒルダの前に怯えながら寄って来た母親)

 

インゲ「帰って! 貴女が来たことは誰にも言わない! お願い…」

 

(そう約束して、頭を下げる母親。それに対し、涙を流すヒルダ)

 

インゲ「…帰れ! 生まれてこなきゃよかったのよ、アンタなんか」

 

(それでも一向に立ち去ろうとしないヒルダ)

 

インゲ「早く私の前から消えてよ!」

 

(テーブルの上に置いてあったアップルパイをヒルダの胸めがけて投げつけた母親。ヒルダの胸にアップルパイが当たって、染みを作りながらパイが崩れ落ちていく)

 

(数秒間を置いて、漸(ようや)く自分の実家を立ち去り、実家から離れた場所で悲しみで涙を流すヒルダ)

 

(場面は戻って、再びアンジュサイド)

 

(シルヴィアを人質に取っていた警備兵達に反撃していたアンジュ。それをうまく交わすモモカ)

 

シルヴィア「来て下さったのですね…お姉様!!」

 

(その台詞に安心し切って、シルヴィアに近付いたアンジュ。そのとき…)

 

(ざくりっ!)(血相を変え、隠し持っていたナイフでアンジュの腕を斬りつけたシルヴィア)

 

アンジュ「シル…ヴィア…?」

 

シルヴィア「このバケモノ!」

 

(実の妹にそう言われ、喜びの表情から絶望的な表情に変わるアンジュ)

 

シルヴィア「貴女さえ生まれてこなければ…」

 

シルヴィア「貴女がいなければ…歩けなくなることも、お母様が死ぬこともなかった」

 

(数秒間を置き…)

 

シルヴィア「お母様を返して! バケモノ!!!」

 

モモカ「アンジュリーゼ様…」

 

(一気に絶望のどん底に叩き落され、負傷した片腕から流れる血を抑えながら地面に膝を付くアンジュ。それを支えるモモカ)

 

(別の警備兵が放った捕獲用の網で拘束されたアンジュとモモカ)

 

ジュリオ「無様だな。 アンジュリーゼ」

 

アンジュ「…ジュリオ…お兄様…」

 

ジュリオ「さあ、断罪を始めよう」

 

(アンジュらの前に現れ、処刑を告げるアンジュの兄、ジュリオ)

 

(その頃…その様子を皇宮の離れた場所で見ていたミナとタスク)

 

ミナ「アンジュ…モモカさん…。 た…大変だよ、タスク!」

 

タスク「落ち着くんだ、ミナ! 2人は必ず助け出す! 今は隙ができるのを大人しく待つんだ…いいね?」

 

タスク「まず今僕達が助けに出て行ったら、僕達まで捕まってしまう」

 

ミナ「…分かったよ…。 アンジュ…」

 

 今すぐアンジュ達を助けたくて堪らなかった。しかし、タスクの言うとおり、今助けに出て行っていたら、間違いなく一緒に捕まっていただろう。相変わらず目の前で起きてしまった現実に何も手出しできず、私は悔やんでいた…。

 

(場面変わり、ヒルダサイド。雨が降り続ける中、エンデラントの帰り道を虚しく歩いていたヒルダ)

 

(パトカーがヒルダの脇を通り過ぎる。数秒後、ヒルダに向かってきて急にヒルダを殴りつけてきた警官達。恐らくヒルダの母親が通報して、居場所を教えたのだろう)

 

(ゴスッ!ガッ!ドカッ!ドカッ!)(取り囲まれた警官に集団暴行されているヒルダ)

 

ヒルダ『妹に会えたかな…アンジュ…』

 

To be continue…。

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