※この作品はR-18です。

クロスアンジュ-青年から少女に転生した者-(完)   作:森島響

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第19話『右腕の過去』

(ある男が住んでいる屋敷の庭。各国の首脳らが集まり重要な対策会議をしている。そこにはアンジュの兄・ジュリオの姿もあった)

 

「ドラゴンから攻め込んでくるなんて…」

 

(数日前のアルゼナルを襲撃騒動の映像を見ている)

 

ジュリオ「このパラメイル…まさかドラゴンを!?」

 

(謎の機体がドラゴンを束ねていると予想するジュリオ)

 

(そんな中、唯一人、会合の席がある傍の木に座りながら、本を読んでいる男がいた)

 

「ただちにアルゼナルを再建し、力を増強せねば」

 

(その言葉の後、映像にヴィルキスが映る)

 

「この機体…まさか…」

 

「ヴィルキス」

 

「あの反乱の際に破壊されたはず」

 

(破壊されたはずのヴィルキスが映像に映っているのを見て驚く首脳ら)

 

「ノーマが使えない以上、私達人類が戦うしかないのでしょうか」

 

(そのとき、木に寄りかかりながら本を読んでいた男が、本を閉じて立ち上がる)

 

??「本当に、どうしようもない」

 

ジュリオ「エンブリヲ様…」

 

(立ち上がって話に入ってきた男に反応し、エンブリヲと名前で呼ぶジュリオ)

 

エンブリヲ「選択肢は三つ」

 

エンブリヲ「1、ドラゴンに降伏させる。 2、ドラゴンを全滅させる。 3、世界を作り直す。 全部壊してリセットする」

 

ジュリオ「壊して作り直す…。 そんなことが可能なのですか!?」

 

(エンブリヲの指に小鳥が止まり、ほほ笑むエンブリヲ)

 

ジュリオ「素晴らしい!! 作り変えましょう!! そもそも間違っていたのです!! ノーマの存在も、ノーマを使わなければいけないこの世界も」

 

「それしかない…か…」

 

(ジュリオのその決断に、仕方なく了承する他の首脳ら)

 

ジュリオ「お任せ下さい、エンブリヲ様」

 

(エンブリヲは指揮権をジュリオに託し、そうエンブリヲに誓うジュリオ。その後、会合終了)

 

タスク「随分乱暴な手に出てきたもんだな…。 壊して作り直す…か」

 

(屋敷の地下道で会合の会話を盗聴していたタスク。そのまま屋敷を離れアルゼナルに向かった)

 

(一方、アルゼナル。例の襲撃騒動で未だに復興や、大量の負傷者の対応に追われていた)

 

ジル「生き残ったのはこれだけか…。 パラメイル部隊を再編成する。 暫定隊長はヒルダ」

 

ロザリー「はぁ!? 脱走犯が副隊長から隊長って…サリアでいいじゃないですか」

 

(格納庫に集まっていた第一中隊メンバー。しかし、サリアだけいなかった)

 

ミナ(そうだ…。 ゾーラ隊長が戦死してから、サリアの陰に隠れて忘れていたけど、副隊長はヒルダだったんだよね)

 

(ヒルダが副隊長ということを思い出したミナ)

 

ジル「アイツなら、命令違反で反省房の中だ」

 

(その言葉どおり、反省房でサリアが収監されていた)

 

(アンジュとミナ、モモカ以外の第一メンバーらが格納庫を立ち去った後)

 

ジル「壊して作り直す…か…」

 

アンジュ「ねぇ。 全部教えて、約束でしょ?」

 

アンジュ「…皆が助かったの、誰のおかげ?」

 

ジル「…いいだろう。 ミナもアンジュと一緒に来い。 だが、侍女はなしだ」

 

ミナ「え? 私も?」

 

モモカ「アンジュリーゼ様…」

 

アンジュ「…悪いけど、そういうことだから、モモカは部屋にでも戻っててもらえる?」

 

モモカ「…分かりました…」

 

(立ち去るモモカを背に、ジルの後について行くアンジュとミナ)

 

―――――数分後―――――

 

アンジュ「ここ…風呂場よね?」

 

ミナ「なんでこんなところに?」

 

ジル「大事な話をするときは風呂場で…と決まっているじゃないか」

 

 そう言いくるめられた私とアンジュは、ジル司令と一緒に風呂に浸かった。

 

ジル「さて…何から話す?」

 

アンジュ「全部。 ドラゴンとあの女、パラメイルとお母様の歌。 貴女とタスクの関係…全部よ」

 

アンジュ「聞いたわよ。 あのパラメーター娘達から。 貴女が私とあの女が歌っていたお母様の歌を聞いて、最後の鍵は歌と呟いていたって!」

 

(ミナもジルの左側でアンジュとジルの会話に聞き入っている)

 

ジル「…昔々、あるところに神様がいました。 繰り返される戦争とボロボロになった地球に、神様はうんざりしていました」

 

アンジュ「ちょっと、何の話!?」

 

ジル「最初から全部、だろう?」

 

ジル「このままでは、世界は滅んでしまいます」

 

ジル「そこで神様は、新しく作ることにしたのです」

 

ジル「新しい人類を。 争いを好まない穏やかな人間」

 

ジル「あらゆる争いが消え、あらゆる望みが叶い、あらゆる物を手にすることのできる理想郷が完成したのです」

 

ジル「あとは、新たな人類の発展を見守るだけのはず…でしたが…」

 

ジル「生まれてくるんです。 マナの使えない女性の赤ん坊が、古い遺伝子を持った突然変異が」

 

ジル「神様はこの突然変異を利用することにしたのです」

 

ジル「国民に“ノーマは悪”という情報を植え付け…」

 

ジル「生贄…犠牲…必要悪…世界を安定させるため、差別させるためだけの存在」

 

ジル「こうしてマナの世界は安定し、繁栄の歴史が始まるはずでした」

 

ジル「しかし、それを許さない者達がいました」

 

ジル「“古の民”。 マナの使えない、古い人類の生き残り」

 

ミナ「あの…“古の民”って…まさかタスクの正体は…」

 

(その用語を聞いて、急に話に割って入るミナ)

 

ジル「ああ。 タスクは…“古の民”の末裔だ」

 

ジル「…続けるぞ」

 

ジル「彼らは何度も神様に挑み、戦いの末、ついに手に入れたのです」

 

ジル「神の兵器、ラグナメイル…破壊と創造を司る神の兵器」

 

ジル「パラメイルの原型となった絶対兵器だ」

 

アンジュ「それが、私のヴィルキス…」

 

ジル「…ちなみに、ミナのヴィルキスだが…」

 

ミナ「え?」

 

ジル「アレは、アンジュのヴィルキスの性能を元にして作った模造品だ」

 

ジル「…話を元に戻すぞ」

 

ジル「彼ら…“古の民”にヴィルキスは使えなかった」

 

ジル「鍵がかかっていた。 虫けらごときに使えないように」

 

ジル「民は絶望した。 マナの使えない旧人類が滅びかけていた時…」

 

ジル「そんな時だ。 世界の果てに送られたノーマが、パラメイルに乗ってドラゴンと戦わされていると知ったのは」

 

ジル「そして出会った。 “古の民”と“ノーマ”…捨てられた二つの人類が」

 

ジル「そして、ヴィルキスを扱えるノーマがついに現れた…」

 

ジル「アレクトラ・マリアフォン・レーヴェンヘルツ…。 王族から生まれた初めてのノーマだ」

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

(引き続き風呂に入りながらジルの昔話を聞いているアンジュとミナ。もう夜が明けていた)

 

ミナ「アレクトラ・マリアフォン・レーヴェンヘルツ…」

 

アンジュ「…聞いたことあるわ…アレクトラ…でも10歳で病死したって」

 

ミナ「え…?」

 

ジル「バレたのさ。 ノーマだってな」

 

ジル「彼女が、ヴィルキスの鍵を開いた」

 

ジル「彼女の元に、多くの仲間が集まった」

 

ジル「始まったんだ。 捨てられた者達の逆襲…リベルタスが」

 

ジル「だが、私には足りなかった…」

 

ジル「全部吹っ飛んでしまった…右腕も…仲間も…全部」

 

(右腕の義手を眺めながら、自分の過去を悔やむジル)

 

ジル「だが、復讐を終わらせるわけにはいかない…。 死んでいった仲間の為にも…」

 

「そこにアンジュ、お前が現れたんだ」

 

アンジュ・ミナ「「…」」

 

 今回、ついに知ってしまったジル司令の衝撃の過去。その昔話を一晩に渡って風呂場で聞いていた私とアンジュ。

 

 明らかになったことと言えば…。ジル司令の過去の本当の名前が『アレクトラ・マリアフォン・レーヴェンヘルツ』という元王族だったこと。タスクは『古の民』という一族の末裔ということ。

 

 そして、神様が作り上げたこの世界に反逆するためにリベルタスという計画が10年前から始まっていることを。私とアンジュは、その話に驚きを隠せなかった。

 

(その頃、反省房で物思いに耽っているサリア)

 

サリア「ジルの嘘つき…私じゃ…ダメだったのね…」

 

(アンジュの『永遠語り』に反応していたヴィルキスを脳内で思い浮かべている)

 

(再び風呂場にて)

 

ジル「アンジュ、お前が壊すんだ。 あの歌でこの世界を」

 

(一足先に風呂から出るジル)

 

アンジュ「私を生かしたのは…復讐のため…」

 

ジル「お前には強くなって貰わなければならなかったからな」

 

アンジュ「…答えはノーよ」

 

(湯船から立ち上がり、ジルにこの世界を壊すことを拒否するアンジュ)

 

アンジュ「私の道は、私が決める」

 

アンジュ「…自分で見て、自分で決める。 誰かにやらされるのはごめんなの」

 

ミナ「アンジュ…」

 

ジル「では、リベルタスには参加しないと?」

 

アンジュ「好きなの…。 ドラゴンを倒して稼いで好きな物を買う…今の暮らし」

 

ジル「…そうか…。 ミナ、お前はどうする?」

 

ミナ「え…私、ですか…?」

 

ミナ「…申し訳ありませんが、私も参加しないと思います…。 アンジュの真似をしているわけではありません。 でも…今の話を聞いただけでは、私にとっては重荷が過ぎます…」

 

ジル「…分かった…。 今すぐには無理に決めなくてもいい」

 

ジル「だが、いつか決断しなければならない時が来る。 その時までに、改めて考え直してみてくれ」

 

(それぞれの思っている理由を述べ、現時点ではリベルタスには参加できないことをジルに告げるアンジュとミナ)

 

アンジュ「…そういえば、今の話…。 ドラゴンが出てきてないけど…」

 

(その頃、アルゼナルの某廊下)

 

(ズシン、ズシン)(ヴィヴィアンの足音。だが、いつもと何か違う音だった)

 

ヴィヴィアン『なんか背が伸びた気がする…』

 

『あ、エマ監察官だ!!』

 

(自分の目の前を通り過ぎようとしていたエマに反応するヴィヴィアン)

 

(話しかけられ、ヴィヴィアンに気付いたエマ。しかし、なぜか急に叫んで倒れ込んでしまう)

 

ヴィヴィアン『…なんじゃこりゃ?』

 

(倒れ込んだエマを見て違和感を感じ、改めて自分の両手を確認してから、エマの傍に崩れてあった鏡で自分の顔を確認するヴィヴィアン)

 

ヴィヴィアン『…え!? これ私!?』

 

(なんと、自分の体がドラゴンに化けていて驚くヴィヴィアン)

 

パメラ・ヒカル・オリビエ「「「キャアアア!!!」」」

 

(エマの悲鳴を聞いて駆けつけたオペレーター達3人。そこにいたドラゴンがヴィヴィアンだと気付かず、悲鳴を上げる)

 

(数分後、アルゼナル基地内にドラゴン出現の警報が鳴り響く)

 

ヒルダ「ドラゴンの捜索。 ヴィヴィアンはどこだ? エルシャ、アンタは何か知らないのか?」

 

エルシャ「それが…今朝からどこを捜しても見当たらなくて…」

 

(各自ライフルを携帯して、同じ集合場所に揃った第一中隊メンバーとその後輩隊員。アンジュとミナもいた)

 

(その頃。食堂にて)

 

ヴィヴィアン『お腹空いた…』

 

(ドラゴン状態で、階段を駆け下りて厨房を見て回るヴィヴィアン)

 

ヴィヴィアン『カレーだぁぁぁ』

 

(カレーのルーが入った鍋を見つけるも、ドラゴンになってしまった影響による腕の圧力で鍋を潰してしまう)

 

サリア・エルシャ「「ドラゴン!!いたわ!!」」

 

ヴィヴィアン『サリア…エルシャ!!』

 

(食堂に現れて、厨房にいたドラゴンを発見し、銃を向けるサリアとエルシャ。ヴィヴィアンは生命の危険を感じ、窓から飛んで逃げる)

 

ヴィヴィアン『(アンジュ…)』

 

(外を飛行中、陸の方を見てアンジュがいるのを確認したヴィヴィアン)

 

ヴィヴィアン『ギャゥゥアァァァ…』

 

(ドラゴン状態だったが、気付いてと言わんばかりに歌い始めるヴィヴィアン)

 

アンジュ「…! この歌…『永遠語り』…?」

 

(ドラゴンの歌っているのが『永遠語り』と気付き、それに答えるように自分自身も歌うアンジュ)

 

アンジュ「~~~♪♪」

 

(そのとき、ドラゴンの正体がヴィヴィアンだと気付き、驚きの表情をするアンジュ。引き続き歌い続ける)

 

アンジュ「~~~♪♪」

 

ミナ「アンジュ…あのドラゴンに2回も『永遠語り』を歌ってる…」

 

ミナ「それにあのドラゴン…アンジュにすごい懐いてる…?」

 

ミナ「…まさか!?」

 

 アンジュの後を追って、遅れてやって来た私。そこで、2回も『永遠語り』を歌っている光景…。

 更に妙にアンジュに懐いているドラゴンを見て、アンジュ同様、あのドラゴンが行方不明になっているヴィヴィアンだと察して銃を下ろした。

 

ロザリー「何やってんだあのバカ」

 

(パァン!)

 

ロザリー「ひゃぁっ!?」

 

アンジュ「~~~♪♪」

 

(更に遅れてやって来て、ドラゴンの正体に気付いていなかったヒルダ達がドラゴンを狙撃しようとしていたので、ロザリーの足元めがけて、歌いながら狙撃したアンジュ)

 

ミナ「みんな、もう撃たなくてもいいの! だって、あのドラゴンの正体は…」

 

(ミナがそう言葉を発したそのとき、サリアとエルシャ、ジルも姿を駆けつける)

 

(アンジュ、ドラゴンに手を伸ばす。そのとき…)

 

ヴィヴィアン「…クイズです。 人間なのにドラゴンなのってなーんだ」

 

(ドラゴン状態から、急に煙が上がり、煙の向こうから全裸状態のヴィヴィアンが姿を現す)

 

アンジュ「…お帰り、ヴィヴィアン」

 

(アンジュがそう告げた途端、安心したのか後ろに倒れそうになる。そのとき、急に現れたマギーがそれを受け止める)

 

ヒルダ「おい…どうなってんだ…」

 

(ドラゴンの正体がヴィヴィアンと分かり、驚きを隠せないヒルダ達)

 

アンジュ「マギー先生。 ヴィヴィアンを早く医務室へ」

 

マギー「分かってる」

 

(ヴィヴィアンを抱えて、医務室に急ぐマギー)

 

(そのまま、すぐ近くにあったドラゴンの死体処理置き場に近付くアンジュ。ミナと他のメンバー達もそれに続く)

 

(死体処理置き場の前にいたジャスミンがライターの火を点け、それを処理置き場めがけて放り投げた。ドラゴンの死体が一斉に燃え上がる)

 

エルシャ「…何…これ…」

 

ミナ「ドラゴンの顔が…急に人間に…」

 

 私達がそこで見たものは、急に人間の顔に戻ったドラゴン達が炎で焼けていく光景だった…。

 

ジル「…よくある話だろ? ドラゴンの正体は生きた人間でした…なんて」

 

アンジュ「…うっぷ…」

 

(ジルのその言葉でドラゴンの正体が人間という事実を知って、タスクと出会った無人島でめった刺しにしたドラゴンのことを思い出し、嘔吐しそうになったアンジュ)

 

アンジュ「…私…人間を…殺してた…」

 

ミナ「司令は…この事実を…知っていたのに…。 私達にずっと黙っていたんですか!?」

 

ジル「…さあな」

 

 人間を殺していたという事実に戸惑うアンジュを庇うように、ジル司令にこの事実を隠していたことを責める私。しかし、司令は惚けるような表情をしていた。

 

アンジュ「…もうヴィルキスには乗らない。 ドラゴンも殺さない、リベルタスなんてくそくらえよ!!」

 

ジル「さっき、ドラゴンを倒して稼いで好きな物を買うのが好きとか抜かしておいてか?」

 

アンジュ「…!」

 

(アンジュを含めた第一メンバー全員がジルの方を見る。それを尻目に立ち去っていくジル)

 

サリア「…ジル…」

 

(アルゼナルに戻るため、森の中を歩いているジル。そこに一人の男が話しかけてきて顔色を変える)

 

エンブリヲ「やあ。 久しぶりだね、アレクトラ…。 いや…今は司令官のジル…か」

 

ジル「…エンブリヲ…何しに来た!」

 

(エンブリヲに銃を向けるジル)

 

(そのとき、アルゼナル全域に通信が入る)

 

『こちらはノーマ管理委員会直属、国際救助艦隊です。 ノーマのみなさん、戦闘ご苦労様でした。 これより救助を開始します。 武器を捨て、脱出準備をしてください。 繰り返します…』

 

ミナ「脱出命令…?」

 

 他の第一メンバー達と一緒にいて通信を聞いていた私。突然のノーマ管理委員会のその通信になぜか疑問を持った。

 

 それは、このあと起こる悲劇によってすぐに気付かされることになるのだった…。

 

(その頃…海上ではアンジュの兄・ジュリオ率いる連合艦隊がアルゼナルに迫っていた…)

 

To be continue…。

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