クロスアンジュ-青年から少女に転生した者-(完) 作:森島響
(夢を見ていたアンジュ)
アンジュ『不覚だったわ…』
アンジュ『サリアだったら“なんか”呼ばわりしていたんだけど…まさか、ミナにやられるなんて…』
(一面に広がる薔薇の上に落ちるアンジュ)
『…これ、お母様の育てていた薔薇の香り…。 こんな地獄なら悪くないかもね』
アンジュ『…ミナ…貴女を救えなくて…ごめん…』
(回想。話は数時間前に遡る…)
(出撃したアウローラ上空で、ミナ達が乗るラグナメイルに囲まれていたアンジュ達)
タスク「狙いはアウローラか!!」
(ドーン!!)
(アウローラの周囲にサリア達のラグナメイルが撃った砲弾が水しぶきを上げる)
(アウローラ艦内。警報が鳴り響く中、アンジュに後を任され、司令室にて指揮を執っているアウローラ副艦長のジャスミン)
ジャスミン「皆しっかりしな、敵襲だよ!!」
(ドーン!!)
「キャーーー!!」
(また地響きが起こり、悲鳴を上げる一般隊員達)
ヒルダ「…う…う~ん…」
(毒ガスの影響で、食堂で気を失っていたヒルダとロザリーが目を覚ます)
パメラ「アンジュ機、敵パラメイルと交戦中」
(目を覚ましてオペレーター席に戻っていたパメラ達。ジャスミンにアンジュ機がサリア達と交戦していると告げる)
ジャスミン「…誰のせいでこんなことになったのか…分かってんのかねぇ全く」
(場面はアウローラ上空に戻る。ミナが乗るラグナメイルと対峙しているアンジュのヴィルキス)
アンジュ「…ちょっと…貴女…ミナなの?」
アンジュ「一体あの男…エンブリヲに何をされたの? それに…そのラグナメイルは…」
ミナ「貴女に説明する必要はないでしょ」
ミナ「このラグナメイルは、エンブリヲ様がわざわざ私のために作ってくださったヒステリカ。 エンブリヲ様が搭乗しているラグナメイルよ。 最も、これも模造品…レプリカだけどね」
アンジュ「…どうやら…その様子を見ると…完全にエンブリヲに洗脳されてしまっているみたいね…」
アンジュ「…分かったわ…。 貴女が私を殺す気なら…それに応えてあげる!! ミナ、かかって来なさい!!」
ミナ「望むところよ!!」
(一方、クリス機がタスク達が乗る機体に攻撃をしかけてくる。それをヴィヴィアンのパラメイルがうまく救出する)
ヴィヴィアン「キャッチ!!」
クリス「チッ…」
(アンジュとミナが一対一(サシ)で激突して、数分後…)
エルシャ「みんな。 撤退よ」
(砲撃を止め、撤退を告げるエルシャ)
サリア「奇襲陣形…」
ミナ「サリア、待って! 私にやらせてくれる?」
サリア「えっ!?」
サリア「…わ、分かったわよ」
(何か言いかけていたが、ミナに呼び止められ、不発に終わり不満そうにするサリア)
(ジャキッ!)
(ミナ、機体から顔を見せ、アンジュ機に銃を向ける)
ミナ「…勝負の途中で悪いけど、アンジュリーゼ、ここまでみたい」
ミナ「…さよなら」
(パーン!)
(銃弾がアンジュに当たり、ヴィルキスの操縦席から海に堕ちていくアンジュ)
アンジュ「…ミナ…」
(アンジュ、海に堕ちていきながらミナの方を見る)
ミナ「…ごめん…アンジュ…」
(アンジュに聞こえないか細い声でそう言いながら、海に堕ちていくアンジュを見下ろしているミナ)
(回想終了)
モモカ「…リーゼ様…アンジュリーゼ様…」
アンジュ「…?」
モモカ「アンジュリーゼ様!!」
アンジュ「…モモカ…?」
モモカ「アンジュリーゼ様、おはようございます」
(見覚えのあるパジャマを着ていて、見覚えのあるベッドの上で、モモカの声で目を覚ますアンジュ)
アンジュ「…ここは…」
モモカ「全部あの日のまま。 ミスルギ皇国です!」
アンジュ「…」
(モモカのその一言で、信じられないような顔をして、ここがミスルギ皇国の自分の寝室だと認識するアンジュ)
アンジュ「エンブリヲ…」
(傍に置かれていたエンブリヲの手紙を確認したアンジュ)
(服をモモカに着せられながら、モモカと会話しているアンジュ)
アンジュ「…また…帰ってきたんだ」
モモカ「私も目が覚めるとこちらにいました」
アンジュ『…何がさよならよ…ただの麻酔銃じゃない…』
(回想で、サリアがミナに渡して、ミナが代わりに自分に撃った銃が麻酔銃だと認識するアンジュ)
アンジュ「タスクとヴィヴィアン無事かしら」
モモカ「きっと無事です」
サリア「…目が覚めたようね。 貴女はエンブリヲ様の捕虜よ」
(突然アンジュの寝室に入ってきたサリア。傍にはサリア達同様、エンブリヲに寝返った二名の一般隊員達がいる)
アンジュ「何があったの?」
サリア「別に。 目が覚めただけ」
(回想。アンジュ達が向こうの世界に飛ばされたあと…)
サリア「アンジュの下半身デブーー!!!」
サリア「ジルに捨てられ、アンジュに負けた私なんか…」
サリア「…それと…ミナ…」
(海に沈みそうになっていたサリア。向こうの世界に一緒に消えたミナのことを想う)
(場面変わり。エンブリヲのベッドの上で、全裸で目を覚ますサリア。そこにはエンブリヲがいた。どうやら事後の模様)
サリア『あの方は私を救ってくれた』
エンブリヲ「この世界を変えるために、力を貸してくれるかい?」
(エンブリヲに髪を櫛で梳かしてもらいながら、そう言い包められているサリア)
サリア『私は見つけたの。 本当に守るべき人を』
(エンブリヲに指輪をプレゼントされ、頬を染めているサリア)
(回想終了)
アンジュ「…要するに、新しい飼い主に拾われたってことね」
サリア「…!」
(パーン!)
(アンジュのその一言に怒り、アンジュの頬を引っ叩くサリア)
サリア「私は愛されているの、エンブリヲ様に」
(アンジュにエンブリヲから貰った指輪を見せつけるサリア)
アンジュ「…ふっ!」
(ガッ!ドガッ!ドッ!)
「がはっ!」
「ああっ!」
「ぐっ!」
(傍にいた一般隊員達に蹴りを入れ、サリアをベッドに押し倒したアンジュ)
アンジュ「サラ子に比べたら弱すぎよ。 それに何その恰好。 プリティサリアンのがよっぽど似合ってたわよ」
(そう吐き捨て、モモカと一緒にアンジュ逃走。サリア、それを追う)
サリア「くっ…どこに行ったの、アンジュ!?」
(自分とモモカしか知らない隠し扉の中に隠れて、その様子を見ていたアンジュとモモカ)
(数分後。皇宮の中庭にいたアンジュ達。エルシャとお茶を飲んでエルシャの話を聞いている)
アンジュ「エンブリヲ幼稚園?」
エルシャ「私、園長さんなの」
エルシャ「信じられる? あの子達、一度死んだの。 エンブリヲさんが生き返らせてくれたのよ」
(回想で、アルゼナル幼年部で焼け死んでしまった子供達をエンブリヲに生き返らせてもらったことを思い返しているエルシャ)
エルシャ「…あの子達を守るためだったら何だってやるわ。 人間共の抹殺だって…。 アンジュちゃんを殺すことだって」
アンジュ「…」
(エルシャのその話を聞きながら、中庭で遊んでいる子供達を眺めるアンジュとモモカ)
(その数秒後、子供達の面倒を見ないといけなくなり、エルシャが席を離れたあと…)
アンジュ「エンブリヲを捜さなきゃ」
(ザッ…)
アンジュ「…クリス…」
(傍にあった木の陰から現れたクリスに気付いたアンジュとモモカ)
クリス「…ついて来なよ」
(クリスの案内で、エンブリヲの元に向かっているアンジュとモモカ)
アンジュ「…何だか…感じ変わったわね、貴女」
クリス「そう? 私は私のままだよ」
アンジュ「…怒ってたわよ、ヒルダ達」
クリス「私のこと見捨てたんだよアイツら…。 でもエンブリヲ君は違う。 私を助けてくれた。 私と仲良くなりたいって言ってくれた」
(回想で、ミナが支えていてくれた中、エンブリヲに蘇生させてもらったことを思い返しているクリス)
モモカ「…あの…エンブリヲ様とは、どちら様なのですか?」
アンジュ「ああ…。 そういえば、貴女はまだ会ったことなかったわよね。 説明しなくても、すぐに会えるわよ」
(エンブリヲが待つ大広間に着いたアンジュ達。二階に続く階段もある)
シルヴィア「この私に毒を盛るなんて!」
(バシィッ!)
リィザ「んんんっ!!」
(全裸姿で、シルヴィアから鞭の拷問を受けていたリィザ)
シルヴィア「口答えをしない!! このトカゲ女!!」
アンジュ「…り…リィザ!?」
リィザ「!」
(話しかけてきたアンジュに反応するリィザ。しかし、口を塞がれていて話せない)
シルヴィア「ひっ…! こ…殺しに来たのですね!?」
(同じくアンジュに気付いて、拷問を止めて恐怖で後ろに引き下がるシルヴィア)
シルヴィア「助けてください、おじさま…」
(顔を伏せて、エンブリヲに助けを求めるシルヴィア)
サリア「アンジュ、そこまでよ!」
アンジュ「!」
(アンジュの後を追ってきたサリアと一般隊員達。アンジュ、サリア達に銃を向ける)
エンブリヲ「…やれやれ…読書中は少し静かにしてくれるとありがたいのだけど」
(二階から姿を現したエンブリヲ。それに気付いてエンブリヲを睨み付けるアンジュ)
アンジュ「…エンブリヲ…!!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(アンジュがエンブリヲと対峙していた頃…)
(アウラが監禁されている暁ノ御柱最深部にいたミナ。エンブリヲの命令で目の前のアウラを眺めている)
ミナ「…」
??(貴女はそれでいいのですか…?)
ミナ「!? だ、誰!?」
(誰かに話しかけられ、反応するミナ。しかし、周りを見渡しても誰もいない)
ミナ「…気のせいか…」
(アウラの目が微かに開いていることに気付いていなかったミナ)
(場面はアンジュサイドに戻り…)
エンブリヲ「久しぶりだよ、本より楽しいものに出会えたのは」
(階段を降りてきて、アンジュの傍に近付いてくるエンブリヲ)
エンブリヲ「君と話がしたくてね、サリア達に連れてきてもらったんだ」
アンジュ「…」
モモカ「…あ、アンジュリーゼ様!!」
エンブリヲ「…すまない、少しだけ二人にしてくれ。 そちらの侍女さんもサリア達と一緒に出払ってもらえると助かる」
サリア「! え、エンブリヲ様…いえ…分かりました…」
(諦めたのか、大人しくエンブリヲの言うことに従うサリア。アンジュ、モモカを置いてエンブリヲの後をついて行く)
(その頃…アンジュ達がサリア達に捕まった後のアウローラ)
ジル「アンジュは捕まったか…ヴィヴィアンとタスクはロスト…」
(ジルの部屋に集まっていたマギー、メイ、ジャスミンと愛犬のバルカン。ジル、マギーに自身で負傷した膝などを手当てしてもらっている)
ジル「大暴れして出てった結果がこれとは、実に滑稽じゃないか」
ジャスミン「…たとえ滑稽でも、その“大暴れして出てった”あの子達が守ってくれたからこそ、この船は沈まずに済んだんだよ」
ジル「…もっと従順になるように仕込んでおくべきだった」
(同時刻、ヒルダの部屋。一緒に下着姿でくつろいでいたヒルダとロザリー)
ロザリー「なあ…」
ヒルダ「何だ?」
ロザリー「…アンジュのことだけど…」
ヒルダ「…理由があったんだろ、この船から逃げたくなるような…この船、危ないかもね」
ロザリー「…これからどうすんだろうな」
ヒルダ「…取り返すしかないだろ、アンジュを」
(再びアンジュサイド。エンブリヲの運転で、ミナがいる暁ノ御柱最深部に向かっていたアンジュ)
エンブリヲ「…ミナのことだが」
アンジュ「知ってるわ。 貴方があの子の弱みに付け込んで洗脳でもしたんでしょう?」
エンブリヲ「…彼女が拘束された日…彼女は君のところに意地でも戻ろうと後悔していた」
エンブリヲ「だから、君との思い出を忘れさせてあげようと、今度は完全に洗脳を施してあげたのだが…」
アンジュ「…で、それを教えて、私にどうしろと? あの子の前世のことはあの子から聞いてる」
アンジュ「この世界の住人じゃないのも知ってる。 元の世界に戻りたいと願っているのも知ってる。 だから…」
エンブリヲ「この先どうしたいか決めるのは、彼女自身だと? 君は本当にそう思っているのかい?」
アンジュ「…」
(アウラの塔に到着したアンジュ達)
エンブリヲ「ここだ。 ミナもここにいる」
(エレベーターを利用し、アウラがいる最深部に到着)
ミナ「…お待ちしておりました、エンブリヲ様」
エンブリヲ「ご苦労だったね、ミナ」
アンジュ「ミナ!」
(アンジュが話しかけると、銃をアンジュに向けるミナ)
ミナ「馴れ馴れしく私に話しかけるな! 私はいつでも貴女の命を狙っているのだからな」
アンジュ「…な…!?」
(揉め事になる前に、エンブリヲがミナを引き止める)
エンブリヲ「ミナ、その辺にしておきたまえ。 君は屋敷に戻って夕食の準備でもしておいてもらえるかい?」
ミナ「…承知いたしました。 ではこれで…」
(エンブリヲの命令で屋敷に戻っていったミナ)
アンジュ「…これは…」
エンブリヲ「アウラだ」
アンジュ「…神聖なドラゴンであるアウラをただの発電機にしたのね」
エンブリヲ「…人間達を路頭に迷わせるわけにはいかないだろ」
(ジャキッ!)
アンジュ「アウラを解放しなさい」
(エンブリヲの後頭部に銃口を突きつけているアンジュ。アウラを解放するよう要求する)
エンブリヲ「…断る、と言ったら?」
(バーン!)
エンブリヲ「ぐっ…」
(銃弾で後頭部を貫かれ、息絶えるエンブリヲ。…しかし、数秒後)
エンブリヲ「気はすんだかな?」
アンジュ「!?」
(ジャキッ!)
(アウラの方を眺めていたら、息絶えたはずのエンブリヲが話しかけてきて、再度銃を構えるアンジュ)
エンブリヲ「無駄なことは止めたまえ。 私は何度でも蘇れる。 私が何と呼ばれているか、アレクトラから聞いているだろう?」
アンジュ「…神…様…!?」
エンブリヲ「調律者だよ私は。 世界の音を整える」
(その瞬間、エンブリヲの能力なのか、エンブリヲの屋敷の中庭に移動したアンジュ。それでも、相変わらず銃をエンブリヲに向けている)
エンブリヲ「ノーマは本当に解放されたがっているのかな?」
アンジュ「…?」
エンブリヲ「ノーマはドラゴンと戦う役割が与えられている。 居場所や役割が与えられれば、人は満足し、安心できるものだ」
アンジュ「…」
(そのとき、アンジュの視界が急にぼやける。同時に顔が赤くなる)
アンジュ「…ぐ…///」
(ジャキッ!)
アンジュ「私に何をしたの!?」
アンジュ「…うっ…///」
エンブリヲ「…私が解放してあげよう、不安から」
アンジュ「…」
(アンジュの目が赤色に変わる)
エンブリヲ「全てを捨てて、私を受け入れたまえ。 身に着けているもの、全て」
アンジュ「…」
(ファサッ…)
(アンジュ、身に着けている服を静かに脱ぎ捨てる)
(スッ…パサッ…)
(続けて、今朝方、モモカに穿かせてもらったシルクのパンツをゆっくり脱ぐ)
アンジュ「…んっ…///」
(全裸姿になったアンジュ、エンブリヲに唇を奪われる)
(そのとき、向こうの世界でタスクと夜の営みをしかけた日のことを思い出して正気を取り戻す)
アンジュ「…!」
(バッ!)
(アンジュ、脱ぎ捨てた服で裸を隠してエンブリヲから離れる)
アンジュ「…なんでも与えてあげる? 与えられたもので満足できるほど、空っぽじゃないの私」
エンブリヲ「…」
アンジュ「調律者だか何だか知らないけど、死ぬまで殺して世界を壊すわ」
(スッ…)
(急にしゃがみ込んで、アンジュに手を差し伸べてきたエンブリヲ)
エンブリヲ「…私は、君と出会うために生まれてきたのかもしれない…」
(そんなエンブリヲを不思議そうな顔で見つめるアンジュ)
(その頃…アウローラにて)
(ジルの部屋の前にいたヒルダ)
ヒルダ「ここか…」
ヒルダ「…ん?」
(部屋の中にいたジルに聞こえない程度の声で言葉を発するヒルダ。そのとき、何か声が聞こえて、ドアに耳を当てる)
ジル「…ごめんなさい…エンブリヲ様…」
To be continue…。