クロスアンジュ-青年から少女に転生した者-(完) 作:森島響
ゾーラさんに激しく濃厚なレズエッチをヒルダさんと一緒にされた日の夜。私は自分の寝室にいた。そう、例の皇女様…アンジュさんのいる寝室の隣の部屋だった。
アンジュさんと言えば…明日、ゾーラさんが私やヒルダさんにしたことをしようと言っていたけど…。
一応、アンジュさんに言っておいた方がいいかな…という気になっていたが、言っても今の彼女はまだ私に心を開いているようには見えず、きっと冷たくあしらわれてしまうだろう。そう思っていた矢先だった。
(コンコン)(ミナの寝室のドアをノックする音)
アンジュ「ねえ…いるんでしょ? ちょっと用があるんだけど」
ミナ「あ、アンジュさん!? は、はい。 ど、どうぞ」
意外だった。まさか、アンジュさんの方から私みたいな人に声をかけてきてくれるなんて。そんなに進展はしないだろうけど、それでも、私にとってはこれは小さな第一歩だった。
(向かいのベッドに腰掛けるアンジュ)
アンジュ「今日、朝食食べ終わってどこに行っていたの?」
アンジュ「あのサリアとかいう青髪の副長さんが貴女に明日の訓練の説明したくて捜していたわよ」
ミナ「え?/// そ、それは…///」
アンジュ「…まぁいいわ。 これは貴女の問題だし、貴女がどこで誰と何してようと私には何の関係ないものね」
ミナ「は…はい。す…すみません…」
アンジュ「いつまでそうやってオドオドしていればいいと思っているのかしら? そんなことより、これ」
アンジュ「貴女の訓練用のライダースーツ。 あの副長さんから預かってたの。 貴女に会ったら渡しておいてって」
元々、男だった頃から臆病者で性格にも難のあった私は、オドオドした口調をアンジュさんに厳しい口調で咎められ、私専用のライダースーツをちょっと乱暴に渡された。
ミナ「あ、ありがとうございます…」
アンジュ「…じゃ、明日朝早いしこれで。 おやすみ」
そう言い残して、アンジュさんは自分の寝室に戻っていった。そういえば、例の件伝え忘れたけど…とてもそんなことを言えるほど、今の私は精神が参っていた。
だって、まさかのあの一生忘れられない、思い返しただけで恥ずかしさが込み上げてくるレズプレイをした後に、アンジュさんの厳しい説教…。
その途端、私はベッドの上に横になって涙を流していた。何で急にこんなことになってしまったのか…という思いが頭の中でいっぱいになってしまっていたのだ。これから先、こんなところで上手くやっていけるのか…。そんな不安ばかりで涙が止まらなかった。
―――――翌日―――――
ゾーラ「これより訓練を始める!」
私は、謎の機械の上に乗せられていた。前日、ゾーラさんの部屋であんなことをさせられていたので、訓練の説明も聞いていなかった自分の不注意なのだが、やっぱり何の説明もないのは流石に混乱する。
そう思っていたら、代わりにアンジュさんが私の思っていることを察したように代弁してくれた。
アンジュ「何なのですか、これは…?」
サリア「シミュレーター。私達の棺桶よ」
アンジュ「何をさせようというのですか」
アンジュさんがそう言った瞬間、なぜかその発言に呼応したように私の乗っていたシミュレーターとアンジュさんのシミュレーターが同時に空に飛び出した。
アンジュ・ミナ「「きゃああああああ!」」
シミュレーターの操作もまだ把握できていなかった私達は、いきなり自分達に起きた出来事に悲鳴を上げてしまっていた。
サリア「実践はこんなもんじゃないわよ!」
サリアさんがそう言った矢先、またもやアンジュさんが思い出していた感覚が私にも流れ込んできた。
アンジュ・ミナ「「この感じ…この感覚…」」
それと同時に、あっさりと上手くシミュレーターを乗りこなせるようになった。
アンジュ「やっぱりこれは…エアリア…」
ミナ(エアリア? アンジュさん、エアリアって…? それより、何で私もこんなに上手く操縦できるの…?)
サリア「何なの?この子達…」
―――――訓練中断後の休憩タイム―――――
ココ「うっ…おえええ」
ミランダ「ココ、大丈夫?」
乗り物酔いしたのか、嘔吐しているココさんの背中をミランダさんがさすっている。私達第一中隊メンバーは全員、汗を流すためにシャワールームにいた。
ヒルダ「たいしたもんだな皇女殿下は。 初めてなのに漏らさないとはな」
ヒルダ「それと…/// 昨日私と…/// あんなことしていたアイツも…///」
ヒルダさんのその台詞に、傍でシャワーを浴びていた私は、昨日のゾーラさんとの出来事を思い出して顔を真っ赤に染めてしまった。
それを聞いていたヒルダさんの隣で聞いていたゾーラさんがほくそ笑んでいたのを、私は見逃さなかった。
ヴィヴィアン「アンジュとミナ、何なのあの子達!? 超面白いんだけど」
ヴィヴィアンさんがサリアさんにそう話しかけて面白がっていた矢先、サリアさんはアンジュさんや私の方を見ていた。アンジュさんはもちろん気付きもせず、普通にシャワーを浴びていたが、私はそっぽを向いて必死にシャワーを浴びていた。
アンジュさんが才能あるのは分かったが、私には別段そんなにすごい能力が備わっているわけではなかった。あるとしたら、ここのみんなとは違ってノーマではなく、マナが使えることぐらいだけど…。
そういえば、なぜ私の思考にアンジュさんの思考が流れ込んできたんだろう?それに、その思考が流れてきた途端、私はあっさり機体を乗りこなせるようになったし…。
色々謎はあったが、今はそんなことを深く考える余裕などなかった。とにかく、早く前世の記憶を取り戻して、なぜ今、私がこの場所にいたのか理解したかったからだ。
―――――訓練再開―――――
私達第一中隊メンバーは銃を使った射撃訓練、崖を登る訓練をこなしていた。これが結構ハードだったが、私も特に何の問題もなくみんなについていけていた。
エマ「例の新人二名、全てにおいて平均値を上回っています」
(アンジュとミナがいない場所で、アンジュとミナの平均値をジル司令官に報告しているエマ監察官。 それと同じく、その様子を眺めているゾーラ達第一中隊メンバー)
―――――訓練終了後、昼の食堂にて―――――
アンジュ「そこ、座っていいかしら?」
ミナ「え? あ…は、はい。 どうぞ」
私が昼食を食べていると、アンジュさんが昼食を持ってきて私の隣に座った。たったそれだけの出来事なのに、なぜか私は顔を赤面させてしまった。
(アンジュとミナがいるところを遠くから自分達の昼食を持ちながら眺めているココとミランダ)
ヒルダ「おや、これは痛姫様。 それと…アンタも///」
ミナ「あ…ど、どうも///」
ロザリーさん、クリスさんと一緒に私達の前に昼食を持って現れたヒルダさん。ヒルダさん、私を見かけるたびに、昨日の出来事を思い出して赤面するのどうにかできないのかな…?と思いながら、私まで頬を染めてしまっていた。
ロザリー「しっかり食べないと戦えないよ~?」
全く食べる気配のなかったアンジュさんの昼食を自分の物と一緒くたに取り分けるロザリーさん。
あっという間にアンジュさんの食器は空になってしまった。デザートのプリンを除いて。
アンジュ「こんなもの、よく食べられますね」
ロザリー「はぁ!?」
アンジュさんのその一言で、逆鱗に触れたのか声を荒げるロザリーさん。ヒルダさんやクリスさんも険しい表情した中、自分用の飲み水が入っていた紙コップを、アンジュさんと私の方に向けてぶっかけてきたロザリーさん。
もちろんアンジュさんはあっさり回避していたが、私も何とか上手く被害を回避できた。
ヒルダ「ここはアンタのいた世界じゃない。 早く気付かないと、死ぬよ?」
アンジュさんが食べていなかったプリンを奪ったヒルダさんに名指しされてそう言われたが、アンジュさんは何とも思っていなさそうな顔して私の隣から去ろうとした。その時、ココさんとミランダさんが話しかけてきた。
ココ「これあげます」
(自分用のプリンをアンジュに渡すココ)
ミランダ「この子、アンジュにベタ惚れでさ」
ココ「凄いんだもんアンジュさん。 強いし速いし…。 あ、もちろんミナさんもだけど」
ミナ「い、いえ。わ、私なんかまだまだ…」
ミランダ「恐縮しなくてもいいって。 仲良くしようよ、アンジュ!」
ココ「外ではどうやって買い物をしていたんです?」
ココさんのその質問を聞いた途端、心を許したのかは知らないが、アンジュさんの口元が少し緩んだのを私は見逃さなかった。
それだけじゃない。これは、私が最もアンジュさんについて近付きたくて知りたいことでもあった。
アンジュ「望めば何でも手に入った。 格差も暴力も差別もない、マナに満ちた理想の世界」
ココ「本当にあったんだ…魔法の国…」
ミスルギ皇国…だっけ?アンジュさんが暮らしていた国の名前を思い出しながら、ココさんとのやり取りを有難く聞いていた私。私が聞けなかったことを代わりに聞いてくれたココさんには感謝しきれない思いで一杯だった。
ココ「また明日、アンジュ様」
アンジュ「アンジュリーゼです」
(ココ、ミランダと別れ、自分の寝室に戻っていたアンジュ)
(ゴトン!)(ココから貰ったプリンをゴミ箱に捨てたアンジュ)
―――――数時間後―――――
(司令室にてジル司令官に嘆願書を見せていたアンジュ)
アンジュ「解放を求めた嘆願書です」
エマ「まだ分かってないの?」
ゾーラ「困ったものです。 コイツの頭の固さには」
(破廉恥な恰好で突然司令室に現れたゾーラ)
ゾーラ「部屋お借りします」
(アンジュの腕を引っ張りながら、ジル司令官に部屋借用許可をもらったゾーラ)
ゾーラ「言って分からないなら体にに教え込む」
アンジュ「やっ…/// や、止めなさい///」
(身体を振り回して必死に抵抗するアンジュ。 しかし逃げられない)
ゾーラ「んっ…///」
アンジュ「んっ…/// ふむっ…///」
(ゾーラに自分の唇を奪われ、赤面するアンジュ。 同時に、着ていた衣服も脱がされようとしてゾーラの頬を引っぱたく)
(パーン!)
(引っぱたいた途端、ゾーラの片目の眼球が地面に落ちる。 義眼と察したのか微妙な表情をするアンジュ)
ゾーラ「お前も嫌いだったんだろ? あの偽善まみれの薄っぺらい世界が」
アンジュ「ち、違う…///」
(その時、突如基地内に警報が鳴り響く)
ゾーラ「っち、いいとこで…本番だ、アンジュ」
(ゾーラが司令の部屋を去った後、汚いものを吐き捨てるように唾を吐いて、ゾーラに奪われた唇を拭うアンジュ)
―――――アルゼナル基地入口―――――
さっきの警報は、どうやらドラゴンがこの世界を襲撃してきたものだったらしい。私を含めた第一中隊メンバーは、パラメイル整備担当のメイさんの指示でそれぞれのパラメイルに乗り込み、出撃しようとしていた。
ゾーラ「行くぞ、初陣だ!」
ついにやってきたアンジュさんと私のドラゴン退治の初陣日。しかし、まさかこの後、あんな悲劇が起きることになるとは…。