“破る”ではなく“裂く”。“結果はそれだろう”と、進んだ時に感じた。
「んぃいいぅうっ!! ……~~……あ、い、いたく、ないよっ……!?」
「無理すんな……そんな悲鳴あげといて、痛くないわけねぇだろ……」
「でもっ、でもっ……! やめないで……おねがいだから……!」
「………」
まだほんのちょっとしか進んでいない。
ほぐす、なんて行為が本当に役に立ったのかと思ってしまうくらい、そこは狭いままだった。
もっと薄い膜っぽいものかと思えば、粘膜が分厚くなったような……なんて言えばいいんだこれ。
ともかく、想像していたものとは違い、“押せば破れる”、というよりも、“貫いて裂かなければ入れない”だ。
しかも裂けるのは膜自体というよりは、あー……たとえば……弾力性のある糸が壁と壁にくっついていたとする。俺がそれを押すとして、糸の伸縮性より粘着力が負けたら、壁についた部分が壁ごとぶちりと取れるな? ……で、糸が膜で、壁が皮膚と考えてくれ。たぶんそんなん。痛いわこれ。
「すぅ、はぁ……すぅっ………………んっ! ヒッキー、あの」
「……一気にか?」
「そ、そう。結局痛いし、じわじわ来られると長引くし…………それに、そのえっと。……まだ、遠いし」
「………」
「《わしゃわしゃ》ひゃっ、わっ、ちょ、ひっきぃ……っ!」
ちらちらと俺を見たり壁を見たりと忙しい結衣の頭を、少し強めにワシャった。
……同じことを思っていた。先っちょだけ、なんて状態のまま軽く抱き合ったりキスをしたり。距離にしてみれば大したものじゃないのに、密着部分が少ないというだけで、ひどく遠く感じる。
それを詰めたいと、二人で思っちまったなら、進むしかないでしょう。
「……いくぞ?」
「う、うん、めっちゃがんばるっ」
「……力、抜いたほうがいいんじゃないか?」
「え? 力込めたほうが我慢出来ない?」
「………」
「………」
「妥協案。力を抜いて、痛くなったら力を込める」
「えー……? それだと攻撃されて痛くなってから、慌てて防御するみたいじゃない?」
「……初体験の時にこんなアホな会話してるの、絶対に俺達だけだろうな」
「誰がアホだ!?」
お前だよ。あと俺。
随分とまあ苦笑も上手くなったもんだ。以前までの俺なら笑ってもいなかったに違いない。
もうちょいしたらゲラゲラ笑えるようになるんだろうか。……そこはこいつに任せよう。
振り回されていれば、自然とそんな自分になれる気がするし。
俺は変わらん。だから、お前が勝手に変えてくれ。
「んじゃ、あれだな。もう力を抜いたら一気にいくからな」
「えっ……あ、合図とかは?」
「しない」
「やさしくとか……」
「おー、しないって言ったなー。まさかもう忘れたとか言わないよなー?」
「お、覚えてるってば! ……え、でも……え? ほ、ほんとにするの……? ぇぁ、や、やー……ほら、あたし、ずっと力を込めてたりとか、ちょっと無理っぽいかなー……って」
やめて、決心鈍っちゃう! 怯えた顔とか一番心に痛いからやめて!?
「……はぁ。他の刺激に意識がいってる時に一気にいくから、出来るだけ意識しないように頑張れ」
「そのほうが痛くない? ほんと?」
「この痛みはあたしのだって言ったの誰だよ……」
「だ、だって怖いじゃん! そりゃ、ヒッキーがくれるのならなんでも嬉しいけどっ! 一生の思い出だけど!」
怯えの混ざる姿を見ながら、気を紛らわすための行動をする。もちろん安心させるって意味も込めて。
頭を撫で、引き寄せ、キスをして頬擦り。
胸に触れて軽く揉み、ゆっくりと不安を取り除くように───……
「ふああぁ……っ……ひっきぃ……っ……♪」
あ。力抜けた。
「《ぶぢゅんっ!》……ふえ? ……、っ───ぃ……!?」
みぢぃ、と……裂ける感触が届いた。ごめん。
うっとりと安心していた顔が疑問に震え、涙が溢れて力強く閉ざされる瞼に、強い罪悪感が押し寄せてくる。あ、これ無理。泣かせた。俺が泣かせた。痛めつけて俺が泣かせた。
だめだ、すぐ抜かなきゃ、これが結衣を苦しめて《ぎゅうっ!》……腕が背中と首に、足が腰に絡み、離れられなくなった。
「っ……ぃ、きぃいっ……ぅ……!! い、いっ、いった……!! っく、ぐすっ……いたいぃい……!!」
「ゆ、ゆい、ごめんな、いたかったよな、ごめんなっ……!?」
「、……ふ、ふっ、ふぅ、はぅ、~~~っ……、は、はー、はーっ……! ぃぃぅ……! う、うん……! いたっ……すっごく、~~……いたいぃい……!」
「───……」
痛いと言う。
涙も流してるし、眉だって痛みが断続的にくるのか、ぴくんぴくんと歪んでばかりだ。
なのに……痛みに顔を歪めても、目を開くその顔は……とても幸せそうで。
「えへへっ……もう、なんで痛くないヒッキーのほうが、泣きそうな顔…………ヒッキー、泣いてる……?」
「え……や、ばっかお前、俺は……」
詰められなかった距離が縮まった。
腰は密着して、足も腕も腹も胸も密着している。
それが嬉しいから泣いている? それもそうかもしれない。今までにないくらい近くに居る。が、それだけじゃないのだろう。
上手く説明できない。纏められない。なのに、何故か嬉しいし、涙は出るし、なんかもうごっちゃになってて解らない。
「はぁ、すぅ……はぁ…………すぅ…………はぁあ~~~……!! んっ…………ヒッキー? ……ここから抜いたら、ほんと怒るからね?」
「解ってる」
むしろもう引けない。文字通り捕まってるし。なにより、奥にじゅぱんと当たった途端、ぎううと締め付けてくる結衣の中が、ちょっとやばいくらいに……いや、やばい、ほんとやばい。なんだこれ、気持ちいい。
「ん、ん……うん、……じゃあ、ヒッキー……動いていいよ?」
「………」
それは断る。せっかくの、呼吸を整えての覚悟の言葉に対して悪いが、断る。
「結衣。……んっ」
「ふえ……? ん、ちゅっ……んくっ、ぷあっ……ひっきぃ……?」
「ゆっくり、だ。時間はあるから、抜かないから、じっくり慣らしていく。やっぱりその……アレだから。どっちか一方が痛いばっかりとか、不公平だしそのー……う、嬉しくねぇし? あ、いや、まあ。……俺が痛いなら許せるが」
「それはあたしがやだ、かな。……ん、わかった。ゆっくり、ね……?」
痛いだろうに、ふわりと笑ってキスをしてくる。
首に回している腕をぎゅうっと抱き寄せるようにして、もはやそうするのが当然のように舌と舌を絡めるキスを。
それを受け止めながら、さわり、さわりと再び結衣の身体を刺激してゆく。
リラックスさせながらゆっくりと、溶け合うように幸せになろう。解らないなら解らないなりの、俺達らしい確かめ方で。
「んぷっ……ちゅ、ふあっ……んっ、……はぁっ……ひっきぃい……♪」
唾液を飲ませ、唾液を飲んでゆく。
それだけで頭にぴりぴりとしたなにかが走って、媚薬でも流し込まれたかのように思考が溶ける。
その溶けた思考を、いっそもっと溶かしたくて、結衣に首を離すよう促す。
「……ひっきぃ」
途端、“抜かないよね? 抜かないよね?”と潤んだ目で訴えられるもんだからたまらない。ああもうちくしょう可愛いなぁ。
可愛いから、必死になって足に力込めるのやめて? それ以上密着させないで? 中がにゅるにゅる動いて、こっちはもう我慢するので大変です。
「そんな、泣きそうな顔すんなっての……大丈夫だから」
「だって……さっき抜いたし……」
「あんな先っちょだけのなんて、抜くとか以前の問題だろ……あ、いや、まあその、それにあれだし……」
抜くとか以前の問題だろ、と言った途端にふにゃりと泣きそうになる結衣に、慌てて取り繕うように言葉を探す。
108のぼっちスキルその48───誤魔化す際には真実を混ぜて語れ。べつに48とか適当だ。数字に意味はないよ? ほんとだよ?
「それに……?」
「お、おう。それに……その。お前の中、気持ち良すぎて……抜きたくねぇし。そうじゃなくても離れたくねぇっていうか……その。俺も繋がっていてぇし」
「───……」
「…………? …………、───っ!?」
あ。
おいちょっと待て、なに言ってんの俺。真実しか言ってないよ。なにも織り交ぜてないよ。誤魔化しがひとつもないよ。
「ひっきぃい……っ!!《ぱああっ……!》」
あ。ふわぁあって花咲いた。やばい可愛い。あと、本人の嬉しさに比例するのか、見えない場所で八幡の八幡が一層に蹂躙され始めた件について。や、やめてえぇえ! それ以上、らめなのぉおお!!
下半身をぞくぞくと襲う奇妙な感触に、早くも敗北しそうな俺。
ママさん、女の子って強いですね。
結衣の手が伸ばされ、また俺を引き寄せようとするが、それを誤魔化すようにむにゅりと胸を揉み、突起をきゅうっと抓った。
「ひゃうっ! ん、んんぅっ! ひ、ひっきぃ、ずるっ……んっ、あぅんっ!」
ずるくない。ずるいのはいつだって世界と社会だ。俺は悪くない。そういうことにして、揉む。無心で揉む。
……八幡うそついた。無心でとか無理。なにこれやわこい。心躍る。
「んっ、んっ、ひっ、ひっき、ひっきぃ……っ!」
キスを、と顎をあげ、求めてくる。
その姿に身体を曲げて……胸の頂にキスをして、舐め上げた。
「んゆぅううっ!? ひ、ひっきぃ! ちがうー!!」
怒られた。でも気持ちよかったようで、中のほうがきゅんきゅんと───あ、やばい失敗した、これやばい、動きが活性化した。愛撫の仕方もよく考えて行動しないと、馴染ませるどころか動かしてもいないのに昇天させられちゃう。
なので冷静になるためにキスを……キスで冷静さを求めるって、今日だけで何レベルくらいレベルアップしたんだよ俺。
もうバトルポカリだけでムドー倒せるだろこれ。
……。
そうして軽い冗談と行為を続けて、当初の目安の30分を軽く超越して一時間弱。
時折にくぽりくぽりと動かしていた竿も、今ではスムーズに動かせる。いや、だからって激しく突いたりとかはしない。観察眼で確認しながら少しずつ動いてはみたが、勢いよく突くのはNG。マジで。特に奥は痛いようで、ドスンと突くとか有り得ないレベルっぽい。
なので時折に、軽く撫でる程度に動かす程度の静かでやさしい愛撫を続けた。手で肌をやさしく撫で、キスで愛情を降らせながら
というか……
「……ひっ、……ひぅぐっ……、あ、あ、あぅっ、ひぅっ……!」
また完成しちゃった……快感と幸福の爆弾。
なにもしてないのにぴくんぴくんと震えたり跳ねたりする身体が、自分の下にあるこの興奮をどう唱えよう。
唱えようどころか、俺ももうとっくに限界なわけだが。
剛直さんが泣きすぎて、結衣の愛液と混ざって結衣のお腹がいっぱいなくらい。
時折、こぷりと俺と結衣の隙間からこぼれてくるくらいだから、相当だ。
俺自身、竿はそこまで動かしていない。
ただ先端にコリッと当たるものを、深くキスをして幸福を分かち合いながら、時折にやさしく撫でるように、こりゅんこりゅんと刺激し続けただけだ。うん、痛がられてからは激しい抜き差しは一切していない。
最初は“ちょっと痛いかも”と言っていた……筈なんだが。それも長い時間をかけてたっぷりゆるゆると、深いキスとともに“ここをほぐされるのは嬉しいことなんだよ?”と教え込むように刺激してやっていたら、いつからかスイッチが切り替わってしまったらしく……こりゅん、と亀頭で撫でてやると、
「ふやぁああんっ!!《びくびくびくぅっ!》───、……、……あ、あっ、あぅっ、あ、あー……アー……っ……!!」
体を震わせ、苦しそうなものではない、嬉しそうな色の悲鳴をあげた。
他方催眠がどうとかを調べたことがあったが……これほどとは。なんにせよ、きみだけの幸福スイッチが完成した。語呂悪い。
そして結衣が喜んだ分だけ、膣内がにゅるくにゅと動き、もう一人の僕……いやAIBOとかじゃなくて、肉棒を刺激してくるわけでぐあああこらやめなさいやめてお願いやめて! 出ちゃう、なんか八幡の魂っぽいのが飛び出ちゃう!
「はっ、はぁっ、はぁあ……!!」
危なかった……! 動かさずに暴走とか、男として恥ずかしいとか書いてあった気がしたし……!
いやべべべべつにそれ気にしてるとかじゃないけどね? 俺べつになに言われたって気にしねーし? でも結衣に失敗したとか思われたくねーし? ……気にしてんじゃねーかよ。しかも思いっきり。
「ひっきぃ……」
括約筋に人生最大の力を加えつつ、震えながら視線を向けると……とろんとした女性の顔が眼下にあった。
その目が言っている。一緒に、と。
いえあの結衣さん? ぼっちな俺を誘ってくれるのはそりゃもちろん大変ありがたいんですけどね。
……ひと突きで昇天しそうな男に、その誘いは正直別の意味で心にくるといいますか。
慈悲はないな。ナムサン。
伸ばされた手を自然と恋人繋ぎで絡めて、額同士をくっつけて、はぁああ……と長く長く息を吐いた。
そうしてから互いに弱々しく笑って、目で合図する。
いくぞ
うん
それだけ。
キスをするために軽く近づく……そんな何気ない軽い動作のまま、限界まで引き抜いて、一気に叩き付ける。と同時に、密着部分で陰核を強く撫でた。
快感が爆発し、頭の中がビリビリと痺れたのは直後だった。
だがそれでは終われない。全身にあった何かが一気に腰に向かうような、寒気すらする強烈な快感の中、必死に手繰り寄せるように短い距離を引っ張り合い、口を合わせ、幸福を分かち合う。
爆発する幸福は快感に勝るとも劣らず……どころか、呆れるくらいに溶け合い混ざり合い、絶頂に痺れる頭の中をさらに痺れさせ、思考する余裕を奪ってゆく。
唇を繋げたままの喉から自分の意思とは関係なく悲鳴が放たれ、結衣からもそれが放たれ。
ごびゅるどくどくと精液が放たれるのを、勝手に跳ねる身体や強張る筋などに耐えながら感じる。
放たれた精液は膣内にこぼれる、どころではなく、むちりと鈴口を押し付けた……恐らくは子宮内へと、放水中のホースの先を狭めたような勢いで、狭い子宮の入り口から内部へ、勢いよく放たれていった。
がくがくと震える体と肉棒が、最初はそうされることが痛かった筈の結衣の子宮をゴニュゴニュと刺激し、それがいくらでも絶頂の引き金となって結衣は果て、絶頂による強い締め付けと伸縮、そして吸い込む力で快感と幸福の絶頂直後で敏感になりすぎた体が、さらに絶頂の先へと引き上げられる。
「───! ~~~ッ、───!!
声にならない声が喉からこぼれ、結衣も涙が飛び散るほど首を振るって快感の濁流に飲まれ、叫んでいる。
初めての子宮への直接射精の勢いに驚いたのか、本能的に身体を逃がそうとする。
だが俺の本能が、繋いだ手を離し、結衣の腰をぐっと掴むことでそれを阻止する。
どころか、雁首あたりまでが抜けた距離を、未だ射精したままぐぷぷと埋めてゆくと、子宮の入り口に亀頭がぶつかってもなお、奥を目指して腰を密着させてゆく。
「きはぁっ! あ、あうっ! うくぅうっ!! や、やぅあっ! やーーーっ! やぁあーーーっ!!」
ごびゅごびゅと射精は続く。出しても出しても刺激され、いっそ魂ごと吸われているかのように、結衣自身の膣内に吸い出され。
結衣はあまりの刺激にいやいやと首を振って泣いてしまい、弱々しく体を逃がそうとするも、俺は腰を強く掴んでそれを阻止し、さらに奥へと肉棒を減り込ませ、射精をする。
「っひぅっ! ひっひ! ひっきぃっ……! やあぁっ……やぁああ~~……!!」
ずぷり。……奥へ。
「ひぃうううう……! はくっ、うぁあああん……!! やぁあ~~っ……!!」
ぐぷり。……奥へ。
「ひ、ひっ、ひぅっ、あっ、あ、あぁあっ、あぁあああ~~~っ!! やぁぁっ!! んやぁああーーーーっ!! あ、あーーーっ!!」
その度に、ごりゅりゅっと子宮口が刺激され、スイッチを押されたようにびくびくと痙攣する結衣。
その度に、ぎうううううと膣内の強い締め付けに堪えられず、絶頂を迎え、勢いよく射精する俺。
そして再び絶頂。再び射精。
度重なる射精で頭はばちばちとスパークしているような気分だった。まともに思考が働かない。
ただ、深く重なり、深く繋がり、深い場所に証を残したかった。
腰を、というよりは引き寄せ、押し付けすぎて、腰骨がごりっとこすれるくらい近くで、その状態を固定したまま幾度も幾度も射精した。
「《じゅびゅうっ! ぐびゅびゅびゅびゅううっ!!》ひあぁあああああん!!!」
射精の度に自分が削られてゆく。
(ああこれ……気絶するな、絶対)
予感があった
びくんびくんどころか、ビググググと“明らかに異常です”ってくらい震える身体で、結衣を抱き締め、キスをした。
意識を飲み込みそうな快楽の中、ぐわんぐわんと回る世界に無理矢理しがみついて、オチそうになるのをなんとか堪える。
このまま気絶したい、眠りたい。その欲求はとてもとても強いのに、どうやら俺の本能は───
「っ、……っ、~~……、…………、っ、ひっ……、ひぅ……」
びくんっ、びくんっと跳ねさせていた身体がゆっくりと落ち着いてゆく。
より深くを求めて密着させていた体から力が抜けていくと、俺からも緊張が抜けていく。途端、緊張に次ぐ緊張で塞き止められていたらしい、尿道に残っていた精液がびょるるるるとさらに流れてゆく。
……気持ちいい。いいのだが、同時に魂がごぞりと抜き取られていくような感覚。
やばい。なんかすげぇおかしな呼吸してるぞ俺。本気でくらくらする。
しかしまだだと意識をつなぎ合わせるように、結衣の頭を抱き締めて、呼吸を整えてゆく。
結衣はやっぱりびくんびくんと身体を震わせているが、それでもゆるゆるとゆっくり、本当になんとか動かせた、みたいなのろりとした動作で身体を動かし、俺の背に腕を回した。
「………」
「………」
抱き合い、時折勝手に跳ねる身体に妙な声が漏れ、それでも抱き合ったままを継続してどれほどが経ったのか。
包まれたままの下半身にじんわりと温かさが通う状態で、どちらともなく顔を少し離し、キスを始める。
できれば今はもう絶頂したくない。
剛直だったそれはようやくじんじんとした張り詰めた大きさを潜め、普通に戻ってくれている。戻ってくれているのに、未だ結衣の膣内はきゅにゅりきゅにゅりと一生懸命に俺の俺を絞ろうとしてきて、腰砕け状態だ。
なんとかならんかと頭を撫でてみると、余計にうねりを始めた。だが堪える。上から覆いかぶさった姿勢のまま抱き締め、堪える。
「~~……はぁ……! ……ゆ、結衣……?」
「……、…………、……ひぅっ……、……、……あ、あぅっ……あの、んぅっ……あのね、ひっきぃ……」
「結衣……?」
堪えながら声をかけると、結衣がようやく反応。
快感と幸福がごっちゃごちゃになっているらしく、上気した顔のままで、ぎゅーと抱き締めてくる。
「ご、ごめ、ひっき……きょ、うは……もう、むり……むり、で……」
「───」
おい。そんな、息も絶え絶えの恋人を襲うようなやつに見え───……気絶者相手にやらかしてましたごめんなさい。
涙を流しっぱなしの結衣を撫でる。
ああ、愛しい。
そう感じると、じわりと興奮が竿へ流れそうになるが、そうなった途端にぞわりとした吐き気に襲われた。
……よく頑張った、俺。だからもう無理矢理精液を作ろうとしないでください、俺が死にます。ないものを無理矢理搾り出そうとするもんだから、ずきずきと痛み出す下半身。
その痛みに堪えながら、結衣を撫で、慈しみ、行為はせずとも抜かないままで、いちゃいちゃを続けた。
なんてーんだっけ、こういうの。ピロートークっつったか。
正直倒れたい。気絶でもいい、休みたい。
しかし、けど、でも、ほら、あれだよ。なんてぇかほら。
このままじゃ、行為だけが目的だったみたいで、嫌だった。
当然届いたものや繋がったものもたくさんあるし感じられた。
ひどく満たされて、今だって耐えてなきゃキモい顔で泣き出しそうだ。
そんな、たくさんの得るものがあっても、まだ意識を失いたくはなかった。
「ゆい……ゅぃ……」
自分の声が小さくけだるげになっていくのを感じる。
自分の体がなによりも休息を欲している証拠だろう。
「結衣………」
「ひっきぃ……」
声をかけながら頭を撫でていると、結衣が反応を示す。
余韻に浸るように身体の痺れに集中していたらしく、痺れや痙攣が治まると俺にキスをして、疲れきっているくせに幸せそうな顔で笑ってた
「……なんか……その。ありがとう、な……。いろんなもん、くれて……」
「……うん。あたしも……いろんなのもらった……。知らないことばっかりで、怖かったりもしたけど……ヒッキーがあたしより辛そうな顔するから、頑張らなきゃって……」
「そ……そか。なんか……恥ずいな……」
「……えへー……♪ ね、ひっきぃ……もっと撫でて……?」
「……おう」
くらくらする。眠い。そんな状態で話を始めて、言われるがままでも心を込めてやさしく頭を撫でる。
たぶんこれ以上キスをしたらとろけるどころか気絶しそうなので、じっくりと撫で、腕の中の恋人の存在を堪能する。結衣もそうしたかったようで、けれど俺の下で俺を受け入れながら、時折目を細めて船を漕いだ。
やっぱり眠い。
「んんー…………~~……えへー……♪ ……ひっきぃ……ひっきぃ……♪」
結衣も眠いはずなのに、なでられるたびに嬉しそうな、どこか甘えた声を出す。
……いやべつにいいんじゃないでしょうか? 俺、甘いのめっちゃ好きですし。
「なんか……特に動かないで、こうしてるのも……いいね……」
「そうだな……むしろ今は必要に駆られても動きたくないまである……」
「うん……あたしもかも」
結衣が俺の背中を。俺が結衣の頭を撫でて、そんな状況に安心してゆく。
たまらない。
激しい行為のあとに、こんなやさしい世界とか反則でしょ。
普段だったらどぎまぎしているだろう行為が、心地良すぎてたまらない。
そうしてじゃれ合い、ごろごろして、繋がったままで過ごした。
空気を読んでか、ご立派になるマイサンだったが、さすがに無理。
ただ、これならそう簡単に抜けないって意味もあって安心でもしたんだろうか。勃起で安心ってのもどうかと思うが、長い時間をそんな行為で過ごしたために出た言葉とでも受け取ってほしい。
ともあれ、安心がそこにはあったのだ。お陰でかくんと意識が飛びそうになって、ならばと。
「ひっきー?」
どうしたの、と眠そうではあるけどとろりと溶け、完全に安心、心も身体も委ねきってますって顔の結衣の顔をじっくりと目に焼き付けたあと、んちゅーとキスをして……ぽてりと倒れた。
深くはなかったかもしれないが、愛情をたっぷりと込めたキス。
覚えているのはここまで。
冗談抜きでバヅゥンって意識はブチ切れて、たぶん、気絶した。