そんな、微妙な空気の中、わざとらしく咳払いするのも躊躇われる空気の中、結衣が真っ赤な顔でちらりと俺を見て言う。
「あの……ヒッキーはさ、将来……子供は何人欲しい……かな」
「男だな。男が欲しい。人数は知らん」
「うぇぅっ!? なんかすっごく食いつきいいっ!? なんかちょっと意外……なんかびっくり」
よっぽどびっくりしたのか、なんかなんか言いまくってる。
「え、でもやっぱ意外だ。ヒッキーなら女の子って言いそうな気がしたのに」
「ばかお前、俺が親なら娘は嫁に出さねぇだろ。結衣に似た娘を嫁に出すとか俺が許さなくても俺が許さねぇよ」
「それ結局ヒッキーだけで許しもしないじゃん!」
「だから男でいいんだよ。あ、乳は搾乳したものを瓶に詰めたもので。他の男が結衣にとか息子でも嫌だわ」
「……ねぇヒッキー、微妙なのにちょっと嬉しかったのがあたし的にも微妙だったんだけど、それ、こじらせちゃだめだよ? 息子と娘が産まれたら、たぶんヒッキーと小町ちゃんみたいになっちゃうと思うから」
「」
あ、これ無理。立ち直れない。
正論すぎてピュアな心に言葉が突き刺さったわ。ロンギヌスだわ。現人神さえ殺せるわ。
「じゃあ娘より息子だな……もうめっちゃ可愛がるぞ俺……。でも乳は搾乳したのか粉ミルクで」
「そこは妥協しないんだ!? え、でも娘が産まれてきたら……?」
「? そりゃ可愛がるだろ。結衣に似た子供が産まれたのに愛さないとか馬鹿か」
「目が腐ってたら?」
「プロに仕立て上げるな。むしろ唯一無二の理解者になれるまである」
「…………」
「んあ? どした?」
「あ、えとー……あ、あー……ほらー……なんか、そうなるとファザコンになっちゃいそうで、やだなって」
「おう。娘が産まれたらもちろんそうなるようにするな」
「…………《ぷくー》」
あの。なんでこの子、例え話の、しかも娘の話で頬膨らませてんですか?
「ね、ねぇヒッキー……子供が出来てもあたしのこと好きだよね? 構ってくれるよね?」
「いやおい、産まれてもいねぇ、つか存在してもいねぇ娘に嫉妬するなよ……」
「ヒ、ヒッキーに言われたくないし! じゃあいいもん! 男の子が産まれたらいっぱいおち」
「おいやめろ」
「早っ!? えっ!? ちょ、ヒッキー!? あたしまだお乳の“おち”しか言ってないよ!?」
「…………死にたい《かぁああ……!!》」
「なんか言った本人が一番苦しんでるし!!」
いやもうだめ、やばい、俺こいつのこと好きすぎだって自覚しすぎちゃった。もう泣きたいくらいきみが好き。
だってあれだよ? おいやめろ、のあとに、ただでさえ結衣のあそこから男が産まれるとか、俺以外が触れるってことじゃねーかとか言いそうに……───あぁああ死にたい! 死にたいよぉおおお!!
「………」
「………」
「……しばらくは、よ……その、……あれ、な。……二人きりで、いんじゃね……?」
「……う、うん……そだね、えへへ、そだねぇ、えへへぇ……」
ぽろりと出た妥協案に、結衣が幸せそうに微笑んだ。好きだ。可愛い。
「えへー、でもあれだね、ちょっと驚いたかも」
「あん? なにが」
「やーほら、ヒッキーが自然に答えてくれるくらい、子供のこととか考えてくれてたから」
「………」
「………」
「………」
「? あれ? ヒッキー?」
「………」
「……もしかして、無自覚だった?」
「~~~……!!」
「そ、そっか、そっかそうなんだ~……♪ えへ、んふふへへぇ~……♪」
ヤメロー! そんな嬉しそうな顔で人の恥ずかしい事実を抉るなー!!
つか、こらやめなさい。恥ずかしがりながら指先でのの字を書くなとは言わないが、なんで人の乳首でやるの。やめて、やめなさい。ほんとやめて。
「《グググ》ひゃんっ!? …………ヒッキー……ま、また……する……?」
「ま、待て。これはほんと待て、お前がそんなとこいじるからっ……!」
ひ、卑怯者! ぼっちのプロであるこの八幡さんを拘束しておいて、性的快感で責めて、反応すればこんなっ……!
くっ、殺せ! いっそ殺せ! なんかもう殺してください……。
「ひっきぃ……♪」
「待っ……やめろ、おい耳はっ、弱っ……! 動くなったらおいっ、やめっ、うぁああああぅんっ!!」
「ヒッキー、約束ね……? 子供が出来たら……んっ……男の子でも女の子でも、いっぱい可愛がろうね……? んっ、んっ……!」
「やめっ……わかった、わかったから耳はっ……!」
「えとー……それと、ね? ひっきぃ……」
「ふぅ、はぁ……え? なんだ……?」
「……ごめんね。スイッチ入っちゃった……♪」
「え……? すいっちって、なんの……え? あ、ちょ、うごっ、動くっ、やめっ!」
「ヒッキー……! はぁっ……ヒッキー……! あっ、あたしの胸っ、好き、なんだよね……っ? いいよ……っ? ヒッキーなら、好きなだけ触っても……ん、んくっ」
「───」
俺の上で、女の子座りのような格好で、お尻を持ち上げては落とす運動を繰り返す結衣。
当然前傾になっている彼女の胸は、ベッドに肘を立てて軽く上半身を起こしてる俺の前にあるわけで。
「《はむっ》ひゃんっ!?」
おっぱいには勝てませんでした。
右手で左胸を、左手で右胸を揉み、感触と感度を確かめながら右胸の突起に吸い付く。
舐めて、吸って、唾液を絡ませて、ちゅぼちゅぼと軽くすぼめた唇で銜えたまま、舌先を高速で動かして刺激する。
すると結衣の膣内がきゅんきゅんと締め付けてきて、なんとも言えない快感が下半身を襲う。
結衣が聖母のような笑みで俺の肩に手を置き、もう一方で頭を撫でてきたりもしたが、気にすることもなく胸を堪能した。
結局、結衣の胸を堪能することに終始したまま、結衣だけが動く中で絶頂に至る。
執拗に胸ばかり責め続けた所為か、絶頂のあとに触ったら「んきゃあぅん!」って高い声とともに両腕で胸をガードされ、拒絶された。
馬鹿な……! なぜ……!? 本気で驚いていたら軽く引かれた。……軽くでいいのかよ。
……その日。
俺と結衣は、本当に我慢が効かなくなるまでずっと繋がりっぱなしの愛し合いっぱなしで、夕刻あたりまでを過ごしたのでした……。
え? ああ、うん……その時が来るまで何度か気絶させられて、目が覚めたら一緒に絶頂、なんてこともあったな……。お返しに「結衣さいてー! 気絶してる男の子を襲うなんて!」って言ってみたら、投げられたブーメランがやいばのブーメランだったのか、泣かれた。
慌てて慰めて泣き止んでもらおうとして、ウカツにも条件を受け入れるということに頷いたら、そのまま愛し合うことになったでござる。で、また気絶させられた。こっちが絶頂して敏感になっているのに、構わず腰を動かし、刺激し続け、気が狂いそうになるくらいの快感に襲われた結果、何かが射精の勢いではないと思うくらいに一気に鈴口から飛び出し、結衣を絶頂に向かわせる。それでまたキュウキュウと刺激され、おかしな声が自分から出たと思ったら……気絶。女怖い。
ああうん、なんかね、あとで調べてみたらね、潮吹きってのを体感したらしい。俺が。……俺が。
気絶から復活して、休んでからはまた行為。
繋がったままで体勢を変えて、色々な体位にも挑戦してみた。
結衣は俺の顔が見えないのは嫌なようで、バックはかなり嫌がっていた。立ちバックは体を捻ればギリギリよかったが、四つんばいでのバックはそれはもう嫌がった。振り向きづらいし、キスも出来ないし、一方的に責められるし、与えられてばっかでなんかやだ、だそうだ。なによりも顔が見えないのが一番嫌なんだそうで、目隠ししてやってみようと提案、当然繋がったままだったから早速動き出そうとしたら“やぁあ~~~っ……!!”って泣いてしまった。“もし知らぬ間に別の人だったら”を想像して気持ち悪くなってしまったそうだ。
……イエ、別ニヤバイクライ愛シクナッテ、目隠シ取ッテ正面カラ愛シマクッタリナンテ、八幡シテナイヨ?
で、訪れた夕刻なのだが。
「んっ……んぅう……! は、ぁぅぐぅう……!!」
「な、結衣、もういいだろ……お前おかしな汗掻きまくってるぞ……」
「……お腹冷えちゃったかも……うぅう……」
「そりゃな。……そりゃあな」
「ひっきぃ……」
「ほれ、いいからもういい加減離れるぞ。ずっとくっついてたからいい加減、AIBOがフニャ……じゃなくて、フヤケてきた気がする」
あと結衣がお腹に力を入れて我慢するたび、ギチュゥウと締め付けてきていろいろやばい。
なので結衣の腋に手を差し込んで、いざ抜こうと
「やぁああーーーっ!! ヒッキー! ヒッキーーーッ!!」
「《ぎゅうううう!》グワーーーーーッ!!」
ぎゅううっとマウントだいしゅきホールドをされた。同時にAIBOが締め付けられ、追撃として降りてきなすったシキュウ・グチ=サンが先端にキッスしてきて、しかもズチュウウと吸われる。
思わずおかしな悲鳴が出たが、耐える。なんとか耐える。
「結衣……」
「……やだ」
「いや、やだってお前」
「……離れたくない……」
「待て待て……! お前ほんとやばそうだろ……解った、今からは休憩として、戻ってきたらまたしていいから、な?」
「……抜いたら処女じゃなくなるもん」
「え……え? そういうもんなの?」
やだ初耳……! あ、でもどこからどこまでがそうであるかなんて考えたこともなかった。
破いたら……もとい、引き裂いたら処女じゃなくなる? まあそれはそうだろう。
しかし初めてであることに変わりはない。抜いてしまえば二度目になるし、初めて……ではないわな。
「だって……だって……男の子は、初めての子が好きなんだよね……?」
「何処調べだよそれ……」
「あたしだって、ヒッキーの初めて、嬉しかったし……だから……」
「いやいやもう十分堪能したでしょ……ほら、いい子だから」
「《ぐいっ》やぁあーーーーーっ!!」
「《ぎゅううう!》グワーーーーーッ!!!」
AIBOOOOOO!! もうやめて! AIBOのライフはもうMAX間際よ!
このままだとAIBOが元気になりすぎてHEEEEYYYって泣いちゃう!
「はぁ、はぁ……! くはっ……じゃあ、はぁっ……どうすんだよ……。まさかこの歳でSOSOUするわけにゃいかんだろ……」
「…………ら……」
「おん?」
「……~~……ヒッキーなら……い、一緒に、トイレ……!!」
「ぶはっ……!? ばばばっ……!?」
愛してくれるのは素直に、ほんと素直に嬉しい。
こんな俺を真っ直ぐに愛してくれて、本当にありがとうだ。
だがそれとこれとは……別じゃね? 真っ青な顔して我慢する恋人をそのままに、いちゃつきを優先させるのは……別じゃね?
「───……」
うし、心が大分落ち着いてきた。そうだ、欲望に飲まれるのは俺と結衣をダメにする第一歩にしかならん。
ここは心を鬼にして、一気に……いや。どうせ家には誰もいなし、このままトイレまで……。
……、なんかもう解んねぇなこれ。まさか恋人と繋がったままだいしゅきホールドで部屋を出て、階下のトイレを目指すことになるとは。
やっぱ途中で抜こうとしたら例の如く犬モードだったから、仕方なくそのまま。
尻肉を下から支え、廊下を進み、階段を一段一段気をつけながら下りて───まず一段、トンッと
「《ずちゅんっ!》あうっ!?」
「《ギュチチィ!!》グワーーーーーーーッ!!」
一段降りただけで涅槃が見えた気がした。
ふらりと無意識にフラつき、そのまま一段二段。
「《ずちゅんっ!》んぁあううっ!」
「《ぎゅちゅちゅぅっ!》グワーーーーーーッ!!!」
「《ずっちゅんっ!》きゅふっ……!? あ、あーーっ、あーーーっ!!」
「《にゅぐぐぐ……!!》グワーーーーーーーーーッ!!!」
膣内が大変なことになっていた。
階段を下りるたびに肉棒が結衣の最奥を突き、そこがスイッチな彼女は身体を震わせながら絶頂の波に耐える。
耐えなければ全身が強張り、その後に緩む。緩むということは……アレなのだ。
なので尻肉をしっかり支えながら、振動がいかないようにそおっと降りて……
「や、やあ……っ! ひっきぃ、お尻……あんまりむにむにしないで……!」
無茶言うなし。
ともあれなんとか階下に辿り着き、トイレの前までくると……結衣は駄々っ子のようにホールドを強め、離れようとしない。
仕方ないので散々と刺激されてギンギンなAIBOをチュク、と子宮口に構え、グヂュンッと一気に突き、刺激する。
「ふいぅっ!? あ、あーーっ! あーーーっ!!」
きみだけのやる気スイッチ、もとい幸せスイッチを刺激し、強い締め付けのあとにくる脱力を狙い、一気に引き抜いた。
にゅぽ、と独特の音のあと、ごぷりと溢れる粘液が……えろい。エロくて、量がすごい。
トイレの扉を開きながらそんなことを思いつつ……結衣が“ぽ~っ”としている内にトイレのベンザに座らせ、パタムと扉を閉めた。
……ふう、ミッション完了。なんか少ししたらトイレから泣き声聞こえてきて切ないんですけど、完了。
ともあれ風呂場で蛇口を捻って出る水がお湯になるまで待ち、ぐしゅぐしゅと泣きながら出てきた結衣を風呂に───《ぎゅっ》はうっ……! はぅっ……はぅ……ハゥ……!(エコー)
促した矢先に背中に抱きつかれ、背中にまずは二つの突起の感触と、続いてむにょりと押し付けられる柔らかさ……!
「ゆ、い……?」
「……ヒッキーも……一緒……」
「いやいやいやそれはまずいだろ……! なにがって、風呂といふのはですね、トイレと同じである意味超プライベートルームで」
「……自分の部屋の、自分のベッドよりはレベル低いよね……?」
「いや高いだろ。全裸だぞおい」
「部屋で全裸だったし……」
振り向いてみると、結衣が寂しそうな、しかしどこかうっとりとした顔で俺を見上げていた。あ、やばい、エロいとかじゃなくてこっちが抱き締めたくなる顔だ。
いわゆる自分だけを信頼して身を委ねたような、安心しきった顔。思わず体ごと振り向いて、ぎゅっと抱き締めた。
すると結衣も俺の背に腕を一本だけ回して…………おや? 一本ですって?
「ん、ん……ひっきぃ、ひっきぃ……」
んん? あんれー? なんでこの娘、AIBO掴んで少し背伸びしてんのかなー。
あんれー? あん《ちゅぷっ、つぷぷ》AIBOOOOO!!!
「う、くあっ……! ちょ、結衣……!?」
「は、はぁっ……ひっきぃ、ひっきぃ……!!」
再び飲み込まれたAIBOが、きゅんきゅんと締め付けられる。まるで離れていた半身とようやく繋がれたかのように、先ほどよりも強く強く。
いやいや半身じゃないっつのどうすんのこれどうなってんのこれ!
ああいやそんなことより今はこの状況をなんとかしなければいけない。結衣自身も少し過剰なまでに切なさ炸裂でもしたのか、今度こそ両腕で俺を捕らえ、離そうとしない。
その上、ゆっくりと動き始めて……その速度も次第に上がってゆく。
「待て待てッ、待てってのこらっ……! こ、こういう行為は部屋でっ……ぐぅっ……!」
「一緒に流れちゃった、から……また、ひっきぃの……! ここに……!」
「がはぁっ!? そっ……そういう、下腹部にズキンとくる言い回しをっ……!」
するな、と言うより早く、お湯を出しっぱなしの風呂へとそのまま入った。
そこでいい温度になっていたシャワーを浴びながら、ボディソープを一生懸命キュコキュコ出して、ボディタオルをワッシャリ揉んで泡立てて、…………泡立てて…………。
「……? ……!《ハッ!》」
なにこれレベル高い! ハッと気づけばなにかしらのスキルが発動して、結衣の身体を洗おうとしてたよ今!
違うでしょ! そこはボディソープまみれになって、この“大天使・子泣きガハマ”からにゅるりと逃げなくては!
八幡は気さくに話し掛けた!
「結衣、体、洗わなきゃだし、そろそろ離れ───」
「んっ、ひっきぃ、ひっきぃ……!」
「───」
だめだ話にならない! 子泣きガハマはヤる気だ!
動いてはいないものの、さっきから首筋にハムりと吸い付いて、れるれるちゅぱちゅぱしてきて、なんちゅーかこそばゆい。
あ、ちなみに子泣きって部分は子泣きジジイ的な、ひっついたら離れない妖怪っぽさを表しておりまして。いやべつに結衣が妖怪だなんて言いたいんじゃなくてああでも今はなんでか“妖怪精液絞り”とか名づけたい気分で、あ、やめっ! それ以上は、あっ、あっ! あーーーーっ!!
「《ズキンッズキンッ》うぐぅううううっ!! かはっ! う、ぐぅうぁあっ……!!」
「……? ……ひっきぃ、びゅー、は? ひっきぃ? ひっきぃ」
「だから、待てって……! も、もうすっからかんなんだよ……! 快感はあっても、無いもんは出せねぇって……!」
「……ふえっ……《じわり》」
「アイエエエエ!?」
ほんとに子泣きする気か!? ガハマナンデ!?
泣きたいのはこっちなんだが!? いやっ、やめっ……もう動くな! さすがにもう痛い! びくんびくんポンプみたく痙攣してても、そこを流れるものが無いのってこんなに痛いのかよ……!
「このっ……動くな!」
「《がっ!》ひゃんっ!? ……、……はれ? ひっきぃ?」
「……? 結衣? おい、どした?」
なおも動こうとする結衣を、両肩を相当に強く掴むと同時に揺さぶった。それまではよかった……と思うのだが、結衣はびくんと身体を跳ねさせ、何故か少しボウっとした顔になって……俺を呼んだ。
? なんだ?
「ん、あれ……? なんでシャワー……ってうひゃああっはわぁあっ!!? え!? あ、え、え!? なんであたし裸っ……え!? なんかお腹、えっ!? ひっきぃ!? えっ!?」
「………」
あらやだ。なにこのものすごーく嫌な予感。
「ひ、ひっきぃ……? あの、これ……あのっ……あのっ……《ぽろぽろぽろ……》」
泣いた。やめて、泣くママさんと結衣には勝てない俺なの。そして理解が追いつかない。誰か助けて。
しかし涙しながらも抜こうとはせず、ふるると震えると、
「ぐすっ……あ、あの、ヒッキー……あたし、途中で眠っちゃってた……のかな」
「……参考までに訊きたい。どこから何処まで覚えてる?」
「え……“覚えてる”……? あたし、なにか忘れたりした……の? あ、え、えっとね、ママのドリンク飲んで、それでね、えと……頭がぼーっとしてきて……」
「おい。まさかあれ、アルコールでも入ってたんじゃないだろうな……」
覚えがないとか、今までの行為が全部夢みたいなものだったとか、勘弁だぞ?
俺がどうとかじゃなくて、結衣が可哀想すぎる。もしそんなことになっていたら、いくらママさんでも───
「か、会話……とか、ちゃんと覚えてる……よ? あの、初めて、ヒッキーに捧げられたのも……うん。痛かったのもちゃんと覚えてる……うん。うひゃ、うわひゃあああ……!! なんか現実離れしてるみたいで、夢でも見てるみたいだったのに……そ、そっか、現実だったんだ、そっか……! うわひゃあ……! や、だめ、これ恥ずかしすぎる……! どうせ夢なんだからって、あたし……うあわっ、あわぁっひゃあああっ……!!」
……どうやら、多少の意識の混濁はあっても、きちんと覚えていてくれたらしい。よかった。
さすがに夢のまま初体験が終わっていた、じゃあ救いがない。ああもちろん、そうだとしてもそうじゃなかったとしても全力で責任は取るつもりだが。
「ごごっごごごごめんねヒッキー……なんかあたし、思い出しただけでも死んじゃいたくなるよーなこと、いっぱい言ってた、よね……?」
「言うことよりも実行力のが怖いからな。お前普段どんな夢見てんだよ……」
「えっ……、……~~~……い、言わなきゃ……だめ? ……だよね、あはは……あぅうう……」
「お前が嘘偽りなく説明してくれんなら……べつに、いーけど」
「それなんも変わんなくない!? う、うー……あの……その、ね? ヒッキーがね……? あたしの我が儘、いろいろ聞いてくれて……なのに、少しでも離れちゃうとどっか行っちゃって……居なくなっちゃって」
あー……やべぇわ、離れただけであんな泣きそうになる意味解っちゃったわ、犬モードどころか必死だっただけだわ。
「……ヒッキーごめんね……あはは……こんな女の子、キモいよね。あ、はは…………ぐすっ……えぐっ……ひっきぃ……」
「お前ほんとなんなの……唐突にラブコメするのやめてもらえません? 振り回されっぱなしで八幡疲れちゃうから……」
「だって、でも、だって……ひっく……ぇぅぅうええええんっ……」
泣くな泣くなとばかりに頭を撫でる。繋がり、シャワー浴びたままで。なにこれほんとレベル高い。
しかも抱き締めて撫で続けるハメになり、いくらシャワー浴びててもこのままじゃ……と、覚悟を決めて洗うことにした。
ちょっと熱めにしたシャワーを結衣の背に当てながら、前半身をこしこしと洗って…………───洗って……。
「《れろぉっ》んひゃんっ!?」
肩を洗って鎖骨をなぞってその下あたりを洗い、いざ母性へ……と思ったら、さくらんぼが綺麗でナメてしまった。
結衣の涙を見たことで萎えかけていたAIBOがみるみる元気になって、それを感じながら胸の谷間に横向きで埋まるようにして、突起に舌を絡ませるようにしてしごく。
「あ! うぅんっ! ヒ、ヒッキ……! なんでっ……!」
「んちゅっ……れるっ……、……悪い、言葉はどうにも苦手だ。だから、見てた夢、全部正夢にしてやる。お前は泣くな。お前は嬉し涙だけ流してろ」
「ひ、ひっき、ぃっ……! でも、夢だと思ってた中で、こんなのっ……して、なかっ……んぅっ」
男の子でごめんなさい。
……。
そうして風呂場で汁の出ない愛のぶつけ合いを繰り返し、息を荒げながら互いの身体を洗った。
背中ばかり綺麗になるのはご愛嬌ってやつだろう。だって抱き締めたまま離してくれないんですもの。
それからようやく自然にAIBOを抜き取ることに成功し、抜く時に「あ……」と一言呟かれただけで、あとは普通に…………普通に、俺が水滴を拭き取った全裸のまま、自分の部屋へ小走りすることになった。
着替え、持ってくるとか考える余裕がなかった所為だ。
しかし? まあ? アレですよ。そりゃあ俺もいろいろ考えましたヨ? でも彼女の母親様に言われてしまったことですし? 結衣のために用意したのがYシャツだけ、というのは……はい、正直めっちゃ見てみたかったです。
なのでそれを渡した時の「え?」って顔と、俺のYシャツだと気づいたあとの「ひっきぃの……《かぁあああ……》」という赤面&次第に緩む顔は、僕の八幡フォルダに焼き付けておく。記憶喪失になってもバックアップだけは出来る方法とか無いかしらん? いや、人間には未知の部分がたくさんある。きっといつか出来るはずだ。その日のために、俺は今日の日……だけでなく、ここ最近の結衣をけっして、けっして忘れない。
「うわぁ~……やっぱヒッキーって男の子だね。Yシャツぶかぶか……」
「《きゅんっ》───毎朝俺のために味噌汁を作っ───ナンデモナイヨ?」
「なんで途中でやめたの!? つ、作るし! 味見もちゃんとするからぁ!」
心が打ち抜かれ、口から反射的に本音がぶちまけられた瞬間、愛より生が優先された。
「……てかさ、どしたのいきなり。急に言われるとドキっとするから、ちゃんとそういう雰囲気にしてからにしてほしい、ってゆーか……その。あ、や、嬉しいよっ!? ほんとっ、嬉しいん、だけど……さ。……さっ……最近さ? ほら……慌てるとこばっか見られてるから……だから」
なにこの天使。キスしていい? 俯きながら軽くそっぽ向いて、耳にかかった髪を掻き上げながらこっちをちらちら見るの、やめてください。その顔が赤いぶんだけ、その目がうるうるしてる分だけ、八幡ったらトキメいちゃう。
「いや、こんな状況で言われても嬉しかねぇだろうけど……改めて、その。ほら、なに」
「う、うん……」
「……わ、解ってるんだぞ? こういうのはドキドキ期待出来てる内に言ってやるべきだって。けどな、いざ口から出そうとするとな?」
「えへへ、解ってるよひっきぃ。だいじょぶ、あたし、何年も待ったもん。あたしから言ったってヒッキー、きっと離れてただろうから、ずぅっと待ったよ? それに比べたら、ちょっとくらい平気だから」
えへー、と笑う顔に、また胸が高鳴る。
……なんでだろうな。本当に不思議。マジトーンで繰り返せるほど本当に不思議だ。
どうしてこんな可愛いやつが、俺のことを好きで居続けてくれたんだろう。俺みたいな捻くれ者をずっと見てたって、逆に嫌な部分ばっか見つけるだけだろうに。
……なぁママさん。やっぱり幼馴染って状況と、いろいろな状況が上手く組み合わさらなきゃ、俺と結衣がこんな関係に、なんて無茶もいいところだよ。
だから、この出会いと状況には感謝する。人生と世界には感謝していいのか解らん。たぶん、しないと思うが。
「…………その。お前に、惚れ直した。あ、いや、直したとは違うか。もっと……その、好きに、なった。……お、おまっ……お前、と、その……よ。お前と、毎朝同じ朝を迎えたいって……思った。~~……そう、そうだ。一緒の食卓で、なんでもないことを話しながら朝飯食いたい。新聞配達して、学校行って、授業が終われば勉強するのもいいし部活するのもいい。教える勉強に頭を悩ませるのも楽しいかもって思えてきてる。時間が来たら一緒にバイト行って、帰ってきたらまた一緒の時間を過ごして。……お前となら、そんな“一緒”が欲しいって思った」
「ヒッキー……!《ほわぁ……》」
安心と幸福を混ぜた、とてもやさしい笑顔がそこにあった。
急激に赤くなったものではない、うっすらと上気したような温かな朱。
「あ……りがと…………ぐすっ、ありがと、ヒッキー……えへへ、あたし幸せだ。でもさ、あたしさ、ヒッキーの目……好きだからさ。……今度はちゃんと、真っ直ぐ言ってほしいな……」
「おまっ……げふん、結衣さ、どこまで人の人生難度上げる気なの? こんなん慣れたら俺、将来なにに対しても物怖じしなくなっちゃうよ?」
恐怖を克服したレロレロさんのように、目を縦に裂かれなくてもいろいろ克服しちゃうかもしれない。
「あ……それはちょっとヤかなー。ヒッキーが照れもなしで好きだとか言っても、なんか……なんかだし」
おい。それって俺の照れ顔楽しんでるとかそーゆー方向?
ケータイとかスマホで写真撮られて、友達と“キンモーイ!”とか言ってキャハハ笑いするのん? 天使が悪魔に見えてきた。なのに好き。ちくしょうお前らは馬鹿だ。しまった最初から馬鹿だった。使いたかったブロント語、もといロト語録が真正面から敗北に向かうなんて。
「あ、ぐ……ん、んんっ! ごほっ! ……そ、それで……だけどな。お前その、アレ? Yシャツは貸したわけだけど、ほら、アレじゃん?」
主張が激しいお胸さまが、Yシャツをグイイと前方に突き出してらっしゃる。ふつくしい……。
しかもその先端にはノーブラである証として、さらにクイっとシャツを前方に押し出すポッチ様が。
「……その。……買い物、いくか?」
「え? …………あ、うんっ!!」
こうして唐突に、ってわけでもなく、いろいろと願いを込めた買い物に行くことが決定した。
デ、デートとかじゃないし? 勘違いしないでよねっ!《ポッ》
……出掛ける前に、裸Yシャツのまま、いろいろと体験させてもらったのは秘密だ。
これにて終了。
OK、1評価も貰えましたし、やはり二度とエロは書くまい。
そんなわけで気にせず次へ行くでゴンス!
https://novel.syosetu.org/106400/149.html
プロトガハマさん/つまるところ彼は、彼女になら変えられたい