---ファルコン---
ミア達のファミリアが解散してからは、アリーゼ達のファミリアで潜ることが多くなった。たまにヘルメス達のファミリアでも潜ったり、ウラノスの頼まれ事で潜ったりもしたけど。そうそう、ベートの練習がてらに、アイツと二人でも潜ったこともある。
そんな楽しい人生を送っていた僕。戦うことと逃亡しかしていなかった僕には、とても楽しく幸せな日々であった。
そんな楽しい日々の終わりが近づいて来た頃、アストレア・ファミリアで遠征をすることになった。ポーターも雇い、準備をしていく。
「ファルコンは正式に入団してくれないの?」
団長のアリーゼに打診された。
「う~ん、まだ自由に生きたいかな。って、他のファミリアでも潜るし。自由度が減りそうだからパスだな」
「そうかぁ…では、入団特典で、私とリューを自由にして良いっていうにはどうだ?」
「ちょっと、アリーゼ。何を勝手に決めているのよ」
エルフのリューが真っ赤な顔をして、アリーゼに抗議した。それを見て、他のみんなが笑う。
「リュー、想いがかなうかもしれないわね♪」
ハイエルフの女性がリューをからかう。
「そんなこと…ないもん」
「おいおい、口調が変だぞ、リュー」
ドワーフの男性がリューを更にからかう。そんな和気藹々としたホームの団らん室。これから起きることを知らない僕達は、これからも続くと思っていた日常を楽しんでいた。
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逃げ場の無い一本道でソレは突然起きた。ポーター達の運んでいた荷物から、魔術師が現れて、何かを唱え始めた。壁から湧き出てくる、この階より下に生息しているはずの多数のモンスター達。召還魔法か?
突然のことで、得物を構えるよりも先に前衛のドワーフが襲われて喰われ始めた。
「ファルコン、リューだけでも助けて…」
我に返ったアリーゼから、悲痛な叫びにも似た指示が飛んできた。僕はリューと後衛を任されていて、集団の後方にいた。僕は咄嗟にリューを抱え、僕らよりも後方のモンスター達を蹴散らし、リューを安全な場所に投げられる位置を目指した。
「リュー、生きろ。幸せになれよ」
僕は最後に彼女の頬に口吻をして、彼女を遠くに投げた。そして、彼女とモンスターとの間に、『ファイヤーウォール(火の壁)』を発現して、モンスターがリューを襲いに行けないようにした。
僕は得物を手にして、術師をまず消して、アリーゼ達を助けに行く。ハイエルフの女性は詠唱途中で喰われていた。アリーゼは…僕はクソ戦士だ。また、護れなかった。怒りを纏う僕。
「み、みんな~!」
遠くからリューの声が聞こえる。たぶん、この戦場を抜けるまでの間に、僕が最後に耳にした音かもしれない。
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戦場だった場所からアリーゼを安全な場所に運び、戦場だった場所から、モンスターのドロップ品、仲間の遺品を拾い集めていく。後で考えると、なんで冷静にそんなことができたのかって思う時もあるが、その時は淡々と拾う作業を続けた。
アリーゼは虫の息だった。手足は千切れ、身体中には裂かれた傷が多数ある。僕は、回復魔法、創造魔法を駆使して、アリーゼを修復していく。無い箇所は創造して、つぎはぎなアリーゼにしていく。
「ファルコン…逃げて…私は…」
逃げないよ。僕は治す。何年かかっても。今度こそ、一人くらいは救いたいから。
---ヘルメス---
一報が届いたのは、たぶん事件発生の翌日だったのかもしれない。アストレア・ファミリアが罠に嵌まって、全滅したかもしれないっと。アストレアは身の危険を感じて、オラリオを脱出したと。
え…おい…何したんだ?どこのバカ神だ?俺は眷属全員に潜る様に指示を出し、捜索を頼んだ。アイツは不老不死だ。身体の一部パーツでも残っていれば、再生できるはずだし。
俺は、ウラノスとフレイヤに会いに行き、知った内容を話し、協力を求めた。2柱とも快諾してくれて、アイツの捜索と、やったヤツラのあぶり出しを始めた。
仕掛けたヤツラを見つけたが、証拠が無いだろうと、知らぬ存ぜずを決め込んでいた。ギルドも、証拠がない以上、何をできないと言う。アイツに何度地獄を見せるんだ?俺達神々は…
---ベート---
ヘルメス様達の様子がおかしい。何かあったみたいだ。兄貴のいるファミリアを訪ねると、誰もいない。遠征か?それにしても、いつもいるあの優しい主神様すらいない。何が遭ったんだ?
俺は、ヘルメス様に尋ねた。
「兄貴がいないんだが」
「あ…アイツは、遠くに任務に出ている。そうだ、お前、ロキ・ファミリアに入団しないか?ファルコンがそろそろ、どこかのファミリアに入れたいって言っていたので、探しておいたんだ」
俺を見るヘルメス様は笑顔だった。後で考えると、兄貴の弟子である俺に、心配をかけないような配慮だったのかもしれない。
「兄貴が?それなら、紹介してください。お願いします」
その頃のロキは、自分好みの人材を優先していため、俺の入団許可が下りたのは、随分と後になった。
---リヴェリア---
ようやく、長老からの許可が出て、念願のオラリオに来た。だが、思っていた以上に大きな街であり、あの方を探せるか心配だ。そんな、おのぼりさん状態の私に声を掛けてきた女性。
「なぁ、うちに入団しなさい。いいね?これがこの街のルールや」
って、何が何だからわからないウチに入団申請をされ、彼女の恩恵を受け、彼女のファミリアの副団長にされた。
「この街では必ず、ファミリアに属さないといけないのや。リヴェリアお前は運がいいでぇ~私の目に止まったんやからな」
運がいい?あの人に会えないのに?
「君も、右も左も分からないうちに、入団させられたんだな」
団長のフィンに声を掛けられた。話を聞くと、街に来てすぐに入団する必要はなく、どこのファミリアにするかの選択権は私達にあるそうだ。しかし、いったん入団すると最低1年は他のファミリアへの移籍はできない上、幹部にもなるとまず移籍は難しいらしい。
「私は、想い人と同じファミリアになりたかったのに…」
「探すのは至難の業だよ。有名人なら別だけど、ファミリアはたくさんあるから探せないぞ」
「ねぇ、聖騎士様を見た事ない?」
「無いなぁ…主力なファミリアにはいないかな」
そうだ。私が有名になれば探して貰えるかもしれない。私は鍛錬をしていき、有名になるように、名に恥じない実力を備えるように、自分を鍛えて行った。
---ヘルメス---
アイツの聖騎士の鎧の欠片が、俺の元に届けられた。神の率いる部隊である聖騎士。その鎧の強度は最上級なのだが、粉々になっている。アイツ、大怪我しているんだろうな。不老不死の副産物で、再生能力もあるらしいが、時間がかかるそうだ。大きめな欠片をフレイヤに届けた。
「なぁ、ヘルメス…生きているよね…カレ…」
「あぁ、不老不死持ちだ。死ぬことはない。でも…生還するには時間がかかるだろうな。アイツの心が心配だよ。目の前で仲間が喰われたらしい。紅白龍の案件もそうだったし」
「生還したら、優しくする。心が癒やせるようにしてあげたい」
「それよりも、アイツらの復讐をリューが派手にやっている。リューの身の安全は確保してあげたい。ギルドのブラックリスト入りは避けられないけどな」
---リュー---
最後のヤツを仕留められた。みんな、ごめん…時間がこんなにかかるとは。あれから数年が経過してしまったかもしれない。時間は、あの時に止まったままなので、よくわからないけど。今はギルドのブラックリストに載り、追われる立場となった。
「ファルコン…」
私は、彼から最初で最後のキスをもらった頬に手を当て泣いていた。もう、逃げる気力もない。みんなのいる場所に行ってもいいよね?
『ダメだ。お前は生きろ!』
えっ?ファルコンの声が聞こえた気がした。周囲を見渡すが、彼の姿は無い。幻聴かな?ファルコン…逢いたいよ~
「ねぇ、大丈夫?」
ファルコンとは違う声が聞こえた。咄嗟に声の主を見ると、私に手を差し伸べてくれる女性。手を握ると暖かい。
「家まで送るけど」
「ないの…帰る家はないの…」
「そう…訳有りなんだね。一緒に来て♪」
女性に案内されたのは、『豊饒の女主人』の裏口だった。
「入って」
私は裏口から厨房に入った。
「訳有りなんだってな。住み込みでな、ここで働かないか?人手が不足しているんだ。」
店主らしき女性に声を掛けられた。私はファルコンの言う通り生きようと思い、彼女の言葉に頷いた。
---アイズ---
お兄ちゃんに教わった通り、剣の鍛錬を続けた。そして、たぶんお兄ちゃんがいるであろうオラリオという街に辿りついた。着くと同時、私はロキ・ファミリアという組織に入れられて、ロキといういやらしい神に、身体を狙われた。
「この身体はお兄ちゃん以外に、触らせない」
「アイズたん♪萌え萌えや~なぁ、添い寝してや~」
今日も主神のセクハラに逢う。いや、逢わない日はない。お風呂にも現れて、私の身体を触りまくる。ステータスチェックといいながら、全身をまさぐる。なんで、こんな組織に入ってしまったんだろう。お兄ちゃん、助けて~
そして私は決意した。本来の私をお兄ちゃん以外に見せないようにして、みんなと距離を置き、近寄る不貞な輩に対しては冷たくあしらうようになっていった。剣の鍛錬も怠ることなく続け、いつか、お兄ちゃんの隣で、戦える日が来る事を待っている。
---リヴェリア(現在)---
アストレア・ファミリアのホームの門を叩いた。対応してくれたのはベートだった。
「リヴェリア、何をしに来たんだ?」
「ファルコン様に逢いたい。呼んでもらえぬか?」
私の申し出に驚いているベート。しばらくすると、彼が現れた。
「何か用かな…あっ…」
普段の私の表情ではなく、今まで封印していた、あの頃の表情を彼に向けた。
「あのリヴァリアか…」
「はい、ファルコン様」
頷く私。
「立派になったな…わからなかったよ…」
彼も驚いたような表情をしたけど、顔はあの頃のままだ。
「約束…果たしてください」
「う~、でも~、ロキの処の副団長なんだろ?」
困った顔をした彼。
「そうですが、ファルコン様とのことはプライベートですから、ファミリアとは関係ありません」
「う~、そうは言っても、一緒には潜れないな。悪いけど」
ファミリアの壁は厚い。副団長である私には良くわかっているけど…私の押し殺して来た自分が暴発しそうである。
「では、私も改宗をしますから、ここに置いてください」
私は彼に土下座をして、頼んだ。
「えっ…なんで…そこまで…」
アイズの呟く声が聞こえた。
「わかった。改宗をしろ。近々潜る。今のうちに仲間と馴染め。あとに、主神に逢わせる」
私は立ち上がり、彼の後ろについていった。