---ベート---
兄貴がまずい状態になりつつあった。そんな時に、ヘルメス様とフレイヤ様が、門から入ってきた。
「アイツら、ファルコンをこんなに追い込んだのか…」
兄貴の変貌しつつある姿を見たヘルメス様が言葉を漏らした。
「リュー!アストレアを連れてきて!早く!アイズ、リヴェリアは退いて!」
フレイヤ様が指示を飛ばす。アイズ達は兄貴から離れ、リューは小屋に飛び込み、アストレア様を連れて来た。
「え?ファルコン…が…あの…騎士様…なの…」
アストレア様は、ヨロヨロとした足取りで、兄貴の背中から抱きついた。
「お願いです…私が供物になります。ですから、怒りを鎮めて下さい」
っと、兄貴に語りかけた。兄貴に纏わり付いた黒いモヤは、兄貴の両側に2匹のドラゴンになり始めていた。
「私も供物になります。だから、怒りを解いてください」
フレイヤ様は兄貴の正面から縋り付いた。兄貴に対して、二柱の女神が祈りを捧げている。
「彼女達で足りないのであれば、俺の命を持っていけ!」
ヘルメス様が兄貴の前に立ち塞がった。兄貴は自分で自分の首を斬り落とすような動作をして、その場に崩れた。
「ごめんなさい…気づいてあげられなくて…」
アストレア様は兄貴に縋り付き、泣いていた。
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兄貴をアストレア様のベッドに運び、アストレア様が添い寝をして、様子をみることになった。俺達は、食卓に使っている広いスペースで、ヘルメス様から、兄貴の過去を聞いた。
古から伝わる、神々のケンカを終わらせたという、供物にされた龍騎士だったこと、ドラゴン達のケンカを終わらせた聖騎士だったこと、兄貴に恐怖を抱いた古の神々から不老不死の呪いを掛けられたことなど…この世界の誰でも知っていそうな伝説、童話、戒め話の元になった人物であった兄貴。
「なので、死に関しては敏感なんだ。死の匂いを嗅ぐと、闇堕ちし始める。注意してくれ。闇堕ちすると、2匹のドラゴンを連れた龍騎士状態になり、無敵になるらしい。これは、以前目撃した者から聞いた話だ」
「もし、その状態になったら、どうすれば良いのですか?」
リヴェリアが質問をした。
「ひたすら、ファルコンの事を想え、そして呼びかけるんだ。戻って来いと。あと、闇堕ちの話はファルコンにはするな。それ自体、アイツを追い込む。知れば、死ねないアイツは、俺達の前から姿を消すかもしれない…俺達が駆けつけられる場所では、俺達で対処するが、ダンジョン内ではお前達が頼りだ。頼むぞ」
「実話だったんだ…」
ぽつりと、ベルが呟いた。
「あいつがこのファミリアにいる理由なんだが、アストレアがいるからだ。アイツの魂が闇堕ちしないように祈願してした2柱の神は、ウラノスと幼い頃のアストレアだったんだ」
それで、あのような事を言ったんだな、主神様は。
---フィン---
仮のホームに戻り、幹部会を開いた。
「アストレア・ファミリアに行って、事実を教えてもらった。アイズ達は自分の意志で改宗した」
「なわけないやろ?おい、フィン、お前も洗脳されたんか?」
ロキは怒り心頭である。コイツが元凶なのにな。
「ロキ、なんで、ベートの素性を教えてくれなかったんだ?」
「なんのことや?」
「ベートは、彼の紹介で、このファミリアに入団したそうじゃないか」
ティオナ、ガレス、レフィーヤが驚いている。まぁ、驚くよな。
「は?そうやったかな?」
「想い人を探しにこの街に来たリヴェリアには、街に入るにはファミリアに入団しないとダメって言って、入団させたよな?」
「そうやったか?う~ん、覚えておらへんな」
俺は反省をしてもらう為、ロキを追い込みたいが、のれんに腕押し状態だ。こいつ…
「アイズに関しても、リヴェリアと同じ上、ステータスチェック時に、身体を弄っていたそうじゃないか。セクハラにも程があるだろ?」
「アイズさんに、なんてことをしたんですか?このケダモノ主神が!」
レフィーヤがロキに対して、怒りを露わにしていた。
「おい、レフィーヤ。セクハラに関しては、お前も同罪だ。お前達二人のセクハラに立腹していたぞ」
「「え?」」
寝耳に水状態の二人。罪悪感なんかまるで無いのか。
「で、今後の体勢なんだけど、団長は俺が引き続き請け負う。副団長はティオネになってもらう。あと、ロキは禁酒しろ」
主神に対して不信感が爆発しそうな俺は、命令した。
「いやなら、俺も改宗をする。いいな、ロキ!」
蒼い顔の主神ロキ。口をパクパクさせている。何かを言いたいみたいだが、言葉に出せないようだ。
「あと…主力が3人も抜けた穴は大きい。なので、アストレア・ファミリアに同盟関係が築けないか打診をしてみようと思う」
「ちょっと待て!アイズ達を引き抜いたファミリアだぞ」
ティオナが反対のようだ。
「引き抜いた訳ではない。自発的に改宗をしたんだ。本人達から事情を聞いてきた。俺は今回の改宗はルール的に問題ないと思う。寧ろ、アイツらがここに残留したいと思わない原因を作ったロキに責任がある」
「だけど…なんで、フィンはそんなにアイツの肩を持つんだ?」
「はぁ…明白な理由がある。彼は僕の憧れの戦士だからだ。それだけだ、ティオナ」
子供の頃に聞いた心優しい英雄の話。自分の命と引き換えに、地上の平和を願った戦士。種族、立場によって話は違うけど、事実もまた違っていた。でも…
「私も団長の提案に賛成だ」
ホームへの帰り道。ティオネと話しながら帰ってきたのだが、彼女にとっても、彼は憧れの戦士だった。
「みんなの為に死ねって…悔しかっただろうね…きっと…」
僕もそう思う。悔しいに決まっている。仲間の元へと旅立つことさえ、封じ込まれているんだから。僕もティオネも想いは同じなんだと思う。彼の隣で戦いたい。その想いは、アイズ、リヴェリア、ベートとも同じなんだと思う。
---ティオナ---
フィン、ティオネの提案に納得がいかない。ギルドでアストレア・ファミリアのホームの場所を聞いて訪問した。
「で、何か用か?」
門にある覗き穴が開き、中からベートの声がした。。
「アイズに会いたい」
アイズと直に話したかった。
「用件は何だ?問題の蒸し返しか?」
「違う…アイズと話がしたい」
「今はダメだ。フィンとティオネのせいで、緊急事態になっている。なので、関係者以外は入れられない」
え?あの二人は何かをやらかしたのか?
「もし、力尽くで入ろうと思っているなら、俺とオッタルが相手になる。どうする?」
お、オッタル?なんで、アイツがいるんだ?
「勝て無いケンカはしない主義だ」
「じゃ、帰れよ」
ベートは門の覗き穴を閉じた。う~、このまま帰るのは、なんだな。アストレアファミリアの敷地を囲うように建つ壁を調べる。どこか侵入できそうな場所はないかな?
一箇所、侵入できそうな場所を見つけた。壁の前に大きな木が、敷地の外に生えていた。これを昇って…壁に飛び移り、敷地内に潜入した。
敷地内にはログハウス風の小屋とテントがいくつかあり、建築中と思われる建造物があった。このファミリアも仮のホームってことかな。
「おい、懲りねぇヤツだな、ロキ・ファミリアは…」
あれ?ベートに見つかった。
「忠告は意味をなさないようだな」
ヘルメス様だ。なんで、ここにいるんだ?
「どうする?生きて返す?」
どういう意味だ?リヴェリア…
「フィン、提案は破棄だ。これはどういうことだ?」
『豊饒の女主人』のウェイトレスのリューだ。なんで、ここにいるんだ?
「ティオナ、お前、何をしているんだ?不法侵入だろ?」
フィンが怒っている。なんか、マズいことをしたかな?
「フィン、はっきり言って、ロキ・ファミリアは信用できない。同盟を組みたいと持ちかけておいて、敵対行為を同時にするって…悪いが帰ってくれ」
私とフィンは門の外に出された。
「ティオナ、何してんだ?信用がガタ落ちだ」
頭を抱えたフィン。
「だって、アイズと話したかったんだよ」
「だからって、敵対行為をするって、どういうことだ?」
「敵対行為なんかしていないよ。門から入れないから、壁を越えただけだ」
「天真爛漫するぎるだろ…あぁ…」
---ヘルメス---
何しているんだ?ロキ・ファミリアは。団長でも団員の暴走は止められないってことか?
「先程の提案はどうしましょうか?」
リューが話し掛けて来た。
「リヴェリアはどう思う?」
「フィンの思いは事実でしょう。ティオナの行動は、アイズにどうしても会いたいと言う思いを叶える為に、天真爛漫な性格が裏目に出たって処だと思います。ティオナ自体は、悪気はないと思います。それが、問題ではあります」
責任を感じていないヤツらが多いなぁ、あのファミリアは。まぁ、主神がアレでは、しょうがいないか。
「フィンだけ、抜く?」
「それは、マズイでしょ、ヘルメス様」
まぁ、ロキは激怒するだろうな、間違いなく。ロキ・ファミリアをどうするかを考えていると、また来たよ。あのファミリアの団員はどうなっているんだ?
---レフィーヤ---
応対に出て来たのはベートだった。
「アイズさんに会わせて下さい」
「はぁ?今度はレフィーヤかよ…もう、ひっきりなしに…ここまで来ると、ウザいぞ!」
ひっきりなし?誰が来たんだ?中にいるのか?
「私も入れてよ~」
「入れないって、言っているだろ?ウザいぞ!」
ベートの野郎、アイズさんを私が救うことに対して、意地悪をするのね…それなら、
「お前?正気か?ここで詠唱するって有り得ないだろ?」
私は魔法を発動して、門を吹き飛ばした。これで入れるわ。でも、中に入ろうとした私を阻む者がいた。
「非常識じゃないか?魔法で門を吹き飛ばして、侵入って」
ヘルメス様…なんで、ここに?
「俺がここにいるのは変か?親友がいるファミリアが、敵対ファミリアに何度も襲撃されているんだ。助けに来て当然と思わないか?」
いつもと雰囲気が違うヘルメス様。こんなに恐い神様だっけ?
「ギルド通達を無視して、この悪事。見逃せないぞ」
悪事?何のことかな?敵対ファミリアって、どこだ?
「そんなに、戦争遊戯がしたいなら、受けて立つ。エイナ、ギルドに連絡をしてくれ。俺の我慢も限界だ」
「わかりました、ヘルメス様」
ハーフエルフの女性が、小走りで出掛けた。戦争遊戯?なんでそうなるかな?
「今、ここのファミリアは、お前らのファミリアの襲撃で、多大な被害を受けている。なので、ヘルメス・ファミリアとフレイヤ・ファミリアが助太刀をする。いいな。異議、異論、反論は一切認めない。戦争遊戯を持ちかけたのは、お前らだからな。帰って、ロキに伝えろ!」
え?何で?意味わっかんな~い…まぁ、いいっか。ヘルメス様が振り向いて、小屋に入っていったので、この隙に敷地内に入った。結構、広いんだ。敷地内を見て廻っていると、
「はぁ…レフィーヤ。なんで、ここにいるの?」
リヴェリアに溜息を吐かれた。
「うん?アイズさんを探しているんです。どこにいらっしゃいますか?」
「お前は状況を分かっていないか?」
「え?何がですか?リヴェリアさんも、一緒に帰りましょうよ♪」
「なぁ、リヴァリア。ロキ・ファミリアはバカばかりなのか?」
って、失礼な事を言われた。言った者の顔を見ると、オッタルさんだった。
「バカというか、自由奔放というか。天真爛漫なヤツが多いかな?」
「バカ以前の問題ってことか。タチが悪いなぁ。悪気は無いんだろう、どうせ」
「悪い事をしたという意識がない。主神がそうだから、仕方ないと言えば、仕方ないか」
なんか、リヴェリアさん達に酷いことを言われているような。
「で、アイズさんはどこですか?」
なんか、頭を抱えているようなオッタルさん、リヴェリアさん。