---フィン---
仮のホームにギルド員数名が来て、僕とロキが応対をしていた。
「戦争遊戯ってなんや?知らんで、そんなことは」
あぁ、僕が口走ったことだな。でも、ソレは回避されたんじゃないのか?
「専属ギルド員の監視している目の前で、魔法で門を破壊して潜入って、真面なファミリアのすることではないでしょ?」
はぁ?僕達が帰った後にレフィーヤがやらかしたのか…
「その直前には、壁を越えて侵入って、真面なファミリアはしないでしょ?」
ティオナの行為か…
「主神であるロキ様は、眷属にどのような教育をされているんですか?」
「みんな大人やから、ガキに教えるようなことは教えておらん」
「で、戦争遊戯なんですが、すでに大規模な被害を受けていて、単独では戦えない状況にあるので、ヘルメス・ファミリア、フレイヤ・ファミリアが助太刀で入るそうです」
「そうか。持つべき者は友やな♪」
たぶん、アストレア様サイドにつくんだと思うんだけど…
「ロキ、ヘルメス、フレイヤ連合で受けて立つわ!」
あぁ、誤解しているぞ…
「何を言っているんですか?アストレア・ファミリアへの援軍ですよ。一方的に敵対行為を仕掛けているファミリアの味方なんか、どこのファミリアもしませんよ」
「何言ってん?ヘルメスもフレイヤも友達だよ~ん!」
ロキ…
「はぁ…この主神に言っても無駄ですね。常識が通じないようだわ」
「何言うとる?お前らより、立場は上やで。神に何をほざいているや?神のすることが常識なんや!」
だめだ…こんな主神じゃ…
「ロキ…僕も改宗したい」
「なんでや?フィン、どないしたんや?」
「ロキ、お前の言動に耐えられない。悪いのはロキ・ファミリアだ。それなのに、その態度は何だよ…」
「あん?神とは下々の者に、こういう態度をするもんやでぇ♪」
ダメだ。感情が抑えられない…
「だから、彼の命を絶たせて、彼の仲間を殺したのか?」
溜め込んできた物を、吐き出し始めてしまった僕。
「なんのことや?フィン…」
僕には優しそうな顔を向けるロキ。
「それだけでなく、彼に呪いを掛けるって、どういうことだ!」
「だから、落ち着けや、フィン。何のことを言ってん?」
何で、この局面で笑って、僕に話しかけられるんだ?このクソ神は…
「古から伝わる神々のケンカの伝説だ…」
「なんや、あんなん作り話やで。真に受けたら、あかんよ、フィン♪自分から首を斬り落とすバカなんか、おらへんで」
「フィン…改宗を勧める。ロキ、ウラノスが毎日、何に祈祷しているか、忘れたのか?」
いつの間にか、ヘルメス様が現れた。足元には拘束されたレフィーヤが置かれている。
「ヘルメス、良く来てくれたん。ギルド員のバカタレ達に、神の偉大さを教えてやってくれや♪」
「おい、てめえ、俺の話を聞きやがれ!ウラノスは何に祈祷を捧げているのか、忘れたのか?」
普段温厚に見えるヘルメス様が怒っている。その怒りのオーラを感じたのか、ロキの表情は次第に恐怖を抱いた物になっていく。
「おい、酒を飲み過ぎて、脳みそが腐ったか?ウラノスは、あの時の龍騎士の無念さ、彼の仲間のドラゴン達の恨みを鎮めているのだぞ。お前、知っているはずだ」
「いや、それ…なぁ…なんで、そんなに怒るんや、ヘルメス…」
「お前、あの石碑にツバ吐いたことがあったよな?」
ロキの悪事が暴露された。この神はそんなマネをしたのか…
「いや、タンがノドにつまって、咳き込んだら、たまたま、かかっただけや…」
「はぁ?あの前を通る度だったよな?知っているか?アストレアは毎日、あの石碑を洗って、祈願をしていたのを。おい、腐神よ!」
だから、あのファミリアにいるのか…
「おい、本当のことをぶちまけてもいいんだぞ、ロキ。俺は調べあげたんだよ。おい、どうする?ふふふ」
こんなに怖い神様だったのかって思う程、今日のヘルメス様は怖い。脚が震えている。
「おい、止めろ!ヘルメス…お前は優しい神でいてくれ…」
あの方の声が聞こえた。両肩をベートとオッタルが支えている。後ろには、アストレア様とフレイヤ様もいる。
「ファルコン…」
両肩の補助を外し、ヨロヨロとした足取りで、ヘルメス様に近寄り、抱きつく。
「頼むから、僕のことで、お前が闇堕ちするな…神が闇堕ちすると死ぬぞ」
えっ…神様って死ぬのか?
「いや、お前の為になら死んでも良い。俺はファルコンの供物で良いんだ」
「それはちょっと嫌かな?女性の方がいいなぁ」
ヘルメス様に弱々しい笑顔を向けたあの方。
「ロキ、ファルコンに救われたな。でもなぁ、次は無いぞ、覚悟しておけよ」
この場を離れるヘルメス様達。僕は付いて行った。
「アストレア…帰ったら、フィンに改宗を…」
「はい♪」
あの方は弱々しい声で、僕の改宗を認めてくれたようだ。
「ヘルメス…無茶しないで…」
「すまない。心配をかけてしまったな」
さっきまでの恐怖感はウソのようで、優しい顔付きで、あの方の顔見るヘルメス様。
「僕は…呪いで…こんなんだけど…みんながいて…幸せだよ…」
「そうだったな。お前は今を生きることが大事だったな。俺も今を大事にしたい。過去は変えられないから…」
「いつか…呪いを解いて…僕の相棒達を転生…させたい…」
「あぁ、いつか、解けるように、俺のファミリアで方法を探してみるよ」
「ありがとう…ヘルメス…」
息づかいが荒くなってきたようだ。
「アストレア、フレイヤ、頼む」
女神2柱が、あの方、ファルコンに寄り添い、何かを注入しているようだ。
「俺達、神に出来るのは、アイツの闇堕ちを防ぐことと、生きる希望を与えることくらいだよ。アイツにした仕打ちに対して、微々たるもんだ」
俺に聞かせるようにヘルメス様が呟いているようだ。女神達から何かを注入されて、息づかいが穏やかになっていくファルコン。
アストレア・ファミリアのホームに近づくと、アイズがファルコンに抱きついて来た。
「お兄ちゃん、大丈夫?ねぇ、一人にしないで…」
「アイズ…大丈夫だ。アイズが干からびるまで一緒にいる」
「約束だよ、お兄ちゃん♪」
---ティオネ---
ロキとヤリ合った後、団長は出て行ってしまった。ロキは団長に出て行かれてしまったショックで、凹んでいた。
ロキ抜きでの幹部会…新団長に私がなり、副団長にはガレスがなった。どうなるんだ、ロキ・ファミリアは。
ティオナ、レフィーヤから事情を聞き、ギルドに謝罪に行く。戦争遊戯に関しては、先方が取り下げてくれたそうだ。しかし、ペナルティーは科せられた。まぁ、それぐらいで済んで良かったか。
そして、再度、幹部会。ロキ、ティオナ、レフィーヤに反省の色は無し。ギルドでも言われたが、自由奔放すぎるのは困る。ロキはわからないが、悪意がない分、罪は重いようだ。
そして、先方に謝罪をして来ないといけない…のだが…何故か付いてくるティオナ、レフィーヤ。
「お前達は帰れ!ギルドから謹慎処分が出ているだろ?」
「ティオネだけ、アイズに会うのはズルいぞ」
「そうです。アイズさんには私も会いたいです」
こいつら…無邪気にも程があるだろ…
「そういう態度だから、ペナルティーが出ているんだぞ」
「悪いことしてないよ」
「そうです。アイズさんに会わせないって、意地悪をする方に、ペナルティーをかけて欲しいです」
ダメだ…フィン、私じゃ、コイツらは制御できないよ~
で、アストレア・ファミリアのホームの前に着く。相手に入って良いかの許可を取っている最中に、あの二人は無断で敷地に入ってしまった。そして、小屋のドアを開けて、中に侵入…団長である私は、ルール通りというか礼儀として、敷地外で許可を待つことにした。
----レフィーヤ---
小屋のドアを入ってすぐの広間みたいな処で、アイツとアイズさんが抱き合っていた。
「アイズ、ソイツから離れろ!」
ティオナさんがアイツに得物を突きつけた。
「おい、どういう事だ?」
「お兄ちゃんに何をするの?ティオナ!」
しかし、アイズさん、アイツも丸腰だ。
「アイズさん、こっちに来てください。一緒に逃げましょ♪」
「そうだよ、アイズ。一緒に帰ろう♪」
「お前ら、こんなことして、タダで済むと思っているのか?」
「丸腰のヤツなんか、怖くないぜ」
って、ティオナさん。が、次の瞬間、『ファイアーミスト』という声が聞こえ、黒い霧のような物に包まれたティオナさん。そして、うめき声を上げて、床に倒れた。霧は消失して、全身がただれて痙攣を起こしているティオナさんがいた。
「僕は丸腰だから、攻撃が出来ないって、言ったかな?」
次の瞬間、首筋に強い衝撃を受けて、意識が飛んでいった私。
---ベート---
懲りないヤツだな。レフィーヤは。首筋に手刀を叩き込んで、意識を飛ばした。床を見るとティオナが全身大やけどを負って倒れていた。オッタルが喰らった魔法だな。
「兄貴。門の処で、ティオネが新団長として、謝罪をしたいって、待ってますが、どうします?」
「ルール通りの者には普通に接しよう。通してくれ。問題は、コイツらだな」
兄貴とアイズがじゃれていたので、みんなは席をはずしていた。奥からみんなが出て来た。
「はぁ?懲りないのかよ」
リューが驚いている。俺も驚いている。ギルドからの謹慎処分すら守れないとは。
「レフィーヤ…ティオナ…酷い…」
オッタルが迎えに行ったティオネが、二人の惨状を目にした。
「なぁ、不法侵入の上、僕に得物を突きつけて、アイズを返せと脅したんだぞ。どっちが酷いんだ?よく考えろよ!何が謝罪だよ、まったく…」
ティオネがティオナに駆け寄ろうとすると、
「おい、勝手に触るな。僕が仕留めた獲物だ。僕のしたいようにさせてもらう。ソッチの寝ているヤツは持って帰れ。要らないから」
兄貴がキレているみたいだ。心のリハビリを兼ねてのアイズとのじゃれ合い。それをジャマされたんだ、キレるよな。
俺とオッタルで、ティオネ、レフィーヤを門の外に出し、再び、小屋に戻ると、兄貴はティオナに回復魔法を掛けていた。
「傷が残るかな?これって、責任取らないとダメかな?よく見たら女の子なんだもの」
あっ…兄貴は、ティオナを野郎と勘違いして、あんな魔法をかけたのか…
「自業自得だよ、お兄ちゃん」
アイズの言うことはもっともだが…
「そうはいうけど、女の子だしなぁ…リュー、どうしたら良い?」
「え?私の意見か?う~ん、改宗させて、ここで回復させていくしかないか?」
「前衛に使えるかな?ねぇ、フィン」
「あぁ、前衛向きだ」
「アストレアに改宗作業をしてもらって。で、フィンには悪いけど、ギルドで改宗届けを出してきて欲しい。ベート、護衛をして」
色々な者の意見を聞いて決断した兄貴。俺は、フィンとギルドに向かった。
---ティオナ---
身体中が痛い…なんで、全身包帯で巻かれているんだ?記憶が曖昧で、思い出せない。
「あぁ、目が覚めましたね」
ナァーザが居る。ここはミアハ・ファミリアか?
「ティオナさんが目を覚ましました」
ナァーザが誰かに声を掛けた。アイズをオンブしたアイツが現れた。
「おい、アイズ、降りてくれ。僕は病み上がりなんだよ」
「嫌~お兄ちゃんの背中がいいの~」
えっ?アイズ…こんなアイズ見た事がない。アイツに甘えまくっている。こんな無邪気な笑顔は見た事がない。
「もう、アイズは…本当に育て方を間違えたなぁ。ははは」
育てた?アイズをコイツが?本当の兄妹なのか?
「ティオナには、このファミリアに改宗をしてもらった。ギルドでの手続きは終わっている」
それって…アイズと一緒に居られる…でも、なんか喜べない。こんなアイズはアイズじゃない。っていうか、なんで包帯塗れなんだ、私は?
「う~ん、リヴェリア、後の説明を頼めるか?アイズが…はぁ、広間でまったりしてくる」
「わかりました」
アイツに代わってリヴェリアが近くに来た。
「彼の魔法でティオナは全身に大やけどを負って、今は治療中よ」
え…大怪我じゃないの?
「彼は、ティオナを女の子と知らないで、焼いちゃったみたい」
いやいや、ロキより胸はあるぞ~
「全身焼き払って、股間にアレが無いことに気づいたんだって、ふふふ。彼らしいわ」
え~、男女の区別ってソレなの?
「でね…女の子の身体に傷を負わせてしまったから、責任を持って、ここに引き取るって。それで、改宗させたのよ」
なんか、リヴェリアも雰囲気が違う。今まで感じていたピリピリ感がない。顔付きも物凄く穏やかだ。アイズといい、リヴェリアといい、何がそうさせたんだ?
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ファルコンの回復魔法で、火傷も徐々に軽い程度になってきた。ロキとは違い、ここの主神、アストレア様は優しく、穏やかな女神様のようだ。ここのファミリアは、ロキ・ファミリアとは違う運営形態のようだ。主神のアストレア様は、眷属の相談に気軽に乗ってくれ、的確なアドバイスをくれる。団長のアリーゼさんは、大怪我をしたそうで、未だにリハビリ、治療中だそうだ。副団長のリューさんは、ファミリアの運営に口を挟まずに、このファミリアにいることを楽しんでいるようだし。
で、このファミリアの実質的な運営をしているのはファルコンだった。しかも、正式な入団をしていないそうだ。理由は神に縛られたくないって、よくわからない理由だけど、誰もそこには触れずに、彼の指示をこなしている。彼の指示に文句を言う者は一人も…いや、一人いる。アイスだ。必要以上にファルコンに纏わり付いて、彼を困らせている。でも、怒る素振りは見せない彼。アイズのしたいようにさせているみたいだ。
「やるときにやれば良いんだよ」
って、ファルコンに言われた。普段はこれでいいらしい。アイズの豹変ぶりに驚いたが、ベートも彼の前では、礼儀正しい紳士のようだ。アイズのことを妹のように接しているし。どうしたんだベート。
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起き上がれるようになると、遠征予定を知らされた。目標額は10億だと。ミアハ・ファミリアの借金の返済目的って。このファミリアに何の徳があるのかと訊くと、
「友達が困っているんだよ。助けてあげないとダメだろ?」
って、言われた。まったくもって、良くわからないファミリアだ。
「で、考えたんだけど、壁から出すより、パントリー狙いの方が良いかなって。壁だと、左右の幅が狭いから、前衛が多いと、攻撃力が落ちるだろうしね」
「パントリーはどう探すんだい?」
フィンが質問をした。
「あぁ、それはヘルメスとウラノスの処に頼んだ。見つけたら知らせてほしいってね。1か月くらいの予定で遠征をしようと思う。18階を拠点にして、ポーターは無しで挑む。いいかな?」
ポーター無し?なんでだ?
「で、前衛はベート、オッタル、アイズ、ティオナ。後衛はリヴェリア、僕。ガードはリュー、フィン。回復はナァーザで挑む。ベルはもう少し強くなったら連れて行く。いいな」
「はい♪」
ヘスティア・ファミリアのベルが返事をした。
「で、潜るまでの間は、ベルの教育係として、フィン、リュー、アイズで頼む。以上、解散だ」
なんか、豪華な布陣だな。
「あっ、そうだ。忘れていた。明日の夜は、ヘルメスがミアの店で僕の快気祝いをしてくれるそうだ。全員参加で頼むね♪ベート、アリーゼを頼む」
「兄貴、了解だ」
団長のアリーゼさんは、小屋内での日常生活は大丈夫だけど、歩くのがつらいそうだ。なので、お出かけの際はベートが背負うそうだ。
「ティオナ、慣れたか?」
リヴェリアが声を掛けてくれた。
「どうにかな。戸惑っていることも多いけど。ロキ・ファミリアとは違い過ぎる」
「ここは特殊だからね。ここでの例外はあなたよ、ティオナ」
「どういう意味?」
「あなた以外は、彼に尊敬の念を抱いている。彼の隣で戦えることを夢見ているの」
「あいつ、そんなに凄い戦士なのか?」
「彼曰くクソ戦士だそうよ、ふふふ」
クソ戦士ってなんだ?
「でも、私達は彼が勇猛果敢な騎士である事を知っているし、誇りに思っている」
リヴェリアの顔が嬉しそうだ。アイツを好きみたいだ。
「私はファルコン様に身を捧げたの。耳も捧げたのよ。うふっ♪」
え~、契りを結んだのか…
「この街に来る前にね。憧れの騎士様だったし。彼の手を無理矢理掴んで、耳に触らせたんだ♪」
リヴェリア、それって、捧げたんじゃなくて、捧げさせたんだと思う。アイツの事になると少女のようになるリヴェリア。アイズなんか、子供のようになるし。何者なんだ?
「よぉ。話中悪いんだけど、ティオナの治療をしたい」
「手伝います」
アイツとリヴェリアの手で、全裸にされる私。私の身体を隅々まで見るアイツ。恥ずかしいんだけど。
「もう少しかな。ナァーザ、薬を塗ってあげて」
「はい!」
薬を塗られながら、回復術を受けると、痛みが和らいでいく。多少の傷は勲章だし、気にはしていない。治療が終わると、包帯塗れにされる。動き難い…