幕間
最高神の間で1柱の神が、下界での出来事を見ていた。
『ファルコンは助け出されたのか…忌々しい龍騎士風情が!』
彼はこの世界の維持神である。元々は天界の神にすぎなかったが、神々の大ゲンカの際に、憎き龍騎士を悪魔界へ堕とした功績が認められて、出世をして最高神の1柱に上り詰めていた。そう、彼がファルコンへ呪いを掛けた神である。
『しかし、アイツの愛する者アイリスと、アイツが殺した魔王の魂は、我が手にある。ふふふ、どう使えば、アイツはもっと苦しむのかな…』
彼の目の前には、この世界の歴史を刻んだアカシックレコードという記録が置かれていた。この世界の並行世界での流れが記録されている。彼は、どの時点で仕掛けるとファルコンへのダメージが大きいかを考えていた。
アカシックレコードは樹木のような記録年表で或る。ターニングポイントに於いての選択肢の分だけ枝分かれをして、IFの世界の顛末を記録されていく。そこから、より長く伸びた枝以外は斬り捨てて、この世界の歴史をより長く刻むのが、維持神の仕事である。
しかし、彼はファルコンへの恨みを晴らすことに重点を置いていた。あの神々の大ゲンカの際、彼の息子達をファルコン達に屠られたことへの恨みだった。
『ほぉ~、ヘルメスとフレイヤが、アイツに加担したのか。では、アイツらにも地獄を見せないとダメだな。ふふふ』
アカシックレコードを見つめて、あるIFの世界を見つけた。
『これだな。ヘルメスとフレイヤの間に子供が出来るのか…神と女神の間に魔王が産まれたら、面白いだろうな』
維持神は、手にした魔王の魂を、彼らの子供の受精卵に宿らせた。
『地獄を見ろ!フレイヤ、ヘルメスめ!あの憎き、龍騎士の味方なぞ、しやがって!あの二人をつぶして、その後にアイリスを使って、ファルコンだな。ふふふ』
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「もう少しだよ、がんばりなさい、フレイヤ!」
出産をしている女神を、2柱の女神が見守っている。母体である女神はフレイヤ。恋多き女神で、地上に降りている男神全員と交わった唯一の女神である。見守っている女神は、ロキ、ヘファイストスという2柱で有り、フレイヤの親友である。
「おぎゃ~!」
「がんばったなぁ、おぉ、男の子やで」
ロキが産まれた子供を手にして、フレイヤへ手渡した。
「がんばったね…あ、父親はヘルメスかぁ…」
フレイヤは魂から情報を得ることが出来た。その為、彼の父親を判別出来たのだ。
「ヘルメスかぁ~。その子の将来は、どうなるや~?恋多き女神と恋多き男神の間に産まれたって…最悪やな」
「ロキ、産まれた子供に罪は無いわ。育てる環境に左右されると思う」
悪態を吐くロキを諫めるヘファイストス。
「でも、どうしよう。地上で神を産むのは御法度だけど…」
母親のフレイヤは不安だった。神は天界で産まれ、天界にて登録されるのが習わしである。彼女の場合、その習わしを破り、地上に降りた男神との間に子供授かり、地上で産んでしまったのだ。
「人間として育てれば問題無いでしょ?バレなければ問題無いわよ」
「そうだけど…」
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天界から地上に降りる神々は少なくない。ただ、迷宮都市オラリオという場所にしか、降臨出来無い。ここは、神々の好奇心や欲望を満たす為に、様々な工夫はされている。地上の者を集める為に迷宮を有し、名誉や富や冒険心を満たすようしている。その集まった地上の者達を、ファミリアという眷属団体に入れて、神々の下僕としていた。
下僕を使い殺し合いを愉しんで見るもよし、富や名声を得るも良し、欲を満たす道具にしてもよし。この街は冒険者達の街という表の顔の他に、神々の玩具箱という裏の顔があったのだ。
フレイヤ、ロキ、ヘファイストス、ヘルメスもファミリアを持ち、眷属も有している。
フレイヤ、ロキ、ヘルメスは冒険系ファミリアで有り、ヘファイストスは鍛冶系ファミリアで有った。ロキは単純に冒険系で有るが、フレイヤ、ヘルメスは諜報活動系に近い。
この街は、ウラノスという神が統べている。彼がルールを決めて、運用、運営をしている法治都市では有るが、天界のルールに縛られるのが嫌で、地上に降りた神々も多いことから、無法地帯に近かった。この街には神々を罰する者がいないから…
フレイヤは、息子のフレイを、この腐った街で育てることを断念した。あまりに薄汚い街で有り、無色透明の魂を持つフレイには、良いはずが無いと分かっているから。せめて、魂の色が定着する間だけでも、清々しい場所で育って欲しかった。
彼女の眷属にいる夫婦者に、フレイの育成を頼んだ。二人には街から離れてもらい、自然豊かなのどかな環境で、フレイを育てて貰うことにした。
そして、月日は流れていき…