※この作品はR-18です。

ラスボスになりたい~   作:もっち~!

17 / 69
初めてのダンジョン

 

ロキはとある女神の元を訪れた。

 

「ロキ、あなたがこんな時間に来るなんて、珍しいわね」

 

「緊急事態や~あの子が、この街に来たでぇ~」

 

「あの子?」

 

怪訝な顔をする女神。

 

「レーヴァティンを帯同しておったわ。間違え無く、お前の息子やで、フレイヤ!」

 

ロキの言葉で、表情から血の気が失せていくフレイヤ。

 

「なんで…あの子が…こんな腐った街じゃ、あの子の為にならないから、戦いのない集落に預けたのに…」

 

「ラキアに襲われたそうや…育ての親達は…」

 

「そんな…」

 

滅多に感情を表すことのないフレイアは動揺で、顔は青ざめ、目からは涙がコンコンとあふれ出していた。

 

「ロキ・ファミリアで預かる。それでいいんやろ?」

 

「えぇ、お願い…実の母がこんなんじゃ…男断ちしないと…純粋無垢なあの子に見せる顔は無いなぁ…」

 

「うちは酒断ちをしようと思う。酒臭いって言うのも有るんやろうけど、うちの顔を覚えていないみたいで…」

 

「あぁ、あなたは…ロキお兄さんって呼ばれていたから…」

 

昔のロキは本当に胸が平らで、幼いフレイの目には男性として映っていた。

 

「あぁ、あれには少し凹んだでぇ~」

 

「あの時、女性だって、訂正しないから…」

 

「で、当分は預かるが、その先はどないする?」

 

「ごめんなさい。突然のことで、どうして良いか。あの子の為には、どうしてあげれば良いか、わからない…」

 

「さいわい、アイズたんとティオナに懐いているさかい、当面は大丈夫や。問題は遠征時の預け先を考えないと…」

 

「それなら、ミアの所に…ミアも面識があるから…覚えているといいけど」

 

「あと、アイツの父親は誰やったっけ?ステイタスは見られないし、恩恵も与えられなかったで」

 

「それは言えない…あの男は父親であるって知らないし」

 

「言っておらんのか?」

 

「言ったら…堕ろせって言うでしょ?」

 

フレイヤの言葉に、今度はロキの顔の血の気が失せていった。

 

「それは、父親も神で…あの子も神って事か~おいおい、天界以外で産んじゃダメやろ?」

 

フレイの出産に立ち会った時のロキは、相手の男が神と聞いていた。しかし、今は記憶に残っていなかった。

 

「だって、産む為に戻れば、二度とここに戻れない…」

 

「そうやけど…どうすんのや?天界の知らん神って、どうなるんや?」

 

「わからない…連れて帰ることが出来るかも、わからない。前例が無いからね」

 

「う~、ともかくや、うちで預かって、育ててみるわ」

 

「お願いね、ロキ。裏からは支えるようにするから」

 

------

 

ロキが戻って来て、ロキ・ファミリアの夕食が始まった。このファミリアでは、基本全員揃ってから食事が始まるのだ。

 

フレイはアイズ、ティオナに連れられて、彼女達の間の席に着いた。

 

「アイズお姉ちゃん、この茶色い石のような物は?」

 

「それは、パンっていう物よ。こうやってちぎって食べるのよ」

 

アイズはフレイに手本を見せながら食事を進めいく。そんな二人の仲睦まじい姿が面白くない者が一名…

 

「おい、そこのガキ!甘えるのもいい加減にしやがれよ!」

 

怒気を含んだ言い方で絡むベート。

 

「バカ犬!黙って喰っていろよ!」

 

ティオナが反撃する。

 

「はぁ?お前ら魅了でもされたんか?こんなガキ、魅力の欠片もないだろ?」

 

「魅力の欠片もないのは、お前だろ?クソ犬!」

 

「おい、そこのアマゾネスよ、俺は犬人じゃねぇぞ!目が悪いんじゃないのか?」

 

「ベート!飯がまずくなる。止めろ!」

 

副団長のリヴェリアが割って入った。副団長からの命令により、言葉が続かないベート。食事が終わり、団長のフィン、副団長のリヴェリア、アイズとティオナはロキの部屋に集められた。

 

「レフィーヤ、フレイ君のことをお願いね」

 

アイズは後輩のレフィーヤにフレイの面倒を頼んで、ロキの部屋へと向かった。レフィーヤと二人っきりになったフレイに近づくベート。

 

「おい、散歩に連れて行ってやる。来い!」

 

フレイの手を引き、外へと歩を進めるベート。

 

「ベートさん、その装備で、どこに散歩ですか?」

 

冒険時の装備をしているベートに、不審を抱いたレフィーヤが声をかけた。

 

「なに、ちょっと街を案内してやるだけだ。心配なら、お前も来い!」

 

レフィーヤは嫌な予感が過ぎり、二人の後に続いた。

 

------

 

その頃、アイズ達は、ロキから簡単な説明を受けていた。

 

「フレイの親から、正式にロキ・ファミリアで保護しておいてやって、依頼を受けたんや」

 

「うん?それはフレイ君の両親を知っているんですか?」

 

アイズは主神に質問をした。

 

「母親の方だけや。父親は知らん」

 

「なぁ、それは母親は女神ってことか?」

 

リヴェリアが次に質問をした。

 

「ノーコメントや。その辺は知らんでも良い。で、遠征時には、ここではない場所で保護してくれるように、頼むようやで」

 

「どこですか?」

 

心配そうに質問をするアイズ。

 

「アイツの育ての親との知り合いにだ。安心第一や~」

 

「なぁ…ロキ…さっきから親指の疼きが止まらなくなってきたんだけど…」

 

フィンが声をかけた。フィンの親指は危険を察知すると、疼く優れ物だった。はぁっとしたアイズは、フレイのいるはずの場所に飛び出していく。その後をティオナが追っていく。

 

「いない…フレイ君がいない…レフィーヤ!どこ?!」

 

アイズとティオナが二人を探し始めた。

 

「どうしたんだ?」

 

パニックになりかけているアイズとティオナに、声を掛けるリヴェリア。

 

「フレイ君とレフィーヤがいないんです」

 

「いない?こんな時間に外に出るはずはないし、出る理由も無いのに…よし、みんなで探そう」

 

------

 

バベルの最上階から街を見つめていたフレイヤ。段々とバベルに近づいて来る、懐かしい魂が見えた。

 

「なんで、あの子が…ロキ…しくじったの?オッタル、あの子がここに近づいて来るの、ロキに事情を聞いてきてくれる?」

 

「御意!」

 

フレイヤ・ファミリアの団長、オッタルは主神の命を受け、夜の街に出て行った。

 

------

 

バベルの地下にはダンジョンがあった。そこの2階層に、フレイ達3名の姿がある。

 

「そうだ。モンスターを倒すと、魔石とドロップ品が手に入るんだ」

 

「ベート先生、わかりました」

 

「それを街で売るとお金になる。お金で物が買えるんだよ。だから、街で狩りと野草摘みはしないで良い」

 

「為になります、ベート先生」

 

フレイの事を良く思っていなかったベートだったが、フレイの知識欲、学習意欲にほだされて、弟子のように思えて来ていた。

 

「良し、今日は3階層まで行こうか」

 

「はい、ベート先生♪」

 

そんな二人の後ろから、心配そうにレフィーヤが見ていた。

 

「ベートさん、そろそろ戻らないと…アイズさん達が心配しますよ~」

 

フレイに教えることに酔ってきたベートの耳には、彼女の心配な声は届かなかった。そして、3階層の中程まで進んだ時に異変が起きた。

 

「フレイ、待て!なんか嫌な風が吹いている…うぁっ!」

 

進行方向から大きめのモンスターの足音が、多数聞こえてきた。

 

「イレギュラーが発生か?レフィーヤ、後続の冒険者に伝えろ!」

 

「了解です」

 

入り口に向けて走り出したレフィーヤ。

 

「フレイ、付いて来い!逃げるぜ…あれ?どこに行った?」

 

フレイを見失ったベート。迫ってくるミノタウロスの大群。

 

「あの数は一人では無理そうだ。アイツ、逃げ足が速いなぁ…」

 

フレイはレフィーヤと共に逃げたと、そう思ったベートも地上を目指して、走り出した。

 

でも、ベートの思惑と違い、フレイは大群に斬り込んでいた。

 

「先生達が、逃げる時間は、僕が稼ぐ」

 

育ててくれた父親から貰ったダガーナイフと、育ててくれた母親から貰った短刀を駆使して、確実にのど笛を斬り裂いていくフレイ。

 

------

 

ダンジョンの入り口に辿り着いたレフィーヤは、ギルド員にイレギュラー発生を告げた。ダンジョンは閉鎖されて、討伐の為にロキ・ファミリア、警護の為にガネーシャ・ファミリアへと依頼をする伝令役が走って行った。

 

「俺で最後だ…レフィーヤ、フレイはどうした?」

 

「えっ?一緒じゃないの?」

 

驚いた表情の彼女。

 

「はぁい?レフィーヤと一緒に逃げたんじゃないのか?」

 

「ベートさんと一緒かと思っていました…」

 

「「まさか…」」

 

置いて来てしまったフレイを助けに行こうか、考えて居た二人の元に、緊急出動したフィン達、ロキ・ファミリアの面々が合流した。

 

「ベート、レフィーヤ…どういうことだ?」

 

リヴェリアは、イレギュラー発生の状況を訊いたつもりだったのだが…

 

「私は止めたんですけど…ベートさんがダンジョンを案内するって…」

 

「おい…誰を案内したの?レフィーヤ…」

 

アイズは彼女を冷たい眼差しで睨み付けた。

 

「フレイ君…」

 

アイズが剣に手を掛けようとしたのを、手で制したティオナが続けて、質問した。

 

「で、フレイはどこだ?」

 

「ダンジョンの中…たぶん…」

 

レフィーヤは泣きながら、アイズに許しを請うように呟いた。

 

「お前ら…冒険者でない者をダンジョンに置き去りにしたのか?」

 

親指の震えが止まらないフィンが、ベートとレフィーヤに向けて詰問した。

 

「結果的…には…」

 

己の行動を後悔しているベートの言葉は少なめだった。

 

「フレイ君!」

 

アイズがダンジョンに走り込み、ティオナが後に続いた。

 

「フィンはここにいてくれ。私とティオネが行く」

 

リヴェリアはティオネに目で合図をして、二人の後を追っていく。

 

-----

 

通路に転がる魔石とドロップ品の数々を追って、アイズ達は5階層に到達した。目の前では、これまで見た事の無い、大きなミノタウロスを前にして、レーヴァティンを構えるフレイがいた。次の瞬間、ミノタウロスは真っ二つに両断されて、消えていった。

 

振り返ったフレイは、モンスター達の血と埃と灰で、ドロドロに塗れているようだ。興奮から醒めきらないフレイは、アイズ達に斬り掛かってきた。

 

「フレイ君…一緒にお風呂に入ろう♪」

 

アイズは無防備に手を広げて、フレイを受け入れようとしていた。その声、その姿、その笑顔、その香り…フレイは立ち止まり、剣を鞘に収めた。そして、自分の身体を見て、

 

「アイズお姉ちゃん…また、ドロドロだよ。お姉ちゃんの服を汚しちゃうよ~」

 

「いいよ。洗えば大丈夫。おいで♪」

 

アイズはしゃがみ、フレイと同じ目線の高さになった。

 

「お姉ちゃん~」

 

フレイはアイズの胸に飛び込み、抱きつき、頬を擦り合わせた。

 

「良く頑張ったね。怪我はしていない?」

 

フレイはアイズの問い掛けに反応せずに、アイズの香り、アイズの感触、アイズの声に心が奪われていた。

 

「大丈夫そうだな」

 

ティオナがフレイの頭を優しく撫でる。

 

「ティオナお姉ちゃん♪」

 

フレイの呼び掛けに、笑顔で応えるティオナ。

 

「さて…と、フレイの稼ぎを拾うかな」

 

そう言いながら、ティオナは、魔石とドロップ品を拾い集め始めた。アイズは、フレイを優しく抱きしめて、彼の興奮状態を解いていく。

 

しばらくすると、後ろからリヴェリア、ティオネが追い付いた。

 

「リヴェリア、フレイ君に回復魔法をお願いします」

 

頷くリヴェリア。

 

「ティオナ、これ全部、彼が?」

 

ティオネがティオナに訊いた。

 

「あぁ、私もアイズも1匹も倒していないから。なぁ、強いだろ、フレイは♪」

 

「信じられない位だよ。魔石換算だけど100匹以上は屠っているよ」

 

アマゾネス姉妹は、二人で魔石を拾い集めていく。

 

「保護だけでなく、遠征に付いてきて欲しいな。ロキと相談かな」

 

リヴェリアは回復の合間に呟いた。

 

------

 

バベルの最上階の部屋で、フレイヤはオッタルから、事情を聞いていた。

 

「ロキの処の狂犬が、あの子をダンジョンに置き去り?何てことをするのよ!」

 

オッタルからの報告を受けたフレイヤは、怒り心頭であった。

 

「たぶん…アイズを巡っての嫉妬心だと思います」

 

「煩悩のなせる業ね…あの子の魂には、そういう物が反映されてなかった…こんな腐った街じゃ、あの子は…」

 

「再度どこか、遠くの集落へお連れしますか?」

 

「いや、この街で、育てましょう。ラキアに再び襲われたら大変だし。この街は腐っているけど、私達の目が届くでしょうから、危ないときは救いなさい、オッタル」

 

「わかりました」

 

------

 

ロキ・ファミリアのホームでは、緊急の幹部会が開かれていた。今回の顛末の報告をリヴェリアからロキが聞いていた。アイズは自分の部屋にいて、フレイを寝かしつけていた。風呂よりも睡眠が先だと、リヴェリアのアドバイスを受けて。

 

「なんてことや!預かっていた者を、ダンジョンに置き去りって…何を考えているんや、ボケ~!」

 

ベートとレフィーヤは後ろ出に拘束されて、ロキの前に跪かされていた。

 

「コイツらを反省するまで、牢にぶち込んでおけ!このアホんだらがぁ~」

 

二人の頭に拳骨を一発ずつ叩き込んだロキ。二人は、外に待たしていた団員達によって、ホーム内にある牢に連れて行かれた。

 

「それでなぁ…遠征時以外は、ティオナとアイズたんは豊饒の女主人に下宿をして欲しいんや」

 

問題の二人が部屋からいなくなると、少し弱った声で話し出したロキ。

 

「あぁ、あそこなら食事の心配は無いですね。1日中、誰かしら居るし」

 

リヴェリアが主神の提案を評価した。

 

「アイツの育ての親とミアが知り合いなんや。アイツが覚えているかわからへんけどな」

 

「それは良いことだと思います」

 

「ただなぁ~アイズたんと別れて暮らすのに、抵抗があるんねん」

 

「この際、ロキの要望はスルーします」

 

「だわね~」

 

凹むロキ。

 

「で、彼は何者なんだ?」

 

フィンから質問がロキに飛んだ。

 

「あの数を一人で…俺達だって一人では無理な数だぞ」

 

「ノーコメント…じゃ、埒が明かないな…どしようかな~」

 

考え込むロキ。しばらく考え込んでから、

 

「そうやな…ココだけの話にしてくれ」

 

頷く幹部達。

 

「死を司る神や…本人は人間として生きているさかい、口外禁止やで~」

 

「えっ…」

 

言葉を失うフィン達。

 

「正確には司るとはいかないけどな。まぁ、そんな感じや」

 

「それって…両親ともに、神ってことですよね?」

 

「そうなんやけど…天界で把握されていないというか、地上で産まれて天界に行ったことがないというか、この先どうなるのかわからんというか…」

 

「彼自体がイレギュラーってことですか?」

 

「まぁ…そんな感じや。さっきの話に戻るけどな~アイツは冒険者には成れない。ステイタスは無い。神の恩恵は自分自身の能力以外に受け付けない。能力は即死だ。アイツの剣が触れたら、まず生きていられない」

 

「危険…」

 

「そうや、危険な者だ。だから、ロキ・ファミリアで保護を依頼された。他のファミリアで暗殺者にされたら、目が当てられない事態になんや。相手方も育成係が天然のアイズたんと、表裏の無いティオナが適任って判断しておるんや。なので、この件は二人にまけせる。いや、あの二人以外に適任はおらんと思う」

 

「それはそれで良いです。遠征中はどうするんですか?」

 

リヴェリアが尋ねた。

 

「ミアとシルにまかせる」

 

「その二人も信用されているんですね?」

 

「そうや。明日から、アイズたん達には、下宿して貰う。アイズたぁ~ん」

 

アイズとの別れに泣き始めたロキ。

 

------

 

アイズ、ティオナに、豊饒の女主人へ連れて行かれたフレイ。入り口からミアとシルが出て来ると、フレイはミアに向けて走り出し、彼女の胸に飛び込んだ。

 

「ニャーさん♪」

 

フレイはミアのことをニャーだと思い込んでいた。

 

「良く来たね、フレイ。随分、逢ってなかったけど、元気だったかい?」

 

「うん…でも、お父さんとお母さんが…」

 

ミアの胸で泣くフレイ。

 

「そうかい…アイツらはフレイを護りきれたんだな。私の誇れる仲間だよ、アイツらは」

 

ミアの目にも涙がうっすらと浮かんだ。

 

「そうそう、フレイに紹介しておく。フレイの実の姉のシル・フローヴァだ」

 

シルとフレイ、いやアイズとティオナもビックリしていた。

 

「え?僕の本当のお姉さん?」

 

「えっ?私に弟がいたの?」

 

「それぞれ、別々の育ての親元で育てていたんだ。父親が違うから…」

 

「「お父さんが違うの?」」

 

シルとフレイが同時に声をあげた。

 

「じゃ、ミア母さんは、実の母と知り合いなんですか?」

 

シルが尋ねた。

 

「ま…そういうことだ。誰かとは言えない約束だから、言えないけどな」

 

少し言いづらそうなミア。

 

「で、普段はアイズとティオナが面倒を見て、遠征中はシルが面倒をみなさい。いいね?」

 

アイズ達は下宿先となる2階の部屋に案内された。そこにはベッドが3つあり、お風呂場もあった。

 

「ここで、普段は暮らしな、フレイ。食事はお店の休憩時間になるからね。シルの部屋は隣だから、気軽に逢いに行くと良い」

 

ミアは部屋を出て行った。

 

「ねぇ、アイズお姉ちゃん、ティオナお姉ちゃん…シルお姉ちゃんになんて声を掛ければ良いかな?」

 

本当の姉と紹介されたシルに動揺をしているフレイ。

 

「どう…って…私は姉妹がいないから…ティオナ、どうなの?」

 

アイズはティオナに質問をふった。

 

「え?あぁ…双子だからな…私は…どうって…どうなんだろうな?」

 

------

 

実の弟に逢ったシルも思い悩んでいた。部屋のドアをノックする音がし、

 

「シル…大丈夫か?」

 

同僚のリューの声が聞こえた。

 

「大丈夫…ちょっと混乱している…だけ」

 

「入るぞ!」

 

リューは部屋に入って来た。

 

「顔色が良くないが、本当に大丈夫か?」

 

「うん…ちょっと、ショックを受けただけ。本当の弟がいたなんて…ミア母さん、今まで何を言ってくれなかったから」

 

「アイツは本当の弟なのか?」

 

「うん…ミア母さんが言うには、フレイ・フローヴァって名前だそうよ。姓が同じだし。それは間違えが無いと思う、ミア母さんは嘘を吐かないしねぇ」

 

「受け入れられそうなのか?」

 

「うん、それは大丈夫なんだけど…私よりも境遇の悪い弟がいたのが、ショックで…もっと早く会えたら、彼の人生は変わっていたのかなって」

 

「それは変わっていただろうけど。けどな、二人が出逢えないように、別々の育て親に預けたんじゃないのか?」

 

あっ!という表情のシル。

 

「そうだよね。そう考えるのが自然だよね。父親が違うから、会えなかったのかな?」

 

「シル、後ろを見ないで、前を見て行こうよ」

 

リューが昔、シルに言われた事を思い出し、口に出した。

 

「そうだよね。これからが大事なんだよね。どう話し掛ければ良いと思う?」

 

「それは難しい問題だよ。私には弟がいないし♪」

 

------

 

夜、店の営業が終わり、フレイの部屋のドアをノックしたシル。ドアから顔出したのはティオナであった。

 

「フレイか?アイズの隣で寝ちゃったよ。起こそうか?」

 

「寝ているならいいで…」

 

話している最中のシルの手を掴んで、部屋に彼女を導くティオナ。

 

「アイズ、起きろ!シルと交代してやれ!」

 

アイズを揺り動かして起こすティオナ。

 

「あぁ…そうだね…」

 

ベッドから起きたアイズは全裸だった。それに驚いたシル。

 

「なんで、裸なんですか?」

 

「うん?フレイ君とスキンシップしたいから♪」

 

「そうなのか」

 

っと、シルも全裸になって、フレイの傍らに横になり、フレイを抱きしめる。

 

「うん?誰?アイズお姉ちゃんの臭いじゃない…」

 

寝ぼけた声のフレイ。

 

「フレイ…シルです」

 

「そうなんだ…」

 

寝ぼけているフレイは、シルの胸の谷間に顔を埋めて、寝息を立てていた。

 

「もしかして、私と寝ないのは、谷間が無いからか?」

 

ティオナが、アイズに質問をした。

 

「今度試して見たら?試さないとわからないよ、ティオナ」

 

「そうだな♪明日の晩は私が添い寝だ♪」

 

「ここで寝ちゃって大丈夫ですか?」

 

シルが、アイズとティオナに声を掛けた。

 

「大丈夫だよ。ベッドはあと2つあるから」

 

アイズとティオナは、自分の寝床で寝る準備をしていた。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。