「でも、どうなんだろう?リヴェリアじゃ、無理な気がするが」
と、心に引っかかりを覚えたフィンが呟いた。
「どうって?」
「魅了されたと思うのは、ロキ、ベート、アイズ、ティオナだろ?みんな表裏がない者達だ。その点、リヴェリアは、表情と思うところが一致しないだろ?」
「あぁ…」
フィンの指摘に一理有ると思ったリヴェリア。
「だが、試す価値はあるだろう?私でも魅了されれば、それはそれで厄介だろうし」
「そうだな」
と、ここで今日の会議はお開きとなり、アイズ達は豊饒の女主人へと帰って行った。
「彼は脅威になると思うかい、リヴェリア?」
「純粋無垢がどう染まっていくかだろうな」
フィンに訊かれ、リヴェリアが答えた。
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翌朝、着替えをしていたフレイは、寝ぼけて、ささくれていたベッドの縁を触り、指先を怪我した。
「アイズお姉ちゃん、指先から血が出て来た」
アイズに指先を向けて、彼女に走り寄るフレイだったが、途中で蹴躓いて、アイズに飛び込む恰好になった。偶然、フレイの指先は、アイズの額に触れたのだが、その瞬間、アイズの背中が光り始めた。彼女の背後にいたティオナが息を飲む。
「アイズ…お前、改宗したみたいだぞ…」
改宗とは、仕える主神の鞍替えをすることだ。
「え?なんで、このタイミング…あっ、フレイ君の血…」
「それだ!」
フレイの血を額で受けたことで、フレイの眷属になってしまったアイズ。
「アイズお姉ちゃん、こういう場合はどうすれば良い?」
事態が把握できないフレイは、指先をアイズに見せていた。
「舐めれば治るよ」
「おい、アイズ、それは民間伝承だぞ」
ティオナがアイズに指摘をしたが、フレイは指先を舐めていく。すると、
「あっ、本当だ。治ったみたい。傷が消えた♪」
この現象に驚くティオナ。
「フレイの唾液って、回復薬並なのか?」
「凄い♪本当に治っている」
驚くティオナ。喜ぶアイズとフレイ。
「しかし、アイズだけ眷属って、ズルいだろ?」
アイズを睨むティオナ。それに対してしたり顔のアイズ。何で、二人が相対しているのか、わからないフレイは、あたふたしている。
「それだけ、私のフレイ君への思いがいっぱ~いってことなのよ、ティオナ♪」
ティオナを挑発するような目付きのアイズ。
「お前!」
ティオナがアイズに掴みかかろうとした瞬間、ドアが突然開き、ミアが顔を出した。
「何をしているんだ?フレイの前で諍いを起こすんじゃないよ!フレイのいないところでしなさい」
ティオナとアイズに雷を落とすミア。しゅんとする二人。強者である二人であったが、ミアの気迫に勝てそうもなかった。
「で、何が原因だい?」
事情を聞く彼女に、ティオナが説明をした。
「アイズがフレイの眷属に?本当かい?う~ん…こういう場合、どうすれば良いかな。ファミリアを、設立したことがあるロキに訊いて来なさい。眷属を持ってしまった以上、ファミリアは設立しないとダメだろうからな。朝飯を食ったら、行っておいで」
そう言ってミアが部屋を出て行った。
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朝食を食べて、三人はロキ・ファミリアのホームへと向かった。食事の後片付けをしているミア達。
「みんな、もう一花咲かせてもらえないか?」
ミアが従業員達に声を掛けた。
「私はどうすれば良いですか?」
シルがミアに質問をした。
「シルは戦士では無いが、眷属になってあげろよ。アイツにとっての家族になってあげろ」
「団長は誰がするんニャ?」
猫人のアーニャが尋ねた。
「勿論、私だよ。文句あるか?」
ミアの気迫を前に、誰も異論を言う者はいなかった。シルを除く、この店の従業員全員、元冒険者の戦士であった。
「副団長は、フレイに懐きすぎているアイズが良いけど、ロキがどう出るかだな」
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「なんやて?アイズたん…」
ティオナから今朝の顛末を聞いたロキは、言葉を失った。ロキの前で、アイズの背中にステイタスを表示させて、フレイはリヴェリアと別室に移動した。
現在のステイタスを羊皮紙に転写させて、前回のステイタスと見比べるロキ。
「う~…各ステイタスが200位ずつ上昇しているやん。当然やけどランクもアップや…」
「それって、ロキの恩恵の方が低いってことか?」
フィンの言葉に項垂れるロキ。
「悔しいけどな…フレイの恩恵はデカイ…で、アビリティは『愛護戦士』と『じゃが丸君大好き』って…」
「前者は予想が付くけど、後者はなんだ?」
「『愛護戦士』は、主を護る戦い時に、ステイタスが上昇するとある。で、『じゃが丸君大好き』は、空腹時に念じると、じゃが丸君が出現するって…」
「前者は、フレイの要望で、後者はアイズの希望って感じみたいだな」
ニヤニヤするティオナ。
「で、ロキ。アイズの改宗は認めるのか?」
団長のフィンは主神に訊いた。
「認めるも何も…拒否出来無い…」
「出来無い?どういうことだ?ギルドに申請前なら取り消せるだろ?」
ロキの言葉に反論するフィン。
「あぁ、表向きのルールではな。ほんまのことを言うとな、1年経たんと神の血が薄まらんので、他の神の血を受け付けないだけなんや。実際はな。でだ、フレイの場合は、1年でも薄まらない可能性があるんや…神の力の制限を受けておらんから」
「それって、表向きはロキの眷属であるけど、実際はフレイの眷属のままか?」
「そうや。フレイが死なない限りは…いや、死なれては困るけどな。困ったなぁ…アイズたんが…なんで、ティオナで試さないんや?」
「しょうがないだろ?アクシデントの結果だ。私だって、なりたいよ~」
凹んでいるロキとティオナに向けて、笑顔でVサインをするアイズ。
「アイズ…空気を読めよ~」
フィンは頭を抱えた。
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リヴェリアの部屋に連れて行かれたフレイは、リヴェリアの服装に興味を持ち、彼女の服の裾を捲り、いきなり中に潜った。
「えっ?何をするんだ?」
フレイの行動が読めなかったリヴェリアは、プチパニック状態に陥る。
「へぇ~、服の中はテントの中みたいなんだね。お姉さんの香りが充満しているし」
「おい、出て来なさい。臭いは嗅がないでよい。それより、服の中は遊び場じゃないんだ。えっ?」
フレイはリヴェリアの身体をよじ登ろうとしていた。登る為のとっかかりを探していた彼の指は、偶然何かの穴に入った。
「ダメっ…そこはダメよ~」
感じたことのない刺激が彼女を襲い、下半身から力が抜け座り込む。その際、彼女の膝で服の外へと出されたフレイ。
「うん?お姉さん、大丈夫?顔色が良く無いよ」
リヴェリアに肩を貸して、ベッドまで彼女を連れて行く。全身から力が抜けていくような感覚の彼女は、ベッドに横になった。
彼女の状態は、フレイの目から見て、苦しそうに見えていた。
「お姉さん、苦しいの?今、楽にしてあげるね」
フレイは親切心から、彼女の服を脱がせていった。そんな彼の目に、彼女のある部分からの出血が目に入り、舐めれば治ると思い、舐めていった。
「ダメ…そこは…あっ!」
感じたことない解放感により、彼女は意識が飛んでしまった。そんな彼女を見たフレイは、死んでしまったと思い、心臓マッサージを施そうとした。だが、彼女の乳房の張りは、フレイの腕力では押し込めなかった。彼女にとって、心地良い刺激程度であったのだ。
「あぁ…はぅ…」
息を吹き返したと思ったフレイは、今度は人工呼吸をしようとする。口と口を合わせているだけのフレイ。鼻を摘まんで息を吹き込む物だとは知らないフレイは、彼女が反応するまで、口と口を合わせ続けていく。中々目を覚まさない彼女にあせり、口を合わせる角度を模索していく。そんな中、リヴェリアの耳に触れてしまい、彼女はついに達した。モラルに縛られていた彼女の精神は解放されたのだ。
そんなことはフレイにはわからなかった。エルフ、ハイエルフの耳の重要性を知らなかったから…リヴェリアは余韻に浸りながら、平常心に戻ってきた。うっすらと目を開けると、
「あっ、お姉ちゃん…生き返ったんだね♪」
って、喜ぶフレイの姿が目に入ってきた。
「お前って、行動が本当に読めないな…やられたよ…責任は取ってもらうよ♪」
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「で、どうだったんだ?」
フィンから訊かれたリヴェリア。
「良かったよ♪」
彼女の返答に、驚くフィン。
「良かったって…何をされたんだ?」
「そんなのは、他人様の前で言えない」
今まで見た事の無いリヴェリアの恥じらう姿に、狼狽えるフィン。
「リヴェリアまで…」
「私まで何なんだ、フィン?」
「いや、魅了されたんだなって」
「魅了はしていない。惚れたというか…」
恥じらいの表情を見せたリヴェリアに、更に驚くフィン。
「どうして…そんなに女性らしくなったんだ?」
「はぁ?私は元々女性だぞ、フィン。お前は失礼なヤツだな」
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ギルドに来たティオナ。ロキに言われてファミリアを設立するためだ。フレイには神であることを知られたくないので、アイズと共に帰した。
「お~い、エイナ~」
ティオナが顔馴染みのギルド員に声をかけた。
「どうしましたか、ティオナさん」
ハーフエルフのエイナ・チュールがティオナの前に来た。
「新しくファミリアを設立したいんだけど」
「新しく?どなたが設立するんですか?」
別室に連れて行かれて、地上に降りて来た神のリストらしき物を、出して来たエイナ。
「リストには無い。その場合はどうすれば良い?」
「無いって…天界から降りて来たんじゃないんですか?」
「地上で産まれた場合って、どうするんだ?」
「え…そんな神がいるんですか?」
ひそひそ声になるエイナ。つられてティオナも小さな声になった。
「あぁ…」
「少し、お待ちください…」
奥に引っ込むエイナ。長い時間待たされて、エイナが戻ってきた。
「神会で承認されないとダメみたいです」
「それは、代理の神の出席でも良いか?」
「どうしてですか?」
「本人は人間と思って生きているから…」
「初めてのケースなので、ギルドとしても戸惑っています。事情が有るようですので、代理の神でも大丈夫だと思います」
「じゃ、神会の日取りが決まったら、ロキに知らせてくれ。彼はロキ・ファミリアで預かっているから」
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「地上で産まれた神がいる?本当か?」
ヘルメスが驚いた顔でウラノスに訊いた。
「そのようだ。今、ロキの所で預かっているそうだ」
「はぁ?そんなヤツ、認められないだろ?どこのバカだ。その両親となった神は?」
「わからない。ガードが固いようだ。ヘルメス、探りを入れてくれるか?」
「俺がか?気にくわない場合、その新顔は消していいか?」
「いや、アレに使えるようなら、使いたい」
「闇のヤツラの吸収か?」
「純粋無垢な神であれば、闇を吸収出来るからな。ダンジョン内の闇を一時的に低下させることが出来るだろう」
「わかった。そうなることを願う。天界の知らない神なんて、存在しちゃマズいだろうよ」
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「あははは♪」
「なんだよ~、アイズ!」
ティオナもフレイの眷属になったのだが、アビリティに『愛護戦士』の他、『豊満絶頂』なる物が現れた。
「お風呂で念じると胸が理想な大きさになるって…そんなことを願望していたのか?」
リヴェリアがあきれたように言う。
「悪いですか?巨乳にはわからない悩みですよね。くそっ…」
みんなにバカにされたティオナに寄り添うフレイ。
「ティオナお姉ちゃん…僕はお姉ちゃんの胸好きだよ。僕の手の平サイズなんだもの♪」
って、慰めにならない言葉を伝えた。しかし、
「フレイは、優しいなぁ。大好きだよ、フレイ♪」
彼を抱きしめるティオナ。
「あっ、ズルっ…彼の同情を誘うなんて、反則よ!」
アイズは文句を言うが、ティオナはスルーした。
「まったく、お前らは…彼の眷属になったんだから、それだけでも喜べよ」
ロキ・ファミリアの副団長であったリヴェリアは、望んだのに彼の眷属には成れなかった。ロキ、フィンから強く禁止されたのだ。
「リヴェリア…魅了されないんじゃなかったのか?」
「されていないわ。フィン、おかしなことを言うのね」
「やっぱり、魅了されたって意識出来無いのは、厄介だな」
「だから、私は魅了なんかされていないって。何を言っているの?フィン!」
改宗をさせて貰えなかった怒りをフィンにぶつけるリヴェリア。
「やっかいやな問題や。で、ティオナ、感触はどうだったんや?」
「神会で承認が必要だって。で、代理神にロキの名前を出しておいたよ」
「そうか。承認なぁ…両親を探すんやろな。暇な神が多いんやし。はぁ~」
溜息を吐くロキ。
「そうや、神会が終わるまで、フレイのガードは固くしといてな。認めん神が何をしでかすか、わからへんから」
この時、ロキはまだ、フレイに近づく危機には気づいていなかった。
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徐々に街になれてきたフレイ。ファミリアの設立を認めて貰えないので、眷属はアイズとティオナだけではあったが、ファミリアの意味がよくわからないフレイには問題の無いことであった。
ある時、ロキ・ファミリアは遠征に行くことになった。当然、アイズ、ティオナも参加することになった。
「どこの依頼ですか?」
フレイから離れることに不満を持ったティオナから、フィンに質問が飛んだ。
「ヘルメス・ファミリアだ。30階あたりのドロップ品を調査して欲しいとのことだ。先日のイレギュラー発生後に、どう変化をしたかを知りたいそうだ」
「どの位で戻って来られますか?」
今度はアイズから質問が飛んだ。
「そうだな…3週間くらいを見ている」
「そんなに、フレイ君に会えないの…」
凹むアイズ。
「どんだけ、フレイ中毒なんだ。お前らは」
フィンが苦笑いをした。そして、依頼をこなす為に、ロキ・ファミリアは遠征を開始した。
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「アイズお姉ちゃんとティオナお姉ちゃんが、仕事でいないの?」
「そうなの…お部屋で一人になるのよ…休憩になったら、顔を見せに行くから、大人しく待てるかな?」
シルがフレイに、アイズ、ティオナの遠征のことを伝えた。この街に来てから、ずっと一緒にいてくれた彼女達が居なくなり、一人でいる時間が多くなったフレイの心は閉じていく。
「ミア母さん、フレイが…」
「あぁ、わかっている。集落でも一人でいることは少なかったから。孤独はアイツにとって苦痛なんだよ」
「どうすれば、良いですか?」
「シル一人では手に負えないだろうな。あっ…一人心当たりがいる。頼んでみるよ」
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翌日、フレイの顔に笑顔が戻った。知り合いが来てくれて、久しぶりに街を散歩出来ることになったから。
「タルお兄ちゃん、久しぶり~」
オッタルに抱きつくフレイ。
「デカくなったな、フレイ」
抱きついてきたフレイを抱き抱えるオッタル。
「じゃ、散歩してきます、ミアさん」
「フレイを頼むよ」
散歩に出るオッタルとフレイを見送るミア。
「どこか、行きたい所はあるか?」
「無いけど…こうして、誰かといたいんだよ」
オッタルの顔を見上げる、笑顔のフレイ。
「そうか…」
オッタルは警戒をしながら、散歩をしている。ロキ・ファミリアの遠征に、裏があるように思えたから。ヘルメスの依頼内容が、そもそもおかしな物であった為、ロキからフレイヤに相談があったのだ。
オッタルとフレイの周囲を、通行人として街に溶け込んだフレイヤ・ファミリアの団員でガードをしていた。
しかし、一瞬の隙を突かれて、フレイの姿が突然消えた。オッタル達が周囲を探すが、フレイの姿を見つけ出す事は出来なかった。