ヘファイストスが目覚めると、オラリオではない場所、天界でもない場所にいた。
「ここは…?」
「ようやく、目覚めたようだね」
知らない男性に声を掛けられた。神のようであるが、見た事のない男神であった。
「あなたは?ここは?」
「私は維持神ヴィシュヌ。ここは君達のいた天界よりも上にある天上界だ」
天上界に住む神は、ヘファイストス達よりも神格階位は上で、天界の神々よりも神々しい存在であった。
「どうして、私は?」
「彼がねぇ…最後の力を振り絞って、自分自身を消そうと、時間を遡ってしまって。天界の神ですら禁止している行為を、地上の神がするのは御法度だよ」
「フレイが?どの時点まで遡ったんですか?」
「受精した瞬間だ。そこで殺せば、母親には流産という結果が出るから。その後の時間の流れで、誰も彼に気を留めなくなる」
「彼はもういないんですか?」
「君の記憶にあるってことは、まだいるってことだ。今、燃え尽き掛かっている彼の魂を再生しているところだ。転生させるには、魂が弱々しいんだよ」
「フレイは転生できるんですか?」
「させる。あんなに純粋な心を持つ神は珍しい。最後の最期まで、自分の身を犠牲にしても、君達の安全を望んでいたんだから。あの腐った街で、暮らしている神の中で、一番神らしい神だ。天界に登録されていないのが難点だけどな」
「彼は転生しても悪魔なんですか?」
ヘファイストスは、一番心配をしていたことをきいた。
「いや、神だよ。天界に登録は私がする。今までと違うのは、年齢と耐性になるかな」
「年齢と耐性?」
「年齢は、今まで生きてきた分を入れて転生させる。せっかく吸収した知識をロストさせるのはおしいしな。ただ、地上の者達と接していた記憶はロストしてもらう。耐性に関しては、今回の件で耐魔、耐闇の属性が付加される。あぁ、そうそう、時間を遡れる能力もロストしてもらうよ。あれは最高神レベルの神にしかできない能力にしたいから」
「私達の記憶もロストですか?」
「いや、神は転生しないから。まぁ、彼は例外だ。あのままでは生きられないレベルにまで、自分を削ってしまったからね。彼の本当の両親、ヘルメスとフレイヤという事実もそのままだ。少し環境は変えさせてもらうけど。あの両親の元では彼はダメになる。いや、彼の姉もだ。彼ら姉弟は、ヘファイストス、君の元に里子に来たという設定になる」
「私の子供…」
「実際の子供ではないから、伴侶に育てあげるのも有りだ。ただ、両親がアレだから、彼はガールフレンドをたくさん作るかもしれない。嫉妬をせず、暖かく見守るなり、寄り添うなりしてくれると、助かる。あと、関わった神ロキは、そのままのポジションだ。問題はウラノスだが、ギルドの主神という立場からは退場してもらう。祈祷に専念してもらうことになる。その代わりをしてもらうのはフレイにする。彼なら、親身にトラブルに対処してくれるだろう」
「フレイはファミリアを持つんですね?」
「そうだ。あぁ、大事なことを言っておく。彼は神ではあるが、ダンジョンで冒険もできる。さっき伝えた付加された耐性のおかげでね。で、僕の介入はここまでだ。後はよほどマズイ状況でない限り、介入はしない。君達の世界を暖かく見守っているから」
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ヘファイストスを地上へと戻した後、維持神はフレイの魂を見ていた。
「まだまだ、君にやって貰う事がある。魔王としての成分は抜いたよ。でもね、魔王として生きて貰う。神なのにね。苦しめよ。ヘルメスとフレイヤの息子よ!お前は、英雄に殺される運命なのだ。英雄が英雄になる為の糧になるのだ。そして、その英雄の子孫に俺が転生する。そして地上を俺の支配下にするのだよ。その時、アイリスを使って、ファルコンを苦しめてやるよ♪ふふふ」
しかし、維持神は気が付いていなかった。フレイの魂に魔王としてではなく、ダークフレイという魂の欠片が残っていたことに…
「今回の大役が終わり、次はアイリスと兄妹となり、アイリスをお前の性の奴隷にしてやる。これまでのご褒美だ。その後は、コキュートスで永遠に封印してやるよ、フレイ♪」
維持神は将来の風景を思い浮かべ、笑みを浮かべている。
---ヘファイストス----
「母さん、こんな場所で寝ると、身体に良くないですよ」
息子の声で目が覚めた。執務室のデスクに頭をもたげて寝てしまったらしい。私の背後から、私の肩にガウンを掛けてくれた息子、フレイ。
「あぁ、ありがとう」
息子の手を握り絞めた。
「最近、疲れているんじゃないですか?たまには、以前みたいに添い寝します?」
笑顔の彼が私の顔を覗き込んできた。
「頼めば、添い寝してくれるのかな?」
彼は、私の手をエスコートして、私のベッドに連れて行ってくれた。そして、全裸になり彼と添え寝をした。彼とのスキンシップは心地良い。心が洗われるようで、疲れが消えていく。
「昔みたいに、顔を胸の谷間に埋めるかい?」
「う~ん、身体が反応しちゃうから、やめておきます」
はにかむ彼。息子はもう大人の階段を昇り始めた青年だった。昔と変わらずに、無邪気ではあるが、以前娘と添い寝した際、身体の一部が反応して、あやうく実の姉と交わりそうだったらしい。娘はウェルカムだったようだが、息子は凹んでいた。あの姉弟は異父姉弟であるから、本来は交わってはいけないんだろうけど、共通の母親が女神であるので、問題は無いと思う。私にしても、血の繋がらない親子で有るので、ウェルカムなんだが、息子は避けていた。無理矢理関係を持とうとは、私も娘も思ってはいないので、彼の心次第ではある。
そして、しばし、息子と肌を合わせて睡眠をした。
---フレイ---
朝、母さんが起きるのは遅い。深夜に作業することが多いから。朝、僕と姉で食事の支度をして、母さんの分を別にして、僕達だけで食事をする。その後、姉はバイト先、豊饒の女主人へ出勤。僕も勤務先のギルドへと出勤する毎日であった。
出勤途中、素行の悪いファミリアの団員に絡まれていた女性を見つけた。エルフと人間のようだ。二人とも壁に押し付けられて、手足を拘束され、胸や下腹部を弄ばれていた。
「おい、何をしているんだ?」
「はぁ?痛い目に遭いたくなかったら、大人しく見ていろ」
得物の刃先を僕に向けてきた輩。僕は迷わず、彼を斬り捨てる。その行為に彼の仲間が激怒して、彼女達から離れて、僕に襲い掛かってきた。僕は躊躇無く、素行不良者を斬り捨てていく。騒ぎが大きくなってきて、オッタルやフィン達が駆けつけてきてくれた。この街の治安はアストレア・ファミリア、フレイヤ・ファミリア、ロキ・ファミリアなどで護っていた。
「オッタルさん、こいつがいきなり斬りつけてきたんですよ~」
オッタルに僕という犯人を突き出そうとする輩。
「はぁ?お前ら、誰にケンカを売ったのか知らないのか?彼はフレイ・ファミリアの主神だぞ」
僕の名前を聞いて、恐れおののく輩達。僕の両親は神らしく、そのおかげで僕も神らしいのが、実感のない僕は人間として生きていた。
「アイツが…【血まみれ】フレイ?マジかぁ~。助けてくれ~」
【血まみれ】って二つ名を持つ僕。戦闘後に、血まみれになっていることが多いから、神会でついたらしい。
「フレイ様、朝からご苦労様です」
フィンに感謝されているようだ。
「パトロールを強化した方が良いかな?次の会議の時に議題に出してくれるかな?」
「わかりました。ロキに言っておきます」
不貞な行為をした輩の生き残り達は、自警団により捕縛されて、連れて行かれた。
「大丈夫?」
二人の女性の前に立ち、状態を聞いた。
「ありがとう~。私はアストレア・ファミリアの団長のアリーゼ。彼女は団員のリュー。私達も自警団でパトロールしていたら…」
「あぁ、女性だけでは危険だよ。この街は…う~ん、そうだ。人手が足りないなら、今後は僕が一緒にパトロールするようにするよ」
「あなたは神なんですか?」
オッタル達との会話を聞かれたかな?
「違います。僕はギルド員です。あの方達は誤解をされているんです」
ぐったりとしたリューさん。エルフである彼女は、耳に何かされたのだろうか?僕はリューさんをオンブして、アリーゼさん先導の元、アストレア・ファミリアのホームへと向かった。