---フレイ---
「ちょっと、フレイ!起きなさい!」
リヴェリアに起こされた僕。
「ふへぇ?何か…遭った…くぅ…」
「おい、寝るなよ。この子を、眷属してあげなさいよ!」
この子?誰だっけ?首を少し持ち上げると、満面な笑みの女の子がいた。あぁ、ソーマの処の女の子か。
「お前、この子を、あの劣悪環境に戻すのか?」
あぁ…そうだよな。こんな幼い子供に、あんな惨い躾という暴力を振るうファミリアじゃ、かわいそうだよな。リヴェリアが言うのももっともなので、僕は自分の指先を傷つけて、彼女の額に押し当てて、血の契約をした。あぁ、ついでに、隣で爆睡しているエイナにも♪で、傷を治そうと自分の口に持っていこうとしたら、リヴェリアに手首を掴まれて…おい…リヴェリアの行為に目が点な僕。
「これで、私も眷属だな、フレイ♪」
満面の笑みのリヴェリア…これが、狙いか?寝ぼけていた僕の頭は、一気に目覚めた。
「まさかと思うけど…」
一応尋ねようとすると、言葉を遮り、
「フレイの思い至った通りだよ。ふふふ」
こいつ、意外に腹黒いのか…はぁ~凹む。迂闊だった。
「どうしまし…え?フレイ様、何かしましたね!」
僕とリヴェリアのヤリトリのせいで、エイナが目覚めた。身体に何かの変化を感じたのか、起きて直ぐに僕を睨むエイナ。
「言いなさい!何をしでかしたんですか?」
エイナの怒りのオーラをひしひしと感じる。僕から離れて、こんなに強くなったんだな。感慨に浸っていたのだが、
「言えないことをしたんですか?まさか…」
自分の秘部を確認するエイナ。
「いや、入れていないよ~」
「はぁ?何で入れないの?」
え?そっちで怒っているの?
「で、怒らないから、何をしでかしたんですか?」
既に怒っているだろうに…これ以上怒らすと、僕の身が危険かな。
「この子を眷属にしました」
僕の胸の上でまったりしている女の子を指差した。
「それだけ?」
「リヴェリアが強引に眷属になりました…」
「はぁ?副団長なのに良いの?」
エイナの問いに、笑顔で応えるリヴェリア。
「あとは?」
「出来心で…エイナも眷属にしました…ごめんなさい」
エイナが固まった。激怒する準備かな?どうしよう。でも、予想と反して、エイナの顔と耳が紅色に染まっていく。激怒した時と違いほんのりと染まっていく。
「これで…ずっと…お傍にいて良いんですね、フレイ様♪」
泣きながら、身動きが取れない僕に抱きつくエイナ。あん?待ち望んでいたのか?
「じゃ、改宗の書類は私が用意します。そうだ、あなたのお名前は?」
僕の上にいる女の子の名前を訊くエイナ。あっ…マズい。また、名前を聞く前に眷属にしてしまった。アリーゼには内緒にしておこう。
「私の名前は…リリルカ・アーデでございます。リリと呼んでください。両親は揃ってソーマ・ファミリアでして、私は産まれた時からソーマ・ファミリアの団員でございました」
「ご両親は、ご健在かな?」
「いえ、両親は神酒のせいで、無謀な冒険をして…」
笑顔が崩れたリリ。僕は彼女の頭を優しく撫でてあげる。
「そうか…フレイ様の目的の大義名分が増えましたね」
「あぁ…あの酒の被害者を減らさないとな、エイナ」
「で、私はギルド員のままですか?」
「そうだけど…何か、不満かな?」
「う~ん…っと、お願いがあります。フレイ様のホームに住みたいです」
「あぁ、いいよ。部屋を用意する」
-------
フィンの部屋を訪れた僕。大事な用件が…気が乗らないけど…
「フレイ様…親指が先程まで疼いていたのですが、何か起きましたか?」
あぁ、そうだね。アレは危険な出来事なのかもな。
「フィンに言わないといけない事ができた。その後にフィンに選択をしてもらう」
僕の表情を読み。僕の雰囲気を感じ、何かに思い至ったフィン。
「はぁ~、リヴェリアが暴走したんですね。で、俺は?」
「いいのか?」
「いいも悪いも、リヴェリアとセットって、約束ですよね」
そうだね。約束は守らないとダメだな。まだ、傷口が塞がっていない指先を、フィンの額に押し当てて、口の中に入れた。
「これで、俺も眷属ですね♪」
「だな…ロキ兄になんて言おう…」
凹む僕。
「それは、俺達の方でどうにかします。フレイ様が関わると、大きくなるすぎますから」
そう。それなら、そうしてもらおう。フィンの部屋を出て、自分の部屋に戻ると、リリはエイナに事情聴取をされていた。
僕と目が合うと、リリが走り寄ってきた。しゃがんで、リリと同じ目線になるようにして、話しかけた。
「どうしたんだ?」
「傍にいてください…フレイ様…」
彼女の頭を優しく撫でる。
「そうそう、リリの能力って何だ?18階にいるってことは、冒険者なのか?」
小さいながらも18階にいるってことは、冒険に必要な能力持ちってことだし。
「戦闘は得意では無いです。ポーターなどのサポーターでございます」
「小さいのにポーターなの?」
身体が小さいなので、そんなに運べないだろうと思うんだけど。
「『縁下力持』って能力で、一定以上の装備過重時に、重量に補正がかかるのでございます。ですので、いくらでも、お運びできます」
それは便利な能力だ。
「他にも何かある?」
「あとはですね、『シンダー・エラ』という魔法を持っております。これは、体格が大体同じなら、どんな姿にでも変身できるのでございます」
小人族の彼女は犬人に変身したようで、耳が犬のようになった。
「それも便利だな。うん、じゃあ、今後も潜る時は頼みます♪」
「はい、フレイ様♪」
そうなると…う~ん…
「エイナ、リリ。ちょっと、出掛けてくる」
「え?どこに?」
不安そうなリリ。
「何かしでかすんでわないですよね?」
僕の行動をあまり信用していないエイナ。
「いや、問題は起こさない。この先、必要な物をね」
僕は宿屋を出て、目的の場所で作業をして、宿屋に戻った。で、みんなを僕の部屋に呼び出した。
「今度は何をしでかしたんだ?」
エイナ同様、僕の行動を信用していないアリーゼ。
「まず、エイナ、リリを眷属にして、フィンとリヴェリアが改宗した」
「「え~!」」
アリーゼ、リューが驚きの声を上げた。まだ「改宗」の意味を知らないアイズ、ティオネ、ティオナは、表情が変わらない。
「どうして?ロキの許可は?」
アリーゼが僕に言い寄る。
「フィンが自分で言うそうだ。で、リリはポーターとしての能力があるので、ティオネ、ティオナはポーターの仕事ではなく、残りの日々は戦士として経験を積んでもらう」
「装備がないですが…」
ティオネが心配そうに言った。
「材料があまりないから、満足な物は作れなかったけど、プレゼントする」
ティオネ、ティオナに防具と武器を手渡した。
「ソレを作りに行っていたんですね」
エイナが疑いの目を解除してくれた。そうです。やらかしに行った訳ではないんですよ~。
「ティオナには剣だ。剣術が素人だと思うので、天地に刃先をつけ、刃先の間の分厚い部分で叩ける仕様だ。ティオネは弓にした。狙いを付けて、弦を弾くと、光の矢が撃ち出せる。なので、矢を持ち歩かなくても良い」
「「ありがとうございます」」
アマゾネス姉妹が、僕に頭を下げてお礼を言ってきた。
「次にリリとアイズだ」
二人には武器だけを手渡した。
「アイズは、ヘファ母さん製の装備があるから、武器を作った。僕と同じ様に、二刀流をきわめて欲しい。ヘファ母さんの作ったレイピアより、劣るけど、そこそこ強度としなやかさを持たしてある」
二刀流…って言っても、僕の場合はナイフだけど。僕の愛用の得物、ヘルメスナイフとフレイヤナイフは、ヘファイストスガントレットに収納されている。いつでも、どこでも屠れるように、お出かけの際の装備である。
「リリにはナイフを2本。リリもナイフの二刀流を身に着けて、護身時に役立てて欲しい」
アイズはレイピアを見つめて動かない。リリはナイフを手にして、目を輝かしていた。
「それって、あのレア素材ですか?」
フィンがきいてきた。頷く僕。
「戦力が増えると思えば、安い買い物だろ?それに、加工代は無料だよ♪」
「で、最後にエイナ」
彼女にも武器を渡した。
「エイナにはアイズよりも細めのレイピアだ。リューに剣術を習ってくれ」
「ありがとうございます♪」
目に涙を溜めて、僕に抱きついてきた。レイピア持って抱きつくのは危険だぞ…
「私には無いのか?」
アリーゼから文句が…そうくると思って、ある物を手渡した。
「アリーゼにはアイスピックだ。酒場で使う大事なアイテムだ。使いこなせるようにしておけよ」
「なんだ、有るんじゃん♪りょうか~い♪」
「で、今日はオフにする。って言っても宿屋の敷地以外は危険だ。敷地内でそれぞれ、使いこなせるように鍛錬をしてほしい。プレゼントをもらっていない者は、教える側ってことでよろしく」
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翌日からの狩りは、稼げる量が増えた。リリがドロップ品の回収をしてくれるので、戦っている者は敵に集中できたようだ。
で、そろそろ地上に戻ることに…最終日の夜、エイナと二人で税金の勉強会を開いた。
「足りないな…エイナ、どうすれば良い?」
「ギルド関係者が脱税の方法を考えるんですか?」
「脱税というか、ルール内で抜け道ないかな?」
ロキ・ファミリアの差し押さえは避けたいので、エイナに相談をした。
「そもそも、税金の額はどうやって算出するんだ?」
「ファミリアの規模をベースにして、そこに眷属のレベルに応じた税率をかけます。その他に、商業系、産業系の場合は、儲けの部分に税率をかけた物も税金になります。」
「ロキ兄のところは冒険系だから、眷属か…あっ…フィンとリヴェリアが抜けたから、その分安くなるんじゃ?」
はっとした表情のエイナが、再計算をしていく。しかし、
「多少は安くなりますが、まだ足りませんよ」
後、何があるかな?う~ん…あっ…
「アストレアの税金はどうなっている?」
「アストレア様はギルド系ですから無税です」
「僕の処は?」
「ギルド系以外の仕事の儲けには税金が掛かりますが、たいした額ではないです」
「アストレアの場合、書類上はファミリア無しだよね?」
「あっ…そういう事?」
「可能だよね?ロキ兄が納得すればさぁ~」
「あぁ、裏技ですね…」
エイナに必要書類を作ってもらい、ロキ兄の血判だけを貰えば良い状態にして、フィンに託した。
---フィン---
納税の為の資金集めの旅から戻り、主神であるロキの元に出向いた。
「おかえり~、どないした?稼げたん?」
「ロキに報告と、してほしいことがある」
「なんや?してほしいって…」
フレイ様から託された書類をロキに手渡した。
「ここにロキの血判を押して欲しい。これで、差し押さえから逃れられる」
書類に目を通すロキ。
「なんやてぇ~!フレイの眷属になれって?どういうことや、フィン!」
「そういうことだよ。ロキがフレイ様の眷属扱いなれば、ここはフレイ様の傘下になり、収益分にだけ税金が発生する。でもフレイ様の控除額内であれば無税になるんだよ」
「おぉ、脱税ってことやな」
ロキは喜んで判を押した。俺はその書類を受け取り、部屋の外で待っていてくれた、エイナに手渡した。書類に目を通したエイナはロキに告げた。
「確かに、ギルドとして受理しました。ルールに基づき、今後ロキ様は雇われ主神になり、給料制となります」
「へ?給料制?なんやそれ?」
しかし、エイナはギルドへの帰路に着いていた。
「おい、フィン。どういうことや?」
「そういうことですよ、ロキ。で、俺とリヴェリアはフレイ様の眷属となりましたので、立場はロキより上です」
「なんやて?」
「そうでしょ?俺達は正式な眷属ですが、ロキは眷属扱いです。正社員と非常勤って感じですよ♪」
事態の重さに気づいたロキは、顔から血の気が失せていく。
「今後は、ご自分の給料内でお酒を飲んでくださいね、雇われ主神様♪このファミリアの決裁権はフレイ様に移譲しました。フレイ様が決裁しない限り、このファミリアの資金は使い込めませんよ♪」
---フレイ---
裏技でロキ・ファミリアの差し押さえは避けられた。とはいえ、傘下にする以前に発生した滞納分は、払わないといけない。もう少し潜らないとダメだな。
開店前の店内にロキ兄が入って来た。
「酒くれ~」
ショットグラスに、仕入れたばかりのバーボンを注いで、渡した。
「ふっはぁ~旨いなぁ…フィンへの入れ知恵はフレイか?」
「税金関係の勉強をいっぱいしやったよ」
「なぁ、ここで飲めば良いんか?」
「ここ以外で飲んじゃダメだよ」
「そっか~…なぁ、主神を続けてもいいんか?」
「いいよ。フィンとリヴェリアはロキ・ファミリアに出向扱いで、団長、副団長を続けさせる」
「色々、うちの為に考えてくれていたんやな」
リヴェリアの件は、強奪事件と言っても良いが、ここは頷くことにする。
「ロキ兄に不足しているのは、財政管理能力だよ。それ以外は問題な…いや、セクハラ行為も問題だけどね」
苦笑いを返して来たロキ兄。
「セクハラも病気みたいなもんや。いつか治す…」
「ま、お酒に関してはここでね」
---ベート---
強い戦士になり、良い女を物にする為に、オラリオにやってきた。良い女が一杯いるなぁ…物色している俺の目に一人の女が入って来た。金髪でスレンダーでツンツンしていそうだが、物にすればデレデレするんだろうな。あいつに決めた。女の後をつけていくと、大きな建物に入っていった。看板には『ロキ・ファミリア』と書かれていた。このファミリアの女なのか。門番に入団の意志を伝え、ファミリアの主神と契約をした。
食事時は皆が食堂に一同に介してから、食事がスタートするのだが、あの女が見当たらない。どこにいるんだ?目を皿のようにして探す俺。
「おい、その獲物を探すようなぎらついた目付きは止めろ!」
ガキに言われたが無視。
「ほぉ~団長命令をスルーか」
椅子を蹴り飛ばされて、床に叩き付けられた。
「何すんだ?このガキがぁ~!」
「ガキ?ふっ…君よりも俺の方が歳上で、地位も上だ」
ホラ吹きか?ガキのくせに。
「ガキは黙っていろ!母親の乳でも吸っていろよ!」
次の瞬間、壁まで吹き飛ばされていた。魔法を喰らったみたいだ。
「お前、新入りだな?彼は、このファミリアの団長のフィン・ディムナで、私は副団長のリヴェリア・リヨス・アールヴだ。ファミリアの幹部の顔くらい覚えておけ!」
好みでないなぁ、この女は。あの女はどこに行ったんだ?
「有り得ないなぁ…私の話もスルーか?どこかで目を付けた女でも捜しているのか。このゲス野郎は」
うるせぇな、このクソエルフが…エルフの女に掴みかかる。
「俺の方が強ければ、下僕にしてやるよ」
次の瞬間、意識が飛んだ…
------
意識が戻ると、牢に入れられていた。
「おい!ここから出しやがれ~!俺を誰だと思っているんだ?」
しばらくすると優男がやってきた。
「僕は猛獣使いじゃないんだけどなぁ」
俺は猛獣じゃないぞ~
「おい、ここから出しやがれ~!」
「出せる訳ないだろ?お前、副団長を襲おうとしたそうじゃないか」
「はぁ?あの女が悪いだろ?」
「まったく、反省が無いのか?どうするかな?」
「てめぇ~は何者だ?」
「僕?なんて説明すれば良いかな?」
「彼はギルドの主神よ」
若いエルフの姉ちゃんが近づいてきて、教えてくれた。ギルドの主神?…って、この街で一番エライヤツかぁ…強張る俺。
「どう処分するかな?」
「はぁ?ファミリアでの揉め事に、ギルドは関係ないだろ?」
「そうもいかない。彼女は僕の眷属だ。その彼女を危険に晒した罪は重い」
へ?あの副団長って、ギルドの主神の眷属って…あのファミリアには雇われていたのか?
「で、君の記憶を見たんだけど、君の探し人もねぇ、僕の眷属なんだけど…」
がーん!
手を出したらイカン女だったのか?って、記憶を見られるのか…神ってすげぇ~
「僕の眷属に対して、問題行動をするのであれば、君には消えてもらう。どうする?君に選択をさせてあげるよ」
消える?透明人間になれるのか?それも悪くないなぁ。
「透明人間にしてくれ!」
「はぁ?何言っているんだ?僕より頭の悪い奴って、初めて見たよ」
え?そういう意味じゃないのか?
「その吠えている犬コロを去勢してくれないか、フレイ?」
さっきにエルフの女がやってきて、ギルドの主神にそう告げた。
「去勢?ふざけるなよ、このクソエルフが!」
「このまま、ここに放流するかな?彼がどれだけ強いのか実感してもらおう」
俺は牢から出された。すかさず、若いエルフの姉ちゃんを襲うが、彼女の構えてレイピアの切っ先が俺の喉を捕らえようとしていた。
「舐めるなよ、クソ犬風情がっ!」
この女、剣士だったのか?俺よりも確実に強そうだ。俺は逃げるようにして、この場を去った。
牢の在った建物から出て、異変に気づいた。ここって、地上ではなかった。ダンジョンの内部のようだ。何階なんだ?建物に戻って聞こうと思ったのだが、扉は開かなかった。どうすれば、地上に出られるんだ?
路頭を彷徨う。行き交う者達は俺に目をくれずに去って行く。くそっ…あの野郎達め~
気力と体力が尽き欠けた頃、あの優男を見つけた。周囲に若い姉ちゃん達を侍らしていた。その中の一人は俺が目を付けた女だった。そんなにいるなら一人くらいくれてもバチが当たらないだろうに!
俺は…気が付いたら、優男の前に立っていた。
---フレイ---
ロキ兄の滞納分を稼ぐために、再度18階に宿を取り、狩りをしていた。換金所を目指して歩いている時、あの狼男が現れた。
「おい、その金髪のねーちゃんを寄越せ!」
「悪いけど、彼女は物では無い。譲渡する気はさらさら無い」
「はぁ?そんなに一杯いるんなら、一人くらいくれても良いだろ?」
「だから、彼女達は物ではない。物呼ばわりするなら、屠る」
僕は得物をガントレットから取り出して身構えた。彼女達もそれぞれの得物を手にして、構える。
「狼男君はレベルいくつなんだ?彼女達はレベル2以上だけど」
「レベル?そんな物関係ねぇ~。強い方が勝つんだよ、ケンカはな」
飛びかかってきた彼の喉元に、ナイフの柄の部分を叩き込む。その場に蹲る彼。
「次やったら、刃先側を叩き込む」
僕達は得物をしまい、その場を立ち去った。
---ベート---
優男の攻撃、いや動きが目で追えなかった。彼らはケンカをするつもりはなく、殺し合いをするつもりのようだ。刃先側であれば、俺は確実に死んでいた。あれが、この街の戦士の実力なのか…
「お前みたいなケンカだけが強い男じゃ、この街、この迷宮では生き残れないぞ」
背後から男が声を掛けてきた。気配を感じなかったのに…
「あの優男は何者だ?」
「【血まみれ】フレイ…この街で一番の殺戮者だ。迷いなく喉元を切り開く。勢いよく出た相手の血で全身血まみれになるんだよ、あいつはな」
【血まみれ】フレイ…噂で聞いたことがある。ソイツが通った後には血の海しかないと…
「大人しくファミリアで鍛錬して強くなれよ」
俺から離れていく男にきく。
「あんたの名前は?」
「俺は、『フレイヤ・ファミリア』のオッタルだ」
そういい残し、男が去って行った。
---フレイ---
翌朝、狩りに行こうと宿屋を出ると、あの狼男が土下座をして待っていた。
「昨日すみませんでした。どうか、ファミリアに入れてください」
って…ルール知らないのか?
「なぁ、ファミリアを変更出来るのは、入団一年後だ。お前はロキ・ファミリアの団員だろ?」
「そのファミリアの団長と副団長が、そこにいるじゃないか?!」
「彼らは僕の眷属だ。今回はロキ・ファミリアとして潜ってはいない」
「俺もその女と同じファミリアにいたんだ。置いてくれ~!」
彼の視線の先にはアイズがいた。彼女は凄く嫌な顔をしている。
「彼女が嫌がることはできないし、レベル1のヤツはいらない」
彼を置いて狩りへと出掛けるが、後を付いてくる。
「お前、死にに行くのか?装備無しだと、助からないぞ」
「俺の強さを見せつけて、その女をモノにしてやる」
だから、アイズは嫌っているって…わからないのかな?
狩り場で狩りを始める。岩陰に隠れて、危険から逃れるアイツ。強さを見せつけるんじゃないのか?近くに飛んだドロップ品をネコババしているし。何をしたいんだ?ジャマだな。
「フィン、アレどうにかならないか?ネコババだろうに」
「性根が腐っているような…」
両手に一杯のドロップ品を持ち、アイズに近寄り、
「これをヤルから、俺の女になれ!」
って…アイズはスルーする。アイツのせいで陣形に乱れが生じ始めた、その時、ゴライアスが出現…マズいなぁ。
「ティオナ、アイズ!リリをガードしつつ後退。ティオネ、ゴライアスの気を引け!フィン、アリーゼ、リュー援護しろ!」
僕はアイズ達の援護に回るが、リリをガードする為にアイツに背中を見せた途端、アイツが抱きつき、アイズが逃げ遅れた。ゴライアスの攻撃を真面に受けたアイズとアイツ。クソっ!
「リヴェリア、アイズに治療を!アリーゼ、リリとティオナを頼む!」
僕は前線に飛び出した。僕が戦ったら、経験が積めないじゃないか…
---ベート---
次に意識が戻ると地上にいた。身体中に包帯が巻かれていた。
「お前のせいで、遠征は中断の上、彼女は怪我を負った。どう責任を取るんだ?」
ガキのような団長に注意を受けた。俺はあの女のことを思い浮かべ、スルーする。
「おい、聞いているのか?」
「はぁ?いきなりダンジョンに連れ込むのが悪いだろ?彼女との仲をジャマしないでくれるかな?」
「ベートよ、お前、ほんまにアカンなぁ。アイズたんは、お前のことを嫌いやと言うていたぞ」
あの女はアイズと言うのか。抱き心地が良かったなぁ。未だに、手に残るアイズの胸の感触を愉しむ。
「フィン、コイツ、アカンなぁ…スルーしよる」
「ロキが眷属にしたんだろ?責任を取れよな。こんなクソみたいなヤツをさぁ」
「どないしよ~?」
「後続隊のポーターからでいいんじゃない?攻撃部隊だと、怖くて組みたくない」
あぁ、俺もクソエルフとは組みたくない。清々する。そして、俺はガレスというオッサンが指揮する後続隊のポーターをすることになっていた。
---フレイ---
ロキ・ファミリアが遠征をするそうだ。フィン、リヴェリアは当分、迷宮生活になる。アイズの怪我は治っているのだが、酒場の正式開店に向けて準備をするので、僕達のチームとしては、パスすることにした。
内装工事が終わり、酒瓶を棚に並べる。アリーゼはアイスピックの練習に余念がない。アイズは客仕事が苦手のようで、裏方として、バッカスの手伝いをしてもらうことにした。お酒の原料は、当面輸入をして、来年以降は自前で確保しようと、畑の準備もしている。ファミリアに属さない人々に、働く機会を与えるのも、ギルドの仕事だし。畑仕事と畑をガードする者を雇い入れて居る。経験者優遇でね。
リリは看板娘として、働いてもらう。リリ本人も乗る気なので、まかせようかと思う。なので、リリには豊饒の女主人でメイド仕事を体験、鍛錬してもらっている。指導係はシル姉ちゃんだ。
「リリが一人前になるまで、リューを貸してやる」
って、ニャー母さんが助け船を出してくれた。嬉しい♪
そんなまったりとした時間が、順調に動き始めた頃、またアイズを狙う者がオラリオに足を踏み入れたことに、僕は気づくよしもなかった。
---レフィーヤ---
憧れの街、オラリオに足を踏み入れた。行き交う人々の波に目が回りそうだ。おのぼりさん状態で、あっちへふらふら、こっちへふらふらしている時、カバンをひったくられた。が、直ぐに取り戻してくれた女性がいた。金髪でスレンダーで凜々しい女性。
「この街は物騒だ。注意して歩きなさい」
そういうと、私にカバンを返しくれた。彼女の視線を浴びて、胸にキュンとした痛みが走る。これって、恋かな?
「ありがとうございます。あの…お名前は?」
って、私をスルーして、連れの男の元に戻り、甘え始めた。いいなぁ…あの男。私は無意識の内に、彼らの後を追跡していた。色々な物を買い込んでいく。夫婦なのかな?
随分と歩き通して、やっと大きな建物に入っていく。看板には『ロキ・ファミリア』と書かれていた。彼らはここに所属しているのかな?門番の人に、入団をしたいと申し入れた。
まず、書類申請だそうで、書類に必要事項を明記していく。しばらくすると、門番とは別の人が来て、書類だけを持っていった。だいぶ待っていると、先程の人が迎えに来てくれて、このファミリアの主神の元に、案内してくれることになった。
どんな主神なのかな?先程の凜々しい女性かな?期待でワクワクしながら、主神の待つ部屋に向かった。主神の待つドアが開き、先程の女性と連れの男が現れた。
「ロキ兄、良かったじゃないか。エルフの女性で、かわいいらしいし。じゃ、僕達は準備があるから帰るねぇ」
連れの男性が、ドアの向こうの人に声をかけて、あの女性と共に、この場を去って行く。え?このファミリアの人ではなかったの?女性に気を取られていて、この場に来た理由を忘れ欠けていた私は、突然抱きしめられた。相手を見ると細目でスレンダーで胸がうっすらと盛り上がっている女性のようだった。
「ようこそ♪ロキ・ファミリアへ♪さぁさぁ、中に入ってなぁ♪」
そして、その女性にセクハラのフルコースを与えられて、血の契約をされた…
---フレイ---
開店まで後少しになると、ホーム部分、住居部分は完成して、アリーゼ、リリ、アイズ、エイナが越してきた。ヘファ母さんが心配な僕は、自宅からの通いになる。一応、僕とシル姉ちゃんの部屋も用意はしてある。あと、遠征中のフィン、リヴェリアの部屋も用意してある。これで、生活基盤は完成かな?
「執務室とか無いんですか?」
と、エイナ。
「無いけど…あった方が良い?」
「有った方が良いと思います」
まぁ、空き部屋はまだ有るから、ホームに一番近い部屋にするか。
「なんで、女湯と男湯に別れているんだ?そこはフィン専用と、混浴で良いだろう」
っと、アリーゼ。混浴って…僕を抱き枕にして、湯船で寝るつもりなんだろう?却下だ。
「さぁ、みなさん。一息いれてください」
って、バッカスがアルコール分の無い甘酒を振る舞ってくれた。この建物には地下があり、室を設置して、酵母を発酵しやすくできるようにしていた。
開店準備中なのだが、ロキ兄はお供を同伴して、呑みに来ていた。
「ぷっはぁ~ここの酒は旨いなぁ~」
「厳選して仕入れているからね」
お供の少女は、誰かを探すような素振りをしていた。何か嫌な予感がする。
「誰かを探しているのか?」
その少女に訊いてみた。
「先日、一緒にいらした女性の方は?」
頬をほんのりと紅に染めた少女。ベートと同じか?
「ロキ兄、コイツは出入り禁止だ。ベートと同罪だ」
「なんやて?レフィーヤ…お前、アイズたんを追って、入団したんか?」
「あの方はアイズさんって言うんですね♪」
「ロキ兄のとこへの入団希望者って、こういうのが多くないか?」
「…」
「レフィーヤ、帰ってくれるか?迷惑だ!」
「帰りません。あの方と一緒に帰ります♪」
「一緒には帰らない。彼女は僕の眷属だ」
「え?ロキ様、あの方を奪って下さい。お願いします」
頭を抱えるロキ兄。
「奪う?彼女は物じゃない。彼女の意志でここにいる」
「直接聞くまで帰りません。そうか、あなたがいなくなれば…」
え?いきなり詠唱しているエルフの少女。ここでかぁ?リリが素早く反応して、少女の首筋に手刀を叩き込み、意識を飛ばす。
「リリ、ありがとう」
「いえ、こういう時のために、ルノア様に手ほどきを受けてました」
頭を撫でてあげると、嬉しそうな表情になるリリ。リリのこの表情は心が和むなぁ。
「ロキ兄、悪いけど、持って帰ってくれる?」
無言で頷き、レフィーヤを抱えて、すまないって手振りをして立ち去るロキ兄。僕には、まったりとした時間は、訪れないのかな?