※この作品はR-18です。

ラスボスになりたい~   作:もっち~!

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狼とエルフ

 

---フレイ---

 

「ちょっと、フレイ!起きなさい!」

 

リヴェリアに起こされた僕。

 

「ふへぇ?何か…遭った…くぅ…」

 

「おい、寝るなよ。この子を、眷属してあげなさいよ!」

 

この子?誰だっけ?首を少し持ち上げると、満面な笑みの女の子がいた。あぁ、ソーマの処の女の子か。

 

「お前、この子を、あの劣悪環境に戻すのか?」

 

あぁ…そうだよな。こんな幼い子供に、あんな惨い躾という暴力を振るうファミリアじゃ、かわいそうだよな。リヴェリアが言うのももっともなので、僕は自分の指先を傷つけて、彼女の額に押し当てて、血の契約をした。あぁ、ついでに、隣で爆睡しているエイナにも♪で、傷を治そうと自分の口に持っていこうとしたら、リヴェリアに手首を掴まれて…おい…リヴェリアの行為に目が点な僕。

 

「これで、私も眷属だな、フレイ♪」

 

満面の笑みのリヴェリア…これが、狙いか?寝ぼけていた僕の頭は、一気に目覚めた。

 

「まさかと思うけど…」

 

一応尋ねようとすると、言葉を遮り、

 

「フレイの思い至った通りだよ。ふふふ」

 

こいつ、意外に腹黒いのか…はぁ~凹む。迂闊だった。

 

「どうしまし…え?フレイ様、何かしましたね!」

 

僕とリヴェリアのヤリトリのせいで、エイナが目覚めた。身体に何かの変化を感じたのか、起きて直ぐに僕を睨むエイナ。

 

「言いなさい!何をしでかしたんですか?」

 

エイナの怒りのオーラをひしひしと感じる。僕から離れて、こんなに強くなったんだな。感慨に浸っていたのだが、

 

「言えないことをしたんですか?まさか…」

 

自分の秘部を確認するエイナ。

 

「いや、入れていないよ~」

 

「はぁ?何で入れないの?」

 

え?そっちで怒っているの?

 

「で、怒らないから、何をしでかしたんですか?」

 

既に怒っているだろうに…これ以上怒らすと、僕の身が危険かな。

 

「この子を眷属にしました」

 

僕の胸の上でまったりしている女の子を指差した。

 

「それだけ?」

 

「リヴェリアが強引に眷属になりました…」

 

「はぁ?副団長なのに良いの?」

 

エイナの問いに、笑顔で応えるリヴェリア。

 

「あとは?」

 

「出来心で…エイナも眷属にしました…ごめんなさい」

 

エイナが固まった。激怒する準備かな?どうしよう。でも、予想と反して、エイナの顔と耳が紅色に染まっていく。激怒した時と違いほんのりと染まっていく。

 

「これで…ずっと…お傍にいて良いんですね、フレイ様♪」

 

泣きながら、身動きが取れない僕に抱きつくエイナ。あん?待ち望んでいたのか?

 

「じゃ、改宗の書類は私が用意します。そうだ、あなたのお名前は?」

 

僕の上にいる女の子の名前を訊くエイナ。あっ…マズい。また、名前を聞く前に眷属にしてしまった。アリーゼには内緒にしておこう。

 

「私の名前は…リリルカ・アーデでございます。リリと呼んでください。両親は揃ってソーマ・ファミリアでして、私は産まれた時からソーマ・ファミリアの団員でございました」

 

「ご両親は、ご健在かな?」

 

「いえ、両親は神酒のせいで、無謀な冒険をして…」

 

笑顔が崩れたリリ。僕は彼女の頭を優しく撫でてあげる。

 

「そうか…フレイ様の目的の大義名分が増えましたね」

 

「あぁ…あの酒の被害者を減らさないとな、エイナ」

 

「で、私はギルド員のままですか?」

 

「そうだけど…何か、不満かな?」

 

「う~ん…っと、お願いがあります。フレイ様のホームに住みたいです」

 

「あぁ、いいよ。部屋を用意する」

 

-------

 

フィンの部屋を訪れた僕。大事な用件が…気が乗らないけど…

 

「フレイ様…親指が先程まで疼いていたのですが、何か起きましたか?」

 

あぁ、そうだね。アレは危険な出来事なのかもな。

 

「フィンに言わないといけない事ができた。その後にフィンに選択をしてもらう」

 

僕の表情を読み。僕の雰囲気を感じ、何かに思い至ったフィン。

 

「はぁ~、リヴェリアが暴走したんですね。で、俺は?」

 

「いいのか?」

 

「いいも悪いも、リヴェリアとセットって、約束ですよね」

 

そうだね。約束は守らないとダメだな。まだ、傷口が塞がっていない指先を、フィンの額に押し当てて、口の中に入れた。

 

「これで、俺も眷属ですね♪」

 

「だな…ロキ兄になんて言おう…」

 

凹む僕。

 

「それは、俺達の方でどうにかします。フレイ様が関わると、大きくなるすぎますから」

 

そう。それなら、そうしてもらおう。フィンの部屋を出て、自分の部屋に戻ると、リリはエイナに事情聴取をされていた。

 

僕と目が合うと、リリが走り寄ってきた。しゃがんで、リリと同じ目線になるようにして、話しかけた。

 

「どうしたんだ?」

 

「傍にいてください…フレイ様…」

 

彼女の頭を優しく撫でる。

 

「そうそう、リリの能力って何だ?18階にいるってことは、冒険者なのか?」

 

小さいながらも18階にいるってことは、冒険に必要な能力持ちってことだし。

 

「戦闘は得意では無いです。ポーターなどのサポーターでございます」

 

「小さいのにポーターなの?」

 

身体が小さいなので、そんなに運べないだろうと思うんだけど。

 

「『縁下力持』って能力で、一定以上の装備過重時に、重量に補正がかかるのでございます。ですので、いくらでも、お運びできます」

 

それは便利な能力だ。

 

「他にも何かある?」

 

「あとはですね、『シンダー・エラ』という魔法を持っております。これは、体格が大体同じなら、どんな姿にでも変身できるのでございます」

 

小人族の彼女は犬人に変身したようで、耳が犬のようになった。

 

「それも便利だな。うん、じゃあ、今後も潜る時は頼みます♪」

 

「はい、フレイ様♪」

 

そうなると…う~ん…

 

「エイナ、リリ。ちょっと、出掛けてくる」

 

「え?どこに?」

 

不安そうなリリ。

 

「何かしでかすんでわないですよね?」

 

僕の行動をあまり信用していないエイナ。

 

「いや、問題は起こさない。この先、必要な物をね」

 

僕は宿屋を出て、目的の場所で作業をして、宿屋に戻った。で、みんなを僕の部屋に呼び出した。

 

「今度は何をしでかしたんだ?」

 

エイナ同様、僕の行動を信用していないアリーゼ。

 

「まず、エイナ、リリを眷属にして、フィンとリヴェリアが改宗した」

 

「「え~!」」

 

アリーゼ、リューが驚きの声を上げた。まだ「改宗」の意味を知らないアイズ、ティオネ、ティオナは、表情が変わらない。

 

「どうして?ロキの許可は?」

 

アリーゼが僕に言い寄る。

 

「フィンが自分で言うそうだ。で、リリはポーターとしての能力があるので、ティオネ、ティオナはポーターの仕事ではなく、残りの日々は戦士として経験を積んでもらう」

 

「装備がないですが…」

 

ティオネが心配そうに言った。

 

「材料があまりないから、満足な物は作れなかったけど、プレゼントする」

 

ティオネ、ティオナに防具と武器を手渡した。

 

「ソレを作りに行っていたんですね」

 

エイナが疑いの目を解除してくれた。そうです。やらかしに行った訳ではないんですよ~。

 

「ティオナには剣だ。剣術が素人だと思うので、天地に刃先をつけ、刃先の間の分厚い部分で叩ける仕様だ。ティオネは弓にした。狙いを付けて、弦を弾くと、光の矢が撃ち出せる。なので、矢を持ち歩かなくても良い」

 

「「ありがとうございます」」

 

アマゾネス姉妹が、僕に頭を下げてお礼を言ってきた。

 

「次にリリとアイズだ」

 

二人には武器だけを手渡した。

 

「アイズは、ヘファ母さん製の装備があるから、武器を作った。僕と同じ様に、二刀流をきわめて欲しい。ヘファ母さんの作ったレイピアより、劣るけど、そこそこ強度としなやかさを持たしてある」

 

二刀流…って言っても、僕の場合はナイフだけど。僕の愛用の得物、ヘルメスナイフとフレイヤナイフは、ヘファイストスガントレットに収納されている。いつでも、どこでも屠れるように、お出かけの際の装備である。

 

「リリにはナイフを2本。リリもナイフの二刀流を身に着けて、護身時に役立てて欲しい」

 

アイズはレイピアを見つめて動かない。リリはナイフを手にして、目を輝かしていた。

 

「それって、あのレア素材ですか?」

 

フィンがきいてきた。頷く僕。

 

「戦力が増えると思えば、安い買い物だろ?それに、加工代は無料だよ♪」

 

「で、最後にエイナ」

 

彼女にも武器を渡した。

 

「エイナにはアイズよりも細めのレイピアだ。リューに剣術を習ってくれ」

 

「ありがとうございます♪」

 

目に涙を溜めて、僕に抱きついてきた。レイピア持って抱きつくのは危険だぞ…

 

「私には無いのか?」

 

アリーゼから文句が…そうくると思って、ある物を手渡した。

 

「アリーゼにはアイスピックだ。酒場で使う大事なアイテムだ。使いこなせるようにしておけよ」

 

「なんだ、有るんじゃん♪りょうか~い♪」

 

「で、今日はオフにする。って言っても宿屋の敷地以外は危険だ。敷地内でそれぞれ、使いこなせるように鍛錬をしてほしい。プレゼントをもらっていない者は、教える側ってことでよろしく」

 

------

 

翌日からの狩りは、稼げる量が増えた。リリがドロップ品の回収をしてくれるので、戦っている者は敵に集中できたようだ。

 

で、そろそろ地上に戻ることに…最終日の夜、エイナと二人で税金の勉強会を開いた。

 

「足りないな…エイナ、どうすれば良い?」

 

「ギルド関係者が脱税の方法を考えるんですか?」

 

「脱税というか、ルール内で抜け道ないかな?」

 

ロキ・ファミリアの差し押さえは避けたいので、エイナに相談をした。

 

「そもそも、税金の額はどうやって算出するんだ?」

 

「ファミリアの規模をベースにして、そこに眷属のレベルに応じた税率をかけます。その他に、商業系、産業系の場合は、儲けの部分に税率をかけた物も税金になります。」

 

「ロキ兄のところは冒険系だから、眷属か…あっ…フィンとリヴェリアが抜けたから、その分安くなるんじゃ?」

 

はっとした表情のエイナが、再計算をしていく。しかし、

 

「多少は安くなりますが、まだ足りませんよ」

 

後、何があるかな?う~ん…あっ…

 

「アストレアの税金はどうなっている?」

 

「アストレア様はギルド系ですから無税です」

 

「僕の処は?」

 

「ギルド系以外の仕事の儲けには税金が掛かりますが、たいした額ではないです」

 

「アストレアの場合、書類上はファミリア無しだよね?」

 

「あっ…そういう事?」

 

「可能だよね?ロキ兄が納得すればさぁ~」

 

「あぁ、裏技ですね…」

 

エイナに必要書類を作ってもらい、ロキ兄の血判だけを貰えば良い状態にして、フィンに託した。

 

 

 

---フィン---

 

納税の為の資金集めの旅から戻り、主神であるロキの元に出向いた。

 

「おかえり~、どないした?稼げたん?」

 

「ロキに報告と、してほしいことがある」

 

「なんや?してほしいって…」

 

フレイ様から託された書類をロキに手渡した。

 

「ここにロキの血判を押して欲しい。これで、差し押さえから逃れられる」

 

書類に目を通すロキ。

 

「なんやてぇ~!フレイの眷属になれって?どういうことや、フィン!」

 

「そういうことだよ。ロキがフレイ様の眷属扱いなれば、ここはフレイ様の傘下になり、収益分にだけ税金が発生する。でもフレイ様の控除額内であれば無税になるんだよ」

 

「おぉ、脱税ってことやな」

 

ロキは喜んで判を押した。俺はその書類を受け取り、部屋の外で待っていてくれた、エイナに手渡した。書類に目を通したエイナはロキに告げた。

 

「確かに、ギルドとして受理しました。ルールに基づき、今後ロキ様は雇われ主神になり、給料制となります」

 

「へ?給料制?なんやそれ?」

 

しかし、エイナはギルドへの帰路に着いていた。

 

「おい、フィン。どういうことや?」

 

「そういうことですよ、ロキ。で、俺とリヴェリアはフレイ様の眷属となりましたので、立場はロキより上です」

 

「なんやて?」

 

「そうでしょ?俺達は正式な眷属ですが、ロキは眷属扱いです。正社員と非常勤って感じですよ♪」

 

事態の重さに気づいたロキは、顔から血の気が失せていく。

 

「今後は、ご自分の給料内でお酒を飲んでくださいね、雇われ主神様♪このファミリアの決裁権はフレイ様に移譲しました。フレイ様が決裁しない限り、このファミリアの資金は使い込めませんよ♪」

 

 

 

---フレイ---

 

裏技でロキ・ファミリアの差し押さえは避けられた。とはいえ、傘下にする以前に発生した滞納分は、払わないといけない。もう少し潜らないとダメだな。

 

開店前の店内にロキ兄が入って来た。

 

「酒くれ~」

 

ショットグラスに、仕入れたばかりのバーボンを注いで、渡した。

 

「ふっはぁ~旨いなぁ…フィンへの入れ知恵はフレイか?」

 

「税金関係の勉強をいっぱいしやったよ」

 

「なぁ、ここで飲めば良いんか?」

 

「ここ以外で飲んじゃダメだよ」

 

「そっか~…なぁ、主神を続けてもいいんか?」

 

「いいよ。フィンとリヴェリアはロキ・ファミリアに出向扱いで、団長、副団長を続けさせる」

 

「色々、うちの為に考えてくれていたんやな」

 

リヴェリアの件は、強奪事件と言っても良いが、ここは頷くことにする。

 

「ロキ兄に不足しているのは、財政管理能力だよ。それ以外は問題な…いや、セクハラ行為も問題だけどね」

 

苦笑いを返して来たロキ兄。

 

「セクハラも病気みたいなもんや。いつか治す…」

 

「ま、お酒に関してはここでね」

 

 

 

---ベート---

 

強い戦士になり、良い女を物にする為に、オラリオにやってきた。良い女が一杯いるなぁ…物色している俺の目に一人の女が入って来た。金髪でスレンダーでツンツンしていそうだが、物にすればデレデレするんだろうな。あいつに決めた。女の後をつけていくと、大きな建物に入っていった。看板には『ロキ・ファミリア』と書かれていた。このファミリアの女なのか。門番に入団の意志を伝え、ファミリアの主神と契約をした。

 

食事時は皆が食堂に一同に介してから、食事がスタートするのだが、あの女が見当たらない。どこにいるんだ?目を皿のようにして探す俺。

 

「おい、その獲物を探すようなぎらついた目付きは止めろ!」

 

ガキに言われたが無視。

 

「ほぉ~団長命令をスルーか」

 

椅子を蹴り飛ばされて、床に叩き付けられた。

 

「何すんだ?このガキがぁ~!」

 

「ガキ?ふっ…君よりも俺の方が歳上で、地位も上だ」

 

ホラ吹きか?ガキのくせに。

 

「ガキは黙っていろ!母親の乳でも吸っていろよ!」

 

次の瞬間、壁まで吹き飛ばされていた。魔法を喰らったみたいだ。

 

「お前、新入りだな?彼は、このファミリアの団長のフィン・ディムナで、私は副団長のリヴェリア・リヨス・アールヴだ。ファミリアの幹部の顔くらい覚えておけ!」

 

好みでないなぁ、この女は。あの女はどこに行ったんだ?

 

「有り得ないなぁ…私の話もスルーか?どこかで目を付けた女でも捜しているのか。このゲス野郎は」

 

うるせぇな、このクソエルフが…エルフの女に掴みかかる。

 

「俺の方が強ければ、下僕にしてやるよ」

 

次の瞬間、意識が飛んだ…

 

------

 

意識が戻ると、牢に入れられていた。

 

「おい!ここから出しやがれ~!俺を誰だと思っているんだ?」

 

しばらくすると優男がやってきた。

 

「僕は猛獣使いじゃないんだけどなぁ」

 

俺は猛獣じゃないぞ~

 

「おい、ここから出しやがれ~!」

 

「出せる訳ないだろ?お前、副団長を襲おうとしたそうじゃないか」

 

「はぁ?あの女が悪いだろ?」

 

「まったく、反省が無いのか?どうするかな?」

 

「てめぇ~は何者だ?」

 

「僕?なんて説明すれば良いかな?」

 

「彼はギルドの主神よ」

 

若いエルフの姉ちゃんが近づいてきて、教えてくれた。ギルドの主神?…って、この街で一番エライヤツかぁ…強張る俺。

 

「どう処分するかな?」

 

「はぁ?ファミリアでの揉め事に、ギルドは関係ないだろ?」

 

「そうもいかない。彼女は僕の眷属だ。その彼女を危険に晒した罪は重い」

 

へ?あの副団長って、ギルドの主神の眷属って…あのファミリアには雇われていたのか?

 

「で、君の記憶を見たんだけど、君の探し人もねぇ、僕の眷属なんだけど…」

 

がーん!

 

手を出したらイカン女だったのか?って、記憶を見られるのか…神ってすげぇ~

 

「僕の眷属に対して、問題行動をするのであれば、君には消えてもらう。どうする?君に選択をさせてあげるよ」

 

消える?透明人間になれるのか?それも悪くないなぁ。

 

「透明人間にしてくれ!」

 

「はぁ?何言っているんだ?僕より頭の悪い奴って、初めて見たよ」

 

え?そういう意味じゃないのか?

 

「その吠えている犬コロを去勢してくれないか、フレイ?」

 

さっきにエルフの女がやってきて、ギルドの主神にそう告げた。

 

「去勢?ふざけるなよ、このクソエルフが!」

 

「このまま、ここに放流するかな?彼がどれだけ強いのか実感してもらおう」

 

俺は牢から出された。すかさず、若いエルフの姉ちゃんを襲うが、彼女の構えてレイピアの切っ先が俺の喉を捕らえようとしていた。

 

「舐めるなよ、クソ犬風情がっ!」

 

この女、剣士だったのか?俺よりも確実に強そうだ。俺は逃げるようにして、この場を去った。

 

牢の在った建物から出て、異変に気づいた。ここって、地上ではなかった。ダンジョンの内部のようだ。何階なんだ?建物に戻って聞こうと思ったのだが、扉は開かなかった。どうすれば、地上に出られるんだ?

 

路頭を彷徨う。行き交う者達は俺に目をくれずに去って行く。くそっ…あの野郎達め~

 

気力と体力が尽き欠けた頃、あの優男を見つけた。周囲に若い姉ちゃん達を侍らしていた。その中の一人は俺が目を付けた女だった。そんなにいるなら一人くらいくれてもバチが当たらないだろうに!

 

俺は…気が付いたら、優男の前に立っていた。

 

 

 

---フレイ---

 

ロキ兄の滞納分を稼ぐために、再度18階に宿を取り、狩りをしていた。換金所を目指して歩いている時、あの狼男が現れた。

 

「おい、その金髪のねーちゃんを寄越せ!」

 

「悪いけど、彼女は物では無い。譲渡する気はさらさら無い」

 

「はぁ?そんなに一杯いるんなら、一人くらいくれても良いだろ?」

 

「だから、彼女達は物ではない。物呼ばわりするなら、屠る」

 

僕は得物をガントレットから取り出して身構えた。彼女達もそれぞれの得物を手にして、構える。

 

「狼男君はレベルいくつなんだ?彼女達はレベル2以上だけど」

 

「レベル?そんな物関係ねぇ~。強い方が勝つんだよ、ケンカはな」

 

飛びかかってきた彼の喉元に、ナイフの柄の部分を叩き込む。その場に蹲る彼。

 

「次やったら、刃先側を叩き込む」

 

僕達は得物をしまい、その場を立ち去った。

 

 

 

---ベート---

 

優男の攻撃、いや動きが目で追えなかった。彼らはケンカをするつもりはなく、殺し合いをするつもりのようだ。刃先側であれば、俺は確実に死んでいた。あれが、この街の戦士の実力なのか…

 

「お前みたいなケンカだけが強い男じゃ、この街、この迷宮では生き残れないぞ」

 

背後から男が声を掛けてきた。気配を感じなかったのに…

 

「あの優男は何者だ?」

 

「【血まみれ】フレイ…この街で一番の殺戮者だ。迷いなく喉元を切り開く。勢いよく出た相手の血で全身血まみれになるんだよ、あいつはな」

 

【血まみれ】フレイ…噂で聞いたことがある。ソイツが通った後には血の海しかないと…

 

「大人しくファミリアで鍛錬して強くなれよ」

 

俺から離れていく男にきく。

 

「あんたの名前は?」

 

「俺は、『フレイヤ・ファミリア』のオッタルだ」

 

そういい残し、男が去って行った。

 

 

 

---フレイ---

 

翌朝、狩りに行こうと宿屋を出ると、あの狼男が土下座をして待っていた。

 

「昨日すみませんでした。どうか、ファミリアに入れてください」

 

って…ルール知らないのか?

 

「なぁ、ファミリアを変更出来るのは、入団一年後だ。お前はロキ・ファミリアの団員だろ?」

 

「そのファミリアの団長と副団長が、そこにいるじゃないか?!」

 

「彼らは僕の眷属だ。今回はロキ・ファミリアとして潜ってはいない」

 

「俺もその女と同じファミリアにいたんだ。置いてくれ~!」

 

彼の視線の先にはアイズがいた。彼女は凄く嫌な顔をしている。

 

「彼女が嫌がることはできないし、レベル1のヤツはいらない」

 

彼を置いて狩りへと出掛けるが、後を付いてくる。

 

「お前、死にに行くのか?装備無しだと、助からないぞ」

 

「俺の強さを見せつけて、その女をモノにしてやる」

 

だから、アイズは嫌っているって…わからないのかな?

 

狩り場で狩りを始める。岩陰に隠れて、危険から逃れるアイツ。強さを見せつけるんじゃないのか?近くに飛んだドロップ品をネコババしているし。何をしたいんだ?ジャマだな。

 

「フィン、アレどうにかならないか?ネコババだろうに」

 

「性根が腐っているような…」

 

両手に一杯のドロップ品を持ち、アイズに近寄り、

 

「これをヤルから、俺の女になれ!」

 

って…アイズはスルーする。アイツのせいで陣形に乱れが生じ始めた、その時、ゴライアスが出現…マズいなぁ。

 

「ティオナ、アイズ!リリをガードしつつ後退。ティオネ、ゴライアスの気を引け!フィン、アリーゼ、リュー援護しろ!」

 

僕はアイズ達の援護に回るが、リリをガードする為にアイツに背中を見せた途端、アイツが抱きつき、アイズが逃げ遅れた。ゴライアスの攻撃を真面に受けたアイズとアイツ。クソっ!

 

「リヴェリア、アイズに治療を!アリーゼ、リリとティオナを頼む!」

 

僕は前線に飛び出した。僕が戦ったら、経験が積めないじゃないか…

 

 

 

---ベート---

 

次に意識が戻ると地上にいた。身体中に包帯が巻かれていた。

 

「お前のせいで、遠征は中断の上、彼女は怪我を負った。どう責任を取るんだ?」

 

ガキのような団長に注意を受けた。俺はあの女のことを思い浮かべ、スルーする。

 

「おい、聞いているのか?」

 

「はぁ?いきなりダンジョンに連れ込むのが悪いだろ?彼女との仲をジャマしないでくれるかな?」

 

「ベートよ、お前、ほんまにアカンなぁ。アイズたんは、お前のことを嫌いやと言うていたぞ」

 

あの女はアイズと言うのか。抱き心地が良かったなぁ。未だに、手に残るアイズの胸の感触を愉しむ。

 

「フィン、コイツ、アカンなぁ…スルーしよる」

 

「ロキが眷属にしたんだろ?責任を取れよな。こんなクソみたいなヤツをさぁ」

 

「どないしよ~?」

 

「後続隊のポーターからでいいんじゃない?攻撃部隊だと、怖くて組みたくない」

 

あぁ、俺もクソエルフとは組みたくない。清々する。そして、俺はガレスというオッサンが指揮する後続隊のポーターをすることになっていた。

 

 

 

---フレイ---

 

ロキ・ファミリアが遠征をするそうだ。フィン、リヴェリアは当分、迷宮生活になる。アイズの怪我は治っているのだが、酒場の正式開店に向けて準備をするので、僕達のチームとしては、パスすることにした。

 

内装工事が終わり、酒瓶を棚に並べる。アリーゼはアイスピックの練習に余念がない。アイズは客仕事が苦手のようで、裏方として、バッカスの手伝いをしてもらうことにした。お酒の原料は、当面輸入をして、来年以降は自前で確保しようと、畑の準備もしている。ファミリアに属さない人々に、働く機会を与えるのも、ギルドの仕事だし。畑仕事と畑をガードする者を雇い入れて居る。経験者優遇でね。

 

リリは看板娘として、働いてもらう。リリ本人も乗る気なので、まかせようかと思う。なので、リリには豊饒の女主人でメイド仕事を体験、鍛錬してもらっている。指導係はシル姉ちゃんだ。

 

「リリが一人前になるまで、リューを貸してやる」

 

って、ニャー母さんが助け船を出してくれた。嬉しい♪

 

そんなまったりとした時間が、順調に動き始めた頃、またアイズを狙う者がオラリオに足を踏み入れたことに、僕は気づくよしもなかった。

 

 

 

---レフィーヤ---

 

憧れの街、オラリオに足を踏み入れた。行き交う人々の波に目が回りそうだ。おのぼりさん状態で、あっちへふらふら、こっちへふらふらしている時、カバンをひったくられた。が、直ぐに取り戻してくれた女性がいた。金髪でスレンダーで凜々しい女性。

 

「この街は物騒だ。注意して歩きなさい」

 

そういうと、私にカバンを返しくれた。彼女の視線を浴びて、胸にキュンとした痛みが走る。これって、恋かな?

 

「ありがとうございます。あの…お名前は?」

 

って、私をスルーして、連れの男の元に戻り、甘え始めた。いいなぁ…あの男。私は無意識の内に、彼らの後を追跡していた。色々な物を買い込んでいく。夫婦なのかな?

 

随分と歩き通して、やっと大きな建物に入っていく。看板には『ロキ・ファミリア』と書かれていた。彼らはここに所属しているのかな?門番の人に、入団をしたいと申し入れた。

 

まず、書類申請だそうで、書類に必要事項を明記していく。しばらくすると、門番とは別の人が来て、書類だけを持っていった。だいぶ待っていると、先程の人が迎えに来てくれて、このファミリアの主神の元に、案内してくれることになった。

 

どんな主神なのかな?先程の凜々しい女性かな?期待でワクワクしながら、主神の待つ部屋に向かった。主神の待つドアが開き、先程の女性と連れの男が現れた。

 

「ロキ兄、良かったじゃないか。エルフの女性で、かわいいらしいし。じゃ、僕達は準備があるから帰るねぇ」

 

連れの男性が、ドアの向こうの人に声をかけて、あの女性と共に、この場を去って行く。え?このファミリアの人ではなかったの?女性に気を取られていて、この場に来た理由を忘れ欠けていた私は、突然抱きしめられた。相手を見ると細目でスレンダーで胸がうっすらと盛り上がっている女性のようだった。

 

「ようこそ♪ロキ・ファミリアへ♪さぁさぁ、中に入ってなぁ♪」

 

そして、その女性にセクハラのフルコースを与えられて、血の契約をされた…

 

 

 

---フレイ---

 

開店まで後少しになると、ホーム部分、住居部分は完成して、アリーゼ、リリ、アイズ、エイナが越してきた。ヘファ母さんが心配な僕は、自宅からの通いになる。一応、僕とシル姉ちゃんの部屋も用意はしてある。あと、遠征中のフィン、リヴェリアの部屋も用意してある。これで、生活基盤は完成かな?

 

「執務室とか無いんですか?」

 

と、エイナ。

 

「無いけど…あった方が良い?」

 

「有った方が良いと思います」

 

まぁ、空き部屋はまだ有るから、ホームに一番近い部屋にするか。

 

「なんで、女湯と男湯に別れているんだ?そこはフィン専用と、混浴で良いだろう」

 

っと、アリーゼ。混浴って…僕を抱き枕にして、湯船で寝るつもりなんだろう?却下だ。

 

「さぁ、みなさん。一息いれてください」

 

って、バッカスがアルコール分の無い甘酒を振る舞ってくれた。この建物には地下があり、室を設置して、酵母を発酵しやすくできるようにしていた。

 

開店準備中なのだが、ロキ兄はお供を同伴して、呑みに来ていた。

 

「ぷっはぁ~ここの酒は旨いなぁ~」

 

「厳選して仕入れているからね」

 

お供の少女は、誰かを探すような素振りをしていた。何か嫌な予感がする。

 

「誰かを探しているのか?」

 

その少女に訊いてみた。

 

「先日、一緒にいらした女性の方は?」

 

頬をほんのりと紅に染めた少女。ベートと同じか?

 

「ロキ兄、コイツは出入り禁止だ。ベートと同罪だ」

 

「なんやて?レフィーヤ…お前、アイズたんを追って、入団したんか?」

 

「あの方はアイズさんって言うんですね♪」

 

「ロキ兄のとこへの入団希望者って、こういうのが多くないか?」

 

「…」

 

「レフィーヤ、帰ってくれるか?迷惑だ!」

 

「帰りません。あの方と一緒に帰ります♪」

 

「一緒には帰らない。彼女は僕の眷属だ」

 

「え?ロキ様、あの方を奪って下さい。お願いします」

 

頭を抱えるロキ兄。

 

「奪う?彼女は物じゃない。彼女の意志でここにいる」

 

「直接聞くまで帰りません。そうか、あなたがいなくなれば…」

 

え?いきなり詠唱しているエルフの少女。ここでかぁ?リリが素早く反応して、少女の首筋に手刀を叩き込み、意識を飛ばす。

 

「リリ、ありがとう」

 

「いえ、こういう時のために、ルノア様に手ほどきを受けてました」

 

頭を撫でてあげると、嬉しそうな表情になるリリ。リリのこの表情は心が和むなぁ。

 

「ロキ兄、悪いけど、持って帰ってくれる?」

 

無言で頷き、レフィーヤを抱えて、すまないって手振りをして立ち去るロキ兄。僕には、まったりとした時間は、訪れないのかな?

 

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