※この作品はR-18です。

ラスボスになりたい~   作:もっち~!

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スクランブル

 

---フレイ---

 

ロキ・ファミリアが大規模な遠征に向かった。ヘファ母さんの処の団長の椿、調剤系のミアハ・ファミリアの団長のナァーザ、医療系のディアンケヒト・ファミリアの団長のアミッドなど、能力の高い者を連れての遠征だそうだ。

 

祈祷系ファミリアの主神のウラノスが受け取ったお告げで、闇に蠢く者が発生したかもしれないと。で、ソレの確認だそうだ。

 

そんな中、僕のお店『バー 閑古鳥』は開店した。お客さんはロキ兄だけ…の予定だったのだが、開店早々満員に。なんでだ?

 

「ヘルメスが良い酒場が出来ると、教えてくれたのだ」

 

と、鍛冶系ファミリアの主神のゴブニュ。

 

「開店前の仕入れをしてくれたでしょ?」

 

農業系ファミリアの主神のデメテル。

 

「椿に聞いたんだけど…」

 

何系か知らないファミリアの主神のタケちゃん。

 

などなど…

 

そうだ。

 

「タケちゃん。甘酒を仕込んだけど呑む?」

 

タケちゃんことタケミカヅチが、喰い付いた。タケちゃんは、父さんの遊び友達で、「タケちゃん」呼ばわりして良いと教わった。

 

「呑む…懐かしいなぁ」

 

タケちゃんの管轄だった地域のお酒、甘酒。米を麹で発酵させたアルコール分の無いお酒で、僕のファミリア内で好評なのだ。

 

「旨いなぁ…問題は酔えないことだな」

 

「で、タケちゃんの伝で、お米とか仕入れてくれないかな?代金は払いますから」

 

「いいよ。ヘルメスの息子の頼みは断れないよ。必要な物があったら、言ってくれれば、仕入れておくよ」

 

今日、この店に来ている神は、僕の両親が誰かを知っている者ばかりだった。モブ神と言われる影の薄い神には知られていないらしいけど。お礼代わりにある物を、タケちゃんの前にだけ置く。

 

「おっ…なれ鮨かぁ…うめぇ~」

 

興味を持ったロキ兄が口に入れるが…

 

「なんや~腐っているんか?」

 

臭いでやられて、床に吐き出した。

 

「ロキ、こういう物だよ、これって。あぁ、貴重なのに吐き出すとは…」

 

ロキ兄の吐き出した物は、リリがすかさず掃除をした。

 

「少し高いが、良い店だ。酒も旨いし、アテも旨いし」

 

と、老ドワーフのゴブニュは常連決定かな?客層は年齢高めで良いと思うし。そうだ、アレを試食して貰おう。ゴブニュとロキ兄の前に試作品を置いた。

 

「まだ、試作なんだけど、どうかな?バーボンよりスコッチの方が合うかもしれないけど」

 

二人の前に、スコッチをワンショットずつ置いた。試作品を食べて、ショットグラスを空にする二人。

 

「これ…悪くないで。臭いが気になるけどな、タケの食べているのよりマシや」

 

「少し味にパンチがないな」

 

「試作品だからねぇ。ゴブニュ、味にパンチがないのは、お酒の味が損なわれるから。口直しだと思ってよ」

 

試作品の簡単な説明をした。

 

「ねぇ、アレはないの?」

 

デメテルからオーダーが入った。手早く調理をして、彼女の前に出す。それからの香りで、みながその一皿を注目した。

 

「どうかな?」

 

「出来たてはおいしいわね」

 

「それはなんや?」

 

「バターピーナッツ。ミルクからクリーム分を分離して練った物をバターって言うんだけど、それで豆を炒めて絡めたんだよ」

 

デメテルの為に出した一品に、皆が群がり、手を出して食している。

 

「「旨い!」」

 

「もっと作ってくれる?」

 

っと、オーダーが入ったけど…

 

「う~ん、今日はそれしか無い。って訳だから、デメテル、増産をお願いします」

 

「了解♪」

 

「あと、何か無いのか?」

 

と、ガネーシャ。

 

「あと?あとなぁ…あぁ、ちょっと待ってね」

 

ファミリア内でおやつ代わりに作った物を調理した。父さんに試食して貰ったのだが、この店にある酒との相性が良くないので、メニュには考えていなかった。

 

「はい」

 

ガネーシャの前に試供品を置いた。

 

「おぉ、先程と同じ香り…胃袋が刺激される」

 

豪快に口に入れるが、皿に吐き出した。

 

「熱すぎる…」

 

仮面の中の素顔は涙目なんだろうか?

 

「これは、少しずつちぎって、ふぅ~ふぅ~して食べるんだよ。アテとしては良くないんだけど、おやつには抜群だよ♪」

 

僕の説明通りに食べるガネーシャ。彼の感想を待つ、お客様一同。

 

「おぉ、これは旨い。確かにここの酒には合わない気がするが、単品なら有りだな」

 

って、感想を聞き、オーダーする神が多数。これは、いくらでも調理できる。デメテルの処で大量生産しているから。

 

「あぁ、ジャガを蒸してバターをのせたのね♪」

 

デメテルは指でOKサインを作り、僕に感想を表してくれた。

 

「バターの生産量が安定しないけど、これは定番メニューに入れようかな」

 

今日の営業では、お酒は有料で、つまみは試作品なので、感想を聞かせてもらえれば、無料にしていた。

 

「他にどういうつまみ、アテがあると良い?」

 

僕はアルコールは摂らない。ギルドからの緊急呼び出しに備えてね。なので、おつまみにどういう物が良いかがわからない。開店前に、ロキ兄と父さんに試食をしてもらい、意見を聞いたのだが、この二人は酒があればつまみ無しで良い部類だったので、参考にならなかった。

 

こうして、開店初日は,問題もなく、無事に閉店時間を迎えられた。閉店後は、奥で裏方をしていたアイズと、カウンター内で、オーダー通りの酒を出していたアリーゼと、フロア担当のリリと僕の4名で、店内の清掃をした。

 

そこに意外な人物が飛び込んで来た。

 

「閉店だけど…あれ?フェルズじゃなか」

 

ウラノス・ファミリアの団長のフェルズだ。彼の顔は骸骨だったため、明るい店内で悲鳴が鳴り響く。

 

「怖がらないで大丈夫だよ。彼の顔は、不死の効果で老化が進行しきって、風化しただけだから」

 

「不死って不便な能力なのか…」

 

アリーゼですら怖がっている。

 

「不老不死ならともかく、不死だけだと不便だな。って、フェルズ、どうしたんだ?」

 

「出撃を依頼だ。イレギュラー発生なんだ。それも凶悪な…」

 

え?大部隊で潜っているのに…って、フィンとリヴェリアが潜っているんだぞ。

 

「アリーゼ、スクランブルだ。リューを呼び出して!」

 

「了解!」

 

アリーゼは豊饒の女主人に向けて走り出した。

 

「後の者は、装備を。潜る準備をしろ!」

 

「「了解!」」

 

アイズとリリが装備を取りに、2階に向かった。

 

「フェルズ、何階だ?」

 

「わからぬ。たぶん、25辺りかと。ウラノス様のホームに来てくだされ。転移で行ってもらう」

 

フェルズが外へ出て行った。彼と入れ替わりで、アリーゼとリューとシル姉ちゃんがやってきた。アリーゼとリューは2階へ装備を取りに行く。姉ちゃんは心配そうに僕を見つめる。

 

「無理はしないでね」

 

「ヘファ母さんを頼むよ、シル姉ちゃん」

 

僕に抱きつき、頬を擦り合わせ、お互いの頬の感触を感じ合う。姉ちゃんとの触れ合いの一時は、皆が装備を装着して戻って来て、終わった。

 

「ウラノスのホームから、転送魔法で、現場近くに飛ぶ。前衛は僕がやる。リリはギルドで薬類を持てるだけ持ち出してくれ。怪我人がいるかもしれないから。リュー、アリーゼは遊軍、アイズはリリのガード。まぁ、状況次第で指示を変える、気を引き締めて、頼むよ」

 

「「了解!」」

 

僕達はギルドを目指した。

 

 

 

---エイナ---

 

夜間受付の当番なので、数名のギルド員と共に、ギルド内でまったりとしていた。ロキ・ファミリアの大規模遠征が行われているので、深夜にここを利用する冒険者は、いつもより少ない。

 

そこに、彼が現れた。

 

「エイナ、回復薬をありったけ、リリのバックパックに詰めてくれ!」

 

「どうしたの?」

 

「スクランブルだ。何かヤバいらしい」

 

私の後ろで、私と共にまったりしていたギルド員達が、彼の指示通りに動いていた。

 

「ねぇ…」

 

「心配するな。戻って来るよ。僕はここの主神だよ♪」

 

私を心配させまいと、笑顔で応える彼。

 

「でも…」

 

「エイナ、お前はお前の出来る事をしろ。いいな。ここを訪れた者を不安にさせるな。この街に危機が迫っていると感じたら、迷わず、父さんとガネーシャを頼れ。いいな♪」

 

のどが締まるような感じがして声が出ない。なので、軽く頷く。

 

「エイナ、そんな不安そうな顔をするな。みんなが不安になるだろ?」

 

彼は私を抱き寄せ抱きしめてくれた。このまま、ずっといてくれたら良いのに…

 

「フレイ様、準備できました」

 

「わかった。行こう♪。後は頼むよ、エイナ♪」

 

私の額に口づけをして立ち去っていく彼。

 

 

 

---フレイ---

 

ギルド内にある隠し扉から、ウラノス・ファミリアのホームに向かった。そこには、転送用の魔法陣が既に描かれており、僕達はその中心に固まって立った。

 

「フェルズ、発動させてくれ!」

 

「御意!」

 

僕達は光の渦に飲み込まれて行き、光の粒子が霧散していくと、ダンジョン内にいた。ここってどこだ?周囲を見回すと木肌でできた壁や天井が見える。ってことは、19~24の『大樹の迷宮』かな?

 

「なぁ、私達来るまでに移動したんだじゃないか?」

 

アリーゼが周囲を見て言う。確かに気配が無い。その割に、戦闘をした痕跡は残っている。

 

「上を目指そう。18階を襲われたら大惨事だ」

 

注意をしながら上を目指す。罠があるとマズイの、道と思われる場所以外は歩かないようにする。

 

「あっ、誰かいますよ」

 

リリが何かを見つけた。彼女は僕達よりもずいぶんと背が低い分、僕達の視界に入らない物を見つけるのが得意だった。彼女が指差した場所に僕だけが向かう。あ…見知った少女が倒れていた。

 

「ティオナ…おい、大丈夫か?ティオナ!」

 

「へ?あ…フレイ様…早く助けに行ってください…敗走中です」

 

敗走?なんで?大部隊だろうに?ティオナを抱き上げ、皆がいる場所まで連れて行く。アリーゼとリューがリリのバックパックから薬を取りだし、ティオナの治療をしていく。アイズは心配そうにティオナを見つめ、彼女の手を握っていた。

 

「ティオナ、何が出たんだ?」

 

「ド…ラゴンの大群…見た事無いヤツ…」

 

「治療はしたから命には別状無いみたいだけど、体力が…」

 

「ここに置いていけないし…アイズ、背負えるか?」

 

頷く彼女。

 

「後ろからは来ないと思うが、来たらティオナを捨てて戦え。アイズまで死んだら困るから。リリは捨てられたティオナをガード、アリーゼはしんがり、前衛は僕とリューで行く」

 

上の階を目指す。段々と血の臭いが濃くなってきた。だいぶ、死傷者が出ているようだ。

 

「きゃっ!」

 

アリーゼですら悲鳴を上げてしまう惨たらし身体、咀嚼途中で吐き出されたような死体が方々にある。

 

更に上の階に昇ると、大群のしんがりが見えてきた。あれって…絶望的な局面かもしれない。

 

「リュー!みんなを頼む」

 

僕の目を見つめるリュー。

 

「わかりました…」

 

僕の想いを感じ取ってくれたようで、その表情は険しい。

 

「アリーゼはパニックになると戦力外、頼むよ」

 

「わかっています…」

 

「アイズ、ティオナをそこに寝かせて。リリとアイズで、ティオナと薬入りのバックパックを護ってくれ」

 

頷く二人。

 

「みんなに出逢えて良かった…また、逢いたい…」

 

僕は、皆に背を向けて、深呼吸をし精神力を高めて行く。両手にナイフを手にして、目の前の大群に遅い掛かっていく。

 

 

 

---フィン---

 

18階と19階とを繋ぐ通路上で、攻防している。これ以上は下がれない。一応、街には避難勧告を出したけども。親指の疼きが止まらない。とてもマズイ状況だ。地上に援軍を要請したが、来るまでに一日以上はかかるだろう。それまで、ここが保つかだ。

 

霧のないフロアで濃い霧が突然の発生した。その時、俺の親指が激しく疼きだした。戦闘態勢を取ったのだが、霧の中から悲鳴や咀嚼音が聞こえてきて…霧が晴れると、目の前には見た事のないドラゴンの大群がいた。表面を覆う鱗は剣での攻撃も、魔法での攻撃も通らない。態勢を整える為に後退をしていくが、次々に屠られていく仲間達。

 

「ナァーザの容体はどうだ?」

 

右腕を喰われ掛かった彼女の腕は咀嚼途中の為か、ぐちゃぐちゃだった。

 

「回復魔法で少しずつ回復させているが、魔力が保つか…」

 

悔しそうなリヴェリア。

 

「フレイがいれば…治るかもしれないけど…」

 

俺もずっと彼の事を思っているよ。彼がかわいがっていたティオナは…敗走する途中で姿を消してしまった。彼になんて言えば良いんだ?

 

地響きと共に、俺達とは違う悲鳴のような叫び声がしだした。新敵か?終わったかな。何かが近づいている。しんがりにいたはずのデカイモンスターが俺達の方へ迫っていた。

 

「どうする?」

 

椿にきかれた。

 

「動ける者は街に避難して、街を護れ。歩けない怪我人は置いていってくれ…」

 

「おい、ナァーザは…」

 

リヴェリアの声は怒りで震えている。

 

「置いていけ。リヴェリアは街に行き、魔力の回復に努めろ!」

 

「できる訳ないだろ?ナァーザを置いていくなんて」

 

「う~ん、アミッドはどうした?」

 

「街で怪我人の治療中だ」

 

「ならば、リヴェリアは街に行け。そして、指揮を執ってくれ」

 

「フィンは…」

 

俺の考えを悟ってくれたのか、彼女の声がトーンダウンした。

 

「わかった。フレイ・ファミリアの一員なんだぞ、最期の時まであがいてくれ!」

 

そう言い残して、彼女は街に向かって走り出した。

 

「ガレス、レフィーヤ、街まで後退しろ。街の防衛はリヴェリアが指揮を執る!」

 

頷いたガレスは、レフィーヤを連れて街へと向かう。さて、どうあがくかな?そんな最後の悩みを解決しようとした時、親指の疼きが止まった。え?なんで?この局面でありえないだろう?

 

「よぉ、フィン。元気か?」

 

全身血まみれで現れたアリーゼ。

 

「ちょっと、引っかかれちゃってさぁ」

 

返り血ではなく出血しているようだ。肩で息をしている彼女。

 

「フレイがボスクラスとやっている。その隙にリリと強行突破したんだけど…リリ、後は頼むぞ…」

 

アリーゼがその場に倒れた。

 

「あぁ、アリーゼ様は体力切れです。傷口は薬で塞いでございます」

 

薬?リリのバックパックには、大量の薬が入っていた。

 

「フィン様、この薬を託します。後はお願いします。リリは皆様の所に戻りますから」

 

リリは、両手にナイフを手にして、モンスターの大群の中に消えていった。リリに託されたバックパックは、俺の力で持ち上がらないほどの薬が満載されている。どう、街まで持っていけば良いんだ?リリのような能力がないんだが…

 

「団長…大丈夫?あっ、アリーゼさん…フレイ様が来てくれたんですね♪」

 

街の方からティオネが戻って来た。

 

「なんで、戻って来たんだ?そうだ、街に行って、誰かを連れて来てくれ。リリが薬を持って来てくれたんだ」

 

あの異様に重いバックパックを指差した。

 

「わかりました。薬を死守してください」

 

ティオネが街に引き返して行く。しばらくして、とうとう何匹かのドラゴンが俺の目の前にやってきた。覚悟を決めて、薬を死守する。

 

 

 

---フレイ---

 

見た事も聞いた事も無いドラゴン。首が10本あって、頭にはそれぞれ2本ずつの角、胴体は1匹分だけど、とてつもなくデカイ。首がしなる鞭のように僕を襲ってくる。避けるのが精一杯だ。

 

どうするんだ、これ?ウロコが固くて、僕のナイフでも刃が立たない。傷が入らないよ。

 

アイズが風を纏った剣技を撃ち込むが効果がない。

 

「アイズ、逃げろ!」

 

「嫌だ!」

 

「死ぬぞ!」

 

「一緒にいる!」

 

強情だな…もぅ~。さて、どうする。魔法もダメ、剣もダメって、チートだろうに。う~ん…

 

「知恵熱出るよ!」

 

「アイズに言われたくない!」

 

ふと、アイズが笑顔を見せた気がした。何か懐かしい気がする。全身に何かが走り、何かが纏われていく。

 

「フレイ…くん…」

 

なんとも懐かし呼び名の気がした。身体の芯が熱くなっていく。

 

「…ズお姉ちゃんは、僕が護る」

 

ふと、僕の意志と関係なく、口から漏れた言葉。全身にさぶいぼが出るような感じがする。

 

『出でよ、レーヴァティン』

 

僕の身体は、僕の意識の指揮下から離れた。僕の腰に剣が現れた。僕はナイフを収納して、その剣を手にして、鞘から抜いた。その瞬間、ボス以外のドラゴンが燃え上がる。

 

『我が名はダークフレイ。フレイを虐める者は許さない。フレイを倒すのは、この俺だけだ!』

 

目の前のボスを一刀両断に。左右に分かれて地面に倒れて、燃え上がっていく。

 

『ふっ…たわいも無い…』

 

僕の意識が遠くなっていく…

 

 

 

『ねぇ、…イ君、起きてよ~』

 

泣きじゃくっている女性の声…遠くの方で聞こえる。目を覚ますと、アイズが僕を抱きしめて、スヤスヤと寝ていた。この局面で抱き枕か?

 

身体が鉛のように重い。能力を使い切ったようだ。抱きついているアイズをどかすことすらできない。

 

「アイズ、フレイ…大丈夫ですか?」

 

リューの声だ。顔を声のする方に向けると、ティオナがぐったりとしたリリを背負っていた。その後ろには片足を引き摺る様に歩くリューがいる。

 

「アリーゼは?」

 

「見当たらないです…」

 

「そっか…」

 

喰われたかな?簡単には喰われるとは思えないけど。

 

「で、お姫様は安眠ですか?安眠抱き枕くん♪」

 

軽口が叩けるリュー。大丈夫そうだ。

 

「あぁ、この局面で有り得ないだろ?僕を抱き枕にして安眠って…リリは大丈夫か?」

 

「あぁ、脳しんとうです。回復魔法があれば治ります」

 

『むにゃむにゃ…フレイ君…お風呂に一緒に入ろ~よ♪』

 

って、アイズの寝言。どんな夢を見ているんだ?湯船で僕を抱き枕に安眠かな?

 

「お~い!大丈夫かぁ~!」

 

遠くの方から声が聞こえてきた。リューが手を弱々しく振っている。もっと、強くならないとなぁ…アイズ以外全員ボロボロだよ。

 

援軍が見えてきた。フィンと…アリーゼだ。アイツ、生きていたのか。で、僕の状況を見ると、

 

「この局面でアイズとか?なんで私で無いんだ?」

 

って、怒っている。それを弱々しいながらも笑って見ているリューとティオナ。全然、起きないアイズと僕はその状態のまま、担架に乗せられた。なんか、すごく情けない姿じゃないのか?これって。まるでアイズに護られたみたいで…

 

街に着いた。悲惨な状況だ。街全体が野戦病院のようだ。リヴェリア、アミッドなど治癒能力保持者が次々と、治療を施している。

 

で、この僕の置かれた状況をベート、レフィーヤに目撃された。なんか、されるのかな。今の僕には拒否する体力が残っていないけど。

 

「ありがとうございました」

 

僕の予想に反して、僕に対して頭を下げるベート。レフィーヤは複雑な表情をしている。

 

「助かりました…本当に…ありがとうございました。生きて、地上に戻れます」

 

って。

 

「リリの持って来てくれた薬のおかげだよ」

 

と、フィン。しかし、お前の姿は、やけに無傷すぎねぇか?

 

「あぁ、リリに回復魔法を頼む。頭を打ったらしくて、意識が戻らないんだ」

 

ベートの先導で、リリを背負ったティオナが後をついていく。

 

「で、いつまで、この安眠姫は抱き枕を抱えて寝ているんだ?」

 

アリーゼが呆れたように言う。いつまでだろうな。アイズも体力ゼロかもしれない。最後の力を振り絞って、何かから護るように僕を抱きしめたような気もする。

 

「フレイ…ナァーザが酷い状態なんだ。治療可能になったら頼む」

 

「わかった。すまないが、ナァーザは薬で保たしてくれ。今、僕は鉛のように重いんだ」

 

『むにゃむにゃ…私の生身は重くないんだよ…フレイ…くぅ…うん…』

 

って、アイズの寝言…鉛を生身と聞き違えているし…しかし、アレはなんだったんだ?地上に戻ったら、ウラノスに訊いてみるか。

 

 

 

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