---フレイ---
ロキ・ファミリアが大規模な遠征に向かった。ヘファ母さんの処の団長の椿、調剤系のミアハ・ファミリアの団長のナァーザ、医療系のディアンケヒト・ファミリアの団長のアミッドなど、能力の高い者を連れての遠征だそうだ。
祈祷系ファミリアの主神のウラノスが受け取ったお告げで、闇に蠢く者が発生したかもしれないと。で、ソレの確認だそうだ。
そんな中、僕のお店『バー 閑古鳥』は開店した。お客さんはロキ兄だけ…の予定だったのだが、開店早々満員に。なんでだ?
「ヘルメスが良い酒場が出来ると、教えてくれたのだ」
と、鍛冶系ファミリアの主神のゴブニュ。
「開店前の仕入れをしてくれたでしょ?」
農業系ファミリアの主神のデメテル。
「椿に聞いたんだけど…」
何系か知らないファミリアの主神のタケちゃん。
などなど…
そうだ。
「タケちゃん。甘酒を仕込んだけど呑む?」
タケちゃんことタケミカヅチが、喰い付いた。タケちゃんは、父さんの遊び友達で、「タケちゃん」呼ばわりして良いと教わった。
「呑む…懐かしいなぁ」
タケちゃんの管轄だった地域のお酒、甘酒。米を麹で発酵させたアルコール分の無いお酒で、僕のファミリア内で好評なのだ。
「旨いなぁ…問題は酔えないことだな」
「で、タケちゃんの伝で、お米とか仕入れてくれないかな?代金は払いますから」
「いいよ。ヘルメスの息子の頼みは断れないよ。必要な物があったら、言ってくれれば、仕入れておくよ」
今日、この店に来ている神は、僕の両親が誰かを知っている者ばかりだった。モブ神と言われる影の薄い神には知られていないらしいけど。お礼代わりにある物を、タケちゃんの前にだけ置く。
「おっ…なれ鮨かぁ…うめぇ~」
興味を持ったロキ兄が口に入れるが…
「なんや~腐っているんか?」
臭いでやられて、床に吐き出した。
「ロキ、こういう物だよ、これって。あぁ、貴重なのに吐き出すとは…」
ロキ兄の吐き出した物は、リリがすかさず掃除をした。
「少し高いが、良い店だ。酒も旨いし、アテも旨いし」
と、老ドワーフのゴブニュは常連決定かな?客層は年齢高めで良いと思うし。そうだ、アレを試食して貰おう。ゴブニュとロキ兄の前に試作品を置いた。
「まだ、試作なんだけど、どうかな?バーボンよりスコッチの方が合うかもしれないけど」
二人の前に、スコッチをワンショットずつ置いた。試作品を食べて、ショットグラスを空にする二人。
「これ…悪くないで。臭いが気になるけどな、タケの食べているのよりマシや」
「少し味にパンチがないな」
「試作品だからねぇ。ゴブニュ、味にパンチがないのは、お酒の味が損なわれるから。口直しだと思ってよ」
試作品の簡単な説明をした。
「ねぇ、アレはないの?」
デメテルからオーダーが入った。手早く調理をして、彼女の前に出す。それからの香りで、みながその一皿を注目した。
「どうかな?」
「出来たてはおいしいわね」
「それはなんや?」
「バターピーナッツ。ミルクからクリーム分を分離して練った物をバターって言うんだけど、それで豆を炒めて絡めたんだよ」
デメテルの為に出した一品に、皆が群がり、手を出して食している。
「「旨い!」」
「もっと作ってくれる?」
っと、オーダーが入ったけど…
「う~ん、今日はそれしか無い。って訳だから、デメテル、増産をお願いします」
「了解♪」
「あと、何か無いのか?」
と、ガネーシャ。
「あと?あとなぁ…あぁ、ちょっと待ってね」
ファミリア内でおやつ代わりに作った物を調理した。父さんに試食して貰ったのだが、この店にある酒との相性が良くないので、メニュには考えていなかった。
「はい」
ガネーシャの前に試供品を置いた。
「おぉ、先程と同じ香り…胃袋が刺激される」
豪快に口に入れるが、皿に吐き出した。
「熱すぎる…」
仮面の中の素顔は涙目なんだろうか?
「これは、少しずつちぎって、ふぅ~ふぅ~して食べるんだよ。アテとしては良くないんだけど、おやつには抜群だよ♪」
僕の説明通りに食べるガネーシャ。彼の感想を待つ、お客様一同。
「おぉ、これは旨い。確かにここの酒には合わない気がするが、単品なら有りだな」
って、感想を聞き、オーダーする神が多数。これは、いくらでも調理できる。デメテルの処で大量生産しているから。
「あぁ、ジャガを蒸してバターをのせたのね♪」
デメテルは指でOKサインを作り、僕に感想を表してくれた。
「バターの生産量が安定しないけど、これは定番メニューに入れようかな」
今日の営業では、お酒は有料で、つまみは試作品なので、感想を聞かせてもらえれば、無料にしていた。
「他にどういうつまみ、アテがあると良い?」
僕はアルコールは摂らない。ギルドからの緊急呼び出しに備えてね。なので、おつまみにどういう物が良いかがわからない。開店前に、ロキ兄と父さんに試食をしてもらい、意見を聞いたのだが、この二人は酒があればつまみ無しで良い部類だったので、参考にならなかった。
こうして、開店初日は,問題もなく、無事に閉店時間を迎えられた。閉店後は、奥で裏方をしていたアイズと、カウンター内で、オーダー通りの酒を出していたアリーゼと、フロア担当のリリと僕の4名で、店内の清掃をした。
そこに意外な人物が飛び込んで来た。
「閉店だけど…あれ?フェルズじゃなか」
ウラノス・ファミリアの団長のフェルズだ。彼の顔は骸骨だったため、明るい店内で悲鳴が鳴り響く。
「怖がらないで大丈夫だよ。彼の顔は、不死の効果で老化が進行しきって、風化しただけだから」
「不死って不便な能力なのか…」
アリーゼですら怖がっている。
「不老不死ならともかく、不死だけだと不便だな。って、フェルズ、どうしたんだ?」
「出撃を依頼だ。イレギュラー発生なんだ。それも凶悪な…」
え?大部隊で潜っているのに…って、フィンとリヴェリアが潜っているんだぞ。
「アリーゼ、スクランブルだ。リューを呼び出して!」
「了解!」
アリーゼは豊饒の女主人に向けて走り出した。
「後の者は、装備を。潜る準備をしろ!」
「「了解!」」
アイズとリリが装備を取りに、2階に向かった。
「フェルズ、何階だ?」
「わからぬ。たぶん、25辺りかと。ウラノス様のホームに来てくだされ。転移で行ってもらう」
フェルズが外へ出て行った。彼と入れ替わりで、アリーゼとリューとシル姉ちゃんがやってきた。アリーゼとリューは2階へ装備を取りに行く。姉ちゃんは心配そうに僕を見つめる。
「無理はしないでね」
「ヘファ母さんを頼むよ、シル姉ちゃん」
僕に抱きつき、頬を擦り合わせ、お互いの頬の感触を感じ合う。姉ちゃんとの触れ合いの一時は、皆が装備を装着して戻って来て、終わった。
「ウラノスのホームから、転送魔法で、現場近くに飛ぶ。前衛は僕がやる。リリはギルドで薬類を持てるだけ持ち出してくれ。怪我人がいるかもしれないから。リュー、アリーゼは遊軍、アイズはリリのガード。まぁ、状況次第で指示を変える、気を引き締めて、頼むよ」
「「了解!」」
僕達はギルドを目指した。
---エイナ---
夜間受付の当番なので、数名のギルド員と共に、ギルド内でまったりとしていた。ロキ・ファミリアの大規模遠征が行われているので、深夜にここを利用する冒険者は、いつもより少ない。
そこに、彼が現れた。
「エイナ、回復薬をありったけ、リリのバックパックに詰めてくれ!」
「どうしたの?」
「スクランブルだ。何かヤバいらしい」
私の後ろで、私と共にまったりしていたギルド員達が、彼の指示通りに動いていた。
「ねぇ…」
「心配するな。戻って来るよ。僕はここの主神だよ♪」
私を心配させまいと、笑顔で応える彼。
「でも…」
「エイナ、お前はお前の出来る事をしろ。いいな。ここを訪れた者を不安にさせるな。この街に危機が迫っていると感じたら、迷わず、父さんとガネーシャを頼れ。いいな♪」
のどが締まるような感じがして声が出ない。なので、軽く頷く。
「エイナ、そんな不安そうな顔をするな。みんなが不安になるだろ?」
彼は私を抱き寄せ抱きしめてくれた。このまま、ずっといてくれたら良いのに…
「フレイ様、準備できました」
「わかった。行こう♪。後は頼むよ、エイナ♪」
私の額に口づけをして立ち去っていく彼。
---フレイ---
ギルド内にある隠し扉から、ウラノス・ファミリアのホームに向かった。そこには、転送用の魔法陣が既に描かれており、僕達はその中心に固まって立った。
「フェルズ、発動させてくれ!」
「御意!」
僕達は光の渦に飲み込まれて行き、光の粒子が霧散していくと、ダンジョン内にいた。ここってどこだ?周囲を見回すと木肌でできた壁や天井が見える。ってことは、19~24の『大樹の迷宮』かな?
「なぁ、私達来るまでに移動したんだじゃないか?」
アリーゼが周囲を見て言う。確かに気配が無い。その割に、戦闘をした痕跡は残っている。
「上を目指そう。18階を襲われたら大惨事だ」
注意をしながら上を目指す。罠があるとマズイの、道と思われる場所以外は歩かないようにする。
「あっ、誰かいますよ」
リリが何かを見つけた。彼女は僕達よりもずいぶんと背が低い分、僕達の視界に入らない物を見つけるのが得意だった。彼女が指差した場所に僕だけが向かう。あ…見知った少女が倒れていた。
「ティオナ…おい、大丈夫か?ティオナ!」
「へ?あ…フレイ様…早く助けに行ってください…敗走中です」
敗走?なんで?大部隊だろうに?ティオナを抱き上げ、皆がいる場所まで連れて行く。アリーゼとリューがリリのバックパックから薬を取りだし、ティオナの治療をしていく。アイズは心配そうにティオナを見つめ、彼女の手を握っていた。
「ティオナ、何が出たんだ?」
「ド…ラゴンの大群…見た事無いヤツ…」
「治療はしたから命には別状無いみたいだけど、体力が…」
「ここに置いていけないし…アイズ、背負えるか?」
頷く彼女。
「後ろからは来ないと思うが、来たらティオナを捨てて戦え。アイズまで死んだら困るから。リリは捨てられたティオナをガード、アリーゼはしんがり、前衛は僕とリューで行く」
上の階を目指す。段々と血の臭いが濃くなってきた。だいぶ、死傷者が出ているようだ。
「きゃっ!」
アリーゼですら悲鳴を上げてしまう惨たらし身体、咀嚼途中で吐き出されたような死体が方々にある。
更に上の階に昇ると、大群のしんがりが見えてきた。あれって…絶望的な局面かもしれない。
「リュー!みんなを頼む」
僕の目を見つめるリュー。
「わかりました…」
僕の想いを感じ取ってくれたようで、その表情は険しい。
「アリーゼはパニックになると戦力外、頼むよ」
「わかっています…」
「アイズ、ティオナをそこに寝かせて。リリとアイズで、ティオナと薬入りのバックパックを護ってくれ」
頷く二人。
「みんなに出逢えて良かった…また、逢いたい…」
僕は、皆に背を向けて、深呼吸をし精神力を高めて行く。両手にナイフを手にして、目の前の大群に遅い掛かっていく。
---フィン---
18階と19階とを繋ぐ通路上で、攻防している。これ以上は下がれない。一応、街には避難勧告を出したけども。親指の疼きが止まらない。とてもマズイ状況だ。地上に援軍を要請したが、来るまでに一日以上はかかるだろう。それまで、ここが保つかだ。
霧のないフロアで濃い霧が突然の発生した。その時、俺の親指が激しく疼きだした。戦闘態勢を取ったのだが、霧の中から悲鳴や咀嚼音が聞こえてきて…霧が晴れると、目の前には見た事のないドラゴンの大群がいた。表面を覆う鱗は剣での攻撃も、魔法での攻撃も通らない。態勢を整える為に後退をしていくが、次々に屠られていく仲間達。
「ナァーザの容体はどうだ?」
右腕を喰われ掛かった彼女の腕は咀嚼途中の為か、ぐちゃぐちゃだった。
「回復魔法で少しずつ回復させているが、魔力が保つか…」
悔しそうなリヴェリア。
「フレイがいれば…治るかもしれないけど…」
俺もずっと彼の事を思っているよ。彼がかわいがっていたティオナは…敗走する途中で姿を消してしまった。彼になんて言えば良いんだ?
地響きと共に、俺達とは違う悲鳴のような叫び声がしだした。新敵か?終わったかな。何かが近づいている。しんがりにいたはずのデカイモンスターが俺達の方へ迫っていた。
「どうする?」
椿にきかれた。
「動ける者は街に避難して、街を護れ。歩けない怪我人は置いていってくれ…」
「おい、ナァーザは…」
リヴェリアの声は怒りで震えている。
「置いていけ。リヴェリアは街に行き、魔力の回復に努めろ!」
「できる訳ないだろ?ナァーザを置いていくなんて」
「う~ん、アミッドはどうした?」
「街で怪我人の治療中だ」
「ならば、リヴェリアは街に行け。そして、指揮を執ってくれ」
「フィンは…」
俺の考えを悟ってくれたのか、彼女の声がトーンダウンした。
「わかった。フレイ・ファミリアの一員なんだぞ、最期の時まであがいてくれ!」
そう言い残して、彼女は街に向かって走り出した。
「ガレス、レフィーヤ、街まで後退しろ。街の防衛はリヴェリアが指揮を執る!」
頷いたガレスは、レフィーヤを連れて街へと向かう。さて、どうあがくかな?そんな最後の悩みを解決しようとした時、親指の疼きが止まった。え?なんで?この局面でありえないだろう?
「よぉ、フィン。元気か?」
全身血まみれで現れたアリーゼ。
「ちょっと、引っかかれちゃってさぁ」
返り血ではなく出血しているようだ。肩で息をしている彼女。
「フレイがボスクラスとやっている。その隙にリリと強行突破したんだけど…リリ、後は頼むぞ…」
アリーゼがその場に倒れた。
「あぁ、アリーゼ様は体力切れです。傷口は薬で塞いでございます」
薬?リリのバックパックには、大量の薬が入っていた。
「フィン様、この薬を託します。後はお願いします。リリは皆様の所に戻りますから」
リリは、両手にナイフを手にして、モンスターの大群の中に消えていった。リリに託されたバックパックは、俺の力で持ち上がらないほどの薬が満載されている。どう、街まで持っていけば良いんだ?リリのような能力がないんだが…
「団長…大丈夫?あっ、アリーゼさん…フレイ様が来てくれたんですね♪」
街の方からティオネが戻って来た。
「なんで、戻って来たんだ?そうだ、街に行って、誰かを連れて来てくれ。リリが薬を持って来てくれたんだ」
あの異様に重いバックパックを指差した。
「わかりました。薬を死守してください」
ティオネが街に引き返して行く。しばらくして、とうとう何匹かのドラゴンが俺の目の前にやってきた。覚悟を決めて、薬を死守する。
---フレイ---
見た事も聞いた事も無いドラゴン。首が10本あって、頭にはそれぞれ2本ずつの角、胴体は1匹分だけど、とてつもなくデカイ。首がしなる鞭のように僕を襲ってくる。避けるのが精一杯だ。
どうするんだ、これ?ウロコが固くて、僕のナイフでも刃が立たない。傷が入らないよ。
アイズが風を纏った剣技を撃ち込むが効果がない。
「アイズ、逃げろ!」
「嫌だ!」
「死ぬぞ!」
「一緒にいる!」
強情だな…もぅ~。さて、どうする。魔法もダメ、剣もダメって、チートだろうに。う~ん…
「知恵熱出るよ!」
「アイズに言われたくない!」
ふと、アイズが笑顔を見せた気がした。何か懐かしい気がする。全身に何かが走り、何かが纏われていく。
「フレイ…くん…」
なんとも懐かし呼び名の気がした。身体の芯が熱くなっていく。
「…ズお姉ちゃんは、僕が護る」
ふと、僕の意志と関係なく、口から漏れた言葉。全身にさぶいぼが出るような感じがする。
『出でよ、レーヴァティン』
僕の身体は、僕の意識の指揮下から離れた。僕の腰に剣が現れた。僕はナイフを収納して、その剣を手にして、鞘から抜いた。その瞬間、ボス以外のドラゴンが燃え上がる。
『我が名はダークフレイ。フレイを虐める者は許さない。フレイを倒すのは、この俺だけだ!』
目の前のボスを一刀両断に。左右に分かれて地面に倒れて、燃え上がっていく。
『ふっ…たわいも無い…』
僕の意識が遠くなっていく…
『ねぇ、…イ君、起きてよ~』
泣きじゃくっている女性の声…遠くの方で聞こえる。目を覚ますと、アイズが僕を抱きしめて、スヤスヤと寝ていた。この局面で抱き枕か?
身体が鉛のように重い。能力を使い切ったようだ。抱きついているアイズをどかすことすらできない。
「アイズ、フレイ…大丈夫ですか?」
リューの声だ。顔を声のする方に向けると、ティオナがぐったりとしたリリを背負っていた。その後ろには片足を引き摺る様に歩くリューがいる。
「アリーゼは?」
「見当たらないです…」
「そっか…」
喰われたかな?簡単には喰われるとは思えないけど。
「で、お姫様は安眠ですか?安眠抱き枕くん♪」
軽口が叩けるリュー。大丈夫そうだ。
「あぁ、この局面で有り得ないだろ?僕を抱き枕にして安眠って…リリは大丈夫か?」
「あぁ、脳しんとうです。回復魔法があれば治ります」
『むにゃむにゃ…フレイ君…お風呂に一緒に入ろ~よ♪』
って、アイズの寝言。どんな夢を見ているんだ?湯船で僕を抱き枕に安眠かな?
「お~い!大丈夫かぁ~!」
遠くの方から声が聞こえてきた。リューが手を弱々しく振っている。もっと、強くならないとなぁ…アイズ以外全員ボロボロだよ。
援軍が見えてきた。フィンと…アリーゼだ。アイツ、生きていたのか。で、僕の状況を見ると、
「この局面でアイズとか?なんで私で無いんだ?」
って、怒っている。それを弱々しいながらも笑って見ているリューとティオナ。全然、起きないアイズと僕はその状態のまま、担架に乗せられた。なんか、すごく情けない姿じゃないのか?これって。まるでアイズに護られたみたいで…
街に着いた。悲惨な状況だ。街全体が野戦病院のようだ。リヴェリア、アミッドなど治癒能力保持者が次々と、治療を施している。
で、この僕の置かれた状況をベート、レフィーヤに目撃された。なんか、されるのかな。今の僕には拒否する体力が残っていないけど。
「ありがとうございました」
僕の予想に反して、僕に対して頭を下げるベート。レフィーヤは複雑な表情をしている。
「助かりました…本当に…ありがとうございました。生きて、地上に戻れます」
って。
「リリの持って来てくれた薬のおかげだよ」
と、フィン。しかし、お前の姿は、やけに無傷すぎねぇか?
「あぁ、リリに回復魔法を頼む。頭を打ったらしくて、意識が戻らないんだ」
ベートの先導で、リリを背負ったティオナが後をついていく。
「で、いつまで、この安眠姫は抱き枕を抱えて寝ているんだ?」
アリーゼが呆れたように言う。いつまでだろうな。アイズも体力ゼロかもしれない。最後の力を振り絞って、何かから護るように僕を抱きしめたような気もする。
「フレイ…ナァーザが酷い状態なんだ。治療可能になったら頼む」
「わかった。すまないが、ナァーザは薬で保たしてくれ。今、僕は鉛のように重いんだ」
『むにゃむにゃ…私の生身は重くないんだよ…フレイ…くぅ…うん…』
って、アイズの寝言…鉛を生身と聞き違えているし…しかし、アレはなんだったんだ?地上に戻ったら、ウラノスに訊いてみるか。