---維持神---
さて、ショウタイムの幕開けと行くか。
呪われしヘルメスとフレイヤの子供よ!お前は、お前の大切な者達の手で殺されるのだ。殺される為のご褒美に、孤独感もプレゼントしてやる。絶望を愉しめよ!ふふふ♪
---ヘルメス---
「どういうことだ?」
天上界の神からのお告げを聞くことができる、ウラノスから今後の展開を聞かされた。
「この地に、勇者の卵が現れ、勇者となる為に魔王と戦い、勇者として地上に勇気を与えるそうだ」
「いや、だから魔王って何だ?この地にそんな存在はいないぞ」
「いるだろう?前回は熟成する前に起こしてしまい、失敗したが」
それって…アイツはそういう存在なのか?
「アイツは魔王じゃない」
「天上界の神が言うには、お前達の子供の受精卵に魔王の魂を埋め込んだそうだ。勇者を勇者にするには、敵である魔王が必要であるからな」
「待てぇ~!アイツは、勇者に倒される為に産まれたのか?」
「そうだ。それだけの存在だ。アイツは」
「神だろう?」
「いいか、ヘルメス。天界から堕とされた神が魔王なんだ」
おい…堕とされた…アイツは天界にいたことが無いんだぞ!
「アイツは何の為に生きているんだ?」
「自分を殺す為の戦士達を育てる為だ。その戦士達が勇者様のお供になるんだから」
「そして、地上が明るい未来を迎える為に、勇者一行に殺されるのか?」
「そういうことだ。天上界の神からのお告げだ。我々天界の神々は、成し遂げないといけない」
また、アイツは俺達に殺されるのか…魔王として殺される為に、転生したのか…嵌められたのか…
「頃合いを見て、アイツを60階層の開かずの間に幽閉する。ヘルメス、このことは他言無用だぞ」
「なんで、アイツなんだ?」
「ルールを犯したのは、お前とフレイヤだ。天界以外で子供を作るなんて、認められる訳ないだろ?天界以外で産まれた神は悪魔に認定というのが、天上界からの通達だ。あきらめろ、ヘルメス!」
親の因果が子に報い…か?
「ヘルメス、納得したか?いいじゃないか、要らないだろ?お前に子供なんかは」
そうだったけど…でもな…
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その後、俺はフレイヤを訪ねて、ウラノスに聞いた話をした。泣きじゃくるフレイヤ。
「あの子にはつらい想いばかりさせて…ヘルメス、どうにかならない?」
「どうにもならない。天上界の神の創ったシナリオだ。天界の俺達ではどうにもならないな」
「せめて、アイズとティオナだけでもフレイの傍に…」
「難しいな。彼女達は勇者と共に戦う側だ。記憶がまた消されるんだろうな。もしかすると、今度は俺達の記憶も…」
「ねぇ、記憶を消されない方法を考えなさいよ!それくらいしても、バチは当たらないでしょ?」
そうだな。どうするかな…こうして、天上界の神に対して、俺達のささやかな反乱が始まった。
---フレイ---
目が覚めると、ホームの自分の部屋にいた。全裸のアイズとティオナが添い寝をしている。安眠抱き枕にされているようで、彼女達の寝息は気持ち良さそうである。なんで、ここにいるんだっけかな?記憶を辿る。
う~ん…
う~ん…
「ねぇ、知恵熱出るから、考えちゃダメだよ♪分からないことは訊いてね♪」
アイズが僕の耳元で囁いた。
「なんで、ここにいるんだっけ?」
「18階層でナァーザの治療をして、倒れたのよ。で、ここまで運んできた」
あぁ、そんな記憶がある。
「ナァーザは助かったの?」
「うん、元気だよ。でもリヴェリアが…」
リヴェリアが?どうしたんだ?う~ん…
「あっちのベッドにいるから、治してあげて」
アイズが指差す方向にベッドがあり、リヴェリアが寝ていた。僕はベッドから降りて、リヴェリアの元に行った。
「大丈夫?」
声をかけると、笑顔で応えたリヴェリア。リヴェリアの全身を診る。神経毒で全身麻痺をしているのか、つらそうだ。僕はリヴェリアと交わり、毒を浄化させていく。
「ありがとう…フレイ…お礼は」
「お気に入りの場所でうたた寝で良い?」
笑顔で頷くリヴェリア。僕は彼女の身体で一番好きな部分で、うたた寝をした。
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「ど変態かぁ~!お前は~!」
アリーゼにどやされた。
「回復治癒させたお礼に、アンダーヘアに顔を埋めて、うたた寝?お前は、ど変態度も、たいがいにしろよな」
久しぶりに聞くアリーゼの怒声。懐かしいなぁ…
「どやされて、ニコニコ顔っていうのも変だろ?お前はどエムかぁ~!」
リュー達も笑顔で、僕とアリーゼのヤリトリを見ていた。後で聞いたんだけど、アリーゼはず~っと塞ぎ込んで、落ち込んでいたそうだ。みんなもアリーゼの元気の姿を、見て喜んでいたらしい。
「だって、気持ち良いんだよ。リヴェリアのヘアは」
「だっても、くそもあるかぁ~。私には興味ないのか?」
えぇ~そこか、怒りの部分は…
「アリーゼの良いところは…僕をしかってくれるところだよ♪」
「はぁ~、たまには甘えて来いよな!」
「えっ?アリーゼの甘える姿なんか見たくないよ~。強気のアリーゼが好きなんだし」
「そこか?そこなのか?私の評価ポイントって…お前、おかしいだろ~!!」
もうしょうがないなぁ♪アリーゼの口を突然奪う。えっ!って表情のアリーゼ。彼女の舌に舌を絡めて、彼女の怒りのオーラを吸い出す。アリーゼの腕は重力にまかせて、下に垂れ下がっているだけで、僕に全身を委ねてきた。
「おい、アリーゼ!フレイの攻撃の前では無力化か♪」
リューが茶化したように言うが、アリーゼは僕に委ねている。いつもなら、反論するのに、どうしたんだ?
「リュー、この後どうすれば良いの?」
この先の行動がノープランな僕は、リューに助け船を求めた。
「うん?ベッドまで抱えて持っていって、好きにすれば良いんじゃないのか?」
アリーゼの行動に少し呆れたようなリュー。で、アドバイス通りに、ベッドまで持っていき、横たえさせた。
「リヴェリアにしたようなことをして良いよ」
いつもとは違う声質で言うアリーゼ。アリーゼと交わり、彼女の心の闇を浄化させていく。ストレスが取れたことで、寝息を立て始めたアリーゼ。僕のはそっと、その場を立ち去った。
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年月は流れていった。僕のファミリアのメンバー達はレベルを確実にあげていく。少数精鋭って感じだ。僕のポジションは相変わらず、安眠抱き枕君で、アイズは安眠姫って呼ばれている。安眠セットって呼ばれたりしているらしい。
天界から降りてくる神々は増えるが、戻ろうとする神はいない。大丈夫かなのかな、天界は。神様がいなくなるんじゃないの?そんな心配をしてしまう或る日。
「スクランブル要請だ。すぐに出られるか?」
フェルズが駆け込んできた。
「アリーゼ、リューを呼んで来て!リリ、アイズ、戦闘準備だ!」
ファミリアのメンバーに指示を飛ばした僕。みな、テキパキと動いてくれた。
「今回はどこ?」
「行けばわかるそうだ。状況は知らされていない」
いつものスクランブル要請と、勝手が少し違う気がするが…
「どこのファミリアだ?」
「知らされていない」
極秘任務か?そうなると、父さんのところか、母さんのところかな?
「ウラノス様の部屋から、転送する。準備ができ次第、来てくれ」
フェルズが去って行った。豊饒の女主人から、リューを連れてアリーゼが戻って来て、2階へ装備を取りに向かった。スクランブル要請は、たまにあるので、シル姉ちゃんが来ることは少なくなった。まぁ、テキパキと終わらせて、たまにはヘファ母さんとシルねえちゃんと食事でもしようかな。僕の手料理で♪
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転移した先は、60階層だった。嫌な予感しまくり。ここって、わかっている情報では最下層だったっけ?
「アリーゼ、注意を怠るなよ。何が出るか、わからない」
「あぁ。リリ、索敵を頼む」
「アリーゼ様、了解です」
リリは索敵能力を開花させていた。
「敵と思しき、気配は感じられません」
リリの索敵には何を引っ掛かっていない。では、この嫌な予感はなんだ?アイズやリューも嫌な予感がしているのか、顔が強張っていた。
目の前には大きな扉。この先に何があるのだろうか?迷宮内にこんな扉は見た事が無い。恐る恐る開けてみると、僕達は光と闇の渦に飲み込まれて行った。
気が着くと、僕一人だけが扉の内側にいた。みんなの気配は扉の外からも感じられない強制転移をさせられたのか?
知恵熱が出そうなくらい、考え込んでいた僕の目の前に、一人の人物が現れた。
「役者は揃ったよ。君には君の役目を果たしてもらう」
僕の役目?何だ、それは?
「君の役目は、数年後に、ここに君を倒しに勇者一行が訪れる。そこで、君は魔王として、勇者に討たれるのだ」
魔王?討たれる?殺されるってことかな?
「どうして、殺されないといけないの?」
「その為に産まれたんだよ、君はね」
え?僕は…勇者の為に産まれたの?
「なんで、直ぐに殺さなかったの?」
「勇者一行が強くなる為にだ。君の仲間だった者は、勇者の仲間になるんだ」
へ?勇者の為に生きていたの?
「何で、殺すのさぁ?」
「勇者が勇者と認められる為だよ」
勇者の為に死ぬの?アイズ達は勇者と仲間になるの?姉ちゃんや母さんも勇者の仲間なの?寂しさが溢れてきて、僕の中で何かが壊れる。そして心は、ダー君と一体化していくのが分かる。
「出でよ、レーヴァティン」
一瞬の無意識下で、僕は剣を手にして、目の前の者を一刀両断にした。そうか…僕は悪い子にならないといけないのか…
悪い子って、何をすれば、成れるのかな?誰かに訊かないとダメだぁ…魔王になる自信がまるで無い僕。
---リヴェリア---
冒険者を引退して、『バー 閑古鳥』を営んでいた。スポンサーはヘルメス様で、海の向こうかの酒を輸入して、神々相手に商売をしている。店はフロア係のリリとバーテンダーのアリーゼの三人で切り盛りして、奥では主神のバッカス様が自前で酒を仕込んでいる。
閉店時間になり、アリーゼ、リリと三人で豊饒の女主人に夕食を食べに行くと、ロキ・ファミリアとヘスティア・ファミリアが宴をしていた。主神同士は仲が良くないが、団員同士はとても仲が良いようだ。特にアイズ、ティオナは、ヘスティア・ファミリアのベルという少年と仲が良い。このお店のリュー、シルとも仲が良いし。彼は人気者だった。
「よ、リヴェリア」
元同僚のフィンが声を掛けてきた。
「フィン、遠征上がりか?」
「あぁ。ベルが一緒だと、ナァーザや椿と言った他のファミリアが協力してくれるから、心強いんだ」
「そうか…」
「もう、潜らないのか?」
「そうだ。何か、心に穴が空いちゃってな。危ない気がするんだ」
「なぁ、リリを貸して貰えないか?サポーターとして雇いたいんだ」
リリも元冒険者でありサポーターであった。
「リリに訊いてくれ。あいつも引退組だ。無理強いはするなよ」
「わかっているさ」
フィンはリリに話を持ちかけ始めた。食事を終えた私は、一人自分の部屋に戻った。ベッドに横たわり、考える。どうしてこうなったのか。毎晩、考えるのだが、いつもわからないのだ。記憶が欠落している上、改竄されている気がする。誰に為されたのか?
「ねぇ、リヴェリア。教えてほしい事があるんだ」
私以外にいないはずの室内で、どこか懐かしい青年の声がした。恐る恐る声の主の方を見た。そこには、どこかあどけなさが残る青年が立っていた。
「何が知りたいんだ?」
身構えているはずなのに、彼に向かって、私の口から自然に言葉が出る。
「どうしたら、悪い子になれるの?」
彼の口から素朴とも言える質問がなされた。なんか、懐かしい問答な気がする。
「悪い事をすればなれるぞ」
「悪い事ってどういうこと?」
はぁ?そこから教えないとダメなのか…フレイらし…えっ?フレイって誰だ?そんな疑問が生じると記憶の封印が外されていった。甦る記憶…
「フレイなのか?」
「うん♪僕のことを覚えている人にしか、僕は見えないみたいで、僕の声すら聞こえないみたいなんだ。リヴェリアでダメだったら、全滅だったよ~」
私に泣き付いてきた青年。私は彼を優しく抱きしめた。とても懐かしい感触、香り、オーラ。もしかして、心に空いた穴って…
「なぁ、私の記憶を細工したのは、お前か?」
首を横に振る彼。
「違う。天上界の神だよ。さっき、ウラノスを絞め上げたら、白状した。僕を孤独にする為に、この街全員の記憶を改竄したんだって」
この街全員だって?神も含めてなんだろうな。
「なんで、悪い子になりたいんだ?」
普通は良い子になりたいって、言うところじゃないのか?
「うん?僕、ベルっていう勇者に殺される魔王なんだって。だからさぁ、魔王としての悪い事をたくさんしないといけないんだけど、どうすれば良いわからなくて…うぇ~ん」
ベルに殺される運命の魔王?その魔王になる為に、悪い事をしないといけない?本末転倒だろうに。私に縋りつき、泣きじゃくる青年。
「今までにどんな悪い事をしたんだ?」
「わからない…悪い事っていうのがわからないから…」
こんな純朴な魔王で良いのか?でも、この青年と会って、私は為すべきことを見つけた気がした。
「これから、私も一緒に暮らす。お前の住処に連れて行ってくれ。そこで、一緒に考えてあげる」
私に抱きつきながら、頷く青年。私達はこの場から転移した。
---アリーゼ---
いつもなら、店に一番早く来て、開店準備をしているリヴェリアが、今日はまだ降りて来ない。心配になり、彼女の部屋へと行く。だけど、そこには彼女はいなかった。貴重品は置いてあるので、出掛けたとは思えない。財布も残っているし。どこへ行ったんだ?
隣にある豊饒の女主人に顔を出すが、ここにもいない。
「アリーゼ、聞いたか?ウラノス・ファミリアの主神ウラノスと、団長のフェルズが殺害されたそうだ」
リューが話しかけてきた。
「うん?神って死んだら天界に戻るんだろ?なんで、殺されたってわかるんだ?」
「死体があったそうだよ。魂を葬り去られると、天界に戻れなくて、死体が残るんだって」
神って、死ぬんだ…それよりも、
「なぁ、リヴェリアを見なかったか?いないんだよ」
「昨晩、何か思い詰めた表情していたけど…大丈夫かな?」
え?そうなのか?昨晩は宴に参加して、ベル達と騒いでいたから、気が付かなかった。どうしよう…
「まぁ、ハイエルフだから、自殺はしないと思う。どこかで、気分転換しているんじゃないの?」
っと、シル。手には弁当を持っていた。ベルに渡す為の愛妻弁当かな♪