---リヴェリア---
フレイの住処は、60階層にある隔離空間であった。ここから、地上へ転移できる魔法陣があり、地上で悪いことが出来るようにしてあったのだが…
フレイと暮らすことによって、失われた記憶と失われた能力が甦ってきた。寝る時には彼の従順な下僕ハイエロフとなり、彼に可愛がってもらい始めた。たぶん、今までで一番幸せな日々の始まりだと思う。彼が殺されるまでの限定だが。
「そうなのか。シル姉ちゃんは勇者様と付き合っているのか。ヘファ母さんも彼氏できたのか。幸せそうで良かった」
他の者の幸せを喜ぶ魔王。いや、フレイには魔王になれないと思う。優しくて、純朴で、無邪気すぎる。
「で、悪いことって、どうすれば良いの?」
「フレイには無理だと思うんだが」
「え~、それはマズいよ~。悪いことをしないと魔王として、認識してもらえないじゃない」
いや、そもそも、そこが間違っているだろ?どこをどうしたら、フレイが魔王になれるんだ?強力な再生回復薬と強力な媚薬しか持っていない時点で、無理だろ?確か、魅了持ちでもあったなぁ。人選を誤ったとしか思えない、魔王役に抜擢されたフレイ。
「困ったなぁ…魔王って認識してくれないと、ここにず~っと居ないダメなのかな」
まぁ、ここには食料が自然に生えている上、なぜか厨房があるので、生きて行くのに困らないが、やることといったらアレしかない。
「例えば、アリーゼを攫ってくるっていうのは?」
「えっ?僕のことが見えないんだよ。魔王がやったって証拠が残らないじゃん…」
凹んでいくフレイ…声を掛けようが無いぞ。
「じゃ、勇者の彼女を攫うって言うのは?」
「シル姉ちゃんを?幸せなのに?勇者様との縁を壊したくないよ~」
だから、お前には悪いことは無理だっ!
「う~ん…アイズお姉ちゃん…攫おうかな…」
うん?アイズってお姉ちゃんなのか?フレイの方が歳上だろうに。いや、前世でそうだったのかもしれない。前世ではフレイはどういう最期だったんだ?
「なぁ、前世ではお前はどういう最期だったんだ?」
「う~んっと…あぁ、ヘファ母さんに一刀両断にされたんだよ。で、最期にヘファ母さんに抱きしめてもらって、生まれ変わったらヘファ母さんの子供になりたいって願ったんだ」
神は転生しないって聞いていたのだが。なんで、フレイは転生しているんだ?コイツ、神じゃなくて、本当に魔王なのか?
「その時、私とかアイズはどうしたんだ?」
「う~っと、確か遠征中で、僕の傍にいなかった。だから、お別れをしていないんだ。そうだ、今回はちゃんとお別れをしないと」
アイズ達に討たれる気満々のフレイ。不憫すぎるだろう…この無邪気さは。
「次があるとしたら、リヴェリアと普通に暮らしたい。同じ種族がいいなぁ…」
魔王だとすれば、転生は無いだろう。来ない未来に期待を馳せる、フレイが不憫すぎる。
「なんで、リヴェリアは泣いているの?どこか痛いの?」
心配そうに私を見つめるフレイ。彼を抱きしめる私。
「離れたくない。死なせたくない。私もお前と共に勇者と戦う。いいなぁ」
「嫌だ~、リヴェリアを痛い目に遭わせたくない。僕が護る!」
勇者には、勝つ気はあるのか?
「で、何をすれば良いかな?」
そうして、また最初の問いに戻る。堂々巡りだよ。フレイには無理って、結論が出ているし。
「よし!アイズお姉ちゃんを攫ってくるね」
って、転移をして消えたフレイ。アイズの意志で付いてきたら、悪い事にならないと思うのだが…
---フレイ---
アイズお姉ちゃんを探す。広場でアイズお姉ちゃんは、シル姉ちゃんの彼氏を膝枕していた。アイツ…二股なのか?僕よりも勇者の方が悪いって、どうなんよ~!
勇者を蹴り飛ばして、アイズお姉ちゃんから遠ざけた。
「痛っ…誰だ、君は?」
勇者が僕に問い掛けてきた。
「シル姉ちゃんの彼氏なのに、アイズお姉ちゃんに膝枕って、どういうことかな?」
僕は得物を手にして構えた。
「ちょっと、止めなさいよ!」
アイズお姉ちゃんが勇者を護るように立つ。
「護る価値があるのか?」
「ベル君は弟のような者よ。彼氏では無い」
その言葉にショックを隠せない勇者。アイツ、その気だったんだ。
「アイズお姉ちゃんは、ソイツが好きなの?」
「好きだよ」
シル姉ちゃんから奪い取るってことなのか?それは…ダメだよ。うんうん、悪い事だって、アイズお姉ちゃん。
「そうはさせない。アイズお姉ちゃんに悪いことはさせない」
僕に斬り掛かってくる勇者。遅い…軽くかわして、首筋にナイフの柄を叩き込む。その場に崩れるように倒れる勇者。
「こんな弱いヤツ…」
僕はアイズお姉ちゃんに抱きつき、転移した。
---リヴェリア---
まさか、本当にアイズを攫ってくるとは…しかし、アイズも記憶が戻り、フレイを抱き枕にして安眠をしてしまった。
「ねぇ、これって悪いことだよね?」
アイズを攫ってきた事を、自慢気に言うフレイ。
「悪いことをされたのに、安眠すると思うか?フレイのやったことは、アイズの願望だ。悪いことでは無くて、良い事だと思うぞ」
私の言葉を受けて、凹むフレイ。
「え~、良いことなの?なんで?」
「アイズの顔を見ろよ。そんな幸せそうなアイズの顔は見た事無いぞ」
記憶を失っていた時間を埋めるように、アイズはフレイの感触を愉しんでいるようだ。
「じゃ、どうすれば良いんだよ~」
「むにゃむにゃ…知恵熱注意だよ…フレイ君♪」
考え込むフレイに、アイズの寝言がツッコミをいれた。前途多難な魔王だな。フレイ…
---フィン---
ベルとアイズが襲われて、アイズが攫われたそうだ。ファミリアのメンバー総出で、アイズの行方を追っていた。そういえば、リヴェリアも神隠しに遭ったように消えたまま、探し出せないでいた。
「どこのファミリアだ?ケンカを売っているのは」
考えるが確実と言えるファミリアは無かった。妖しいファミリアはあるが。
「って、言うか。ベルはともかく、アイズが簡単に攫われるって、変じゃないのか?Lv4だぞ」
ベートが指摘した。確かに。嫌だったら、抵抗するよな。性格的に…そうなると、アイズの意志か?
「ベル以外にアイズの親しいヤツは?」
「俺だ!」
名乗ったベートをスルーする。お前は嫌われていただろうが!
「ベルの証言だと、ナイフの二刀流だったそうだよ」
ティオナから相手の情報がもたらされた。青年で、ナイフの二刀流?思い当たる戦士はいないなぁ。
「あっ…都市伝説の『血まみれ』フレイってヤツじゃないのか?」
ベートが思い出したように言った。都市伝説は伝説だ。事実ではない。
「あぁ、聞いたことある。ソイツの通った後は血の海だって…おぉ、恐っ!」
って、ティオネ。
「ソイツはどこのファミリアなんだ?伝説では?」
「昔あった最凶のファミリアだったらしいけど」
「昔あったレベルなら、事実じゃない。他に情報は無いか?」
その後、情報は出て来なかった。一応、藁にすがる思いで、情報通の神ヘルメス様を訪ねた。突然訪ねた俺を、快く迎え入れてくれたヘルメス様。
「どうしたんだ、フィン?アイズの件?」
いきなり本題に入ってくださった。
「そうです。ナイフの二刀流使いに、攫われたようなんです」
「ナイフの二刀流だと?それは『血まみれ』フレイじゃないのか?アイズクラスの者を簡単に連れ去れる実力だと、たぶんそうだろう」
えっ?都市伝説じゃないのか?
「どこのファミリアの者ですか?」
「ファミリアに属していない。アイツはダンジョンの主だ」
ダンジョンの主?ラスボスか?
「どういう意味ですか?」
「ラスボスだ。ダンジョンの奥深くに封印されているはずだが、封印が破られたのかな?確認をしないといけないな…」
「どこの階層ですか?」
「60階層だ。辿り付けたファミリアは1つだけだ」
60階層…ロキ・ファミリアでは無理だ。え?1つ有るのか?
「どこですか?どこのファミリアが到達したんですか?」
「フレイ・ファミリアだけだ。『血まみれ』フレイが主神のな」
え…意味がわからない…主神なのにラスボス?
「神が堕ちると悪魔になるんだ。フレイは封印の間で、呪いを受けて堕ちたんだ。生き残りに聞いた」
「生き残りって…いるんですか?」
「リヴェリアだ…彼女もフレイが攫ったんじゃないのか?」
リヴェリア?そうだ、ロキ・ファミリアでは、僕の次に最古参だったんだ。じゃ、ロキ・ファミリアの前にそこにいたのか?
「でも、どうやって、リヴェリアは生還できたのですか?」
「転移魔法で脱出したと聞いている」
そんな魔法を、アイツは知っていたのか…
「大連合で遠征隊を作って、封印の間に行かないとダメだな。直ぐには無理だがな」
「何故ですか?」
「何故?愚問だよ、フィン。封印の間に辿り付ける実力が、無いだろ?フレイヤの処のオッタルクラスが10名以上は必要だぞ。今すぐにかき集められるか?」
そんなに…
「無理です」
「フレイはオラリオで一番の殺戮者だ。太刀筋に迷いは無い。アイツと交差すれば、屠られる。そういうヤツだ。オッタルでもダメかもな」
根本的な質問をした俺。
「神はダンジョンの入れないはずでは?」
「あぁ、普通の神ではダメだ。フレイは特別なんだ」
特別…
「聖なるオーラと闇なるオーラ、輝くオーラと魔なるオーラを持っていてな、耐性があるんだ。精神攻撃は効かない。再生能力持ちで、神を殺せる剣を持っている」
あっ!
「ウラノス様をやったのは…まさか…」
「そうだ。アイツだ。ウラノス、フェルズの死体に太刀筋の迷いは一切無かった。フレイにしかできない芸当だよ」
「なんで、アイズを攫ったんでしょうか?」
「英雄君の彼女だからでは?」
「英雄君?」
「そうだ」
---リヴェリア---
私の寝る時間になっても、アイズはフレイを独り占めにしていた。私を可愛がってもらう時間なんだぞ!
「リヴェリア、顔に皺が…ねl、いつものリヴェリアがいい」
あぁ、すまん。アイズに嫉妬してしまった。魔王なのに負なるオーラ嫌いって、問題あるだろうに。本当に先行きは大丈夫なのか?
安眠熟睡した安眠姫をベッドに残し、フレイが寄って来た。
「ねぇ、リヴェリアのあそこで寝たい♪」
いや、あそこで寝られると、何もできないじゃないか。と、思っていたのだが、身体は彼のやりたいようにさせて、彼は柔らかい毛に頬ずりして、寝てしまった。おい、魔王なんだろ?もっと、やることがあるだろうに。はぁ…
翌朝、アイズのリクエストで、ジャガバタ君を調理しているフレイ。
「そうなのか。ベル君がフレイ君を…でも、大丈夫!私がフレイ君を護るから。リヴェリアは後方支援をしていね」
って。ベルと戦う気が満々なアイズに驚き。
「今思うと、ベル君はフレイ君の代わりだったんだと思う。戦闘スタイルが似ているし」
って、フレイ並の…自由奔放な性格っていいなぁ。少し憧れてしまう。この二人の性格には。
「じゃ、私は魔王の彼女ってことかな、あはっ♪」
アイズの口調が今までとは違う。前世ではこうだったのだろうか。
ジャガバタ君をたらふく食べてから、フレイの質問タイムになった。
「次はどうすれば、悪い子になれるのかな?」
「だから、何も悪いことをしていないだろ?お前はまだ」
私の言葉に頷くアイズ。
「誰か頭脳になってくれる人っているかな?」
「頭の良い人だと、アスフィかな?」
「攫ってくるね」
悪い子になりたがっているフレイの行動は早かった。アスフィを攫いに、転移していった。
---フレイ---
アスフィお姉ちゃんは、父さんの処だよな。僕はヘルメス・ファミリアのホームを目指していた。街は僕がいなくても、何も問題はないみたいだった。僕はいなくても良かったんだなって実感したり。
途中でティオナお姉ちゃんを見つけた。僕は懐かしさのあまり、後ろから抱きついてしまった。
「えっ?誰?」
手がティオナお姉ちゃんの胸を弄っていく。
「あっ~ぅん…ダメっ、こんな処で…」
気持ち良い行為だったんだ。これって…僕から発するオーラで、記憶が戻ったみたいなティオナお姉ちゃん。
「フレイ…忘れていてごめんなぁ。私の傍にいてくれ。頼む…」
「でも、帰らないと、リヴェリアとアイズお姉ちゃんが待っているから…」
「そうか…あの二人は合流済みか。私も連れ帰ってくれ。頼むよ、フレイ」
---リヴェリア---
アスフィを攫いに行ったはずなのに、ティオナをお持ち帰り。何がしたいんだ、フレイは…唖然とする私。
「アスフィお姉ちゃんを攫いに行く途中で、ティオナお姉ちゃんを見つけて…」
あぁ、お前の好みはそうだったな。私は確信した。こいつは、どう転んでも魔王なんかにはなれないって。
「でも、ティオナお姉ちゃんを無理矢理抱きしめて、キスして、胸に顔を埋めたよ~」
あぁ、普通は悪いことなんだろうけど、ティオナが喜んでいるのは何故だ?願望が叶ったって顔しているぞ。そして、あることを思い出した。そうだ。同じ波長を持つ女性は魅了するけど、そうでない女性は、フレイがスルーするんだったな。それも、フレイの意志とは関係なく。
頭を抱える私。フレイを魔王にしようと思った神を恨んでやる~絶対に無理だからな。
---フィン---
今度はティオナが消息を絶った。どういう基準で攫っているのだ?幹部会で考える。
「三人の共通事項って何だ?」
「そんなん、巨乳では無いってことや」
眷属の女性の裸をチェックしまくる主神のロキから、情報がもたらされた。
「そうなると、うちもあかんな。狙われる範囲やな…」
ロキの心配はこの際、スルーだな。
「他に共通事項ってあるか?」
「なぁ、レフィーヤを囮にして、おびき出すのは?」
と、ベート。名指しされたレフィーヤは、ベートを睨む。
「囮?目的が分からないのにか?」
レフィーヤは狙われる基準なのかもわからないし。
「おびき出しても、倒せないぞ、ベート。オッタルでも無理な相手をどうするんだ?」
「トラップで捕まえれば良いだろ?戦う必要は無いぜ」
あぁ、それは一理あるな。戦っても勝ち目は無いし。
---リヴェリア---
アイズのワガママでフレイが右往左往している。お風呂に入りたいって…道具がないし、どこに排水するんだ?ここって、最下層だろうに。
「排水は、タンクに溜めて、転移魔法で地上にぶちまければよいけど、浴槽とシャワーをどうしよう…あっ、スポンジと石けんもない…」
しばらく考えこんだ、フレイは何を閃いたようだ。
「そうだ。泥棒してこよう♪これって悪いことだよね?」
悪い事だが、魔王がすべき悪い事ではないぞ…小言を言う前に、フレイが転移して行ってしまった。
---フレイ---
どこで、盗むかな?豊饒の女主人にしようかな。複数あるから、1つくらいなら困らないよな。
豊饒の女主人に忍び込んだ。お風呂場に行き、スポンジと石けんをまず転移させて、浴槽とシャワーを転移しやすいように解体していった。そんな作業中に、全裸のリューが入って来た。
声を出されると泥棒とバレるので、彼女のみぞおちに、一撃を入れて、意識を飛ばしておく。で、彼女と彼女の服を浴槽に隠して、作業を続行。建物と浴槽とシャワーが分離できたので、それぞれを転移させた。あとは、排水をためタンクだな。どうしよう。浴槽がもう1つ有れば良いのかな?
そうだ。閑古鳥にも2つ有ったことを思い出して、浴槽を1つ泥棒した。
---リヴェリア---
「どういうことだ、フレイ?」
血の気が失せた顔のフレイ。こいつの天然っぷりはアイズ並だろうな、きっと。浴槽を2つ盗んできたのは良いのだが、それぞれの浴槽に、全裸のリューとアリーゼが入っていた。
「いや、盗んでいる最中に、お風呂に入りに来たから…で、置き場に困って浴槽に隠したんだけど、置いてくるのを忘れたんだよ…」
リューもアリーゼを記憶を取り戻していた。フレイとの再会に喜んでいるようだ。これって、悪いことなのか?
「安心しろ、フレイ。フレイ・ファミリアの頭脳、このアリーゼがお前を立派な魔王に導いてやるぞ」
アイズですら、不安な顔をしているぞ、アリーゼ。
「ねぇ、フレイ。私達の得物を取ってきてね。戦闘用の服もね」
って、冷静な指示を出すリュー。アリーゼよりも軍師になれると思う。
「ここって、アレするしか愉しみはないんだね。ふふふ」
小山の大将のアリーゼの登場で、ビビっているティオナ。なんか、魔王軍って、フレイ・ファミリアなんじゃないかと思うような、メンバーの引き。
フレイは再び、街へと転移した。
---フレイ---
リューにやることをメモ書きしてもらったので、今回は大丈夫だと思う。リューの装備と戦闘服、アリーゼの装備と戦闘服を転移させた。
リューの部屋から出ると…シル姉ちゃんと出くわしてしまった。そうだ、部屋から出ないで、転移すれば良かったんだ…また、ドジを踏んだ僕。
「フレイ…今までどこに行っていたの?」
姉ちゃんが僕に抱きついて来た。僕は逃げようとするも、姉ちゃんに抱きつかれてしまった。
「誰が嵌めたの?私達の記憶から、フレイの記憶を消したのは誰?」
あれ?僕のことは見えないはずなのに…見えるの?なんで?
「見えない?そんな訳ないわ。私は魂が見えるのよ」
あぁ…母さんの能力…
「透明な魂…それを見て、思い出した。フレイのことをね♪」
「シル姉ちゃん」
姉ちゃんに抱きついた僕。
「どこに住んでいるの?今回も一人なの?」
「大丈夫。みんながいるから、前回のような暴走はしないよ」
「みんな?フレイ…私よりも先に誰を仲間にしたの?」
姉ちゃんの声が怖い。怒っているようだ。
「いや…あのね…う~ん」
「ふっ、おおかた、この街で起きている神隠しがそうなんでしょ?リヴェリア、アイズ、ティオナ。後は誰?!」
「手違いで…リューとアリーゼ…」
「まったく…フレイは…困ったら、私にまず相談でしょ?ねぇ、どうなのよ?」
「だって、シル姉ちゃんの彼氏に僕は…」
「彼氏?もしかして、ベル君のこと?彼に、どうされちゃうの?」
急に優しい声になった姉ちゃん。
「殺されないといけないんだ。殺される魔王がシル姉ちゃんの弟だなんて、バレたくないから…」
あっ、バラしてしまった…ヤバっ…リヴェリアにドヤされるな。。
「そういうことか。英雄を英雄にするために倒されるラスボス。それがフレイなのね」
姉ちゃんが僕の頭を優しく撫でてくれた。
「バカねぇ。そんな彼氏はこっちから願い下げよ。それに彼はアイズさんの彼氏よ」
えっ?どっちが本当?
「うん?あぁ、アイズさんが私って言ったのかな?それは、どちらも違うってことよ。いい?みんなが敵になっても、私はフレイの姉、あなたの味方だから。いいわね。忘れないで。あっ…誰か来るわ。逃げなさい」
姉ちゃんが僕を逃がしてくれた。
---シル---
「誰と話していたんだ、シル?」
ミア母さんだった。
「一人でしたけど?」
「いや、男の声がしたが。誰を連れ込んだんだ?お前らしくない」
「誰も連れ込んでいませんよ。気のせいです。なんなら、部屋を探してくれてかまいません」
自分の部屋のドアを開け放った私。
「ふん、そういうことにしておいてやる。それよりも、リューを見なかったか?アリーゼも見当たらないんだが」
「二人で出掛けたんじゃないですか?最近、物騒ですから」
「サボりか…わかった。人手が足りないから、すぐに降りて来てくれよ」
ミア母さんは店に降りていった。リューとアリーゼの神隠しも、明日にはバレそうね。