---ベート---
そして、ヘファイストス様のホームに着き、門番に用件と紹介状を見せると、奥に通された。通された部屋では、赤い髪に左目には黒い眼帯をしている女神が、重厚な造りの机の前に座っていた。
「紹介状は目を通した。フレイヤの紹介のようだが、どうしてロキ・ファミリアの団員を連れているのだ?」
俺達の事は知られているよな。
「コイツらはアストレア・ファミリアに改宗した。なので、ロキとは関係はない。それに商談に影響が無いだろ?そういうことは」
兄貴はヘファイストス様のプレッシャーに屈することなく、堂々と渡りあう。
「そうだな。で、どういう物だ?」
兄貴は懐から袋を出し、中身をヘファイストス様の前に差し出した。
「これは…レア物だな。これはどこで手に入れたのだ?」
「パス・パレード通りだ。パス・パレードの為に、召喚されたモンスターから手に入れた」
パス・パレードという言葉に反応して、驚く顔をしたヘファイストス様。
「お前…アレの生き残りか?」
「そうだよ。アストレア・ファミリアのファルコンだ。いくらで引き取ってくれる?」
「1つ100万でどうだ?」
「フレイヤの紹介だ。そちらの言い値で良い。500位あるが全部引き取ってくれるか?」
「500…そんなに相手をしたのか?」
俺も驚いたが、ヘファイストス様も驚いているようだ。
「1回じゃない。3回遭遇している。1回目は自分達、2回目は知らないヤツら、3回目はコイツらだ」
俺とアイズを指差した兄貴。
「ロキ・ファミリアも喰らったのか…」
ヘファイストス様の質問をスルーして、
「で、全部引き取ってくれるか?」
と、兄貴が訊いた。
「わかった。全部引き取る。だが、支払は分割だぞ」
「それでよい。ギルドに預けておいてくれ。取り敢えず、手付けで10万くらい、貰えないかな。街で買い物がしたい」
「今、持って来させる」
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「お金も手に入ったし、次はミアハで薬を買う」
って、ミアハ様のホームへと向かう。
「ナァーザ、薬を売ってくれ~」
ミアハ・ファミリアの団長、ナァーザが店頭にいて、彼女に用件を伝えた兄貴。
「あ、ファルコン。いつもので良いか?」
「あぁ、頼む」
色々な薬を出して、兄貴に請求をするナァーザ。そんなナァーザに切り込むアイズ。
「それで、その値段って、ぼったくりじゃないの?」
アイズの目付きは、兄貴に向けるものとは違い、どこまでも冷たい狩人の目付きに戻っていた。
「えっ…あっ、アイズさん…知り合いだったんですか…」
モブキャラ化していたアイズに気づいたようだ。だが、俺には気づかない。俺ってモブキャラだったのか…
「お兄ちゃんを虐めるヤツは、誰であろうと私が許さない」
剣に手をかけたアイズを止める兄貴。
「やめろ。コイツを斬っても、空しいだけだぞ、アイズ」
しかし、アイズの怒気に飲まれたらしいナァーザの顔からは、血の気が失せていた。
「ごめんなさい…借金の支払い期日が迫っていたので…」
で、ぼったくりか?
「誰から、いくら借りたんだ?」
「ディアンケヒト様から10億…」
「何を買ったんだ?」
「私の義手…」
右手の義手を見せてくれたナァーザ。
「そうか…ミアハは僕と同じで金に無頓着だからな…わかった。10億稼いで返せるようにしよう」
おい、兄貴…まさか…
「1個100万だから、1000匹倒せば良い訳だ」
やっぱし…そういう計算をするよな。
「お金出来たら持ってくるよ」
って、ナァーザの言い値通り払い、次の目的地に向かう俺達。
「後はリューだな」
そして『豊饒の女主人』に着く。店に入り、空いているテーブルに着く。
「いらっしゃいませ!」
シルっていうウェイトレスが注文を聞きに来た。
「何になさいますか?」
「リュー・リオンに会いたい」
兄貴はそう言った。
「リューですか?」
「そうだ」
奥に下がるシル。そして、ここの女主人、ミアさんが現れた。
「おい、お前、何者だ?なんでリューに用がある…えっ…」
「うみゅ?あれ?ミア…か?リューを呼んだのに…オーダーミスか?」
兄貴…まさか、ミアさんまで…
「エフ…死んだって、風の噂で聞いたのに…生きていたとは…」
「まぁ、死んだに近いけどな。なんで、ミアがいるんだ?」
「ここは私の店だよ」
「はい?料理出来たっけ?」
「出来たわよ。失礼だよな、お前は昔から…」
「まぁ、失礼が歩いているって、ミアに良く言われていたな」
談笑している二人。アイズも俺も唯々驚くしかない。ミアさんと知り合いって…兄貴、いつの話だ?
「で、なんで、リューに会いたいんだ?」
「僕達の主神が、リューに会いたがっているんだよ」
「主神?誰のことだ?」
「アストレア様だ」
「…お前…あそこの団員だったのか…」
「団員では無いよ、居候だ。この度、地上に舞い戻ってきました♪」
「リュー以外にも生き残りがいたのか…ちょっと、待っていてくれ、呼んでくる」
ミアさんが2階に上がり、リューっていうウェイトレスと共に、降りてきた。
「ファルコン…」
リューは兄貴に抱きつき、泣いていた。
「リュー、一人にして、ごめんな。アイズとベートのおかげで、地上に戻れたよ」
「えっ…」
俺達の方を見るリュー。ここでも俺達はモブだったようだ…
「アイズさん…ベートさん……」
俺もアイズも、どういう表情をして良いのか戸惑う。結果、苦笑い気味な表情になったと思うけど。鏡を見ていないので、良くわからないけど。
「アリーゼが走れないんだ。でもベートが背負ったり、僕が背負ったりして、地上に戻って来られたんだ」
「アリーゼ…生きているの?」
「街には連れて来られなかったけど、アストレア様と一緒に留守番している」
「アストレア様も一緒…」
「あとさぁ」
ギルドからの冒険者としての再認定のお知らせの書状を見せた兄貴。
「えっ…ブラックリストから消えたんだ…」
「だから、一緒に来てくれる?アストレア様とアリーゼが、リューに会いたがっているんだよ」
「でも…」
リューはミアさんの顔を覗った。
「行ってきな。リューがいなくても、ウチはつぶれない。エフ、リューを頼むよ」
「あぁ。アストレア様の追放処分が破棄されたら、みんなで食べに来るよ、ミア」
「待っているぞ♪」
そして、4名でアストレア様達の待つ家に向けて、帰路を急いだ。
---フレイヤ---
「オッタル…ファルコンの困った時には手助けをしなさい」
「はい」
「二度と、彼に挑もうと思わないように」
「はい」
「魔導戦士の彼には、あなたは勝て無い」
「フレイヤ様、エフの兄貴は何者なんですか?」
まだ、火傷が残るが気丈に振る舞っているオッタル。痛いだろうな、あれでは。
「何者?私のカレ♪…だと良いんだけど、カレは神々に縛られるのが嫌いなのよ。魅了して手懐けることもできないし…って、私が魅了されたかもな♪」
「いや、兄貴の立場では無く、素性です」
「あぁ、そういうことですか?詳しくは知らないけど、元聖騎士で元龍騎士だったそうよ。その名残で、愛剣は聖剣コールブランド、龍喰剣アスカロンの二降りを持っているわよ」
「両方とも伝説の剣では…」
「カレが言うには紛い物、バチ物だそうよ。真偽は不明だけど、カレの得意技は飛ぶ斬撃…剣使いなのに、弓使いを狙撃できる化け物なの。だから、オッタル、お前には勝ち目はない。わかったわね」
「はい…」
---ヘファイストス---
「君が僕を頼るなんて、珍しいな」
あの男の事を知る為に、この街での諜報活動をしているヘルメスという男神に依頼した。
「あの男の正体を知りたい。フレイヤが紹介状を書くなんて有り得ない」
男を下僕としか思っていないあの女が、こんなマネをするには、何か裏があるんだと思う。取引額も大きい、しっかりと相手を見定めないと痛い目に遭うかもしれない。
「ロキのところの剣姫とベートが、改宗したっていうのも信じられない」
「それは驚きだよな。ロキがアイズを手放すとは…余程のことがあったんだろう」
「それに、パス・パレードに3回遭遇したって…何者なんだ?」
「3回も?良く生きているな、その男。名前は何て言うんだ?」
「アストレア・ファミリアのファルコンって名乗っていたわ」
「ファルコン…生きていたのか…」
ヘルメスの顔から血の気が失せていく。どうしたんだ?
「知っているのか?」
「あぁ…昔よく一緒にバカをやったよ。懐かしいが…アイツ、生きて戻ったのか」
「どういうこと?」
「二つ名は『女神喰い』だ。たぶん、オラリオで一番の猛者だな」
女神喰い?なんだ、それ?
「それなら、フレイヤの件は納得だ。アイツはファルコンにゾッコンだし。アイツの願う大抵の無茶なお願いを、聞き入れると思うよ」
あのフレイヤがゾッコン?有り得ない…
「フレイヤとイシュタルが取り合いをしたんだけど、ファルコンは神々に縛られるのが嫌いなので、自分を放牧して傍に置いてくれたアストレアのところに、居候したんだよ。今のオラリオのパワーバランスで考えられないだろ?フレイヤ、イシュタルの魅了を受け付けないばかりか、逆に魅了した猛者さ」
猛者って…そういう意味なのか?
「信用できる人物なのか?」
「俺はファルコンのことを信用出来る。俺と違い不器用だけどな。アイツ曰く、愛することと戦うことしかできないクソ戦士だって。そういう男だ。ははは、楽しくなりそうだな、この街も」
「そうか…」
「お前の心の闇も、癒やしてくれると思うぞ。俺にとっては英雄だ。あのロキと寝たんだから」
苦笑いしながら言うヘルメス。えっ?ロキと寝た?
「寝たのはいいけど、酒臭くて、吐いたって。女神と寝て、初めて吐いたって凹んでいたな」
猛者すぎるだろ…
「その弱みにつけ込んでアイズとベートを奪ったのか?」
「ふっ…ファルコンは、そんなことをしない。そこらのバカと一緒にするなよ。ファルコンを侮辱するヤツは、俺が許さない。覚えておけ!」
そう捨て台詞を残して、ヘルメスは去って行った。
---ミアハ---
「ナァーザ、本当かい?」
旧知の友のファルコンが借金した額を、稼いでくると言ったそうだった。
「10億だぞ…あいつ、何をするつもりだ…」
「私がぼったくった値段で、薬も買ってくれました」
ナァーザは凹んでいた。ぼったくりに遭ったというのに、それを怒ることなく、言い値で買ってくれたことに、罪悪感を感じたらしい。
「私…どうしたら良いですか?」
って、言われてもなぁ…
「次からは正規の価格で販売してくれ。それだけで良い」
って感じがたぶん、アイツにとっては良い落としどころかな。誰かに援軍を頼むか…あ、頼むと金が掛かるからダメだな…自分の発想力の無さに俺も凹む。