---フィン(ロキ・ファミリア団長)----
ティオナが、僕の部屋に来て、耳を疑うようなことを言う。
「でね、アイズが婚約したんだ♪今日からアイズは、彼の家に住むって」
はぁ?何でそうなるんだ?そんな兆候無かっただろうに。昨日、遠征から帰って来たばかりで、どこで知り合ったんだ?
「相手は誰なんだ?」
「ジム♪」
何故か嬉しそうに答えるティオナ。
「おい、ティオナ。彼はどこのファミリアだ?」
「ジムは、ファミリアには所属していないよ。個人工房で仕事をしているスミスだよ♪」
知らない名前だ。どこで知り合う機会があったんだ?ファミリアに属していないって…
「どこで知り合ったんだ?」
「ゴブニュの工房だよ」
はぁ?
「でさぁ…言いにくいんだけど…私…彼の愛人になったんだ♪恋人のアイズより一歩下がったポジションだから、私は通い妻を目指したいんだ♪」
真っ赤な顔で嬉しそうに話すティオナ。はぁ?アイズの婚約者の愛人に?で、通い妻を目指す?その男は二股じゃないのか?僕の親指の疼きが激しい。これって、危険な兆候だよな。僕の親指は、危険を察知すると疼くのだった。
「どうして…アイズの婚約者の愛人になったんだ?」
言うのを渋っていたティオナを説得して、漸く真相を聞いた。得物の代金を払えないから、身体で払った…?実際には、まだ身体には手を出されていないそうだけど。
「おい…払えないからって…なんで、そうまでして手に入れたいんだ?」
「18階までの遠征…見ただろ?私とアイズの戦闘力を…全部、あの得物のおかげなんだよ。私もアイズもテクニックを編み出したとか、腕を上げたとかでは無くて、あの得物が無いと…うんうん、違うな…あの得物を知ったら、もう違う得物は使えないんだよ~。彼が傍にいて支えてくれれば、私達はもっと上を目指せるんだよ♪彼はアイズにプロポーズをしたんだ。だから、私は彼に恋人以外のポジションをアピールしたんだよ♪」
期待に胸を膨らませたように力説するティオナ。確かに、彼女の戦闘スタイルは、目を疑うくらいに変貌していた。華麗な剣士の様に、モンスターを屠っていた。今までのような、力技は見かけなくなるくらい。アイズも、飛ぶ斬撃を放てていた。それも二刀流で、属性攻撃も放てる。二人共、まだ上に行けると喜んでいたのは、そういうことだったのか。
「で、買い取るに当たって、いくらだって言われたんだ?」
払える額なら僕が払って、アイズを連れ帰らないと大変だ。親指の疼きがそう言っている。
「私が8000万、アイズが1億5000万…」
僕は自分の耳を疑った…二人で2億3000万…とても、払える額では無い。このファミリアの有り金でも届くかどうかだ。すぐに用立ては難しい額だ。
「どうして、そんな高いんだ?」
ぼったくりを疑う。
「それでも安いって…ヘファイストス様が言うんだ。で、ヘファイストス様が、私のを10億で買うって…だから、先に売約済みにしたくて…で、本当はハーレム要員になろうとしたけど、ジムがハーレムを理解していなくて…で、愛人に。ははは♪」
はぁい?鍛冶系ファミリアの主神のヘファイストス様が、10億で買うって?8000万なのに?何でだ?後半部分は、のろけているみたいなのでスルーした。
「作者の素性は?」
「詳しくは知らないよ。まだ2回しか会っていないし。今のお店のスポンサーは、ヘルメス様だって言っていたよ。で、ヘファイストス・ファミリア、ゴブニュ・ファミリアに在籍していたみたいだよ」
鍛冶系ファミリアを、渡り歩いているのか…流れ者のスミスか?
「そのスミスの名前は、なんだっけ?」
「ジム♪」
知らない作者だ。何で、そんなに高額に…ティオナの得物を詳しく見ると、僕の憧れのブランドマークが入っていた。これって…ナイト・クロウ作だ…
ナイト・クロウ…あまり知られていないブランドだ。ヘファイストス・ファミリアの本店で売られているのだが、主神ヘファイストス様作に次いで高い。いや、物によっては、主神を上回る値段を付けている作品もある。
見た目の美しさだけでなく、その切れ味、攻撃力は主神ヘファイストス様に劣らない程だ。
億超え作品ばかりで、僕にとっては手の届かない得物であるが、店内で試してみた感想は、いつか欲しいと思える物だったのだ。
「僕を彼の元に連れて行ってくれ。アイズを連れ戻す」
親指の疼きは終わる気配が無い。もっと、彼の情報を得ないと、幹部会で話せない。下手すると、力尽くでの奪還もあり得る。アイズ絡みだと、主神のロキ以外にも、ベート、レフィーヤが、過剰に反応しそうだし。あと、個人的に興味が有るのは内緒だな。
----ジム---
アイズ、ティオナの得物を完全に調整した。バランスを整え、重心を彼女達に合わせて移動させて、身体の一部と思えるくらい、扱い易くした。ティオナは、アイズが婚約したことを、ロキ・ファミリアの団長に知らせると言って、今夜は帰って行った。
そして…
婚約初夜…愛人のティオナで練習してからと思ったが、初めての相手は恋人だろうなって、思い直した僕。
アイズと混浴…お互いの身体を見比べる。う~ん、男と女で、こうも違うのか…アイズの胸は柔らかい。右胸と左胸の間に谷間が出来ている。一方、僕の胸は固い。谷間なんか無いし。
アイズの胸を見たり、触れていたりすると、乳首が固く締まっていく。僕のは変化無いんだけど。
「ねぇ、ジムの股に生えているモノを見たい♪」
って、リクエストされた。僕はタイルに寝っ転がり、僕の上に四つん這いになり、僕の股間を観察し始めたアイズ。僕も彼女の股間を観察する。アイズの股間には割れ目が有り、そこを優しく捲ると、淡いピンク色をした部分が現れた。指で触れてみる。
「あっ…いい…」
腰を捩り、喘ぐような声を出すアイズ。蚊にさされたような膨らみがあったので、そこを指の腹で触れる。
「あぁ…気持ちいい…」
重力に負けて、アイズの口から舌が出て来て、僕の棒に触れた。
「うっ…気持ちいい…」
お互いに股間が気持ち良いことを知る。互いに相手の股間を優しく、愛撫していく。
「あぁぁぁぁぁ…いい…」
突然、手足の力が抜けて、僕の上に倒れて来たアイズ。彼女の股間が僕の口元に被さった。結果的に、彼女の臭いを嗅ぎ、彼女の体液を舐め、彼女の股間を舐め回したり、口づけをしたり、吸ったりしている僕。僕の上で、踊っている彼女。彼女の胸が僕の腹部を刺激する。これはこれで気持ちが良い。僕の股間が固くなっていく気がする。
「凄い…あんなに小さかったのに…こんなに…」
僕の股間の変貌振りに驚いている彼女。そして、二人で立ち上がり、お互いの顔を見つめ合い、抱きついた。その時、偶然だろうか?必然だったのだろうか?僕の股間にそそり立つモノが、彼女の股間の穴に吸い込まれて行った。
「あっ…いい…あぅ…いいよ」
彼女は僕の腕の中で踊っている。腰をくねらせたり、腰を上下動かしたり…彼女の突起した乳首が僕の胸板に、何かを描くように、動いている。僕は、目に付いた彼女の唇に触れた。柔らかい…舐めてみると、閉じていた彼女の口が開いていく。上唇と下唇の隙間に、僕は舌を入れて見た。彼女の舌が出迎えてくれて、彼女の口の中で、じゃれ合う。
そして…僕の中から、彼女の中に何かが放出された。モヤモヤから解放されて、なんかすっきりする僕。それに対して彼女は全身が痙攣したかと思うと、一気に全身の筋肉が弛緩していく、僕に身体を預けてきた。
「良かったよ…ジム…また、明日…しようね…絶対だよ~♪」
って、上目遣いで僕の目を見ながら言う、紅潮した顔の彼女。かわいい…心がますます奪われていく。
「うん♪約束だよ、アイズ」
笑顔で頷く僕。
---フィン---
ヘルメス・ファミリアのホームの隣に、スミス工房『KK』は有り。ドアには『クローズ』と描かれた板がつり下がっていた。既に、営業時間外なのか?そこで、ティオナと手分けをして、住居部分への入り口を探す。しかし、三方には無かった。あるとすれば、ヘルメス・ファミリアのホームの敷地に有るのだろうか?
ここでヘルメス・ファミリアと、いざこざは起こせないよな。理由をロキに話さないといけなくなる。どうするかな?俺が悩んでいると、ティオナは、ヘルメス・ファミリアの団長のアスフィを連れ出して来た。
「ジムに何の用ですか?」
僕に訊いてきたアスフィ。
「彼はヘルメス様の眷属ですか?」
「違います。彼はどこにも属していません。しいて言えば、ヘファイストス様の恩恵が残っているくらいです」
「彼の事を知りたいんです。アイズの婚約者である彼の事をね」
アスフィに訊いてみるか。
「彼ですか?一般人ですよ。それは、プライベートの侵害になると思います。なので、忠告はしておきます。アイズさんを奪還しようと思わないでくださいね。もし、襲撃をすれば、彼の後ろ盾、彼の所属していた全ファミリアが敵になりますから。うちは中立…じゃないな。うちも後ろ盾の1つと思ってください。在籍はした事無いですけど、うちの主神とは仲が良く、ヘルメス様は彼を弟のように、かわいがっていますからね」
勝ち誇ったような顔付きで言われた。後ろ盾?
「後ろ盾はどこかな?」
「ですから、プライベートの侵害です。彼は冒険者では無い…これも違うかな?魔石を拾いに、たまに出掛けているし…まぁ、そんな感じです」
彼の立場は微妙みたいだ。ファミリアに属さない冒険者ってことか?
「では、アイズに逢って、話を聞きたい」
「今日はお帰りください。今夜は新婚初夜…これも違うか…婚約初夜だそうなので、大人しくお帰りください」
「そうだよ~。フィン…今夜はやめようよ~」
ティオナがアスフィの前に立ちはだかった。僕から護るように…
「どうして?」
「初めてだったんだ…あんなに親身になって、私の得物を調整してくれたスミスはさぁ!ゴブニュ様の工房で厄介者扱いされていたのに…だから愛人以前に、スミスとして惚れてしまったんだよ~!惚れた相手…私にとっての初恋の相手。今夜は、その彼の大切な儀式があるんだ。だから、今夜は引いてよ~、フィン!」
涙を浮かべて懇願するティオナ。こんなにも必死な彼女は初めてみたかもしれない。でも、大切な儀式?アイズと何かをするのか?それは止めないとダメだな。
突如、僕の後方から魔法が放たれてきた。魔法は迷うこと無くティオナに向かっていく。でも、ティオナに当たる寸前で弾けるように消滅した。振り返るとリヴェリアが立っていた。
「ティオナとフィンが、こそこそと動いていたから、こっそり付いてきたら…ティオナ、どういうつもりだ!団長に盾を付くって、どういうことだ?」
リヴェリアが俺の隣に来た。いきなり魔法を放つなんて、相当頭に来ているようだ。
「乱暴じゃないですか?僕の愛人に、なんて事をするんです?」
一人の男性が、ティオナの頭を優しく抱きしめた。その行為に、うっとりとするティオナ。
「お前は魔法使いか?私の魔法を防御するとはな」
「僕は魔法使いでは無いです。しがないスミスですよ」
男性は、アスフィとティオナの前に立ち、ガントレットからナイフらしき物を取りだし構えた。空気が一変していく。濃厚な殺意が僕達に遅い掛かってきた。コイツ…相当な手練れだな。
「おい!そこまでだ!俺のホームの前で、何をやらかしているんだ、お前達は!」
殺意を感じ取ったのか、ホームからヘルメス様が現れた。まぁ、彼のホームの真ん前だしな。
「あっ!ヘルメス…ごめん…」
ヘルメス様に謝る男性。そして、得物をガントレットに収納させた。その瞬間、空気は元に戻っていった。
「ジムは悪く無い。騎士として、レディで有るティオナとアスフィを護るのは、当然の行為だ。俺の怒りは、そこのロキ・ファミリアの団長と副団長に対してだ」
まぁ、そうなるな。
「そっちも大事にして、ロキの耳には入れたくないだろ?フィンの親指の震えが酷いしな♪」
くそっ!親指の疼きで、見透かされたか。疼くと共に震えも出ていた、僕の親指。
「提案だ。この件はノーサイドにしろ。そうすれば、俺も見なかったことにしてやる。悪くない提案だろ?」
笑顔で語り、取引を持ちかけてきた、ヘルメス様。戦況は僕達が不利だ。彼の正体が分からないうちは、刺激は得策では無い。まして、リヴェリアの魔法を弾く能力、あなどれない。
「わかった。ノーサイドにする。だが…」
「わかっていないな。お前達に「だが」は無い。ここでアイズとティオナを失えば、ロキ・ファミリアの損失は莫大になる。ノーサイドなら、ファミリアのメンバーに変わり無い。今後も遠征の戦力になるだろう。どうなんだ、フィン、リヴェリア♪」
僕もリヴェリアも頷く。これしか、方法は無い。現状では…
「ジムの事を知りたければ、そうだな…フレイヤに訊いてみな。元々、アイツがスカウトをして、彼を冒険者にしたんだからな。まぁ、簡単には話さないとは思うが…ふふふ」
意味有げに微笑むヘルメス様。フレイヤ様絡みか…ますます分が悪くなっていく。分かっているだけでも、アイツの後ろ盾は、フレイヤ、ヘルメス、ゴブニュ、ヘファイストスの4つのファミリアだ。ロキ・ファミリア1つでは分が悪い。
僕とリヴェリア、ティオナは、僕達のホームに向けて歩き出した。ホームに着くまでの間、ティオナは。彼との出会いを話してくれた。リヴェリアは、彼女の話を聞かず、何かを考えているようだが。