---ジム----
安全地帯と呼ばれている50階層に、テントを張りキャンプ地とした、僕とヘルメス・ファミリアの面々。ヘルメスの許可を得て18階層より下層への遠征を実現した。まぁ、ヘルメス・ファミリアとフレイヤ・ファミリアが一緒の場合は許可が出やすい。裏のお仕事で、行動を共にしているかららしい。
「ごめんね、付き合わせてしまって」
団長のアスフィに謝っておく。
「うん?気にしないで。現地で作業した方が、効率はいいしね♪」
アスフィは発明家である。今回必要な材料を地上でも生産できないかを、彼女に持ちかけたのだが、現地で開発すると言い始めたのだった。
「私はジムの発想は好きよ。そんなことを思いつかなかったし。これが完成すれば、51階層まで潜らないでも、ヘルメス・ファミリアには巨万の富が♪」
アスフィに頼んだのは、51階層に生息しているデフォルミス・スパイダーの糸の量産化だ。現地でも取り出す手立ては余り無い。攻撃方法として吐く糸故、怒らせて出させるしか回収が出来無いのだが、ゴミが付着し易いのが難点だった。なので、糸を作り出す器官を人工培養、育成して、人工的に糸を製造出来無いかを持ちかけたのだ。
51階層で、デフォルミス・スパイダーを殺さないようにして、糸を作り出す器官と、吐き出す器官だけを取りだし、培養液に入れて、アスフィの処まで持っていくのが、僕の役目である。殺してしまうと、必要な器官も灰になってしまうのが難点である。このダンジョンのモンスター達は殺すと灰と魔石になってしまうのだった。なので結構、難しい。蜘蛛の活け作りをしないとダメな訳だし。
アスフィからも交換条件は出された。カドモスの泉の水の製造方法の手がかりを、発見することが課せられている。ウィントゥウィンの関係である。カドモスの泉の水は、薬を作る上で必要で有り、地上では高額な取引ができるのだ。
デフォルミス・スパイダーがいない間にカドモスの泉の構造を精査する。時たま、カドモスが現れるが、殺さないようにして、尻尾と背中の肉を狩る。この部分だけなら死なないようだから。狩った肉は、干していく。
「また、肉を大量に…」
糸より肉が大量なのは困ったちゃんだけど、貴重なタンパク質だし♪
「まぁ、慣れると、おいしいですよね」
って、ヘルメス・ファミリアの方々に好評だし。
「そうだ、アスフィ。芋虫対策なんだけど…」
カドモスをエサにしている芋虫が、51階層以下でたまに大量発生する。こいつが厄介である。金属、皮膚、肉を腐食する消化液とか体液をまき散らすのだ。剣や槍で叩けない。魔法で一気に焼き尽くすのが一般的らしい。
「何かいい手でも浮かんだ?」
興味深そうに、僕を見つめるアスフィ。僕以外には、丁寧は話し方をするようだけど、僕に対しては、ため口である。
「モンスターの灰を焼き固めて、成形すればどうかな?」
芋虫に何回か遭遇しているが、灰までは溶けていなかった気がするのだ。
「もし灰も溶かすなら、床も溶ける気がするんだよ。でも、床を溶かして、下層へ転落なんて見た事無いし」
「私は遭遇したことないから…で、装備に加工できそう?」
灰といわれているが、僕のいた世界の灰とは違う。まぁ、チャレンジするかな?51階層で灰を集めて、キャンプまで持って来た。それから、カドモスの皮膜で作った羊皮紙ならぬ龍皮紙に大体のイメージを描き、魔法陣を書き加えていき、それを灰の固まりの上に置き、魔力を注ぎ、魔法陣を発動させて、一降りの剣を作り出してみた。
「この状態では強度は柔だから、カドモスの皮膜でコーティングする。あの皮膜は溶けないみたいだから」
問題はカドモスはレアモンスターであること。あまり数がいないのだ。なので、51階層を探索して、過去に溶かされて残留した皮膜を探していく。
---フィン---
順調に降りている。戦力は見違えるようにアップしている。調整してもらった槍も使いいいし、剣も良い。アイズ、ティオナも動きが良い。病み上がりのベートの戦力低下分が気にならない程度であった。
そして、ようやく50階層へ…え?テントを張っているファミリアがいる。どこだ?近づいて行くと…
「あれ?フィン…アイズ…どうして…」
不思議そうな顔をしたジムがいた。
「ジム~♪逢いたかったよ~♪」
アイズが甘えるような声を出し、ジムに駆け寄り抱きついた。
「あぁ、遠征か…どこかの依頼かな?」
「うんうん…ミアハ様達の…」
「そうすると、カドモスの泉の水とブラックライノスの角かな?」
「そうだよ」
と、僕が答えた。ティオナ、リヴェリアは固まっている。まさか、こんな場所で会えるとは思わなかったのだろう。一拍置いて、ティオナがジムに駆け寄っていく。
「あぁ、ティオナ。元気だったかな?」
「うん♪」
彼らのキャンプ地の隣に、僕達のテントを張っていく。リヴェリアの様子は…ソワソワしているし…はぁ~
ジムと友達になっている者だけで、ジムのテントに向かった。そこには…干し肉が大量に…顔色が悪くなる女性陣。
「この肉は?」
僕は訊いてみた。
「カドモスの尻尾と背中だよ。僕達の貴重なタンパク源さ♪」
って…ヘルメス・ファミリアは慣れているのか。
「で、依頼した物は?」
リヴェリアが口を開いた。乙女モードにならないように、ゆっくりと話している。
「2つは出来たけど、もう1つはまだまだ。もう少し粘るか、アスフィしだいかな」
3つも…一体いくらになるんだ?
「でも、完成していない方が完成しないと、使えない。そこが問題だよ、リヴェ♪」
って…二人だけの時の呼び方だったのだろうか、顔と耳が一気に赤く染まるリヴェリア。そんなリヴェリアを不思議そうにみているジム。
「どうしたんだ?熱でも出たのか?」
リヴェリアの頬を両手で包み込み、額と額を合わせるジム。益々赤く染まっていくリヴェリア。
「ふむ?熱は無いみたいだな。アスフィ、どうしたらいい?」
「はぁ?あぁ…ジム、こういう場合の薬は無い。放っておけば良い。放置が一番だ」
アスフィの口調が、僕達に対してとは違う。ジムだけは特別な存在なのだろうか?
「でも…真っ赤だよ…エルフの耳って大事なんだよ…ねぇ、アスフィ!」
リヴェリアは病気で赤い訳では無いのだが、ジムには分からないようだ。見かねたレフィーヤがジムを優しく抱きしめる。
「大丈夫ですよ。あれはジムさんに会えて、嬉しいからですから♪」
と、優しく諭すように伝えた。ジムの混乱は収まっていく。
「そうなんだ。エルフって構造が違うんだね」
レフィーヤは笑顔を返すだけにした。間違えを指摘して、誘爆するのを恐れているようだ。
「で、何の素材を集めているんだい?」
僕が質問をした。
「デフォルミス・スパイダーの糸。ドロップアイテムで無いから、苦戦中だよ」
「糸?何に使うんだい?」
「レフィーヤの法衣を織り上げるのに使うんだよ」
法衣?レフィーヤが驚いている。まさか、自分の装備の為に、51階層で奮闘しているなんて思ってもいなかっただろう。
「法衣…ですか…どうして?」
そんな装備を想像したことが無かったのだろう。驚いているレフィーヤ。
「レフィーヤの魔力を逃がさずに溜める為だよ。溜めた物を集積する装備と、撃ち出す装備は出来ている。あとは法衣だけなんだ♪」
魔力の集積?そんな発想は無かったのか、レフィーヤとリヴェリアが驚いている。彼の世界では一般的だったのだろうか?
「あっ、そこの猫耳兄ちゃん♪この剣を使ってみない?」
猫耳兄ちゃん?そんな者がいたか?って、彼が近づいて行った先には、ジムに敵対心を剥き出しにしていたベートがいた。
「はぁ?俺は猫じゃない!狼だ!」
「猫耳兄ちゃんの名前って狼って言うんだ。ふ~ん」
「違うぅぅぅぅ~!俺はベートだ!」
「何で、猫耳を付けているの?」
キョトンとしてジムが、真面目に質問をしている。ベート以外の者が失笑をしていく。
「こっ、これは猫耳じゃないぃぃぃ~!狼の耳だぁぁぁぁ~!」
「じゃ、なんで狼なのに、群れているの?」
「えっ…」
言葉に詰まるベート。彼の表情にはジムに対する敵対心は消えていた。ジムが知らない間に、彼の持つ何らかのスキルが発動したのかもしれない。
「おい、ジム。ソイツはケリ専門だ。剣は使えない。私が使うよ~♪」
ティオナが剣を受け取った。
「この剣は?」
「芋虫対策の剣。溶けない剣だよ。ただ、強度が無いから、芋虫以外には使えない。ブラックライノスで試したら折れちゃった」
芋虫対策…あのモンスターを、倒す装備を作ったのか?
「問題は量産化が難しいことかな。一日に一本しか創造できない。それ以前に素材が糸よりも難しいから」
素材を訊くと、カドモスの灰とカドモスの皮膜だそうで、カドモスを食用にしている彼のパーティーでは集めるのが困難らしい。
---リヴェリア---
「えっ?カドモスの泉の水の製造?」
アスフィから知らされた、彼らのミッション。それは、51階層まで降りずに地上で、カドモスの泉の水を製造することであるらしい。
「そうです。これが完成すれば、危険を伴わず、欲しい量だけ、いつでも販売ができるんです」
それって、冒険者の仕事を奪うんじゃないか?
「あと、デフォルミス・スパイダーの糸の製造。これも水と同じです。完成すれば。ヘルメス・ファミリアの収入源になると思います」
偉大なる発明家であるアスフィ。彼女なら作れそうだ。
「ジムにも無理なのかい?」
フィンが質問をした。
「彼の能力は、組成構造が分からないと、創造できないんです。探査能力もあるんですが、まだ、詳しく探査できていません」
フィンは彼の能力のことに詳しいみたいだ。なんでだ?
「今、蜘蛛の器官を取り出す作業の傍ら、泉自体を探査してもらっています。水脈からどのような地層を通過したかが分かれば、再現できると考えております」
ジムはここにいない…アイズとティオナが連れて行ってしまった。きっと…3Pなんだわ…うっ、耳が熱い…気づかれちゃう。
「お宅の副団長さん…何かジムにしましたね♪」
気づかれている…目が潤んでいく。
「カウンターされたのですか?」
バレている。俯いて視線を外す。
「アスフィは大丈夫なのか?」
フィンが尋ねた。
「う~ん…詳しくはノーコメントですけど。弟のような存在ですから。そういう関係になろうと思わなければ、良い相談相手にはなります。私の研究にアドバイスをくれるのはジムくらいですから♪」
そういう関係になろうとしてのが、バレている…愛称で呼ばれたのが原因かな?二人っきりの場だけって言っておいたのに…もぅ~!
「そうだ、魔法の集積って出来るんですか?」
フィンが話題を変えてくれた。
「出来るみたいです。私も初めて聞いた技術です。ジムに学ぶことは多いんですよ♪」
---レフィーヤ---
調整がしたいからと、ジムさんに呼び出された。彼のテントへと向かう。そこに彼は一人で待っていた。私は中に入り、二人っきりのテント…
「右の薬指を出して」
言われるまま、指を出すと、指に指輪が嵌められた。これって…婚約…
「それが魔力を集積する装備だ。魔石は交換可能だけど、無くてもそこそこ使えると思う」
あぁ、婚約指輪では無いんですね。少しがっかり。アイズさん達が羨ましい。
「じゃ、全部脱いで」
予想はしていたけど、身体を要求される。そうだよね。私の身体で買えるなら、安い買い物だよね。って自分に言い聞かせながら、着ている物をすべて脱ぐ。
「仰向けになって」
言われるまま、横になる。
「股を開いて」
開脚する。彼が股間に顔を埋めて…デリケートな場所を舌先で刺激してきた。それだけの刺激で、意識が遠くへ飛んでいく。
「いいか?その感覚を覚え込め」
えっ?感覚を?
「そうだよ。自分のスペースを構築するんだよ。どんな状況でも、こういうのって、意識が飛ぶでしょ?」
あぁ…それは…そうですね…
「じゃ、立ち上がって、足は肩幅に開いて」
立ち上がり指示通りにする。またも股間に顔を埋めて、舌先で…感覚を覚える。意識が飛ぶ…頭が真っ白に…
『そこで詠唱をするんだ。誰にもジャマされない、君だけのスペースだから』
耳からで無くて、直接脳に響く彼の声。その声に従って、詠唱をする。誰からのジャマは入らない。謳い終わる直前に、達してしまい、全身が弛緩して、彼にもたれ掛かる。
「わかったかな?感覚が」
身体目当てで無くて…感覚を覚え込ましてくれる為に…抱かれる覚悟をしたのに…でも、身体目当てなら、耳をまず攻略、いや、彼も服を脱ぐはず…何かを期待していて外れた気分。
「コレを着て♪」
手渡された物…それを見て気分は一新されていく。ピンクの法衣。完成したんだ。
「レフィーヤはピンクが似合うかなってね」
全裸で法衣を纏う。
「慣れないうちは全裸の方が、魔力を捉えやすい」
左腕にガントレットを装着してくれた。
「ワンワードで起動する。右手を握り、指輪の魔石を上に向けて、意識を集中。これはさっきの感覚を思い出して。そして左腕を前に出して、唱えるんだ。『天使の弓』とね♪」
言われた通りにすると、ガントレットから弓が発現した。凄い…
「次に、右手の親指と薬指で矢を持つようにして、弓にソレをあてがい、右手を耳の近くまで引く。狙いを合わせて、指を離せば、光の矢が撃ち出せる。取り敢えず、天井に吊してある的の中心を撃ち抜いてごらん」
やってみる。矢は的を撃ち抜き消えた。
「難点は、魔石を目がけて飛び、狙った魔石を砕き、消えるんだ。ここ一番の場面に使わないと、フィンにドヤされるからね♪」
あぁ、魔石を拾う余裕が有る時は使うなってことですね。
「後は、ワンワードを『天使の歌声』にすると、あのスペースに連れて行ってくれるので楽に詠唱できる。当然なことだけど、魔力が足り無い時は発動しない。天使の弓で乗り切れ」
そういうと、彼は…ジムさんはテントから出て行った。私の身体は見返りに…しないの?
「終わった?じゃ、今夜も…ねぇ♪」
テントの外からアイズさんの嬉しそうな声が聞こえた。