---ベート---
リューとアリーゼさん、アストレア様が感動の再会をしていた。アイズは相変わらず、小動物のような雰囲気で兄貴に纏わり付いている。
「ねぇ、ファルコン。なんで、アリーゼに手を出さなかったの?」
リューから兄貴に質問が飛んだ。
「うん?アリーゼは、そういう対象じゃない」
兄貴は困ったような顔で返答をした。
「え?私って、女として見て貰えて無いのか?」
アリーゼさんからも、兄貴に質問が飛んだ。
「う~、そういう訳ではない。僕は呪いがかかった身なんで…ヒューマンには手を出さないことにしたんだよ」
って…呪い?なんで?アイズも初めて聞いたみたいで、心配そうに兄貴を見つめている。
「呪いって?」
アストレア様も聞いていなかったようだ。
「昔、呪いをかけられて、不老不死な身体になったんだ」
兄貴のカミングアウト…不老不死?それって呪いか?
「兄貴、夢のような能力じゃないのか?」
つい、口から出た疑問…
「夢のような能力かぁ…ベート、考えてみな。お前は今のままの姿で、アイズが老いていくことに耐えられるか?」
うっ…
「それはそれできついかな…老いていくアイズを見ているだけって…耐えられないかもな」
「僕も同じように思っていた。でもね、経験をして、改めて呪いだと思ったんだよ」
兄貴はどこか遠くを見るような目つきになり、
「昔、ヒューマンの女性と恋に堕ちた。僕は彼女と添い遂げる覚悟だったんだけど、彼女は日に日に老いていった。僕との隣で戦えなくなると、家で待つ身になり、体力が落ちて寝たきりになり、そして…」
兄貴は俯いた。深呼吸をして心を落ち着かせているようだ。兄貴の話を聞いて、目にはうっすらと涙を浮かべたアイズは、そんな兄貴に抱きついて、離れようとしない。
「ある日、僕の手を握り、『ファルコン、ありがとう…』って、言って…冷たくなっていく彼女の手の温もり。忘れられない、今でもね。彼女と同じ様に歳を取ることが出来れば、『後から行くから』って言えたのだろうけど、僕は彼女がミイラ化して風化して、風によって塵となるまで、彼女の手を握り絞めていた。もう、そういう辛い事は、僕には無理なんだ。なので、寿命の比較的長い女神や精霊を愛するようにした。アリーゼやリューが嫌いってことは無いんだ。呪いが無ければ、そういう関係になっていたかもしれない。いや、呪いが無ければ、今ここにはいないかな」
っと、兄貴のカミングアウトな話が終わった。
「それが理由なの?」
目を真っ赤にしたアリーゼさんが、兄貴に声をかけた。
「そうだよ。人間はせいぜい80年だろ?エルフでもせいぜい1000年か?女神だと10億あたりかな」
「ねぇ、ファルコン、あなたって何歳?」
アストレア様から当然な疑問が飛んだ。
「呪いを掛けられたのは20歳くらいだから、永遠の20歳かな♪彼女とあぁなった時に、歳を数えるのを止めたというか」
「あの…私より歳上?」
アストレア様は恐る恐る尋ねた。
「たぶん、アストレア様より前に産まれていると思う…だけど、歳は永遠の20歳だよ♪」
驚愕な表情のアストレア様…いや、兄貴と何故かアイズ以外は驚いていた。
「なぁ…兄貴、その理論だとアイズは対象外だよな?」
っと、確認する俺。
「アイズがヒューマンならな」
って、意味深な返答をする兄貴…え?ヒューマンじゃないの?
「ベート、考えてみろよ、普通のヒューマンが、風を纏えると思うか?風系の魔法は使えるかもしれないけど、纏うってことは出来ないと思うぞ」
あっ!…なんですとぉ…
「じゃ、アイズは?」
「う~、アイズ本人も知らないみたいだから、推測にしかならないけど、精霊系の血筋は入っているだろうな。アイズの身体付きからして、ヒューマンとのハーフとかクォーターの可能性もあるかな」
アイズは『はて?』って感じの仕草をしている。俺は開いた口が塞がらない…
「まぁ、僕はベートの恋路はジャマしないよ。アイズが望めばな。まぁ、僕的には、僕以外の相手とアイズが一緒になって、幸せになってくれると良いって感じだよ、ベート♪」
って、兄貴はアイズを見るが、当のアイズは、自分の頬を兄貴の肩に擦り寄せている。俺には勝ちという目が無い気がする…
「そんな感じだけど、アリーゼ、リュー、ベート…そして、アストレア様。朽ち果てるまで一緒に居ようと思う。よろしくね♪」
朽ち果てるまで…嬉しいやら哀しいやら…兄貴は永遠な20歳の姿のままなんだろうし。既に見た目は、俺の方が歳を超えている気がするし。
「それで、明日の予定だけど、僕とベートとアイズで街に行く。それで、アストレア様の追放処分の解除をギルドに打診、街の中にホームを作る土地探しをしようと思う。街の中に拠点が無いと、潜るのに不便だからね」
っと、暗い話題をブレイクさせて、新しい話をし始めた兄貴。
「リュー、以前僕達のホームのあった場所って、どうなっているの?」
「えっ?アレ以来、行かないから、わからない…」
苦しげな表情のリュー。昔を思い出したのか?
「そうか、じゃ、ギルドに確認しよう。ギルド預かりか、ギルドで転売したかを確認しないとな。あそこがダメだと、新たに土地を購入しないとダメだろうな」
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翌日、兄貴とアイズと俺で、街に向かいギルドに着いた。受付で用件を伝えると、眼鏡をかけたエルフの女性が出て来た。
「この度、アストレア・ファミリア担当になりました、ハーフエルフのエイナ・チュールと申します。以後、よろしくお願いします♪」
と、自信に満ちた笑顔で自己紹介をしてきた。しかし兄貴は、いきなり本題に入った。
「アストレア様の追放処分の解除はどうなりましたか?」
「あぁ、それなら、問題ないです。ギルドで処分する前に、アストレア様が出て行かれたので、処分は発令されていません」
「あと、僕達のファミリアのホームがあった土地は、どうなっている?」
エイナは書類を調べて返答した。
「所有権はそのままです。でも…ホームに併設されていた教会なんですが、こちらの手違いで、ヘスティア・ファミリアのホームになっています」
はい?それはダメだろう。
「排除していいよね?僕達のファミリアの土地なんだからさぁ」
兄貴の顔から笑顔成分は消えていた。
「う~ん、出来れば穏便に…」
エイナは困った顔になったきた。
「そのファミリアが、あの土地を買い取ってくれるとかは?」
「ないです…」
「おかしいでしょ?では、僕達のホームはどこに作れば良いの?」
「あ…どうしましょうね」
エイナは困り果てて、目が泳いでいるみたいだ。
「ここの2階より上に増設して良い?」
「ダメです…ギルドは…」
「あぁ、そうだな。アイツのホームだしな。でも、新たに土地を買う予算がないんだけど…これって、ペナルティー?」
「違います…手違いです…」
「あぁ、エイナさん、泣かないでよ。僕が虐めているみたいじゃん。でも、排除で了承してくださいね♪」
兄貴の気迫から来るプレッシャーに負けたのか、頷くエイナ。その姿を見た兄貴は、この場を離れた。俺とアイズ、それにエイナが後を追った。
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教会らしき廃墟がある一角に着いた。
「教会を壊さずに、排除すれば問題ないよね?」
兄貴が呪文を唱えると、目の前の廃墟が煙のように消えて、更地になった。
「教会はどこに?」
エイナが兄貴に問う。
「街の外に転移させた。次に、アストレア様達を転移させよう」
兄貴は所有地の地面に魔法陣を描き、呪文を唱えると、街の外に建っていた、現在の家が転移してきた。家からはリューが飛び出して来た。
「何事?地響きが…えぇっ?ここは?」
見渡す限り一面が森だった一軒家が、突然バベルの見える街中に来たことに、戸惑うリュー。
「あぁ、強制転移させた。引っ越し作業がはかどるでしょ?」
兄貴はリューに簡単に説明をし、更に呪文を唱えると、所有地を囲むように壁が現れて、正面には立派な門まで現れた。
「あぁ、疲れた。今日はここまでだ。門を閉めれば、取り敢えず安心だから、テントを張って寝ても大丈夫♪」
なにげに、創造能力を見せた兄貴。
「じゃ、エイナさんと僕とアイズでギルドに行って、ホームの申請をしてくるよ。ベートはテントを2つ張っておいてくれ」
って、ギルドに出掛けた兄貴達。
---ヘスティア---
バイトから帰宅すると…ボク達のホームは消えていた。ホームのあった土地は、高い壁に囲まれている。なんで?どうして?誰が?門の脇には看板があり、
『アストレア・ファミリア ホーム』
と、書かれていた。強奪された…バイトに行っている短時間に、いつのまに壁と門をつくったのだ?門を叩き、中の者を呼び出す。
顔を出したのは、『豊饒の女主人』のウェイトレスのリューだった。
「どういうこと?なんでボクのホームにこんな物を作るんだ?」
「ここは元々、私達アストレア・ファミリアの土地です。無断に住んでおいて、神と言え許されない行為です」
っと、訳のわからない理由を言う。無断で住んだ?廃墟だっただろうに。何を言っているんだ、このウェイトレスは!とにかく、ベル君が帰ってくる前に、退かさないと。
「ウェイトレスが、冒険者ごっこするなよ。早く出て行ってくれないか?」
「おい、何を揉めているんだ?ヘスティア」
ヘルメスが声を掛けてきた。
「ボクのホームを無断で奪ったんだよ、このウェイトレスが!」
「うん?無断で奪ったのはヘスティアだろ?ここは元々アストレア・ファミリアのホームのあった場所だ。お前、買い取ったのか?」
ヘルメスもおかしなことを言う。なんで、廃墟を買い取らないといけないのだ?
「廃墟だろ?あんなの価値ないだろ?」
「おい、ヘスティア。土地の価格ってあるんだぞ。ここの広さだと10億位は払わないとダメだな。お前に払う能力はあるのか?」
何を言っているのだ?廃墟が10億?有り得ない。ボクは騙されないぞ!
「ヘルメス、ボクを騙すつもりだな。廃墟が10億する訳ないだろ」
「どうした、ヘルメス。うん?なんで、ジャガ丸くんの売り子がいるんだ?配達か?」
ジャガ丸くんを最近、よく買いに来てくれる者が声を掛けてきた。
「君が、ここの冒険者か?ここはボクのホームだ。出て行ってくれ!」
「あぁ、あんたが、無断で住み着いている神かぁ…今までの家賃を払って貰うぞ。いいな?」
家賃?なんでだ?廃墟に家賃は有り得ない。
「お前、新参者だな。おい、勝負しろ。ヘスティア・ファミリアに勝てると思うなよ」
って、啖呵を切ったら、ヘルメスが笑い始めた。
「おい、ヘスティア、お前、正気か?ベルしかいない、お前のファミリアが勝てる訳ないだろ?」
「は?ヘルメス…こいつのファミリアって眷属が一人なのか?オッタル位の強さなのかな?」
「ファルコン…まだLV2にもなっていない冒険者だ」
「そんなので、アストレア・ファミリアにケンカを売ったの?大丈夫か?栄養が胸にしか行っていないんじゃないのか?」
この新参者…許せない発言だ。たしかに、ボクの胸は大きいよ。でも、脳だって発達しているんだ!
「お前みたいな新参者に、ベル君が負ける訳ないだろう?」
その時、予想外の者の声がした。
「お兄ちゃん、私が戦う。お兄ちゃんは見ていて」
って、え…なんで、アイズさんが…
「おい、ヘスティア。言って置くけどな、アストレア・ファミリアはLV4以上ばかりだ。お前はベルを殺す気か?さっきからケンカを売っているファルコンはオッタルを秒殺した男だぞ」
って、ヘルメス…はぁ?オッタルを秒殺って…
「あとなぁ、ヘスティア。お前がウェイトレスと呼んでいたリューもLV4の元冒険者だぞ。ここまで啖呵を切って、謝っても済まないだろうな」
って、ヘルメスから追加情報が…LV4の元冒険者?ウェイトレスなのに…
「どうする、ファルコン?」
「リューに失礼な発言をしたみたいだな、胸に栄養を溜め込んでいる女神は。こいつは奴隷にするか、で、ベルっていう眷属はアストレアに改宗してもらおうかな」
「いや、改宗は無理だ。まだ1年経っていない」
ヘルメス達が勝手に話を進めている。でも、このままだと、ベル君は殺されてしまう…
「そうなのか?ヘルメス。じゃあ、アストレア・ファミリアの傘下に入って貰おうか。エイナさん、それで良いよね?」
えっ…ギルド員のエイナさんがいた。まずい…ベル君の担当アドバイザーだ。
「それで、円満解決ってことにしてください。いいですね?ヘスティア様」
ギルド員の通達だと、ギルドの決定事項になりかねない。
「じゃ、それで。エイナさん、また登録事項が出来てすみません」
って、ファルコンという者がエイナさんに頭を下げている。私が関与しないで、物事が決まっていっている気がする。
「ヘスティア、お前の負けだ。古参のアストレア・ファミリアにケンカなんか売るからだぞ」
って、ヘルメス。えっ?古参なの…名前を聞いたことないのに…
「じゃ、リュー、このロリ乳女神に、僕達のファミリアの上下関係を教えておいてくれるかな?僕はヘルメスと、ちょっと出かける」
ヘルメスとどこかに行くファルコンという男。