※この作品はR-18です。

ラスボスになりたい~   作:もっち~!

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頑固なエルフに捧げる記憶の欠片

 

---ジム---

 

遠征から帰ってきた。収穫は上々だ。カドモスの泉の水の生成は持ち越しになったけど、蜘蛛の糸の量産化には目処が付いた。アスフィが量産するべく、奮闘中である。

 

ガレスの装備…直接契約とかで、椿の作った武器以外は使えないそうで、遠征中に役立つことは無かったそうだ。勿論、椿に僕が大目玉を食らった。ははは…自業自得ではあるけど。

 

遠征中に出来無かった仕事をこなす。仕事に熱中していて、時間が経つ感覚が大雑把になりかけた時、お店のドアが開いた音がした。アイズ達が帰って来るには、まだ早い時間だけど…お客さんかな?店内に視線を移し、僕は固まった。逢いたくない相手が、そこにいた。

 

「やっと、見つけた。この前、店に来たのが運の尽きだな」

 

あぁ、あれで居場所が探し易くなったよな。緑に染め上げた髪のエルフが、僕を見据えていた。

 

「僕を殺す?君に殺されるなら、本望だよ♪」

 

彼女は僕を見据えたままだ。

 

「ミアの店で、殺されるのかって、ビクビクしていたよ。アイズ達の前では殺されたくなかったからね」

 

「あぁ、そうだな。私の視線にビクついていたのは、知っていた」

 

「どうしたい?」

 

丸腰で彼女の前に立った。

 

「知りたいんだ。真実を…教えてくれ。お前は何をどうして、壊れたんだ?」

 

壊れた?

 

「僕は壊れていないけど…」

 

「そうか…自分で気づかない程に壊れたのか…殺そうとは思わない。ただ、真実を知りたい。あと…アストレア様の墓前とアリーゼの墓前に案内をして欲しい」

 

「ミアの店は休みか?」

 

首を左右に振るリュー。

 

「じゃ、次の休みの日に、行こう。ただ、アストレア様は墓は無い。天界へと帰られた場所だけど、いいか?」

 

頷くリュー。

 

 

------

 

ミアのお店の休みの日の前日、アイズに出掛けると伝えた。

 

「え?明日、出掛けるの?」

 

「うん。外せない用事が入ってね。アイズ達は休みで無いでしょ?」

 

「う~ん…サボってもいいよ♪」

 

良く考えた末のティオナの結論…サボりかよ…

 

「ダメだよ。リヴェリアがぶち切れるから。サボるなよ」

 

「そうだよね。私達は毎晩ジムと…でも、リヴェリアは休みの日だけだもんね」

 

って、アイズは理解してくれている。

 

「ティオナ、サ・ボ・る・な・よ!」

 

「はいはい♪じゃ、今日は奮発してね♪」

 

「今日は?今日もじゃないのか?」

 

毎晩って。コイツら、タフすぎだろう…うん?僕が性欲無さ過ぎるのか?

 

-------

 

翌日、門の処で待ち人を待つ。小刀を二降り携えた女性と、カゴを手にした女性がやって来た。

 

「シル…、どうして…」

 

アイズ達のいない場所では、シルは敬称無しだ。関係性を問われることが無いから。

 

「私はジムの保護者よ♪あとねぇ、お弁当持って来たよ~♪ミア母さんが作ってくれたんだよ♪」

 

はしゃいでいるシル。遊びに行く訳では無いんだけど…

 

「じゃ、行こうか…」

 

西の方にある森を目指すが、途中、尾行されているのに気づく。なので、尾行者を捕まえることにしたら、簡単に捕獲できた。敵対組織では無く、猫耳狼だった。

 

「なんで?尾行しているの?猫耳狼さん」

 

「だから、俺はベートだ。名前をそろそろ覚えろよな!なんで?怪しいだろう?お前と、豊饒の女主人のウェイトレス2名で、街の外って。どう考えても不自然だろう?」

 

あぁ、シルは目立つから…いや、シルのことだ。部外者を立ち会わせる為に、工作でもしたか?

 

「で、ベートさん、お一人ですか?」

 

シルが営業用スマイルを被り、訊いた。

 

「あぁ、一人だ。今日は休みで無いから…俺は休みだけどな」

 

あぁ、サボりか。

 

「まぁ、いいや、付いて来い。少し遠いけど」

 

リューと僕とシルで、索敵をしながら進む。ピクニック気分のベートは、索敵をしていないようだ。まぁ、事情を知らないからな。

 

森に入り、道無き道を歩き続け…

 

「ここだよ」

 

付近と比べて、不釣り合いな花畑があるエリアを指差した。

 

「ここ?」

 

どこに持っていたのか、わからないけど、花束を置くリュー・リオン。

 

「ここは何だ?」

 

部外者のベートが訊いてきた。

 

「僕がリューの主神であるアストレア様を、殺した場所だよ」

 

「えっ…お前、神を殺したのか?」

 

「そうだよ。僕の手は血に塗れている♪」

 

ベートに笑顔で答える。

 

「なんだとぉぉぉぉ!ギルドに突き出してやる!」

 

「はぁ?何を言っているの?彼はマーダーライセンス持ち。だから、罪に問われない」

 

営業用スマイルを被らずに、シルが言った。その顔付きと、話の内容により、ベートの顔から血の気が失せていく。

 

「で、何から話せばいいのかな?リュー・リオン」

 

「最初から…アリーゼの最期はどうだった?見届けてくれたんだろ?」

 

表情を余り変えていないリューにお願いされた。

 

「あぁ…でもね、聞かない方が良い話も、有ると思うんだけど…」

 

「一人で背負わないでくれ…私にも背負わせて欲しい…私が当事者なんだから」

 

リューの目から一筋の涙が零れた。

 

 

------

 

とある案件を終えて、地上に戻る際、目の前で有り得ない光景が広がっていた。空腹で冒険者を襲って、食い散らかしているモンスターの集団であった。空腹のモンスターの集団って言うのが有り得ない。モンスターはダンジョンから産まれ、エサは冒険者、自分より弱いモンスターの他、パントリーと呼ばれるモンスター専用の食料庫が有るのだ。1匹の空腹のモンスターは見かけたことが有るが、集団っていうレベルは有り得なかった。パントリーに行けば良いし、これだけの集団なら共食いも起きて居るはずなのに、空腹の集団だった。

 

罠の可能性を疑った。モンスターを生け捕りにして、エサを与えずに、罠に嵌めたいパーティーに向けて解き放つパス・パレードを疑った。案件で無いけど、目の前の惨状は、助けに入らないとダメなレベルだった。僕は得物を構えて、モンスター達を屠っていった。

 

この階層にはいないはずのモンスターもいる。確実に人為的なパス・パレードであると確信した。確実にモンスター達の喉笛を斬り裂いていく。

 

モンスターを全滅させ、生きている者がいないかを、捜索すると、一人蠢いている者がいた。急いで駆け寄ると、赤毛でチャーミングな知り合いだった。彼女の左腕は肩口から無くなっていた。腹部は食い千切られている。回復術を施すが、延命にしかならない。欠損箇所を修復する能力は、持ち合わせていないから。

 

朦朧ではあったが、意識を取り戻した彼女は、僕に気づいた。

 

「ジム…来てくれたんだ…」

 

「アリーゼ…ごめん…僕の力じゃ…」

 

僕の目から涙が止めどなく流れていく。彼女は、アリーゼ。オラリオの正義を担うアストレア・ファミリアの団長だ。じゃ…襲われたのは…くそっ!

 

「ジム…泣かないで…ねぇ…お願い…抱きしめて」

 

彼女の身体を優しく抱きしめる。回復術を掛けながら。でも、破られた腹部の出血が止まらない。内臓が喰われているし…

 

「あと、2つお願い…あるの…きいてくれる?」

 

「勿論だよ、アリーゼ…」

 

「私の首にある…タグを…アストレア様に…あと、リューを…護って…護り切って…彼女だけ…だから…」

 

「わかった、アリーゼ…」

 

「良かった…ジムに逢えて…」

 

僕に寄り添うように、僕に笑顔を向けながら、僕の腕の中で、アリーゼは息を引き取った。彼女の魂が、名残惜しそうに、僕の周囲を何回か周り、天界を目指して消えていく。

 

頼まれたこと。彼女の首に掛けていたネームタグを手にして、彼女の折れて曲がった剣をも手にした。通路から少し離れた場所に穴を掘り、彼女達の亡骸、拾えるだけ、集められるだけを埋めた。いつも持ち歩いている花の種と共に…

 

僕は一心不乱に、地上を目指した。この事実を知らせる為に、リューが何かする前に。

 

---------

 

「アリーゼは苦しんでいたのか?」

 

リューに訊かれた。

 

「僕が見つけた時には、神経が麻痺していた。不幸中の幸いだけどね。あんなに酷い惨状の現場は、あれ以外に見た事が無い。今もね。酷かった…肉片が飛び散り、内臓が無い死体が多数あったし…」

 

突然、あの時の情景が、フラッシュバックして来た。アリーゼの身体、知り合いの身体、うめき声…うめき声が聞こえたのに、救えなかった。頭が咀嚼されてる音、血の臭い…どれも、あれ以前も、あれ以後も遭遇したことがない惨劇の現場だ。

 

「あぁぁぁぁぁ~」

 

シルが僕の異常に気づき、抱きしめてくれた。

 

「ジム、ゆっくり息を吸って…ゆっくり吐いて…落ち着いて。大丈夫よ、私が一緒にいるから。ねぇ、ジム」

 

震えが止まらない…苦しい。僕もアリーゼと…

 

「そうだ。珈琲を持って来たわ」

 

シルが珈琲をゆっくりと飲ませてくれた。あの時のように、口移しで…段々と呼吸が楽になってきた。

 

-------

 

地上に戻り、ギルドに向かった。ウラノス・ファミリアの専用受付で、情報を伝えた。受付当番の者が驚いている。

 

「至急、リュー・リオンの居場所を探してくれ。後、仕掛けたヤツラもだ」

 

ギルド内が騒然となる。情報収集をする為に、協力してくれるファミリアへと伝令が走って行く。僕は主神のウラノスの元へ向かった。

 

「ジム、聞いたぞ。お前はどうするつもりだ?」

 

「アリーゼとの約束を護る。アストレア様にお届けと、リューを護り切る」

 

「アレを使うのか?」

 

「使わなくても、全身全霊を使う。アリーゼに頼まれたんだよ!」

 

アストレア・ファミリアの団長、アリーゼと団員の数名は知り合いだ。裏の案件をする場合、表を取り仕切るファミリアに、報告することもあるので、それで知り合った。僕の役割をアリーゼは理解してくれたけど、頑固な金髪のエルフは理解してくれなかった。

 

 

 

リューにより、街の外へと逃がされたアストレア様が見付かった。僕は見付かった場所に急いだ。

 

「アストレア様…」

 

「ジム…」

 

捜索隊より、僕の用件を伝えられていたアストレア様は、無言で僕を見つめていた。アリーゼからの預かり物を彼女へ手渡した。

 

「アリーゼ…ごめんなさい…辛い目に遭わせてしまって」

 

アリーゼの遺品を胸に抱きしめて、涙する女神様。

 

「ジム…お願いがあるの…私を天界に帰して…」

 

言い終わる前に、彼女の望みが判り、迷わず彼女の意に沿う。彼女が死を待って、身構えないように。死までの恐怖を抱かないように。

 

神は自殺が出来無いから。地上に降りた神は死なないと天界に戻れない。彼女の首筋から血が噴き出し、僕を血のシャワーで洗ってくれた。これから行う、復讐という名の儀式前の清めなのかもしれない。彼女の身体は光の粒子に分解され、魂と共に、昇華していった。

 

これで良かったのかな?アリーゼ…

 

-------

 

「アストレア様が…そんなお願いを?」

 

頑固なエルフは、信用していないようだった。別にどうでもいい…そんなことは。真実は奇なるものだし。

 

「信じ無いなら信じ無いでいい。僕を恨み続ければいい。僕はそういうポジションだから。既に僕の身体は血に塗れている」

 

「ダメ、ジム!闇に飲まれないで~!ごめんなさい…ジムにだけ背負わせて…」

 

シルが…あの魅了なる女神を彷彿させるシルが、僕を暖かく包み込む。暖かさを感じられるうちは、まだ大丈夫だろう。

 

-------

 

街に戻ると、リューの捜索隊から、リューの所在を知らされた。仇討ちに向かったようだ。急がないと。彼女の手は、頑固のエルフの手は汚す訳に行かない。アリーゼは望んでいないはずだ。

 

仕掛けたファミリアのホームに乗り込み、苦戦をしているリューを見つけた。遠征での事件後、仕掛けたヤツの捜索などで、睡眠不足な彼女は、本来の戦いが出来ていなかった。僕は迷わず、乱入した。そして、リューの意識を術で飛ばした。

 

「アーニャ、彼女を護っていてくれるかな?」

 

「まかせニャ!」

 

仲間にガードを依頼した。これで、心置きなく殺せる。ふふふ…出逢う相手、味方以外は、首を切り裂いて行く。そこら中で血の噴水が僕を、血で染めていく。もっと、血が欲しい。もっと、殺したい。アリーゼを嵌めた責任者は、どこだ!

 

奥の部屋で、腐れ主神を見つけた。

 

「おい、貴様は誰だ?こんなことをして、タダで済むと思うなよ」

 

タダで済まないよ。もう血に飢えているし…

 

「僕は、ウラノス・ファミリア、団長【血塗れ清掃人(ブラッディースイーパー)】ジム・ナイト・クロウだ」

 

アリーゼの愛剣、折れ曲がった剣を手にした。

 

「えっ…ギルドの処刑人だと?ふざけるな!人間が神を殺せるは…痛っ!」

 

言い終わる前に、指の関節で斬り落としていく。すんなり殺さないよ。なぁ、愉しんでから死んでくれよ♪目の前にいる神を、生きたままバラバラにしていく。

 

「助けてくれ~!」

 

悪いな。僕の耳は営業していないんだ♪

 

 

 

取り敢えず、手を下したファミリアを全滅させた。この件に賛同したファミリア、商会、ギルド員のリストを手に入れた。こいつら全員、殺す!

 

アーニャの元に戻ると、シルとミアがいた。

 

「終わったのか?」

 

ミアに訊かれた。首を横に振る僕。

 

「賛同者も全員殺す!この剣…アリーゼの形見…リューに渡しておいてくれ」

 

シルに手渡した。

 

「ジム…終わったら帰ってくるんだよ。リューはミア母さんとみんなで護るから。ねぇ、ジム、分かる?」

 

「ごめん、よく分からない。血が呼んでいる。こいつら、殺さないと…フレイア、ヘルメス、ロキが危ない。だから…ミア、シル、アーニャ…元気でな」

 

僕はその場から立ち去った。

 

-----

 

「あの時…助けてくれたのって…」

 

「ジムなのよ、リュー」

 

シルが説明してくれた。

 

「リューの手は血に染まっていない。ただ、ジムはいない存在だから、リューのやったってことにしたの」

 

「いない…存在?」

 

不審そうなリュー。

 

「うん。ジムは、ここの者では無いから」

 

そう、僕はこの世界の者では無いから。この世界のルールでは裁けない。そう、僕の雇い主である神達は思っていた。でも、罰は与えられた。僕の精神は崩壊していた。殺すことに慣れてしまったのだ。笑顔で躊躇なく殺せる。単なる殺人鬼になっていた。僕はそうであることを、認識することすら出来ていなかった。

 

「総てを殺しきって、ジムは帰ってきた。でも、ミアを…認識すら出来ない状態で…リューだけを護ること、それを心に持って。そして、ジムはミアとアーニャの二人相手、いやオッタルを入れて三人相手に戦った。もう味方すら認識出来ていなかった。そして、ミアが刺された。ミアは刺されながらも、ジムを抱きしめたの。優しく、実の息子のように。ジムはミアの心に触れ、正気に戻ったんだけど…しでかしたことに気づき、私達の前から消えた…」

 

-------

 

ミアを刺してしまった罪悪感から、あの場から逃げた。どこをどう逃げたのか、わからない。そして、あの惨劇以来、寝ていなかった僕の意識は消えていった。

 

気づくと、僕はベッドの上に寝ていた。

 

「ジム…気が付いた?大丈夫?怪我は無いみたいだけど」

 

シャクティが声を掛けてきた。ガネーシャ・ファミリアの団長だ。

 

「僕は…」

 

状況が見えない僕は混乱していた。

 

「倒れていた。血塗れでね…見つけたのが、私で良かったわよ。身体はガネーシャ様が洗ってくれたわよ。これ位しか、出来無いって嘆きなからね♪」

 

「どうなった?」

 

「ジムのしたことは、総てリュー・リオンが、しでかしたことになっている。彼女はギルドのブラックリスト入りしたわ。まぁ、ファミリアがもう無いんだから、冒険者としてもう終わっているし、問題は無いでしょうね」

 

「リューは罰を受けるの?」

 

「受けないわ。お咎めはブラックリスト入りだけ。もう充分過ぎる罰を、ジムが受けたでしょ?あぁ、そうそう。書類上は、ジムはガネーシャ・ファミリアだからね」

 

「僕は死刑?」

 

「ねぇ、私の話を理解してないの?ジムはガネーシャ・ファミリアの一員だからね♪」

 

僕はシャクティに救われたようだった。

 

 

 

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