※この作品はR-18です。

ラスボスになりたい~   作:もっち~!

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頑固なエルフの守人

 

---ジム---

 

「ねぇ…小耳に挟んだんだけど…」

 

シャクティのお世話になり始めて数日経った頃、彼女が情報を得てきてくれた。

 

「あのエルフに刺客が、放たれたみたいだよ」

 

うん?総て掃除したはず…

 

「誰が?」

 

「商会みたい」

 

商会とは、外国資本の貿易会社だそうだ。非合法の輸出入をしている処が多い。今回の件で何軒かの商会を掃除した。リストにあったところは総て掃除したはずだけど…

 

「掃除しきれてなかったのか…」

 

「ただねぇ…アストレア・ファミリアが崩壊した今、彼女を狙う意味が分からない」

 

復讐?無いだろうな。原因はあちらにあるんだし。そうなると…

 

「口封じか?」

 

「そうなるよね。でも、何のかな?正義の女神のアストレア様が、口封じされるような事をされていたとは思えないし」

 

そうだよな…秘密主義でなくて、オープンな性格だったよな。

 

「裏が有るのか」

 

起き上がり、出掛ける準備をする。

 

「やっぱり、行くの?」

 

哀しそうな表情のシャクティ。

 

「この街の掃除が、僕の仕事だよ。シャクティ…君が平和な街にしてくれよな」

 

「うん…」

 

彼女の右手の甲に口づけをする。

 

「仕事に行ってくる」

 

「ねぇ、ジム…平和な街になったら…」

 

「そうだな。二人でピクニックにでも行こう♪」

 

シャクティの返事を聞く前に、彼女の部屋を出た。

 

--------

 

ゴブニュ様の工房を訪れた。

 

「どうした?」

 

「研ぎ直しをしに来ました」

 

ゴブニュ様は理由を訊かず、僕に道具を貸してくれた。僕の研ぎの作業を見守るゴブニュ様。

 

「なぁ、ジム。この件が終わったら、ここに来い。どうかな?」

 

「戻れたらで良いですか?」

 

「ずいぶん弱気だな」

 

「まぁね。戦いたく無い相手…護りたい者を護り切り、相手も無傷にしたいから」

 

「難しい結末だな」

 

そうですね…

 

 

 

---リュー---

 

色々有り、ミアさんが切り盛りしている『豊饒の女主人』で、働き始めた。ギルドのブラックリストに入ったことで、冒険者としての登録は取り消されていた。そのことも有り、衣食住を提供してもらえる、ここで働くことにした。

 

「リュー。シルと出掛けてくる。帰りは少し遅くなるが、無茶な振る舞いはするなよ」

 

と、ミアさんに言われた。シルさんは私の恩人である。倒れていた私を、介抱してくれて、ここで働けるようにしてくれた。でも、倒れる前後の記憶が曖昧であるのだが。誰かに、術を受けて意識を飛ばされた気がする。でも、性的な暴行を受けた様子は無かった。エルフの女性の場合、意識を飛ばされた後は、その手の行為をされることが、殆どなのだが。

 

部屋で、折れ曲がった剣を眺める。今は亡き友人の愛剣…誰がこれを私に届けてくれたのだろうか?あの修羅場から生きて戻れた者がいるってことだ。私は何も出来ず、アストレア様の元に知らせに行くことしか出来無かった。私達を嵌めたヤツラは、私が手を下す前に、誰かが総て始末してくれたようだし。誰が私に手を貸してくれているのか?

 

店舗部分では、ミアさんの留守をいいことに、先輩達が宴会をしているようだ。楽しげな声や歌が聞こえてくる。私はまだそういう場に行ける余裕が無い。反省と後悔で一杯一杯だから…

 

夜の帳が折り始めた頃、急に眠気が襲い掛かってきた。眠り薬系の特有な臭いが…襲撃だ。誰が?何の為に?しかし、行動を取る前に、意識が遠くなっていく。

 

 

 

---ジム---

 

リューが深い眠りについた。リューが倒れた音を聞き、ハンターが部屋に入って来た。

 

「ちょろいニャー。死んでニャ♪」

 

アサシンナイフを取りだし、リューに襲い掛かろうとしたハンターだったが、

 

「はぁ?死ぬのはお前だよ♪」

 

ハンターの後ろから、首を絞め上げる。僕の気配に、まったく気づいていなかったハンターは、驚きの表情を浮かべた。

 

「ほぉ~、メス猫のハンターか。いたぶりがいが有りそうだな♪」

 

手際良く全裸にして、手首と足首を拘束した。

 

「お前は誰ニャー?」

 

得物の刃先を下腹部に当て、アンダーヘアを剃り落としていく。

 

「止めてニャ~。なんでニャー、そんニャ処を…」

 

「ふふふ、誰に頼まれたのかな?うんうん、言わないでいいよ。身体に聞くからさぁ♪」

 

ナイフの峰で、股間の小豆を刺激する。

 

「にゃ~、言うから…止めてニャ~」

 

「だから、言わないでいいよ。ねぇ、乳首を切り落として、血を飲んでいいか?喉が渇いたんだよ」

 

「ダメにゃ~、止めてニャー、言うから…いや、言わしてください」

 

ニャー言葉が崩壊した。余裕が無くなったみたいだな。

 

 

 

----ルノア・ファウスト----

 

依頼達成率ほぼ100%の賞金稼ぎではあったが、この街のターゲット達は強すぎる。何度も危ない目に遭いつつも依頼を達成してきた。でも、もう疲れた。今回の依頼で最後にすると決めたのだ。

 

今回の依頼は、元アストレア・ファミリアで、現在はギルドのブラックリストに入っているリュー・リオンだ。現在は、『豊饒の女主人』でウェイトレスをしている。しかし、最近までLv4の凄腕冒険者だったことを考えても、ギリギリ仕留められるかどうかだ。

 

私の通り名は『黒拳』。拳で相手を倒して来たのだ。拳を使って、リューのいる建物の壁を壊して侵入を試みた。が、クロスカウンターを喰らい、地面に叩き落とされた。

 

「お前は黒拳だな。ここに何の用だ?」

 

殴られた頬が痛い。骨にヒビが入ったみたいだ。コイツ、何者だ?

 

「口がきけない無いのか?」

 

立ち上がり、拳を構える。こんなヤツにやられる訳に行かない。

 

「おいおい、まだやるのか?」

 

相手が話している最中に、殴り掛かる。が、手首を掴まれて、地面に思いっきり投げ落とされた。そして、手際良く、後ろ手に両手首を拘束された。

 

「これで抵抗できないかな♪」

 

上着の上から、胸を揉まれた。ここでヤラれるのか?

 

「誰に依頼された?言わないでもいいよ。身体に訊くからねぇ♪」

 

拷問好きが良く言うセリフだ。最後の仕事で、こんな展開になるとは…

 

「あっ、お客さんが来たわ。拘束を解くから、建物に逃げ込め。いいな」

 

彼が耳元で囁いた。へ?もしかして、私は囮なのか?拘束は解かれたので、言われた通り、建物に逃げ込んだ。彼に勝てる自信は無かったから。

 

 

 

---ジム---

 

手に鉄パイプや剣や銃を持ったヤツラが、暗闇に乗じて現れた。

 

「お前達も雇われか?それとも組織のヤツラか?」

 

僕の問いはスルーのようだ。

 

「おい、疾風と黒猫と黒拳を出せ!」

 

「断る!」

 

「なら、お前も死ね!」

 

僕はすかさず、『ファイヤーストーム』を唱えた。炎の渦が、怪しい一団を飲み込んでいく。こんがりと焼けた肉の香りがする。

 

「で、愚連隊の次はガネーシャ・ファミリアか…シャクティ…」

 

昼間、別れた彼女が目の前に武装して立っている。

 

「ジム…」

 

哀しそうな表情の彼女。

 

「善良を装った商会のガードを引き受けたのか。じゃ、仕事をしろ。僕も受けた願いを叶えるから」

 

睨み合う僕とシャクティ。そんな中、怒号が飛び出した。

 

「おい、ガードなんだから、あの怪しヤツを倒して、裏の仕事を請け負っていた疾風と黒猫と黒拳を、正義の名の下に成敗しろ!」

 

シャクティ達への依頼主のようだ。

 

「ふふふ。ははは」

 

僕は笑い出した。

 

「何が可笑しい?頭がおかしいんだな。おい、早くしろ!」

 

雇い主がシャクティに命令している。

 

「今、僕を倒してって言ったよな。ファミリアの団長を倒すって、どういうことか、わかっているのか?ふふふ♪」

 

「ファミリアの団長だと?」

 

雇い主の表情に焦りが見える。

 

「あぁ、自己紹介がまだでしたね。僕はウラノス・ファミリアの団長のジム・ナイト・クロウです。お見知りおきを♪ガネーシャ・ファミリアと商会はウラノス・ファミリアにケンカを売るってことでいいですか?」

 

「ウラノス?知らないファミリアだな。どうせ、ちんけなファミリアなんだろ?ガネーシャは最大人数を誇るのだよ。お前のようなチンケなファミリアに負ける訳が無いだろう」

 

「そうだね。うんうん、ガネーシャはデカイよね。なら、戦うか?」

 

『メテオ・フォール』を間髪入れずに唱えた。流星が雨のように、彼らの頭上に降り注いでいく。

 

逃げ惑う雇い主とガネーシャ・ファミリアの面々。ミアに怒られるかな。別館の建設予定地である空き地は、クレーターが多数出来上がっていく。

 

「おい、ジム…戦え。私は、ガネーシャ・ファミリアの団長シャクティ・ヴァルマだ」

 

知っている。良く知っている。藍色の髪が美しい女性…

 

「戦う?無理だって。僕には勝てないから、やめておけ」

 

素早く動いて彼女のバックを取り、首にナイフの刃を押し当てた。

 

「ジム…」

 

「でも、僕を殺さないと、シャクティの功績に傷が付く。リューを頼むよ、シャクティ」

 

手にしたナイフをシャクティに握らせて、僕の腹部に突き立てさせた。

 

「えっ…ジム…何をしているの…ねぇ」

 

ナイフから手を離し、僕の顔を見ている彼女。

 

「この街を良くして…僕のような暗部が活躍する街ではダメだよ。シャクティ…」

 

彼女と唇を合わせて…力無く崩れ落ちていく。

 

 

 

---シル---

 

ジムが刺された。この街を騒がせた暗部として…刺したシャクティは、呆然としていた。彼女はジムに寄り添っていた。どうも、ジムはアレを使ったみたいだった。私が着いた時には、顔には血の気がまるで無い。脈が微かに振れる程度だ。

 

「どうして…ねぇ、シャクティ。どうして?」

 

「私の功績に傷が入るからって…そんな事、どうでもいいのに…別に依頼達成率なんか気にしていなかったのに…」

 

シャクティも護る為に選んだ方法。護り切りたい者を護る時に発動するアビリティ。それをここで使ったようだ。リューとシャクティを護る為に。

 

「ジムをウラノス様の元で連れて行くよ。シル、シャクティ、手伝っておくれ」

 

ミアが指示をしてきた。そこに連れて行けば助かるの?アスフィが、荷馬車を持って来た。そこにジムを載せ、私とシャクティが乗り込み、彼の手を握り締める。

 

「アリーゼ…」

 

ジムが呟いた。リューを護り切ったことを、報告しているのだろうか?でも、こんな結末は嫌だよ~。

 

ウラノス様の部屋に、ジムを連れて行くと、ウラノス様の他に、ヘルメス様、ガネーシャ様、ゴブニュ様など、ジムと親交のある神々がいた。

 

「皆で少しずつ力を出し合い、彼に祝福を与える。少しであれば、天界に戻されることも無いからな」

 

と、ウラノス様が言われた。神々は手を差し出し、ジムの身体に向けて、何かを唱えた。次の瞬間、ジムは姿を消した。

 

--------

 

数ヶ月後…ジムは戻って来た。知らせを聞いた私、シャクティ、アスフィは、ウラノス様の元を訪れた。そこにはアストレア様に抱き抱えられたジムがいた。

 

「では、彼をあなた達にお返しします」

 

ジムの身体を静かに床に置いた。

 

「ジムはどこにいたんですか?」

 

私が訊いた。

 

「天界に…天界の医療施設でお預かりしていました。地上の医療では無理でしたから。私は彼に、神殺しという罪を与えました。それは消えません。地上の神々は彼に、殺人と言う罪を与えました。それも消えません。彼には私達、神々が罪を与えすぎました。この世界の者では無いということで…ですから、せめてもの償い…彼に今一度魂を与えました。しかし、罪は消えません。彼には、精神崩壊という罰が与えられています。ですから、あなた達が暖かく見守ってあげてください」

 

アストレア様は光の粒子になり、昇華していった。

 

「精神崩壊って?」

 

私は私によく似た女神に訊いた。

 

「生きたいって気持ちが薄い…自分という精神が壊れている。誰かの為に動いても、自分の為には動かない。そんな感じよ、シル」

 

今までもそうだったけど…違うのかな?

 

-------

 

今までと違っていた。ジムは引きこもりになった。何をしていいかがわからない。頼み事は積極的に引き受け、こなすのだが、自分に対しては何も出来ずにいた。たまに、呼吸すら忘れている時もある。誰かが傍にいないとダメなようだ。異変を感じたら、対処をする介護生活になった。神の与えた罰…生半可な物ではない。元はと言えば、神が招いた事態なのに…

 

「どうする?このままじゃ…」

 

私とアスフィに、シャクティが相談してきた。その頃、主にシャクティが面倒を見ていた。

 

「う~ん…誰かの為に生きるようにすれば良いかな?」

 

と、アスフィ。

 

「誰の為に?」

 

「フレイヤ様は?」

 

「却下!あんな恋多き女神ではダメよ!」

 

私は即答した。

 

「じゃ、何か打ち込める仕事は?」

 

「そういえば、ゴブニュ様がスミスにしたらって…」

 

シャクティが一筋の希望らしき物をもたらした。

 

「誰かの装備を作る。その為には生きないとダメって。う~ん、いいかもしれないわね」

 

アスフィは賛同した。他に案が浮かばない私も賛同して、ジムをゴブニュ様の元へ送り届けた。

 

 

--------

 

「そして、現在に至るみたいな感じよ」

 

「僕の知らない処で、そんなことが遭ったんだ」

 

当事者のジムが一番驚いている。まぁ、あの当時はジムはジムで無くて、精神崩壊したジムだったからね。

 

「今は、護るべき者が増えてきたから、少し安心だよね。って、たまには、私とかアスフィとかシャクティの相手をしなさいよ!」

 

って、ジムに言い寄る。

 

「え?だって、シルにはベルって冒険者がいるんでしょ?アスフィは、隣家だからそれなりだし、シャクティかぁ…逢っていないなぁ…忙しいみたいだし」

 

「ベル君は…別よ」

 

「それって、二股になるんじゃ?」

 

「ならない!ベル君とはそういう関係じゃないし。リューが狙っているし」

 

「えっ?私は…ベルはシルの伴侶になる者と思っているが」

 

リューがとんでもないことを言う。

 

「ふ~ん、そうなんだ。じゃ、僕の関わる隙間は無いよね」

 

「そんなことないよ。うんうん、ジムは特別だよ~」

 

「えっ…ベート…泣いているの?」

 

ジムが不思議そうな顔でベートを見ていた。あっ、本当だ。爆泣じゃないのか?

 

「泣いてない…涙脆いだけだ。お前にはそんな過去が遭ったのか…」

 

ジムの過去に触れ、感動したようだ。

 

「で、シル。ベルって子には素で接しているの?」

 

ジムの言葉で固まった。な、訳が無いだろう!

 

「素で無いの?営業用スマイル?それはダメだよ。素で付き合わないと」

 

「はぁ?お客さんが減るでしょ?ミアが哀しむわよ。ジムもミアに世話になっているんだから、少しは協力しなさいよ」

 

 

 

---ジム---

 

協力って言っても…アイズ達と食べに行けばいいのかな?

 

「で、アリーゼの墓も行く?」

 

リューに確認した。

 

「是非、行きたい」

 

「今日は、ダメだな。連休が取れたら知らせて。18階層で2泊するから3連休をもらってね。シル、協力して」

 

「うん?ジムが頼めば、大丈夫じゃないの?」

 

「え…頼みづらいよ~僕はミアを刺したことが有るんだよ」

 

「問題無い。あぁ、今日寄りなさい。私とリューを送るついでに♪」

 

「へ?」

 

 

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