---ジム---
アイズ達がいないと静かである。そして、ガード対象を匿っているので、シルも無茶をしてこない。本業がはかどる。でも、少し寂しいかな。
なんてことを考えて居ると、シルが駆け込んできた。手には命令指示書が握られていた。それを受け取り、指示書に目を通す。18階にイレギュラーもしくはテロの予言…おい、アイズ達がいるんだぞ。
僕は身支度をする。
「シル、僕のいない間、彼女のガードを頼むよ」
「うん、まかせて!」
装備を装着して、ダンジョンへと向かう。ダンジョンの入り口には、モルドレッド、ルフェイ、ティア、マーリンが待っていた。
「あれ?どうして?」
「一人では行かさない。クロウの行動はモニタリングしている」
って…
「え?アレも?」
夜の営みについて訊いてみた。
「それは、プライベートだし、直視できないし…」
ルフェイ、モルドレッドの顔が赤く染まっていく。
「じゃ、行くか。取り敢えず、3階層だ。そこから一気に18階層に行く」
3階層に向かい、階層のとある場所に立った。魔法で地面を撃ち抜く。ここには18階層へと落ちる穴があるのだ。僕達は、18階層へと落ちていく。
---アイズ---
18階層の宿屋で休んでいると、地響きが突然聞こえて、窓から外を見ると、あの植物系モンスターが大量に発生していた。
「非常事態だ!迎撃しに行くぞ!」
フィンの声がした。それぞれの部屋から武装をした私達が飛び出し、宿の外に集合した。
「なんて、数だ…」
祭りの際の倍以上の巨大モンスターが、街に発生していた。いや、アンデッド系も発生しているようで、住民や冒険者に襲い掛かっている。
「とにかく、敵を殲滅させるんだ。いいな!取り敢えず、レフィーヤとリヴェリアの詠唱時間を稼ぐぞ」
私達は四方へと散った。アンデッド系は、思っていた以上に強い。何だ、この強さは?私が押されている…私が弾き飛ばされている。岩山に身体を打ち付けた。身体中が痛い…骨がやられたようだ。ここまでか…ジム…ごめん…帰れないや…
私に迫ってくるアンデッド軍団。しかし、
『ファイヤーストーム』
ワンワード詠唱により、アンデッド軍団が燃えていく。この詠唱って…
「アイズ、大丈夫か?」
彼が来てくれた。
「ルフェイ、アイズを回復してくれ」
「了解です♪」
暖かな光に包まれていく。痛みが徐々に消えていき、身体が動かせる。まだ、行ける!
「ふ~ん…なるほどねぇ。ダンジョンで朽ちた冒険者をアンデッド利用か。強い訳だ」
相手の正体を看破したジム。
「意志のあるアンデッドか…厄介だな。マーリン、聖呪文だ」
「了解!」
まばゆい光に包まれるとアンデッド達は灰になっていく。
『我が剣よ、ここに』
ジムがワンフレーズ呪文?珍しい…呪文の詠唱が終わると、彼の手に大剣が握られた。その剣でアンデッドを切り裂いていくと灰になっていく。聖属性の剣…聖剣のようだ。
「アイズにダメージを負わした罪はデカイ。浄化してやる。悔いろよ!」
ジムの顔付きがいつもと違う。笑顔なんだけど、どこか冷たく、恐い感じだ。
「アイズ、植物を頼む。アンデッドはこっちでヤル!」
「わかりました」
動けるようになった私は、レフィーヤ達の方へと向かった。
---リヴェリア---
敵が魔法に反応する為、詠唱が続かない。その上、炎系も氷系も効きにくい。耐性が付いたのか?厄介過ぎる。レフィーヤの天使の矢で倒せるが、効率が悪い。
『エアリアル』
アイズの声がした。囮になってくれたようで、ちょこまかと移動している。この隙に詠唱をしないとな。
『地系統を唱えろ!』
突然、脳裏にジムの声が響いた、言われるまま、詠唱をし始めた。そして、地面を隆起させる魔法を発動すると、
「アイズ、フィン、ティオナ、モルドレッド、根っこを斬れ!」
ジムの声が響いた。ペンダントヘッドからだ。これって、会話用魔法陣のアイテムなのか?
「ジム!」
「リヴェ、アンデッドを殲滅したら行く。それまで耐えろ!」
「うん♪」
彼の心強い声で、更に戦意が増していく私達。
「レフィーヤ、ベート、術者を探せ!」
彼から指示が飛ぶ。二人とも周囲を見回し、怪しい人物がいないかを確認する。
---ジム---
あぁ、キリが無い…次々に地面から産まれ出るアンデッド達。どうするよ、これって。
「マーリン、何か手は無いか?」
「術者を消す以外に無い」
大規模な索敵魔法を発動した。うん?このフロアにいないのか?反応が無い…
「クロウ、このフロアにいないのか…まずいな。魔力は無限じゃない」
「わかった。マーリン、ルフェイ、後は頼む♪」
「うん?頼むって…ダメだよ、それは使っちゃ~」
ルフェイが抱きついて来た。
「他に手はあるか?」
彼女に訊いた。
「…」
「ティア、術師を頼む。ルフェイ、大丈夫だよ。呼び戻してくれ。頼むよ♪」
僕は奥の手を使う。使えば使うほど、自分が壊れるかもしれないけど、みんなが大事だし。壊れ慣れているし。
『術師の居場所を知りたい』『みんなの無事生還を願う』『この身がどうなろうとかまわない。だから…』
脳裏に浮かんだ座標をティアに送る。身体が光の粒子に分解されていく。再び戻れる確証は無い。でも…後悔は無い…さ。
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闇の中にいる。光はまるで無い世界。音無い、風も無い、温度が感じられない。闇の中に浮いている。ここがどこだか、詮索する気も無い。ここで無限の時間を過ごせば良いのか?孤独を味わいながら。今までの行いを悔い改めて…
考える時間は一杯あった。反省する時間も一杯あった。懐かしむ記憶はまるで無い。凄惨な記憶しかない。僕は破壊者のようだった。殺戮者のようだった。
死が僕を包み、周囲の者へと伝搬していく。死神なのだろうか。冥府の死神達が、僕から逃げていく。灰になっていく死神達。死神仲間では無いのか?
僕は傲慢な存在…大罪者…地獄の業火に身を投じる。しかし、不燃だったのか、業火の方が鎮火していく。どうすれば、罪を購えるのだろうか。
神はどこにいる?神を探す。神に裁いてもらおう。天上界へと向かう…が、逃げ惑う神々。四肢をバラバラにされ、息絶えていく神々。どうして、僕を裁いてくれないのか。
一人の少女が現れた。金髪の幼子…彼女は僕に抱きつき、僕の顔を見上げている。
「ねぇ、私の英雄さんだよね?やっと逢えた…一緒に帰ろうよ~。一人にしないで…」
僕の手を引き、どこかへと僕を誘う彼女。どこへ行くのだろうか。僕はどうすれば良いのだろうか。答えはどこにあるのだろうか。
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「ねぇ、ジム…起きてよ~。一人にしないで…」
誰かが僕に抱きついている。ここはどこだ?金髪の少女の頭を撫でて、手ぐしで髪の毛を整えてあげる。こんな感触だったよな。
「ジム…ねぇ、ジム…」
激しく揺り動かされる。
「最後の手段は、お姫様のキスだな」
誰かの声が聞こえる。
「お姫様?ここにいたか?そんな高貴な者って?」
相談している声が聞こえる。
「いや、いる…剣姫がいるじゃないか…」
「あぁ…」
「アイズ、キスをしてみろよ。他に手が浮かばない」
「うん、やってみる」
僕の唇に、潤った唇が重なる。乾ききった僕の口の中に、潤った舌が入って来て、口の中に潤いを与えてくれている。彼女の唾液…乾ききった喉に流し込まれていく。彼女の息づかい…萎んでいた肺に送り込まれて、徐々に機能が戻っていく。彼女の涙が、僕の乾ききった頬を潤してくれた。
彼女の心拍が、停止していた僕の心臓に動きを伝搬してくれた…
「脈も呼吸も微かに有る。ルフィ、回復魔法だ」
「了解です♪」
暖かいオーラに包まれていく。僕と彼女。
「ジム…お帰り…」
彼女の声が心を震わす。魂が震える。
『生きろよ、俺達の分も…』
どこからか声がした。生きていいの?
『お前の負った罪…お前が原因では無い…背負わせてすまない…』
罪を償わなくていいの?
『一度位、自分の為に生きろ』
自分の為?どうして?自分の為に生きるの?
『すまない…』
なんで、謝るの…みんな…
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意識が戻ると、自分の部屋のベッドの上にいた。アイズとシルが添い寝をしている。どんな組み合わせだ?僕の手をリューとフィルヴィルが握り締めている。これもよく分からない組み合わせだな。
なんで、みんな全裸なんだ?はて?
「あぁ、目覚めたのか、ジム♪」
僕のアレを、体内に包み込んでいるリヴェリアが、声を掛けて来た。
「これって、どういう状況?なんで、ここにいるの?僕…無間地獄にいたはずなんだけど…」
「ジム…おかえり…」
アイズとシルが、僕の頬に、自分達の頬を合わせてきた。リューとフィルヴィルは、僕の手の平を自分達の左胸に当てた。
「まぁ、気にするな。思い出す事もない。ジム、お前は生きている。それだけが大切な事だからな」
リヴェリアがよく分からないことを言う。ここは天国なのか?僕はみんなを救えなかったのか?
「お前はお前で良いんだ、ジム。しばらく休め」
僕は僕だよな。うん?何が遭ったんだ?ダンジョン内での記憶が想い出せない…なんでだ?
---ヘルメス---
ジムが意識を取り戻したようだ。一安心かな?一時しのぎではあるけど。次辺りは無いかもしれない。
「神々はどうして、彼にアレコレと背負わせたんだ?」
大魔導師マーリンの言葉は重い。
「神がそんな振る舞いだから、彼は神を止めたんだぞ」
耳が痛い。神はわがままな生き物だ。
「もう人で居られるレベルで無い」
「そうなるとどうなるんだ?」
「封印が解けるかな。彼的には良い事だろう。すべての能力が戻るのだから。でも、みんなとはもう生きられない。地上では、彼は畏怖なる者だから」
人間として背負える罪の量を超えたそうだ。人間としての精神が壊れれば、人間としてやっていけないらしい。
「罪を軽くする手立てを、見つけないとダメだな」
大魔導師と言えども、その手立てが無いらしい。これ以上は、神々の領分になるそうだ。
「いや、手立てはある」
ルフェイが口を挟んだ。
「クロウと共に居る者達に、罪を背負って貰うんだ。ただ、クロウが納得しないだろうな」
確かに、話ではジムにはバカデカイ神の魂が宿っている。それを使えば…
「クロウがクロウ自身の為に生きることが出来れば…解放されると思うけど…」
ジムの場合、難しいだろうな。精神の崩壊により、自分の為に生きることが出来無くなっている。う~ん、堂々巡りだな。
---ジム---
シルがとっても優しい。これは何かの罠か?恐い…
「ジム、今日はどうする?何、怖がっているのよ~」
恐いでしょ?頭頂部に痛みが甦ってくる。
「しばらく遠征は無い。ジムの傍にいるから」
って、アイズ。
「どうして無いの?」
「イレギュラーの原因を調べているから」
あぁ、ダンジョンで何か遭ったんだね。
「なんで、フィルヴィルがいるの?」
「ここに住んでいるから…忘れたの?」
う~ん…想い出せない…住んでいたっけ?
「まだ、記憶が朦朧なのか?」
リューに訊かれた。
「そうだね。想い出せない事が多い…僕に何が遭ったんだ?」
「無理に想い出さないでいい」
って、リヴェリア。
「あれ?リヴェ、休みなの?」
「アイズが言っていただろ?大丈夫か?」
あぁ、なんか言っていたな…なんだっけ?
「あれ?金髪の女の子は?」
みんな不審な顔をしている。確か、ここに連れてきてくれたんだけど…
「どんな女の子?」
アイズが顔強張らせて訊いた来た。
「そうだね。僕より遥に小さい女の子。う~ん、アイズを小さくした感じかな?やっと逢えた、一緒に帰ろ~って、ここに連れてきてくれた…そんな気がする」
「そうなんだ…」
アイズの顔が明るくなって、僕に抱きついた。
「私の英雄さん…一人にしないで…お願い…」
シルも負けずに僕に抱きつき、
「私の王子様…いなくならないで…お願い…」
「うん?僕は英雄でも無いよ、王子でも無いよ。単なるスミスだし…」
「気にするな。思いは皆それぞれだ。私のダーリン…」
そういうと耳を真っ赤にしたリヴェリア。ダーリンって…
「私にとって、ご主人様です」
って、リュー…彼女も耳を真っ赤にしている。
「私にとっては何になってくださいますか?」
フィルヴィルが耳を真っ赤にして訊いてきた。
「何がいいの?って、ケダモノなんでしょ?」
「いえ、それは忘れて下さい」
顔まで真っ赤にして俯いたフィルヴィル。どんな心境の変化なんだ?
「とにかく、当分の間は部屋から出るな。記憶が曖昧だと、徘徊されても困るからな」
って、リヴェリア。徘徊…そうだな、それは迷子になりそうだな。うん?食欲を刺激する香ばしい香りがしてしてきた。あれは…
「ジム、焼きもろこし持ってきたわよ♪」
シャクティが僕の大好物を持って来てくれた。香りだけで、口の中は唾液の洪水である。
「消化悪く無いか、それって…」
リヴェリアが口を出してきた。
「うん、悪いわよ。でも、ジムの食欲を出させる為…」
って、一粒ずつ、口に入れられた。丸かじりがいいのに…
「よく噛んで食べなさいね♪」
って、シル。食べた気がしないんですけど…