※この作品はR-18です。

ラスボスになりたい~   作:もっち~!

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過去の清算

 

---ジム---

 

夢を見た…それは現実に経験した事なのか、願望なのか、妄想であったのか、定かでは無いが、夢を見た。

 

あの金髪の女の子が、僕に泣いて縋っている。

 

「ねぇ、行かないで…一人にしないで…」

 

僕達の前から、彼女の母親らしき女性が、英雄と呼ばれている男と去って行く。

 

「あなたも、あなただけの英雄を見つけなさい」

 

女性は女の子に笑顔で語りかけて…

 

「私だけの英雄になってください」

 

目を腫らし、尚も涙を流す女の子が、僕の顔を見上げて、僕に言う。

 

「僕は英雄になれない…大罪者だから…それに、生きている英雄は有り得ない。英雄って、死んだ後に付けられる称号なんだよ。その人の生き様に対しての、誉め言葉みたいな物さ」

 

子供には難しい話だったようで、理解していないようだった。

 

「私の英雄…ねぇ、お願い…お願いします」

 

女の子は僕に縋り付いてくる。

 

「で、クロウはどうするんだ?」

 

知り合いの神が訊いてきた。

 

「え?だって、アイツは飛べないだろ?どうやって黒い龍を倒すんだ?」

 

「地面に降り立った時では?」

 

「飛んでいる限り無敵なんだよ。わざわざ、なんで殺されに降りるんだ?」

 

「あっ…まさかな…」

 

「それしか無いだろ?彼女の風の力で、あの黒いヤツを叩き落とすんだろうな」

 

「それで…」

 

女の子を一瞥した神。

 

「なぁ、僕の骨を拾ってくれるか?」

 

女の子の目の高さになるように、僕は屈んで彼女に話しかけた。

 

「死なないで…帰って来て…」

 

「大丈夫、僕は死なない…ただ、同じ時に留まれないだけだ。神の呪いのせいでね」

 

女の子の柔らかい髪を手ぐしで整えてあげる。

 

「だから、僕の骨を拾って待っていてくれ…いつか帰れれば帰るから」

 

彼女の額に、別れの口づけをした。

 

-------

 

場面が変わる。貧民街にいる僕…泣いている女の子が目に入る。

 

「どうしたの?迷子かな?」

 

「うん…」

 

迷子らしい。こんな迷路みたいな街じゃ、迷子にもなるよな。女の子を抱き上げて、頬を寄せた。僕の行動にビクッとした彼女。

 

「泣き止んだね。う~ん、何か覚えていることってある?」

 

彼女の記憶を頼りに、彼女の家を探す。そして、孤児院を見つけた。そこで聞いた話では、彼女は実の両親を知らないそうだ。

 

「ねぇ、私の家族になってくれませんか?」

 

僕の服の裾を掴んだまま、彼女がそう言った。

 

「家族?それは何?」

 

僕の目を見つめて固まる彼女。

 

「家族いないんですね…私と同じ…」

 

呟くように言い、僕に縋り付いた。

 

「私が家族になります。だから、家族にしてください」

 

っと。

 

「いいよ。僕で良ければ。家族ってよくわからないけど、いいよ。なってあげる」

 

彼女の頭を優しく撫でてあげる。

 

 

-------

 

そして、現実…目が覚めると、アイズとシルが添い寝をしている。で、フィルヴィルが何故か、僕の上に載っている…状況が見えない。

 

「あっ、おはようございます」

 

って、フィルヴィル。

 

「状況が見えないんだけど…」

 

彼女に訊いた。両サイドに眠るお嬢様方は、目覚める気配が無いし。何故か、僕の中指は、お嬢様方の体内にいるし、僕の親指は敏感なお豆ちゃんに触れている。

 

「状況?う~ん…成り行きかな?」

 

成り行き?そこまでのいきさつが知りたいんだけど…なんで、毎朝こうなるんだ?

 

「なんで、私の耳を避けるのかなって…」

 

頬を赤らめて言うフィルヴィル。

 

「エルフの女性は恐い!それでだ」

 

明確な理由を述べた。

 

「恐い?それって耳を避ける理由ですか?」

 

「頼む、耳を近づけないでくれ!」

 

「ねぇ、言った通りでしょ?」

 

って、レフィーヤの声。どこにいるんだ?僕の視野にいないんだが。それはそれで恐いんですけど。

 

「師匠は、弟子の私の耳にすら触ってくれないんだから」

 

弟子だとは思うが、師匠になった覚えは無い。

 

「う~ん、重症だな。よっぽど恐い思いをしたようだ」

 

「リヴェリアさんのせいですよ、きっと」

 

「うん?彼女はエルフで無くてハイエルフじゃないのか?」

 

「あっ、そうですね♪師匠、ハイエルフは恐いけど、エルフは恐く無いですよ~」

 

急に顔を出し、いきなり顔が近いレフィーヤ。

 

「レフィーヤもフィルヴィルもかわいいと思う。だけど、エルフの耳はダメだぁぁぁ!」

 

トラウマレベルだと思うけど…

 

「それって、差別発言では無いのか?」

 

フィルヴィルが真顔で迫ってくる。

 

「差別では無く…恐いんだって…カンベンしてください…」

 

「何をされたんですか?」

 

顔が近い…マズイ、逃げなきゃ…って、両手はお嬢様方の身体の下にある。僕は全裸の女性達により、拘束状態であった。

 

「僕の手を使って、自分の耳を…」

 

「あぁ…道具にされたんですね~」

 

そうかもしれない…

 

「その後、僕が果てても…なんでエルフはタフで、テクニックが豊富なんだ?」

 

「それはハイエルフだからですよ。エルフはそこまで大胆では無い…はずです。まだ未経験なので断言は出来ませんけど」

 

レフィーヤが恥ずかしそうに言う。

 

「リューだって、もう粉しか出ない状況の僕に迫るんだよ。耳を舐めてって…」

 

あぁ、涙が出て来た。

 

「あぁ、それは手だな。ねぇ、耳を舐めてください」

 

って、フィルヴィルが僕の口元に耳を近づけてきた。舌を出そうものなら、舐めてしまう距離だ。

 

「あっ、フィルヴィルさん、ズルいですよ~」

 

ドアが開いた音がした。助かったのか?

 

「おい、お前ら!今日は私の日だ。そこをどけ!」

 

威厳有るハイエルフ様の声が、部屋に響いた。

 

「リヴェリアさん…」

 

怯えたようなレフィーヤの声。あぁ、今日はファミリアの休日か…

 

「フィルヴィル、退いてくれないか?契約をしていない、お前は交わることが出来無いのだからな!」

 

悔しそうな表情のフィルヴィルが僕から退く。そして、いつ脱衣したんだか分からない全裸のリヴェリアが僕と交わる。

 

「ジム…久しぶり~♪」

 

威厳の有る声は、甘えた声になっていた。レフィーヤとフィルヴィルは、僕がリヴェリアにおかされる様子を見ている。それよりも、両サイドのお嬢様方が起きない。どんな状況だ?夢かな?夢なら醒めてぇぇぇぇ~一晩で三名は無理だと思います。

 

 

そして、リヴェリアが果てる頃、

 

「あっ、おはよう…ジム…ぁぁ、だるいけど、朝練に行かないと…」

 

アイズが起きて、シャワーを浴びに行く。リヴェリアは僕の上で余韻に浸っている。アイズがいなくなり、フリーになった僕の手はフィルヴィルの手に…マジか?やめてぇぇぇぇ~!アイズの体重により、痺れている僕の手は、僕の意志で制御できずにいた。

 

僕の指を自分達の耳に這わす、小悪魔なエルフ二人。目付きが徐々に妖しくなっていく。

 

「なるほど…身体の芯から熱い…これが淫乱堕ちってヤツなのか?」

 

「そうですね。無性に師匠に触れたいです」

 

勝手に淫乱化しているエルフ達。フィルヴィルは余韻に浸っているリヴェリアを退かして、僕の上を陣取り、レフィーヤはアイズのいた位置に収まった。

 

「体内にジムが…蕩けるようだよ…今まで損をしていた気分だ」

 

僕の上で跳ね始めたフィルヴィル。

 

「師匠の指…気持ちいいです。はぁ…はぁ…」

 

レフィーヤは腕を胸の谷間に埋め、指先を体内に取り込み、小刻みに震えている。だから、エルフの耳は恐い。抑制していた物を一気に吐き出すそんな感じだ。達したフィルヴィルは僕の唇の堪能し、レフィーヤは僕の耳を堪能している。何の拷問だ、これって…

 

今日も朝から、体力キレだな…はぁ~。更にドアが開く音がした。新敵か?

 

「ジム♪おはよう~」

 

とっても元気な声のティオナ。

 

「ジム…私も堪能してくださいね」

 

って、僕の装備の仲間はずれだったティオネまでが参戦してきた。彼女達は、余韻モードに入ったエルフを退かして、自分達のスペースを作り…既に粉すら出ないんじゃないかな…このアマゾネス達は、テクニックよりパワー重視だし…

 

 

------

 

午後、ヘルメスとアスフィが、お見舞いに来てくれた。

 

「どうだ?」

 

「動けないって、つらいです。みんなの玩具状態と言うか…」

 

今朝の惨状を伝えた。アスフィの顔色は赤い。

 

「それは、災難だったなぁ、ジム。でも、普通は喜ぶことだと思うけどな」

 

「何で?」

 

「だって、相手が剣姫と看板娘はデフォルトで、ハイエルフ1名とエルフ2名にアマゾネスが2名だろ?お金払っても、そういう状況にはなれないぞ♪」

 

「ヘルメス様、不謹慎です!」

 

アスフィが、ヘルメスに注意を促す。

 

「うん?アスフィもしたかったのかな?」

 

「そんなことは無いです!」

 

主神に何かの怒りをぶつけるアスフィ。

 

「あぁ、して欲しい方かな?」

 

「いや…そんな…はしたないことは…してくれたら嬉しいけど…って、何を言わせるんですか?」

 

ヘルメスに言い当てられた怒りをぶつけるアスフィ。

 

「元気そうでいいな、アスフィ。また、一緒に潜ろうよ。カドモスの泉の件でさぁ」

 

「うん♪約束だよ、ジム」

 

「で、アレはどうなったんだ、ヘルメス」

 

「あぁ、アレか…見つけられなかった。違うフロアにいる術師なんか、見つけようがない。ジムの仲間が着いた頃には、既にいなかったそうだ」

 

「そうか…あの方法じゃない対処方法を見つけないとダメだな」

 

「そうなる。後なぁ…もう…限界らしいぞ。お前の器…」

 

ヘルメスが哀しそうに言う。再降臨のしすぎで器が限界なのか。器が壊れたら…もう、傍にいてやれないだろうな。

 

「アスフィに頼んで、器を保たせる方法を考えてもらっているが…」

 

アスフィも哀しそうだ。ダメなんだろう。人が手を出して良い領域は限られているから。

 

「まぁ、最悪…高い処からみんなを見守るさぁ…元々いた場所から…」

 

「ジム…行かないで…」

 

アスフィが僕に縋りついた。僕の為に涙を…だけどね。

 

「次くらいでダメかな?」

 

ヘルメスに訊いた。頷く、僕の兄貴分…

 

「そうか…」

 

「なぁ…手は有るんだが…」

 

「仲間を見捨てろってこと?出来無いよ。そんなこと…僕の為に、仲間を見捨てることは出来無い」

 

「そうか…知っていたんだな」

 

そんな哀しそうな目をしないでくれ、ヘルメスよ。

 

「たぶん、ガントレットに宿る、アイツを解放すれば、大丈夫だと思うけど…アイツ、器無いんだぞ。解放したら、消えるんだぞ!僕の為に、僕が生き残る為に…そんなことは出来無い」

 

「そうだ、器…器を作れば良いのよね、ジム!」

 

アスフィが提案してきた。それはそうだけど…あぁ、アイツの身体を創造すれば良いのか…

 

「神の器か…どんだけ、魔力がいるんだ?」

 

「いや、たぶん、その行為は悪行が加算されるぞ」

 

って、いつの間にか現れていたマーリンが答えた。

 

「加算されるのは慣れている」

 

「う~む…やってみるか?」

 

「やれる手は総てやろう、マーリン♪」

 

-------

 

その日の夜、ヘルメスのホームの隣にある僕の家に、僕、マーリン、ルフェイ、ヴィヴィアン、ヘルメス、リヴェリア、レフィーヤ、リュー、フィルヴィルが集まった。魔力に耐性がある者だけで、アイズとシルは来たがったが、危険なので断った。

 

床にマーリンとルフェイと僕とで、魔法陣を描いていく。

 

「その魔法陣は何だ?」

 

リヴェリアが質問をしてきた。

 

「創造系の魔法陣だよ。神を創造するんだ。呪文程度では無理だからね」

 

彼女の質問に答えた。

 

「じゃ、魔法陣に描かれている六芒星の頂点部分に、ヘルメス、ヴィヴィアン、リヴェリア、レフィーヤ、リュー、フィルヴィルが立ってね」

 

神、精霊、ハイエルフ、エルフであれば、問題無いはず。同じ系統の種族であるから。

 

「マーリン、ルフェイ、呪文はわかっているかな?」

 

頷く二人。

 

「じゃ、始めようか」

 

禁術系の呪文を三人で唱え始める。禁術系には2種類ある。禁断な魔術と禁忌な魔術。禁断な方は人がやってはいけない術、禁忌な方は人が絶対にやってはいけない術である。マーリンには禁断な領域までをサポートしてもらい、禁忌な領域は、人では無いハーフ悪魔のルフェイと僕とで執り行う。

 

「出でよ、神なる器よ…時空を超え、この地へと現れよ!」

 

あの時の状態の彼らの身体が、時空を超え転移してきた。その身体に対し、一斉に回復呪文をぶち込む。六芒星に立ちし彼らは、トランス状態にあり、僕の指示通りにに魔法を行使してくれた。

 

『クロウ…すまない…こんな悪行を積ませて…』

 

ガントレットに宿っていた神の魂は、自らの身体に戻っていく。それを皮切りに、ドラゴン2体、魔王、天使長も次々と戻っていく。

 

『お前に掛かっている封印を解く。今までの悪行はチャラにしてやる。友よ♪』

 

『俺達は離れても、いつでも一緒だ。困ったら助けに来るぞ』

 

『邪神のレッテルは剥がれない。でもメッキでは無いから、自信を持てよ』

 

『最期の時まで、お前はお前の為に生きろ。それが人生だぞ』

 

術の行使は終わった。トランス状態だった彼らは、その場に崩れるようにして倒れた。あれ?さっき妙な事を言ったヤツがいたけど…

 

「なぁ、ヴィシュヌ。お前、さっき妙な事言わなかったか?」

 

生き返った神に訊いた。

 

「うん?何の話だ?」

 

「僕に掛かっている封印って言ってなかったか?呪いで無くて…」

 

「うん?あれ…あっ…あぁぁぁぁぁ~!」

 

頭を抱えて蹲る神ヴィシュヌ。

 

「呪いは解けていない…」

 

ダメじゃん…何も解決していない。この世に、いやこの時代に居ちゃいけない者達が甦っただけな気がする。

 

「呪いを解く為の儀式だったんだけど…」

 

「まぁ、器の負担は減ったはずだが」

 

って、魔王ルシファー。

 

「その分、強度も減ったぞ」

 

「あっ…そうだな」

 

コイツも頭を抱えて蹲る。

 

「生き返った者で呪いを解く儀式をすれば良い」

 

と、天使長ミカエル。

 

「生き返ったのは5名…六芒星なんだけど…一人足り無くないか?」

 

「ですね…」

 

マーリンとルフェイも限界だし。再度の儀式は無理だな。

 

「ブラフマーが身体を創って、乗り換えればどうかな?」

 

ヴィシュヌが僕の本名で呼び、提案をしてきた。

 

「それだと、結果は変わらない。僕はもう彼らの傍に居られない」

 

「だな…すまん…忘れてくれ…」

 

結局、何も解決しないのか…僕は、彼らの傍にいたいのに…彼らの為に行動することは、一緒に居られなくなるという二律背反は変わらない。

 

「どうすれば良かったんだ?なぁ、ヴィシュヌ」

 

「お前が優しすぎたんだ、ブラフマーよ。もっとクールでいれば良かったんだ。末端な者にまで気を配りすぎだったんだ。お前の悪いクセだな」

 

結局、僕の行いのせいなのか。

 

 

-------

 

翌日、僕一人で、ヘルメスの元を訪れた。参加してくれた者達は、魔力を使い果たし、僕達のホームで休んでいる。

 

「で、どうだ?回避できたかな?」

 

嬉しそうに言うヘルメス。

 

「ダメだった…また、違う手を考えるよ、ヘルメス」

 

「なんで、ダメなんだ?」

 

僕の答えが意に反していたのか、僕に詰め寄る。

 

「負担は減ったが、強度も減った。同じなんだよ。救いは僕の能力が戻ったことで、最悪なのは、次は確実にみんなの傍に居られなくなる」

 

言葉が出ないのか、ヘルメスが固まった。いや、徐々に彼の表情は哀しそうになっていった。

 

「そんな顔は君には似合わないよ、ヘルメス。大丈夫だ。消える時には、僕に対する記憶も消えるはずだから。苦痛は伴わないはずだ」

 

ガッシャン!

 

何かが落下して割れる音がした。音のした方へ振り返るとアスフィがいた。お盆に載せたマグカップをお盆ごと落としたようだった。

 

「消えないで…ねぇ、ジム…」

 

僕に走り寄り、泣きすがってくれたアスフィ。

 

「すぐには消えない。依頼された件は、やり遂げてから消えたい」

 

「そんなことはいいの!ねぇ、消えないで…ずっと、傍にいてくれるって言ったでしょ!」

 

「消えるまで、傍にいたい。アスフィ…アイズ…シル…シャクティ…ヘルメス…みんなの傍にいたい。いつまでも…いつまでもね。まぁ、消えないように、手立ては考える。能力は戻ったみたいだし。あがいてみるから」

 

アスフィと唇を重ねる。このまま、永遠に時間が過ぎて欲しい気もするが。

 

「じゃ、またな。アスフィ、ヘルメス」

 

僕は彼らのホームを後にした。

 

-------

 

ホームの中庭では、モルドレッドとアイズが手合わせをしていた。その様子をしばらく見ている。いや、見ながら考え事をしている。どうすれば、退避できるんだ?う~ん…

 

「ねぇ、こんな場所で寝たらダメだよ」

 

アイズに起こされた。あぁ、寝ていたんだね。答えのまるで見えない考え事って、眠くなるのか。何の気無しに、アイズの髪の毛を手ぐしで整えてあげる。

 

「え…この感触…まさか…」

 

瞳を潤したアイズが、僕を見つめる。何に気が付いたのかな?

 

「私の英雄さん?」

 

ぼそっと呟いた彼女。

 

「僕は英雄では無い。何も偉業を為していない。悪行ばかり積んでいる」

 

いきなり、号泣したアイズが、僕に抱きついてきた。何で?何か、マズイ事を言ったかな?いや、地雷を踏んだ可能性もある。頭を撫でてあげる。遠い昔、あの女の子達にしてあげたように。徐々に泣き止むアイズ。

 

「帰ってきてくれたんだね…ありがとう…気づかないで、ごめんなさい」

 

また、号泣して抱きつくアイズ。何だ?う~ん…

 

「何やらかしたの?」

 

気配をまったく感じさせずに、シルが隣にいた。

 

「何か地雷を踏んだのかもしれない」

 

「剣姫を泣かすって、よっぽどな事をしたのね」

 

「そうだな」

 

シルの頭を撫でた。何の気無しに…急に、シルの表情が変化した。

 

「どうした?シル…撫で慣れていないから、痛かったか?」

 

シルは僕の顔をマジマジと見つめた。徐々に表情は崩れていき、彼女もまた、僕に号泣しながら抱きついて来た。マズイだろ?この街を代表する女性2名に、号泣しての抱き付きって…何が原因なんだ?

 

「何をやっているんだい!」

 

ミアがノシノシと近づいて来た。

 

「わからない…地雷を踏んだようだよ、ミア」

 

「地雷?何のだ?尋常じゃないぞ、その二人の泣き方は。ジム、何をやらかしたんだ?言ってみな」

 

ミアが鬼の形相で睨んできた。

 

「って、言われても…本当にわからないんだよ」

 

ギャラリーが集まってきそうだ。逃げたい。でも、二人に力一杯抱きつかれて、動けないでいる。

 

「まったく、記憶力が無さ過ぎだろ?まぁ、いいや。泣き止むまで、そこにいろ」

 

ミアは店へと帰っていった。

 

--------

 

能力が戻ったことを思い出した僕は、二人ごと家に転移した。ここなら、ギャラリーはいないので安心である。

 

泣き止むのを待っていたのだが、二人とも泣き付かれて寝ていた。なんてこった。理由が訊けないじゃないか。起こすのは可哀想だし。あの女の子達にしていたように、彼女達を膝枕に寝かし付けた。女難の相でもあるのかな?ふと、そんな想いが湧き上がる。

 

そういえば、あの女の子達は元気かな?二人共最後まで一緒にいてあげられなかった。時の迷路の呪い…僕は時空を彷徨っていたから。彼女達がいた時代に戻る能力は無いし。う~ん。二人共泣き虫だったよな。英雄になってくださいとか、家族になってくださいとか、その当時の僕には意味が分からなかったけど。今なら多少は力に成れるかな?

 

名前を知らない二人の女の子。気になってしょうが無い。どうにも成らないんだけど…生き延びたかな?幸せになったのかな?二人の行く末を考えていると、涙が溢れてきた。何でかな?探してみるかな…気になるし。って、この時代、この世界にいるのかもわからないけど…また、答えの出ない考え事をして、睡魔に飲み込まれて行った。

 

-------

 

目覚めると、アイズとシルの頭は、僕の腿ではなく、肩に載っていた。何で?動けないんですけど…少し動いた為か、二人共目を醒ましてしまった。ごめんなさい。

 

「「おはようございます♪」」

 

ステレオな朝の挨拶と共に、両頬に柔らかい唇が…気持ちいいし、新鮮だ♪

 

「どうしたの?今日はずいぶんと、ご丁寧な…」

 

「昔を思い出して…」

 

「懐かしくなってね」

 

二人は異句同意な言葉を言ってきた。シンクロ?

 

「こんなに近くにいてくれたのに」

 

「気づかなかったよ」

 

う~ん、どんでん返しで、拳骨が飛んでくるのか?少し警戒をする僕。あぁ、そうだ。二人に相談してみるかな。

 

「探したい人、いや探したい女の子がいるんだけど、協力してくれるかな?」

 

怪訝な顔をする二人。スルーして、話を続ける。

 

「昔、出逢った女の子達なんだけど、なんか懐かしくなっちゃってさ。問題はこの時代にいるのか、この世界にいるのかが不明なんだよ。どうすれば良いかな?」

 

「どんな女の子ですか?」

 

アイズがきょとんとしている。

 

「う~ん、一人は金髪で柔らかい髪の女の子なんだ。僕に英雄になってくれって言うんだけど、僕って大罪者だからダメだって言ったんだよ…で、もう一人は貧民街で知り合った女の子。家族になってくれって言われたけど、養護施設にいてね。僕の身分では引き取れなかったんだよ」

 

また、二人が号泣して抱きついて来た。また、地雷を踏んだのか…何が地雷だったんだ?

 

「ありがとう…引き取ろうとしてくれたんだ…」

 

えっ?まさか…

 

「私だけの英雄です。大罪者とか関係無いんですよ」

 

おいおい…本当に?

 

 

 

探し人は目の前にいた…

 

 

 

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