---ジム---
夢を見た…それは現実に経験した事なのか、願望なのか、妄想であったのか、定かでは無いが、夢を見た。
あの金髪の女の子が、僕に泣いて縋っている。
「ねぇ、行かないで…一人にしないで…」
僕達の前から、彼女の母親らしき女性が、英雄と呼ばれている男と去って行く。
「あなたも、あなただけの英雄を見つけなさい」
女性は女の子に笑顔で語りかけて…
「私だけの英雄になってください」
目を腫らし、尚も涙を流す女の子が、僕の顔を見上げて、僕に言う。
「僕は英雄になれない…大罪者だから…それに、生きている英雄は有り得ない。英雄って、死んだ後に付けられる称号なんだよ。その人の生き様に対しての、誉め言葉みたいな物さ」
子供には難しい話だったようで、理解していないようだった。
「私の英雄…ねぇ、お願い…お願いします」
女の子は僕に縋り付いてくる。
「で、クロウはどうするんだ?」
知り合いの神が訊いてきた。
「え?だって、アイツは飛べないだろ?どうやって黒い龍を倒すんだ?」
「地面に降り立った時では?」
「飛んでいる限り無敵なんだよ。わざわざ、なんで殺されに降りるんだ?」
「あっ…まさかな…」
「それしか無いだろ?彼女の風の力で、あの黒いヤツを叩き落とすんだろうな」
「それで…」
女の子を一瞥した神。
「なぁ、僕の骨を拾ってくれるか?」
女の子の目の高さになるように、僕は屈んで彼女に話しかけた。
「死なないで…帰って来て…」
「大丈夫、僕は死なない…ただ、同じ時に留まれないだけだ。神の呪いのせいでね」
女の子の柔らかい髪を手ぐしで整えてあげる。
「だから、僕の骨を拾って待っていてくれ…いつか帰れれば帰るから」
彼女の額に、別れの口づけをした。
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場面が変わる。貧民街にいる僕…泣いている女の子が目に入る。
「どうしたの?迷子かな?」
「うん…」
迷子らしい。こんな迷路みたいな街じゃ、迷子にもなるよな。女の子を抱き上げて、頬を寄せた。僕の行動にビクッとした彼女。
「泣き止んだね。う~ん、何か覚えていることってある?」
彼女の記憶を頼りに、彼女の家を探す。そして、孤児院を見つけた。そこで聞いた話では、彼女は実の両親を知らないそうだ。
「ねぇ、私の家族になってくれませんか?」
僕の服の裾を掴んだまま、彼女がそう言った。
「家族?それは何?」
僕の目を見つめて固まる彼女。
「家族いないんですね…私と同じ…」
呟くように言い、僕に縋り付いた。
「私が家族になります。だから、家族にしてください」
っと。
「いいよ。僕で良ければ。家族ってよくわからないけど、いいよ。なってあげる」
彼女の頭を優しく撫でてあげる。
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そして、現実…目が覚めると、アイズとシルが添い寝をしている。で、フィルヴィルが何故か、僕の上に載っている…状況が見えない。
「あっ、おはようございます」
って、フィルヴィル。
「状況が見えないんだけど…」
彼女に訊いた。両サイドに眠るお嬢様方は、目覚める気配が無いし。何故か、僕の中指は、お嬢様方の体内にいるし、僕の親指は敏感なお豆ちゃんに触れている。
「状況?う~ん…成り行きかな?」
成り行き?そこまでのいきさつが知りたいんだけど…なんで、毎朝こうなるんだ?
「なんで、私の耳を避けるのかなって…」
頬を赤らめて言うフィルヴィル。
「エルフの女性は恐い!それでだ」
明確な理由を述べた。
「恐い?それって耳を避ける理由ですか?」
「頼む、耳を近づけないでくれ!」
「ねぇ、言った通りでしょ?」
って、レフィーヤの声。どこにいるんだ?僕の視野にいないんだが。それはそれで恐いんですけど。
「師匠は、弟子の私の耳にすら触ってくれないんだから」
弟子だとは思うが、師匠になった覚えは無い。
「う~ん、重症だな。よっぽど恐い思いをしたようだ」
「リヴェリアさんのせいですよ、きっと」
「うん?彼女はエルフで無くてハイエルフじゃないのか?」
「あっ、そうですね♪師匠、ハイエルフは恐いけど、エルフは恐く無いですよ~」
急に顔を出し、いきなり顔が近いレフィーヤ。
「レフィーヤもフィルヴィルもかわいいと思う。だけど、エルフの耳はダメだぁぁぁ!」
トラウマレベルだと思うけど…
「それって、差別発言では無いのか?」
フィルヴィルが真顔で迫ってくる。
「差別では無く…恐いんだって…カンベンしてください…」
「何をされたんですか?」
顔が近い…マズイ、逃げなきゃ…って、両手はお嬢様方の身体の下にある。僕は全裸の女性達により、拘束状態であった。
「僕の手を使って、自分の耳を…」
「あぁ…道具にされたんですね~」
そうかもしれない…
「その後、僕が果てても…なんでエルフはタフで、テクニックが豊富なんだ?」
「それはハイエルフだからですよ。エルフはそこまで大胆では無い…はずです。まだ未経験なので断言は出来ませんけど」
レフィーヤが恥ずかしそうに言う。
「リューだって、もう粉しか出ない状況の僕に迫るんだよ。耳を舐めてって…」
あぁ、涙が出て来た。
「あぁ、それは手だな。ねぇ、耳を舐めてください」
って、フィルヴィルが僕の口元に耳を近づけてきた。舌を出そうものなら、舐めてしまう距離だ。
「あっ、フィルヴィルさん、ズルいですよ~」
ドアが開いた音がした。助かったのか?
「おい、お前ら!今日は私の日だ。そこをどけ!」
威厳有るハイエルフ様の声が、部屋に響いた。
「リヴェリアさん…」
怯えたようなレフィーヤの声。あぁ、今日はファミリアの休日か…
「フィルヴィル、退いてくれないか?契約をしていない、お前は交わることが出来無いのだからな!」
悔しそうな表情のフィルヴィルが僕から退く。そして、いつ脱衣したんだか分からない全裸のリヴェリアが僕と交わる。
「ジム…久しぶり~♪」
威厳の有る声は、甘えた声になっていた。レフィーヤとフィルヴィルは、僕がリヴェリアにおかされる様子を見ている。それよりも、両サイドのお嬢様方が起きない。どんな状況だ?夢かな?夢なら醒めてぇぇぇぇ~一晩で三名は無理だと思います。
そして、リヴェリアが果てる頃、
「あっ、おはよう…ジム…ぁぁ、だるいけど、朝練に行かないと…」
アイズが起きて、シャワーを浴びに行く。リヴェリアは僕の上で余韻に浸っている。アイズがいなくなり、フリーになった僕の手はフィルヴィルの手に…マジか?やめてぇぇぇぇ~!アイズの体重により、痺れている僕の手は、僕の意志で制御できずにいた。
僕の指を自分達の耳に這わす、小悪魔なエルフ二人。目付きが徐々に妖しくなっていく。
「なるほど…身体の芯から熱い…これが淫乱堕ちってヤツなのか?」
「そうですね。無性に師匠に触れたいです」
勝手に淫乱化しているエルフ達。フィルヴィルは余韻に浸っているリヴェリアを退かして、僕の上を陣取り、レフィーヤはアイズのいた位置に収まった。
「体内にジムが…蕩けるようだよ…今まで損をしていた気分だ」
僕の上で跳ね始めたフィルヴィル。
「師匠の指…気持ちいいです。はぁ…はぁ…」
レフィーヤは腕を胸の谷間に埋め、指先を体内に取り込み、小刻みに震えている。だから、エルフの耳は恐い。抑制していた物を一気に吐き出すそんな感じだ。達したフィルヴィルは僕の唇の堪能し、レフィーヤは僕の耳を堪能している。何の拷問だ、これって…
今日も朝から、体力キレだな…はぁ~。更にドアが開く音がした。新敵か?
「ジム♪おはよう~」
とっても元気な声のティオナ。
「ジム…私も堪能してくださいね」
って、僕の装備の仲間はずれだったティオネまでが参戦してきた。彼女達は、余韻モードに入ったエルフを退かして、自分達のスペースを作り…既に粉すら出ないんじゃないかな…このアマゾネス達は、テクニックよりパワー重視だし…
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午後、ヘルメスとアスフィが、お見舞いに来てくれた。
「どうだ?」
「動けないって、つらいです。みんなの玩具状態と言うか…」
今朝の惨状を伝えた。アスフィの顔色は赤い。
「それは、災難だったなぁ、ジム。でも、普通は喜ぶことだと思うけどな」
「何で?」
「だって、相手が剣姫と看板娘はデフォルトで、ハイエルフ1名とエルフ2名にアマゾネスが2名だろ?お金払っても、そういう状況にはなれないぞ♪」
「ヘルメス様、不謹慎です!」
アスフィが、ヘルメスに注意を促す。
「うん?アスフィもしたかったのかな?」
「そんなことは無いです!」
主神に何かの怒りをぶつけるアスフィ。
「あぁ、して欲しい方かな?」
「いや…そんな…はしたないことは…してくれたら嬉しいけど…って、何を言わせるんですか?」
ヘルメスに言い当てられた怒りをぶつけるアスフィ。
「元気そうでいいな、アスフィ。また、一緒に潜ろうよ。カドモスの泉の件でさぁ」
「うん♪約束だよ、ジム」
「で、アレはどうなったんだ、ヘルメス」
「あぁ、アレか…見つけられなかった。違うフロアにいる術師なんか、見つけようがない。ジムの仲間が着いた頃には、既にいなかったそうだ」
「そうか…あの方法じゃない対処方法を見つけないとダメだな」
「そうなる。後なぁ…もう…限界らしいぞ。お前の器…」
ヘルメスが哀しそうに言う。再降臨のしすぎで器が限界なのか。器が壊れたら…もう、傍にいてやれないだろうな。
「アスフィに頼んで、器を保たせる方法を考えてもらっているが…」
アスフィも哀しそうだ。ダメなんだろう。人が手を出して良い領域は限られているから。
「まぁ、最悪…高い処からみんなを見守るさぁ…元々いた場所から…」
「ジム…行かないで…」
アスフィが僕に縋りついた。僕の為に涙を…だけどね。
「次くらいでダメかな?」
ヘルメスに訊いた。頷く、僕の兄貴分…
「そうか…」
「なぁ…手は有るんだが…」
「仲間を見捨てろってこと?出来無いよ。そんなこと…僕の為に、仲間を見捨てることは出来無い」
「そうか…知っていたんだな」
そんな哀しそうな目をしないでくれ、ヘルメスよ。
「たぶん、ガントレットに宿る、アイツを解放すれば、大丈夫だと思うけど…アイツ、器無いんだぞ。解放したら、消えるんだぞ!僕の為に、僕が生き残る為に…そんなことは出来無い」
「そうだ、器…器を作れば良いのよね、ジム!」
アスフィが提案してきた。それはそうだけど…あぁ、アイツの身体を創造すれば良いのか…
「神の器か…どんだけ、魔力がいるんだ?」
「いや、たぶん、その行為は悪行が加算されるぞ」
って、いつの間にか現れていたマーリンが答えた。
「加算されるのは慣れている」
「う~む…やってみるか?」
「やれる手は総てやろう、マーリン♪」
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その日の夜、ヘルメスのホームの隣にある僕の家に、僕、マーリン、ルフェイ、ヴィヴィアン、ヘルメス、リヴェリア、レフィーヤ、リュー、フィルヴィルが集まった。魔力に耐性がある者だけで、アイズとシルは来たがったが、危険なので断った。
床にマーリンとルフェイと僕とで、魔法陣を描いていく。
「その魔法陣は何だ?」
リヴェリアが質問をしてきた。
「創造系の魔法陣だよ。神を創造するんだ。呪文程度では無理だからね」
彼女の質問に答えた。
「じゃ、魔法陣に描かれている六芒星の頂点部分に、ヘルメス、ヴィヴィアン、リヴェリア、レフィーヤ、リュー、フィルヴィルが立ってね」
神、精霊、ハイエルフ、エルフであれば、問題無いはず。同じ系統の種族であるから。
「マーリン、ルフェイ、呪文はわかっているかな?」
頷く二人。
「じゃ、始めようか」
禁術系の呪文を三人で唱え始める。禁術系には2種類ある。禁断な魔術と禁忌な魔術。禁断な方は人がやってはいけない術、禁忌な方は人が絶対にやってはいけない術である。マーリンには禁断な領域までをサポートしてもらい、禁忌な領域は、人では無いハーフ悪魔のルフェイと僕とで執り行う。
「出でよ、神なる器よ…時空を超え、この地へと現れよ!」
あの時の状態の彼らの身体が、時空を超え転移してきた。その身体に対し、一斉に回復呪文をぶち込む。六芒星に立ちし彼らは、トランス状態にあり、僕の指示通りにに魔法を行使してくれた。
『クロウ…すまない…こんな悪行を積ませて…』
ガントレットに宿っていた神の魂は、自らの身体に戻っていく。それを皮切りに、ドラゴン2体、魔王、天使長も次々と戻っていく。
『お前に掛かっている封印を解く。今までの悪行はチャラにしてやる。友よ♪』
『俺達は離れても、いつでも一緒だ。困ったら助けに来るぞ』
『邪神のレッテルは剥がれない。でもメッキでは無いから、自信を持てよ』
『最期の時まで、お前はお前の為に生きろ。それが人生だぞ』
術の行使は終わった。トランス状態だった彼らは、その場に崩れるようにして倒れた。あれ?さっき妙な事を言ったヤツがいたけど…
「なぁ、ヴィシュヌ。お前、さっき妙な事言わなかったか?」
生き返った神に訊いた。
「うん?何の話だ?」
「僕に掛かっている封印って言ってなかったか?呪いで無くて…」
「うん?あれ…あっ…あぁぁぁぁぁ~!」
頭を抱えて蹲る神ヴィシュヌ。
「呪いは解けていない…」
ダメじゃん…何も解決していない。この世に、いやこの時代に居ちゃいけない者達が甦っただけな気がする。
「呪いを解く為の儀式だったんだけど…」
「まぁ、器の負担は減ったはずだが」
って、魔王ルシファー。
「その分、強度も減ったぞ」
「あっ…そうだな」
コイツも頭を抱えて蹲る。
「生き返った者で呪いを解く儀式をすれば良い」
と、天使長ミカエル。
「生き返ったのは5名…六芒星なんだけど…一人足り無くないか?」
「ですね…」
マーリンとルフェイも限界だし。再度の儀式は無理だな。
「ブラフマーが身体を創って、乗り換えればどうかな?」
ヴィシュヌが僕の本名で呼び、提案をしてきた。
「それだと、結果は変わらない。僕はもう彼らの傍に居られない」
「だな…すまん…忘れてくれ…」
結局、何も解決しないのか…僕は、彼らの傍にいたいのに…彼らの為に行動することは、一緒に居られなくなるという二律背反は変わらない。
「どうすれば良かったんだ?なぁ、ヴィシュヌ」
「お前が優しすぎたんだ、ブラフマーよ。もっとクールでいれば良かったんだ。末端な者にまで気を配りすぎだったんだ。お前の悪いクセだな」
結局、僕の行いのせいなのか。
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翌日、僕一人で、ヘルメスの元を訪れた。参加してくれた者達は、魔力を使い果たし、僕達のホームで休んでいる。
「で、どうだ?回避できたかな?」
嬉しそうに言うヘルメス。
「ダメだった…また、違う手を考えるよ、ヘルメス」
「なんで、ダメなんだ?」
僕の答えが意に反していたのか、僕に詰め寄る。
「負担は減ったが、強度も減った。同じなんだよ。救いは僕の能力が戻ったことで、最悪なのは、次は確実にみんなの傍に居られなくなる」
言葉が出ないのか、ヘルメスが固まった。いや、徐々に彼の表情は哀しそうになっていった。
「そんな顔は君には似合わないよ、ヘルメス。大丈夫だ。消える時には、僕に対する記憶も消えるはずだから。苦痛は伴わないはずだ」
ガッシャン!
何かが落下して割れる音がした。音のした方へ振り返るとアスフィがいた。お盆に載せたマグカップをお盆ごと落としたようだった。
「消えないで…ねぇ、ジム…」
僕に走り寄り、泣きすがってくれたアスフィ。
「すぐには消えない。依頼された件は、やり遂げてから消えたい」
「そんなことはいいの!ねぇ、消えないで…ずっと、傍にいてくれるって言ったでしょ!」
「消えるまで、傍にいたい。アスフィ…アイズ…シル…シャクティ…ヘルメス…みんなの傍にいたい。いつまでも…いつまでもね。まぁ、消えないように、手立ては考える。能力は戻ったみたいだし。あがいてみるから」
アスフィと唇を重ねる。このまま、永遠に時間が過ぎて欲しい気もするが。
「じゃ、またな。アスフィ、ヘルメス」
僕は彼らのホームを後にした。
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ホームの中庭では、モルドレッドとアイズが手合わせをしていた。その様子をしばらく見ている。いや、見ながら考え事をしている。どうすれば、退避できるんだ?う~ん…
「ねぇ、こんな場所で寝たらダメだよ」
アイズに起こされた。あぁ、寝ていたんだね。答えのまるで見えない考え事って、眠くなるのか。何の気無しに、アイズの髪の毛を手ぐしで整えてあげる。
「え…この感触…まさか…」
瞳を潤したアイズが、僕を見つめる。何に気が付いたのかな?
「私の英雄さん?」
ぼそっと呟いた彼女。
「僕は英雄では無い。何も偉業を為していない。悪行ばかり積んでいる」
いきなり、号泣したアイズが、僕に抱きついてきた。何で?何か、マズイ事を言ったかな?いや、地雷を踏んだ可能性もある。頭を撫でてあげる。遠い昔、あの女の子達にしてあげたように。徐々に泣き止むアイズ。
「帰ってきてくれたんだね…ありがとう…気づかないで、ごめんなさい」
また、号泣して抱きつくアイズ。何だ?う~ん…
「何やらかしたの?」
気配をまったく感じさせずに、シルが隣にいた。
「何か地雷を踏んだのかもしれない」
「剣姫を泣かすって、よっぽどな事をしたのね」
「そうだな」
シルの頭を撫でた。何の気無しに…急に、シルの表情が変化した。
「どうした?シル…撫で慣れていないから、痛かったか?」
シルは僕の顔をマジマジと見つめた。徐々に表情は崩れていき、彼女もまた、僕に号泣しながら抱きついて来た。マズイだろ?この街を代表する女性2名に、号泣しての抱き付きって…何が原因なんだ?
「何をやっているんだい!」
ミアがノシノシと近づいて来た。
「わからない…地雷を踏んだようだよ、ミア」
「地雷?何のだ?尋常じゃないぞ、その二人の泣き方は。ジム、何をやらかしたんだ?言ってみな」
ミアが鬼の形相で睨んできた。
「って、言われても…本当にわからないんだよ」
ギャラリーが集まってきそうだ。逃げたい。でも、二人に力一杯抱きつかれて、動けないでいる。
「まったく、記憶力が無さ過ぎだろ?まぁ、いいや。泣き止むまで、そこにいろ」
ミアは店へと帰っていった。
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能力が戻ったことを思い出した僕は、二人ごと家に転移した。ここなら、ギャラリーはいないので安心である。
泣き止むのを待っていたのだが、二人とも泣き付かれて寝ていた。なんてこった。理由が訊けないじゃないか。起こすのは可哀想だし。あの女の子達にしていたように、彼女達を膝枕に寝かし付けた。女難の相でもあるのかな?ふと、そんな想いが湧き上がる。
そういえば、あの女の子達は元気かな?二人共最後まで一緒にいてあげられなかった。時の迷路の呪い…僕は時空を彷徨っていたから。彼女達がいた時代に戻る能力は無いし。う~ん。二人共泣き虫だったよな。英雄になってくださいとか、家族になってくださいとか、その当時の僕には意味が分からなかったけど。今なら多少は力に成れるかな?
名前を知らない二人の女の子。気になってしょうが無い。どうにも成らないんだけど…生き延びたかな?幸せになったのかな?二人の行く末を考えていると、涙が溢れてきた。何でかな?探してみるかな…気になるし。って、この時代、この世界にいるのかもわからないけど…また、答えの出ない考え事をして、睡魔に飲み込まれて行った。
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目覚めると、アイズとシルの頭は、僕の腿ではなく、肩に載っていた。何で?動けないんですけど…少し動いた為か、二人共目を醒ましてしまった。ごめんなさい。
「「おはようございます♪」」
ステレオな朝の挨拶と共に、両頬に柔らかい唇が…気持ちいいし、新鮮だ♪
「どうしたの?今日はずいぶんと、ご丁寧な…」
「昔を思い出して…」
「懐かしくなってね」
二人は異句同意な言葉を言ってきた。シンクロ?
「こんなに近くにいてくれたのに」
「気づかなかったよ」
う~ん、どんでん返しで、拳骨が飛んでくるのか?少し警戒をする僕。あぁ、そうだ。二人に相談してみるかな。
「探したい人、いや探したい女の子がいるんだけど、協力してくれるかな?」
怪訝な顔をする二人。スルーして、話を続ける。
「昔、出逢った女の子達なんだけど、なんか懐かしくなっちゃってさ。問題はこの時代にいるのか、この世界にいるのかが不明なんだよ。どうすれば良いかな?」
「どんな女の子ですか?」
アイズがきょとんとしている。
「う~ん、一人は金髪で柔らかい髪の女の子なんだ。僕に英雄になってくれって言うんだけど、僕って大罪者だからダメだって言ったんだよ…で、もう一人は貧民街で知り合った女の子。家族になってくれって言われたけど、養護施設にいてね。僕の身分では引き取れなかったんだよ」
また、二人が号泣して抱きついて来た。また、地雷を踏んだのか…何が地雷だったんだ?
「ありがとう…引き取ろうとしてくれたんだ…」
えっ?まさか…
「私だけの英雄です。大罪者とか関係無いんですよ」
おいおい…本当に?
探し人は目の前にいた…