目覚め
---フレイ---
目が覚めると、知らない場所にいた。知らない男性が二人、僕を護るように位置していた。
「おぉ、目が醒めたか?どうだ、久しぶりのシャバは?」
久しぶり?はて?彼の言葉に戸惑っていると、
「お前、嵌められたんだよ。英雄だった神にさぁ…」
えっ?あの英雄って神になったのか?
「アズって賢者がいただろ?アイツはあのヤローの腹心で、現在は魔王だ。あと、アイリスってお前の仲間は、あのヤローの妹だ」
アイリスが…まさか…だって…
「記憶を書き換えていたから、誰にもわからなかったんだ。いや、アイリス本人も、フレイの仲間だと、覚醒するまで信じていたようだ」
なんで…
「英雄は魔王を倒せば神になれるんだ。で、魔王がいなくなれば、他の者が魔王になる。要するに、お前は英雄の糧だったんだ」
そんな…
「そうだ…ハーちゃんは?」
「お前の知っているハーデスはもういない。お前がやられて、アイツも…不老属性をはずされて、肉体は朽ちて、精神は病んで…お前の知っている面影は無い」
なんで、そんなことに…
「フレイ、お前の憎むべき相手の名前は、アイシルだ。アイリスの兄のアイシルなんだ」
アイシル…
「でも、神じゃ…」
「大丈夫だ。フレイも僕達も『神殺し』だ。神を殺せるぞ♪」
神殺し…
「あぁ、自己紹介がまだだったな。僕は魔導戦士のシュウ。で、相棒は龍騎士のファルコンだ。君がアイシルを討てるように協力してあげるよ。本当に、クソ神だな」
魔導戦士と龍騎士?僕は…
「フレイか?魔王としての力はアズが抜き取った。神としての力はアイシルが抜き取った。お前に残っているのは、殺戮者である本能と、護りたい者を護るガーディアンとしての治癒能力だけだ」
殺戮者?治癒能力…
「まぁ、わからないことだらけだろうな」
わからないことだらけだ。昔もそうだったけど…こうして、助け出された僕は、彼らと共に旅することになった。アイツを倒す為に。
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僕の身体が満足に動くまで、しばらく時間を要した。しかし、彼らは何者なんだろうか?
「僕達か?君の母親に頼まれた、通りすがりの女好きと戦闘好きだよ」
僕の母親?
「そうそう、これを渡しておく」
シュウさんから、見覚えのあるガントレットを受け取った。装着して、収納されているナイフ2振りを取りだしてみた。2本共、刃こぼれも無く、手入れがされていた。
「随分と傷んでいたから、研ぎ直しておいた」
「ヘファイストス母さんは?」
ガントレットとナイフ2振りを作ってくれた育ての母親のことが心配だった。
「彼女は、僕達で確保してある。無事だよ。産みの両親はダメだった。ヘファイストスを逃がす為に、囮になったり、戦ったようだ」
そうか…ヘルメス父さんとフレイア母さんは、ダメだったのか…
「これからどうしますか?」
気を取り直して、シュウさんに訊いてみた。
「まず、ここから脱出しないとな」
そういえば、ここはどこ?
「ここは」
「冥府の最深部、コキュートスの最下層だ。お前は、ここに封印されていたんだ。アイツらにはお前を殺したり、消したりする能力が無いから。見かけ倒しの神と魔王だよ」
冥府?じゃ、ハーちゃんに逢える?
「ハーデスか?う~ん…止めた方が良いぞ。アイツはお前を護る為に、ここに封印したんだからな」
僕を護る為に、封印?
「アイシル達に渡せば、二度と逢えなくなるから…だから、手元で封印をしたんだ」
身に刺さる冷たい風が吹き始めた。
「フレイ…なんで…」
聞き覚えがある声がした。声を主を見ると、フードとマントを羽織った骸骨だった。
「あなた達は誰?なんで封印を破ったの?」
骸骨なので表情がわからないけど、声から判断すると困惑しているようだ。
「そろそろ、アイシルの遊びの時間を終わらせようと思ってな」
シュウさんが骸骨に言った。
「終わらせる?相手は神なのよ!どうやって?」
「その為に、僕達が来たんだよ、ハーデス♪」
ハーデス?あの骸骨がハーちゃんなのか?骸骨は骨だけだった。見た目では、性別すら分からない状態である。
「だから、あなた達は誰?」
「『神殺し』の魔導戦士と龍騎士だけど」
骸骨が後ずさりした気がする。
「あ、あ、あなた達が…」
「証拠か?う~ん、何かあったかな?なぁ、ファルコン」
「証拠ですか?そうですね…あぁ、初代ハーデスを宿している刀は?」
「あぁ、アレか」
シュウさんは禍々しいオーラを放つ刀を手にして、鞘から抜いた。
「それは…妖刀村正…じゃ、あなたが女性の敵と言われているエロ神?」
なんか、ずいぶんな言われ方のシュウさん。うん?エロ神?
「そうだよ♪」
シュウさんが何かの術を発動すると、骸骨が悶え始めた。
「やめてぇぇぇぇ~!骨だけの身体で、この感覚は有り得ないわぁぁぁぁ~!」
「じゃ。肉付けもしておくか?」
更に何かの術を発動すると、骸骨が光の粒子に包まれて…光の粒子が霧散すると、僕の知っているハーちゃんより、成長している女性が現れた。
「あぁ、肉体が…あっ!」
急にその場に崩れ落ちた女性。
「久しぶりの刺激で、達するのが早いなぁ…」
床に倒れている女性と交わるシュウさん。
「うんうん、失神した女性の膣は実に気持ちが良い♪」
「フレイ、シュウさんは性癖の破綻したエスプレイヤーだ。あんなのは日常茶飯事だぞ。慣れておけ」
って、ファルコンさん。いや、慣れておけって…どういうことだ?暫くすると、女性が息を吹き返したのか、蠢き始めた。
「え?失神しているのに、交わるって…でも、久しぶり…って、フレイの前で何をしてくれているの!」
「毒味役だよ。不感症だと、フレイがつまらないだろ?だから、感度チェックだよ」
目の前で5ラウンドくらいプレイして、ようやく接合を解いた。
「フレイに…遊び人って思われたらどうしてくれるのよ~!」
「そんな風に思わないよ。そうだろ、フレイ?」
シュウさんに訊かれた。
「ねぇ、ハーちゃんなの?」
僕の疑問を女性にぶつけた。小さく頷く女性。
「ハーちゃん…」
僕は女性に駆け寄り、抱きついた。
「フレイ…ごめんね…護りきれなかったよ…」
ハーちゃんも僕を抱き締めてくれている。
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シュウさんに服を創造してもらい、着衣をしたハーちゃん。
「で、どうするの?」
ハーちゃんが訊いてきた。
「アイシルを倒す。問題は僕達が倒すのではなく、フレイが倒さないとダメなことかな」
「僕が?」
「そうなんだよ。フレイが倒さないと、能力が元に戻らないんだよ。攻撃力無いクセに、頭はキレるようでね、幾重にも罠を張っているんだよ」
罠?
「アイツとアズだけを倒せば終わる訳では無いんだ。倒し順番があるんだ。じゃないと、囚われている魂が解放されない。例えば、アイリスとかティオ、オナ、オネの魂がさぁ」
アイツの仲間じゃないの?
「単純に言えば、そうなんだけど…実際には違う。フレイを想う心を伴った魂を抜き取られて、アイツのことを想う心にすり替えた魂を入れられているんだ。だって、アイリスは、お前の姉の魂だろ?元々はさぁ」
あぁ、そういえば…
「だから、アイツを倒す前に、囚われている魂と身体を、取り戻すことが大事だ」
「魂はどこに囚われているんですか?」
「身体とは別の場所だ。魂の方は問題は無い。僕のチートな能力で呼び出せるし♪」
チートな能力?
「シュウさんはネクロマンサーでもあるんだよ。だから、招魂術が使えるんだよ」
って、ファルコンさんが、教えてくれた。いや、口に出していないのになんで?
「あぁ、僕達は読心術を持っている。だから、口に出さないでも会話は出来るんだ♪」
それはチートですね…
「まず、居場所がわかっているアイリスだな。首都のシールズタウンにいるらしいぞ」
「アイシルは?」
「アイツは天上界だ。なので、アイツは手出ししてこない」
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僕が封印されている間に、世界システムは大きく変わったそうだ。
アマゾネスという種族を改良して、英雄資質がある受精卵だけ男にして、そうでない場合は総てアマゾネスになるらしい。その際、近親交配を防ぐ為に、父親の遺伝子はアマゾネスとして産まれる子供には、遺伝しないらしい。アマゾネスと交われるのは、神と英雄だけという法律も有るそうだ。
他の種族の場合、16歳まではいままで通り生活できるが、16歳になると選抜試験という物が義務づけられているそうだ。これは、英雄になりうる能力、資質のある男女は、英雄養成施設に送られ、そうでない男は労働力にされ、女は神と英雄に気に入られた者は、英雄施設で囲われて、そうでない女は牧場へと送られて、子作りが仕事になるそうだ。
神と英雄だけが優遇されるシステムになっているんだとか。
そして、働けない、子供が作れない者は、魔物化されて、英雄達の練習教材にされる。こうして、この世界は、アイシルによってコントロールされているらしい。
神と魔王が仲間同士な為、優秀な英雄、悪魔を選抜するため、年に2回、英雄軍団と悪魔軍団でリアル戦争ごっこをするそうだ。主目的は神と魔王が、殺し合いを見て楽しむ為であり、参加者達は殺した数を競い合うんだとか。悪趣味過ぎるだろう…
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「フレイのリハビリが終わったら、リアル戦争ごっこに乱入する♪目標は参加者全員を殲滅だよ~ん」
嬉しそうに話すシュウさん。しかし、その目は笑っておらず、怒りに満ちあふれているようだった。