---フレイ---
シュウさんが戻って来た。全身、血塗れだった。
「黒幕はロキだ。目の上のたんこぶを処分したいらしい」
まぁ、イレギュラーな僕達のいる場所では無いからな…
「メイビス、莉愛!僕達4名を残して、他の者達と撤退しろ!ここは危険だ」
「分かりました」
メイビスさん達は帰還の支度を始めた。
「彼女達が撤収しきるまで、ここを死守する。その後は、一気に60階層を目指す」
僕達は団長に対して頷いた。
「団長…何をしてきたんですか?」
ファルコンさんが訊いた。
「フレイア・ファミリアを半殺し…オッタル、ベート、ガレスは瀕死、フレイアには精神的ダメージ…」
フレイア母さんの返り血も浴びている団長。母さんも半殺しなんだろうな。
「ロキ・ファミリアが来る…ヘルメス・ファミリア、ガネーシャ・ファミリアを引き連れてきているな」
シュウさんは索敵した結果を知らせてきた。
「シュウ、撤収するわ。帰って来てね!」
「あぁ、努力する」
シュウさんの返事を聞いて、メイビスさん達は撤収した。そして、僕達も装備を整えて、さっき付けたマーカーの階層へ転移した。
---フィン---
ヘルメス・ファミリア、ガネーシャ・ファミリアの援護を受けて、彼らのホームを急襲したが、豊饒の女主人のウェイトレスのリュー、ルノア、クロエが縛られていただけで、彼らはどこにもいなかった。たくさんあった、道具や家具などもすべて消えていた。
「アイツらはどこに行ったんだ?」
人質の3人は口を割らない。人質なのに、何故、彼らを庇うのだ?
豊饒の女主人も捜索する。
「え?フレイが消えた?シュウさんも?なんで?なんで、追い出したんですか?」
看板娘のシルが、僕達に食い下がって来た。
「追い出したつもりは無い。だが、アイツはやり過ぎた。フレイア様をリンチしたんだ」
「え…リンチ…あの女が、何かしたんですね?」
シルが、フレイア様をあの女呼ばわりした。関係者なのか?
「まさか…あの女がフレイを邪魔だと思って…許せない…」
怒りに震えているシル。誰に対する怒りなんだ?
「おい!私の店に、隠していない。店を荒らすんじゃないよ」
店主のミアも激怒している。
「ミア母さん…あの女が、何かして…シュウさんを怒らせたみたい…」
ミアに泣きすがるシル。
「なんだって?フレイはどうした?無事なのか?おい!フィン、どうなんだ?」
「お宅の店員3名が人質で残っていただけで、誰もいなかったよ」
「店員?そうなのか…なんで、そんなマネを…フレイア様…」
その場で泣き崩れたミア。
---フレイ---
漸く60階層に着いた。封印の間の扉の前にいる。『封印無効』持ちのシュウさんが、扉を開けて、皆で中に入った。僕の幽閉されていた部屋と同じ造りのようだ。部屋を物色するシュウさんとジムさん。
「あった。これだ…これを書き換えれば…これでフレイは問題は無い」
「なるほどな…タイマー付きの『強奪』装置か。この世界の悪神は考えたな。これだと、どこにいてもフレイは、ここへ強奪されてしまうな」
お二人は術式が読めるそうだ。
「後、めぼしい物って有るか?」
「あぁ、これかな?天界と天上界へ行く魔法陣って…」
「そうだな…フレイ、ファルコンはここにいてくれ。僕とジムで行ってくる♪」
お二人は天上界へ転移していった。
---リヴェリア---
身体が軽い。彼が治してくれたのか、痛い場所はどこもない。そうだ、彼は?フィンに会いに行った。
「リヴェリア…状況は最悪だよ」
ロキの嫉妬心から事態は大きくなっていた。ロキはフレイア・ファミリアに、彼らの暗殺を依頼した。しかし、それは返り討ちになり、フレイア・ファミリアは逆に壊滅寸前にされたそうだ。そして、ここロキ・ファミリアも…ガレス、ベートは瀕死の状態だそうだ。ガレスは内臓を破壊され、ベートは顔が潰されていた。ここ2,3日がヤマ場らしい。
「彼らを探して、治して貰わないと…彼はリヴェリアを見て、暴れるのを止めてくれた。なぁ、彼のことを教えてくれないか?」
私を見て?そうだ…朦朧とした意識で彼の前に進みでて、意識が飛び、彼に抱き留められて…柔らかいオーラに包まれたんだ。
「彼は私の肉体を求め無かった。私との触れ合いを望んでいた。ただ、それだけなんだ。アイズの場合は、アイズが望んだんだ…」
「彼は何者なんだ?」
「わからない…いや、この世界の私って言われた…それって…そうか…並行世界から来たのか…」
「並行世界?なんだい、それは?」
「アカシックレコードという星の記録が有るらしい。それは樹木のような形状の記録らしいんだが、ifの局面で枝分かれが為され、その枝が並行世界になる…そんなような話をどこかの記録で見た覚えがある」
「彼はこことは何かが違うifの世界から来たのか?何が違ったんだ?」
「その違いを見つける為に来たのでは無いのか?だから、目的は言え無かったのかもしれない」
「ヘルメス様、お考えはどうですか?」
「並行世界か…有り得るな。この世界の者とは違う戦力だったんだろ?それなら、可能性は有る。問題は、何を見つけに来たのかだ」
---ヘルメス---
フレイアに呼ばれた。彼女の横たわっている部屋に、通された。
「どうしたんだ?」
彼女から魅力を感じられなくなっていた。『魅了』の能力を消されたようだ。
「お願い…私達の子供を…助けて…あげて…」
目からポロポロと涙を流しているフレイア。子供?何の話だ?彼女から語られた、今まで俺の知らなかった事実…俺と彼女の間に子供がいた。その子供を、ロキの依頼で暗殺しかけたらしい。そして、俺達の子供を保護している者から報復を受けたそうだった。
「ロキのせいなのか?」
力無く頷くフレイア。
「ロキは、詳しいことを教えてくれなかった。知っていれば、あんなことをしなかったのに…」
「保護している者って誰だ?」
「私達より上の階位…たぶん、『神殺し』だと思う」
『神殺し』…それは俺達神族が、やりたい放題しないように、生み出された最終兵器である。俺達は死ぬ事は無い。肉体が死んでも、天界で再生出来るのだ。しかし、『神殺し』は、魂すらも殺せるらしい。大昔に神族の手で葬り去ったと聞いたけど…復活したのか?
「彼らの探し物…『神殺し』を嵌めた犯人…」
「この世界にいるのか?」
力無く頷くフレイア。
「誰だ?」
「ロキの兄…この世界の維持神…よ」
ロキの兄?
「ダンジョンの…60階層…封印の間…天上界への入り口…そこから行けるわ」
アイツらは60階層に向かっているのか?
「わかった。なぁ、俺達の息子の名前は?」
「フレイ…フレイ・フローヴァよ」
フレイか…フレイアの兄の名前か…
---フィン---
ヘルメス様から情報を得た。アイツらは60階層を目指しているそうだ。オラリオに残っている戦士を集めて、討伐隊が組織されていた。
「待て!なんで、討伐なんだ?救出じゃないのか?」
ヘルメス様が文句を言われている。
「オラリオのルールを破りました。いかなる理由であれ、神に手を出してはいけないってルールをね」
ガネーシャ・ファミリアの団長シャクティが、ヘルメス様の文句を退ける。
「神に非があっても、神に手を出せるのは神だけです。それが、この街のルールですよ」
「アイツ…神だぞ…」
ヘルメス様の呟きが波紋を呼んだ。
「か、神なんですか?」
「あぁ、俺達よりも上らしい…維持神をボコりに行くらしいんだ。だから、救援を出して欲しい。なぁ、頼む!フレイを助け出してくれ!」
フレイ…神ヘルメス様と女神フレイア様の間に産まれた子供…それは神である。
「それって…神々の抗争ですか?地上の者を巻き込まないでください!」
神々の大ゲンカ…大昔にも起きそうだ。古い書物に書かれている。終わらせたのは、神々を蹴散らす程の強さを持つ勇敢な戦士。そう…アイツらみたいな…
彼はそうなのか?
---フレイ---
ファルコンさんと封印の間で待っている。
「そうだ、ジムさんは何を奪われたんですか?」
ファルコンさんい訊いた。僕は仲間達を、ファルコンさんは彼女を奪われたけど、ジムさんの場合が見えないでいた。
「アイツは英雄の証だ。アイツが封印した英雄の証を、アイシルが手にして、英雄認定されたんだよ。通常の方法では無いチートな方法でな。だから、英雄の証として使えるが、英雄の証としては機能しないんだよ」
持っているだけで英雄認定されるアイテムらしい。しかし、機能させると世界を救える力が手に入るらしい。
「英雄になれる者しか引き抜けないのだが、アイシルは、埋まっている地面を破壊して、強引に手にしたのだ。だから、あいつは盗掘者が正式なジョブ名だ。英雄では無いんだ。あと、英雄を辞めてステップアップするときに、次の英雄の為に儀式をしないといけないのだが、アイシルは儀式の方法を知らない上、儀式があるとも知らなかったらしく、未だに英雄の証を持っているそうなんだ。ジムは、それが許せないらしい。英雄を冒涜していると言うんだよ」
そんな因縁があったんだ。
「で、団長は?」
「最終兵器としての『神殺し』だった頃、団長を自殺に追い込んだ神の1柱が、ヤツだったらしい」
あぁ、それはキレるのに値する因縁だな。
「私が自ら首を斬り落としたあの場所…団長が自殺した場所だった。団長が罠に嵌められた時…私も龍騎士として救援部隊で駆けつけ、団長の死に際を見た。ジムも最高神の間で見ていたらしい…」
ファルコンさんは目頭を押さえた。三人は同一の時間軸上で交差していたようだ。
「異種族共存を望む彼は、私達の為に…自害した…だから私も、地上の者達の為に自ら首を斬り落とせたのだと思う。なのに…二度とも、神は口約束を反故にした。罰する者がいないからね。神…いや、神族は横暴な種族だよ。一番エライと思っている。だから『神殺し』は必要なんだ。抑止力になるから。団長は、魂を授かった後も、神族の抑止力になっていた。これが、私が彼に付いて行く理由だ」
僕とファルコンさんに継承された『神殺し』の能力。抑止力なんだ。そして、僕達の抑止力を無効化したのが、僕達の共通の敵であるアイシルこと悪神ロキだそうだ。
もし、シュウさんに会わなければ、ファルコンさんも僕も生きる希望を無くしていただろう。
---シュウ---
封印の間に帰ると、フレイとファルコンが重苦しい雰囲気に沈んでいた。
「どうしたんだ?」
「いえ…昔話をしていて…」
ファルコンが答えた。
「また、僕の黒歴史でも披露していたのかな?で、こっちはオーケーだよ天上界のシステムを改修してきた。天界にも脅しを掛けて来たよ」
「じゃ、反撃開始ですか?」
「シルとアイズを拾って帰れば、準備は整うよ。でも、地上の状態が険悪でさぁ、ロキのヤツ、何かを仕掛けたようだ。どうするかな…ここのロキはアイシルとグルの可能性は大だし」
う~ん…
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シルの部屋を訪れた。
「シュウさん…」
「一緒に来るか?」
「フレイも一緒ですか?」
「対処する。その為には、シルを鍛えないとダメだ」
「何でもします…だから…」
「分かった♪」
彼女の隣に、イレギュラーなシルを召喚して、同化吸収させた。
「…彼女の記憶と心を受け継ぎます」
「頼むよ♪」
シルは帰還していった。余韻に浸っていると、
ドン!
いきなり、ドアが開いた。ミアが立っていた。
「フレイは?」
「安全だよ」
「手伝えることはあるか?」
「アイズと…誰もいない場所で接触したい」
「わかった…0時にフレイア様の部屋に連れて行く」
「頼む!」
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約束の時間、約束の場所に行くと、ミアの死体が有り、怯えているアイズと、殺気だっているフィン、ティオナ、ティオネがいた。
「これはどういう趣向かな?」
「貴様!アイズをどうする気だ?」
「ミアは誰が殺したんだ?」
三人とも術に嵌まっているようだ。術師は誰かな?怯えているアイズが僕に抱きついて来た。
ぐさっ!
僕の腹部に彼女の愛剣が突き刺さった。
「ごめんなさい…こうしないと…」
アイズは泣いていた。
「大丈夫だよ、アイズ♪君の心の声を聞いた。オーケーで良いんだな」
僕は両隣に、二人のアイズを召喚した。金髪のアイズと赤髪のアイズを。金髪のアイズに、この世界のアイズが同化吸収されていく。それを驚いた顔で見ているロキ・ファミリアの三名。僕の腹部に刺さっているアイズの愛剣を、金髪のアイズに手渡した。
「さぁ~て、二刀流アイズ二人を相手に、勝てるかな?」
二人のアイズはティオネ、ティオナを襲う。僕はフィンと対峙した。
「なるほど…魅了か…フレイアの魅了を奪ったのか…ロキのヤツは…ロキに伝えろ!フレイアとヘルメスは貰って行く。帰るぞ♪」
二人のアイズと共に、ベースキャンプへ帰還した僕。