---ファルコン---
兎に角、アイズから離れなきゃと思い、森の中を迷走し、山の中を迷走して、また、迷子状態に陥る。いや、迷子という言葉は正しくないか。そもそも、僕はどこに向かい、どこに行こうとしているのか、定かでは無いのだから。
迷い込んだ森の雰囲気が、どこかおかしい。空気が揺らめいているように見える。何かの結界かな?何者かの罠かな?などと考えながら、揺らめいていない箇所を歩いて行くと、山里に出た。ここはどこだ?
侵入者である僕は、里の者に囲まれてしまう。
「お前は何者だ?結界が張ってあっただろう?」
里の者達の耳は特徴的なものだった。
「ここって、ハイエルフの隠れ里ですか?すみません…道に迷いました」
警戒を解かないハイエルフ達。
「お主…聖騎士か?」
長老らしき、年老いたハイエルフに声を掛けられた。
「はい…敗走して…天界への帰り方を模索しています」
僕の言葉に怪訝な顔の長老らしきハイエルフ。
「敗走?いつの話だ?」
「赤いドラゴンと白いドラゴンの制圧です。大怪我を負った者を看取っていて、帰るのが遅くなりました」
っと、ほとんど事実の話をする。
「お主の名前は?」
「ファルコンです」
僕の名前を聞いて、近くにいたハイエルフ達の顔が驚いているようだ。
「もしかして、元龍騎士のか?」
「そうです。あれ?なんで知っているんですか?」
僕は、ハイエルフの若者達に囲まれて、大きな屋敷に連れ込まれた。
「楽にしてください。あなたの話は伝説になっております」
って…え?伝説?あれからどの位経ったのだろうか?
「伝説って…あれから、どの位経ったのですか?僕は『不老不死』の呪いを掛けられて永遠の20歳なんです」
「呪いですか…それは災難でしたね。あれから、もう3000年位は経っているかと思います」
えぇ~、そんなに…悪魔の世界に堕とされた年数が、分からなかったからなぁ。
「で、どうすれば、天界に帰れるのですか?方法を教えてください」
僕は長老らしきハイエルフに頭を下げた。
「あぁ、頭を上げてください。あなたは悪くないんですから。悪いのは…」
最後の単語を飲み込む長老らしきハイエルフ。悪いのは神々っていうことかな?言葉に出せないってことは。
「まぁ、神々に2度殺されたようなものです。紅白ドラゴンの制圧に、援軍を出す約束を反故にしましたからね」
「あれは、酷い話ですな。敗走してきた聖騎士やバルキリー達が、各地に恨み言を書いて残して、後世に伝えています」
あぁ、そうなんだ。アイズとアイリスと暮らしている間は、世捨て人生活だったからな。
「ここから、少し離れた場所に、オラリオという街があります。そこの街は天界から降臨した神々が治めている街だそうです。そこに行かれてはいかがでしょうか?」
少し若いハイエルフの女性が、教えてくれた。
「じゃ、案内してくれるかな?」
僕が立ち上がろうとすると、
「今夜はこの里にお泊まりください。オラリオに向かえるように結界を構築し直しますので。リヴェリア、ファルコン殿のお世話をして差し上げなさい」
先程の女性が命じられたようで、頭を下げていた。
僕は、彼女の案内で、離れの小屋に連れて行ってもらった。彼女は、僕の為の食事を運んでくれ、僕が食べ終わるまで、そばに寄り添ってくれていた。
「私も一緒にオラリオに行っても良いですか?」
リヴェリアが訊いてきた。
「長老の許可は?」
「まだです」
暗い表情で俯く彼女。
「ハイエルフだと、長老の許可無く、行動は出来無いだろ?」
「そうですが…外の世界に行きたくて…」
「まだ、未熟だと判断されてのことだろう。もっと、魔術に磨きを掛けてからでも、遅くはないと思う。まだ若いんだからさぁ」
「私が強い戦士になったら、一緒に旅をしてくれますか?」
なんか、アイズみたいな展開に…もしかして、『魅了』スキルのせいかな?
「優しい戦士になってください。みんなを護れる戦士にね」
「えっ…」
「回復系の魔術を覚えてください。僕はそれを持っていなかったので、護りたい者を護れなかったです」
アイリスのことを思いだしたら、涙が…
「ファルコン様は、優しい戦士なんですね」
僕の胸に顔を埋めるリヴェリア。
「そんなことはないと思います」
彼女は僕の手を取り、自分の耳を僕の指でなぞっていく。うん?エルフ系の耳って…
「これで、契約しましたよ。ファルコン様。私はあなたの者です♪」
うっ…しまった…警戒しないと行けない行為じゃないか。エルフ系の女性の耳って、添い遂げる者しか触ってはいけない大事な部分であるのだ。なので、耳を触るという行為は、ヒューマンで言う処の交わりの行為と同じ意味を持つのであった。
「ねぇ、一緒につれて行ってください♪」
大人しそうに見えたけど、こいつ、結構やんちゃ系なのか?
「強くて良い女性になったら、隣で戦ってくれるかな?今はまだダメだよ」
「わかりました。いつか、ファルコン様が納得できる女性になって、お側で戦えるようになります♪」
触耳という行為をしたせいで、リヴェリアの行動は大胆になっていく。全裸になり、僕と身体を合わせてきた。白く透き通るような肌…吸い付くような皮膚…柔らかくて気持ちの良い肉付き。エルフ系が性の玩具にされる理由を知った気がした。これは、病み付きになりそうだ。
せめて、肉体的な交わりを避けようとしていたのだが、彼女は僕のを手に取り、自分の中に取り込んでいった。彼女の体内は暖かく、とても気持ちが良い。疲れが消えていくような感覚でリラックスできる。まるで、温泉に浸かっているような感じである。
「気持ち良いですか?」
「とっても…」
「再会したら、もっと気持ち良くなってもらいます。だから…」
「優しい戦士…回復の出来る戦士になってくれる?」
僕の口を自分の口で塞いで、舌を入れてきた。柔らかいしなやかで…意識が遠のいて行く。
気が付くと、リヴェリアとは添い寝をして、朝を迎えた。僕達は肉体的仁繋がったままで、朝を迎えていた。二人でお風呂に入り、旅立ちの準備をしていく。
そして、森を抜ける為に、リヴェリアに案内してもらい、抜けた後の道のりを教えてもらった。森を抜け、リヴェリアと見つめ合う僕。リヴェリアは僕の首に手を回し、軽い口づけをして、
「必ず、長老の許可を取って、オラリオに行きます。その時はお願いします♪」
と言われた。
「わかった。約束だ。じゃ、元気でな、リヴェリア♪」
僕は、オラリオに向けて歩き出した。
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オラリオの街は賑やかだった。街の中心にはとても高い塔が建っているし。さて、どこへ行けば、知り合いに会えるんだろうか?
僕が装着している純白の鎧は目立つらしく、色々な者がファミリアへの入団を誘っている。が、ファミリアというものが分からない僕は、全てお断りをした。
取り敢えず、あの目立つ塔に向かって歩きだす。そんな僕に声を掛けてきた者がいた。姿は分からないが、念話のような物で話しかけているようだ。
「ウラノス様の遣いです。一緒に来ていただけませんか?」
ウラノス?あぁ、石碑を建立してくれた神かぁ。僕は声の主の道案内に基づき、ウラノスの居る場所へと誘導してもらった。ウラノスは、ギルドという、この街の総合案内所の地下に住んでいた。
「ファルコン…久しぶりだな」
少し老いたように見えるウラノス。
「あぁ…なんで援軍を送り出してくれなかったんだ?」
怪訝な顔をするウラノス。
「なんの話だ?」
「紅白ドラゴンの制圧の件だ。なぜ、神々は援軍を送り出してくれなかったんだ?」
「私は、その件には関わっていない」
「では、誰が嵌めたんだ?」
「すまない…また、神々がお前に迷惑を掛けたんだな?」
「すまないではすまない。目の前で仲間が喰われたんだぞ!目の前で、満足の治療が出来ないで、仲間が死んだんだぞ!お前ら、神々は、他の生物を軽くみていないか?」
「すまない」
本当に申し訳なさそうに言うウラノス。こいつを責めてもしょうがないか。
「僕はどうすれば良い?」
「この街で生きないか?」
ウラノスの申し出は意外だった。天界に戻れと言われるかと思っていたから。
「そうだ。ファミリアってなんだ?この街に入ってから、入団しないかって、勧誘が凄いんだけどさ」
ウラノスに、この街の仕組み、ルールを教えてもらった。
「眷属チームか…今更、神々の下僕は嫌だな。入団しなくても、気のあった仲間と潜れるのか?」
「ファルコンには特別に許可を出す。この街で好きに生きろ。お前の無茶ぶりは、私がフォローする。但し、犯罪などの法は犯すなよ」
「あぁ、しないよ。で、どこに住めば良いかな?仕事も探さないと…」
僕はウラノスの古い友人のファミリアに居候した。そこのミア・グランドというドワーフの女性に気に入られて、色々な場所に護衛と称して連れて行かれた。
「ミア…僕はポーターではないんだけど…」
買い物に連れて行かれると、必ず荷物持ちにされるのはお約束。
「体力勝負だぞ、冒険者ってもんはな」
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ミアの目を盗んで、遊びに出た。18階まで潜って帰ってきたばかりで、お小遣いも多少あるので、飲み歩きをしてみた。あるお店で、ヘルメスという男神と意気投合して、朝まで飲んだ。
「え?あの『女神喰い』なのか…凄い…」
目が輝いているヘルメス。
「凄くないよ。呪いが掛かっているせいで、魅了されなかっただけだし」
「『不老不死』っていう呪いはキツそうだな…永遠の20歳ってどうですか?」
「好きな女性と共に、年輪が刻めないのは哀しいかな…不死だから、後から追えないしなぁ」
「それは辛いですよね。俺達神も寿命って物があるけど、まぁ永遠に近い寿命ですよ」
「どの神が掛けた呪いか分からないから、解けないし…困ったよ」
「それはそうと、俺のファミリアに入りませんか?」
「ごめん…僕は神に縛られたくないんだ…」
僕の言葉を受けて、ヘルメスは申し訳無さそうな顔をした。
「そうでしたね。すみません。俺達神々のせいで、人生を潰したんですからね。でも、俺との友情は一夜限りにしないでくれますか?」
「もちろんだよ。神の全てが悪い訳ではないし。それよりも、フレイヤとイシュタルの居場所ってわかるかな?一応、知らせておきたいんだよ」
「ファルコンは目立つから、俺が知らせてきますよ。街中で魅了されまくっても困るし」
「あぁ、そうだった。『魅了』スキルがダダ漏れなのは困るな。対策がありそうだったら、教えてくれる?」
「もちろんです♪」
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ミアのポーターをしているときに、懐かしいオーラを感じた。
「ミア、ここは誰のホーム?」
「ここはアストレア・ファミリアのホームだ。優しい主神様だけど、乗り換える気か?」
「乗り換えるも何も、僕は入団していないし」
「あぁ、そうだったな。居候だったな。なんで、居候なんだ?」
「神々に縛られるのが嫌だからです」
「そうか」
訳有りとみるや、ミアは話題を変えてくれた。
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後日、僕はアストレア・ファミリアの門をくぐり、アストレア様に面会を求めた。アストレア様も僕の放つオーラに心当たりがあったようで、すぐに打ち解けて話せた。
「そうか…生き返ったんだね。で、元龍騎士さんは名前は何て言うのですか?」
「ファルコンと言います。あんな事があったので、神々に縛られたくないので、ファミリアへの入団は拒否しています」
「そっか。入団しなくて良いから、たまにヘルプで子供達と潜って貰えるかな♪」
「いいですよ。居候しているファミリアと予定が合わない時は、一緒にお願いします」
こうして、僕はアリーゼ、リュー達とも潜ることになった。
それに伴って、僕は覚えたいことが出来た。ウラノスの部屋に行き、必要な書物を借りた。回復系などの遠征に必要と思える魔法を覚えることにしたのだ。龍騎士時代、聖騎士時代にも魔法を覚えたのが、攻撃魔法が主で、回復系も簡単な物だけしかマスターしていなかった。アイリスのような大きな怪我には対応できないのは、この先つらいから。
魔法自体を覚えるのは、割と順調だったのだが、魔力の上限が少なく、高位魔法などの魔力をたくさん使う物は、覚えたけど発動は無理みたいだった。これには僕もがっかり…
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アストレア・ファミリアは街の治安維持に、貢献しているそうで、僕もパトロールに参加することが増えていった。これに関して、居候していた主神は、別に反対もせず、協力してあげてくれてって感じだった。ウラノスの意向でもあるらしい。
ガレキが多い、荒れた地域をパトロールしている時、アイツを見つけた。弱そうなヤツからカツアゲをしているようだ。
「おい、そこのクソガキ!何しているんだ?」
「なんだ?お前、俺に指図するんじゃねぇ」
って、僕の胸倉を掴もうとしたので、手首を捻り、地面にひれ伏しさせた。
「なんだって?さっきまでの勢いはどうしたんだ?クソガキ!」
手首を捻られ、肩を極められて、動けないクソガキ!
「俺はクソガキじゃない…ベート・ローガだ」
「ベートか。クソガキに名前を変えたら?なんで、こんなつまんないマネをしているんだ?」
「はぁ?仕事はないし、金もないからだ」
怠け者、荒くれ者のセリフだな。
「働き口を探してやるから、働く気はないか?」
「仕事による」
「殺し合いなんだが、どうかな?お前は弱いから、直ぐに殺されるかな?」
「お、俺は弱くない…」
強がるベートをひきづって、3階くらいまで連れて行った。
「なら、強さを見せてみろ!」
ゴブリン達の前に置き、僕は後ろで見物をする。
「おい、モンスター相手なんて聞いていないぞ」
声が裏返ったようなベートの声。
「弱い者から金をふんだくるなら、ここでモンスター相手に、力を使え」
ケンカは出来ても、戦闘の基本がダメダメのようで、殺されかかるベートを、僕は助けた。
「この程度の敵に、殺されかかるなよ、クソガキ!」
元の場所まで連れて行き、ベートに小遣いを渡した。
「手持ちにそれしかない、まぁ、2,3日分くらいの飯は食えるだろ?もう、馬鹿なマネはやめろ。働く気ができたら、連絡をくれ」
「なぁ、お前の名前は?どこに行けば会えるんだ?」
「僕はファルコンだ。ヘルメス・ファミリアに行けば、連絡が取れると思う」
僕は、その場を後にした。