※この作品はR-18です。

逆行者たちの世界   作:佐倉ひかり

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ANGLE Re.ATTACK/2

 第一発令所の視線は一つの所に集まっていた。

 

 使徒の殲滅を諦めた国連軍の幹部たちは、NERVに結果を委ねる。

「今から本作戦の指揮権は君に移った。お手並みを見せてもらおう」

 ゲンドウ「了解です」

 幹部たちを見てゲンドウが答える。

「碇君、我々の所有兵器では、目標に対し有効な手段が無いことは認めよう。だが、君なら勝てるのかね?」

 幹部の一人が、ゲンドウを見据えて嫌味を言う。

 ゲンドウ「そのためのNERVです」

 ゲンドウは左手で眼鏡を上げると、自信のある表情を覗かせる。

 

 

 

ANGLE Re.ATTACK/2

 

 シンジ「これから父のところへ行くんですか?」

 下降を続ける貨物列車の中で、シンジは車のダッシュボードに目を落とす。

 ミサト「ええ、そうなるわね」

 ミサト「(エヴァに乗ることは変わらないのか......

  でも、この子に頼るしか今はない)」

 ミサトは携帯を閉じて顔を上げる。

 シンジ「(やっぱり、エヴァに乗るのかな......)」

 シンジの中で、記憶が蘇る。

 ミサト「あっ、そうだ。お父さんから、ID貰ってない?」

 ミサトの声にはっとして、シンジはバッグの中を漁る。

 シンジ「あっはい!……どうぞ」

 シンジは、クシャクシャになった紙をミサトに手渡す。前と同様に紙にはゲンドウが殴り書きした『来い!』というメッセージが書かれていた。IDカードは、その紙の端にクリップで留められている。

 ミサト「ありがと。じゃ、これ読んどいてね」

 そう言って、ミサトは『ようこそNERV江』というパンフレットをシンジに手渡す。

 シンジ「ネルフ……」

 シンジは、手渡された資料の表紙をじっと見つめる。

  今のシンジには、このネルフのロゴマーク無花実の葉(いちじく は)が旧約聖書のようにネルフの実態を隠しているように見えた。

 シンジは、考え込むのを止めて、ミサトに話を振る。

 シンジ「あの、ミサトさんは、このネルフでは何をしているんですか?」

 シンジには一瞬、ミサトが遠くを見ているように見えた。

 シンジ「ミサトさん?」

 ミサトはこの声でやっと答えのでない思考から帰ってきた。

 ミサト「えっ?」

 その時、暗いトンネルを抜けて貨物列車が広い空間へ飛び出す。

 シンジ「ジオフロント......」

 目の前に広がる景色を見て悲しげなシンジ。貨物列車の走る線路は、空中に掛かる橋のように高い高い場所から地下へと続いていた、眼下には、広大な空間が広がり、湖や森林が見える。天井からは無数のビル郡が突き出し、採光窓からは太陽の光が差し込んでいる。

 ミサト「そう、これが私たちの秘密基地、ネルフ本部。世界再建の要、人類の砦となるところよ」

 ミサトは言ったあとに激しく自嘲していた。

 ミサト「(世界再建か......ほんとはその真逆の結末を贈るパンドラの箱なのにね......)」

 貨物列車の執着地点に到着したミサトとシンジは、エレベーターに乗って更に地下深くへと降りて行く。

 案の定ミサトは今回も方向音痴はなおっていなかった。

 ミサト「たしか~、ここのエレベーターをおりたら着くとは思うんだけどね~、まだ不馴れでね。」

 シンジは微かに方向音痴がなおっていないことに安心していた。

 到着のベルが鳴る。エレベーターのドアが開くと、一人の女性が中へ乗り込んで来る。

 ミサト「うっ、あらリツコ……」

 ミサトは気まずそうな表情で白衣姿の女性に声を掛ける。

 リツコ「到着予定時刻を12分もオーバー。あんまり遅いから迎えに着たわ。葛城二佐。人手もなければ、時間も無いのよ」

 その女性は、毅然とした態度でミサトを責める。

 ミサト「ごめんっ!」

 ミサトは右手を立ててサッと顔の前に出すと、腰をかがめて彼女の機嫌を取る。

 リツコ「ふぅ……」

 いつもの事で仕方がないわねという風にして、肩の力を抜く白衣の女性。

 リツコ「……例の男の子ね」

 その女性は、一息つくとシンジの方を見る。

 ミサト「そ」

 ミサトはシンジの方を見て腕を組む。

 リツコ「技術局第一課・E計画担当責任者・赤木リツコ。よろしくね」

 リツコは、白衣のポケットに手を入れたままシンジに自己紹介をする。

「あっ、は......はい、リツコさん。」

 資料を読んでいたシンジは、さっと顔を上げてリツコを見上げる 。

 

 第一発令所

 

 第一発令所のゲンドウは、小さなエレベーターに立って冬月の方を見る。

 ゲンドウ「では、後を頼む」

 そう言ってゲンドウは地下へと降りて行った。

 冬月「二度目の光景だな......」

 冬月は、感慨深い表情でゲンドウを見送る。

 ミサト達は

 真っ暗な空間にシンジを案内したリツコは、照明のスイッチを入れる。

 リツコ「碇シンジ君、あなたに見せたいものがあるの」

 明りがつくと、シンジの目の前に懐かしい巨大なロボットの顔が浮かび上がる。シンジはこの光景を見て胸からなにかが上がってくるような、耐え難い感情になる。

 そして、涙

 ミサト「ううっ、くうっ... うっうっ」

 この光景を見たミサトは驚きを隠せない。

 ミサト「シンジくん!」

 シンジ「うっう......大...丈夫です。」

 シンジは必死に涙の訳を聞かれないように我慢した。

 リツコ「なら結構、説明を続けます。」

 そうして説明を続けようとする、リツコ

 ミサト「リツコッ!」

 ミサトは友人の無情な発言を無視できず大声で名前を呼ぶ。

 リツコ「今は人手もなければ、時間もない

  おまけに使徒は現在も侵攻中、何しろ時間が無いの。」

 ミサトは自分のミスもあり、言い返せずに黙りこんだ。

 ミサト「......」

 リツコ「説明を再開します。」

 リツコ「これは人の作り出した、究極の汎用人型決戦兵器・人造人間エヴァンゲリオン。その初号機。我々人類の、最後の切り札よ」

 まだ十分な説明も終わらないまま、ゲンドウが声を出した。

 ゲンドウ「……久しぶりだな」

 シンジが上を見上げると、高い位置に設置されたコントロールルームのガラス窓から、ゲンドウがシンジを見下ろしていた。

 シンジ「父さん!」

 シンジはゲンドウをきつい眼光で睨む。

  ゲンドウはそんなことは気にせずまたしても声を出した。

 ゲンドウ「ふっ。……出撃」

 ゲンドウは不敵な笑みを浮かべて、何の前触れも無く出撃を命ずる。

 ミサト「出撃!?零号機は凍結中でしょ!?……まさか、初号機を使うつもりなの!?」

 ミサトは、ゲンドウの言葉を聞いてリツコに詰め寄る。一瞬初号機の方を見てから、自分が知っている話の流れとは違うことに困惑して表情を曇らせる。

 リツコ「他に道は無いわ」

 リツコは、出撃は想定済みだったと言わんばかりの態度を見せる。

 リツコ「碇シンジ君?」

 リツコはシンジの方を見る。

 シンジ「はい、わかってます。乗りますよ」

 シンジははっきりと言い切った。

 それに一番驚愕したのはミサトとゲンドウだった

 ミサト「(シンちゃんはこんなに積極的じゃないはず...

  むしろ内罰的なのに、やっぱりおかしい......)」

 ゲンドウ「(未来は変わりつつある、か......

  シナリオの変更が必要だな)」

 使徒の放った光線がジオフロント内部を揺らす。揺れに気づいたゲンドウは天井を見て「奴め、ここに気付いたか」とつぶやく。

『第1層・第8装甲版、損壊』

『Dブロック各所にて火災発生指定域内の全通路を緊急閉鎖』

 使徒が放った第二波の影響を報告するオペレーターの音声が流れる。リツコは、すばやく指示を出す。

 リツコ「現作業を中断、コアユニットはL-01タイプ

  のまま再起動。」

 リツコ「シンジくん搭乗に関する説明を行います、こっちへ」

 

 初号機の発進準備が着々と進められ、メカニックが作業の進捗状況を伝える。初号機のケージから発令所に戻ってきたミサトとリツコがモニターを見守る。

『第3次冷却、終了』

『フライホイール、回転停止。接続を解除』

『補助電圧に問題なし』

 マヤ「停止信号プラグ、排出終了」

 マヤはモニター越しに状況を確認する。

『了解、エントリープラグ挿入。脊髄連動システムを解放、接続準備』

『探査針、打ち込み完了』

『精神汚染計測値は基準範囲内。プラス02から、マイナス05を維持』

 マヤ「インテリア、固定終了」

 マヤは、シンジが乗り込んだエントリープラグが無事に固定されたことをリツコに報告する。

 マヤ「了解。第一次コンタクト」

 それを受けてリツコが指示を出す。

 マヤ「エントリープラグ、注水」

 次の段階に作業を進める。

 シンジ「(L.C.Lの匂いはやっぱりなれないな、

  最初は怪しまれないように、起動指数ギリギリを狙おう)」

 コックピットの中がオレンジ色の液体で満たされていく。シンジは、みるみるうちに液体に包まれ、抵抗なく受け入れる。

 だが、シンジは一つ失敗してしまった。

 それは、シンクロ率のことを考えていて、L.C.Lを抵抗なく受け入れてしまったことだ。

だか、その失敗には気付いていない。

 リツコ「彼にエヴァ関連のことは説明した?ミサト」

 リツコは、シンジから目を離さず聞いた。

 ミサト「まだ一般人だから機密事項に関することは説明してない

  わよ。(L.C.Lを拒絶しなかったし、色々怪しいわね)」

 ミサトはそう思いつつも気にせず、現状の仕事を優先した。

 

『主電源接続接続完了』

 リツコ「了解

  (説明もしていないのにL.C.Lを受け入れるのはまず無

理なはず、そしてすんなりとエヴァへの搭乗に同意

  少なからず上がってきた調査書と性格が違いすぎる)」

 マヤ「第2次コンタクトに入ります。インターフェイスを接続。A10神経接続、異常なし」

 マヤは報告を続ける。

『L.C.L.転化状態は正常』

 マヤ「思考形態は、日本語を基礎原則としてフィックス。初期コンタクト、全て問題なし」

 シンジの乗ったコックピットから見える景色が移り変わり、正常に目の前の映像が映し出される。

マヤ「コミュニケーション回線、開きます。

ルート1405までオールクリア。

シナプス計測、シンクロ率16,8%

  起動指数ギリギリです。」

 マヤは、モニターに送られてくるデータを大声で読み上げる。

  冬月はゲンドウに耳打ちする。

 冬月「どうする碇、これでは目前の使徒殲滅も危ういぞ。

  やはり、戻ってきている時点で歴史は大きく変わってい

るかもしれんぞ、どうする」

ゲンドウは表情一つ変えず答える

ゲンドウ「使えなければ、切り捨てるまでだ」

 

リツコ「(おかしいわね、もう少し出てもいいはず。

でも、起動できればあとは前回のように......)」

リツコはそんなことを思いながら、上にいるゲンドウを見たが

表情一つ変えずにモニターを見ていた。

 

マヤ「ハーモニクス、すべて正常値。暴走、ありません」

 モニターを見つめながらマヤが告げる。

「いけるわ!」

 リツコは、後ろに立っているミサトの方に振り向いてゴーサインを出す。

「発進準備!」

 それを聞いてうなずいたミサトは号令を掛ける。

『発進準備!』

 初号機の体を満たしていたプールの液体が抜かれて水位を下げていく。

『第1ロックボルト外せ!』

『解除確認』

『アンビリカルブリッジ、移動開始!』

 初号機を固定していた巨大な橋が、モーター音を鳴らしながら移動を始める。

『第2ロックボルト外せ!』

『第1拘束具、除去。同じく、第2拘束具を除去』

 初号機の肩から腕にかけて固定していた壁のような機械がスライドを始める。

『第1番から15番までの、安全装置を解除』

『解除確認。現在、初号機の状況はフリー』

 これまで初号機を固定していた器具が全て外され、エヴァンゲリオンの体が現れる。

『外部電源、充電完了。外部電源接続、異常なし』

「了解、EVA初号機、射出口へ!」

 初号機を乗せたブリッジがゆっくりとスライドして、発射場所へと運んでいく。

『各リニアレールの軌道変更問題なし』

『電磁誘導システムは正常に作動』

『現在、初号機はK-52を移動中』

『射出シーケンスは、予定通り進行中』

『エヴァ、射出ハブターミナルに到着』

 初号機が発射台に到着すると、射出口のドアが開いていく。

マヤ「進路クリアー、オールグリーン」

 マヤがモニターのステータスを確認する。

リツコ「発進準備完了!」

 リツコが最終的な確認を取る。

ミサト「了解。……構いませんね?」

 ミサトは後ろの司令席へ戻ったゲンドウの方を振り返る。ゲンドウは机に肘を付いて顔の前で手を組み、落ち着き払った態度で答える。

ゲンドウ「もちろんだ。使徒を倒さぬ限り我々に未来は無い」

冬月「2回もシンジくんを死地に送るとは、もしやすると

俺たちは間違えているのかもしれんな。」

 ゲンドウの傍らに立っていた冬月が自嘲したような笑いを浮かべている。

ゲンドウは、無言のまま一瞬迷ったような表情を浮かべ

る、だがそんな表情はまたしても一瞬で消え去った。

ミサトは主モニターの方へ向かいなおすと、

大声で号令を掛ける。

「発進!」

 

ミサトの合図と共に、射出口内を急上昇で通り抜ける初号機。コックピット内のシンジは、上昇スピードによって発生した強烈な重力に耐える。使徒が市街地の大きな道路へ歩み出たところで、正面の射出ゲートが開き、EVA初号機が地上に姿を現す。

ミサト「良いわね、シンジ君」

 ミサトは、地上に出たシンジに声を掛ける。

シンジ「はい」

 シンジは、決心を固めた表情で前を見据える。

ミサト「最終安全装置、解除!エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!」

 ミサトの合図で、エヴァが射出ブリッジから体を離す。

ミサト「(試してみるか......)」

ミサトはシンジを試すべく、操縦方法などは説明せず指示した

ミサト「シンジくん、あなたの前にいるのが使徒と呼ばれ

るものです、そこに見える赤いコアを狙い近接

格闘で破壊、いいわね。」

ミサトはシンジの出かたをみる

シンジ「あの...操縦方法は?」

ミサトはリツコに説明を促した。

リツコ「シンジ君、今は歩くことだけを、考えて」

シンジ「歩く......」

 シンジは、意識を集中させて初号機の足を前に出そうとする。初号機の巨大な足がアスファルトを踏みしめる。その衝撃でビルの窓ガラスが割れる。

リツコ「歩いた!」

といったものの、最初から動くことは知っていたためモニターに身を乗り出すことはなかった。

シンジ「(やっぱりシンクロ率が低いと動きが..重いッ!

シンクロ率をあげないと、とてもじゃないけど

戦えない!)」

そうして、シンジがシンクロ率を徐々に上げようとして行動しようとしたとき、使徒がこちらに気づき近づいてくる。

ミサト「シンジくん!応戦して!」

あっさり右腕を掴まれてしまう。

シンジの神経に痛みが襲い掛かる。

リツコ「エヴァの防御システムは?」

 リツコがマヤに確認を取る。

マヤ「シグナル、作動しません!」

 マヤはモニターを見つめながら報告する。

マコト「フィールド、無展開!」

 オペレーターの日向マコトが声を上げる。

リツコ「だめか!」

 リツコは主モニターに映る初号機に目を向ける。ついに初号機の腕は、使徒の力に負けて折れてしまう。シンジは驚愕して言葉を失う。

「左腕損傷!」

 マヤが早急に事態を伝える。

「回路断線!」

 マコトがその状態を補足する。

シンジは腕の痛みを我慢し、使徒を蹴り飛ばす。

シンジ「うあ――っ!」

マヤ「シンクロ率89.5%まで上昇!」

使徒まで走り込みながら使徒のA.T.フィールドを中和する。

マヤ「初号機A.T.フィールドを展開!」

そして、本来シンジには知ることのない武器

マコト「プログレッシブナイフ装備!」

ここでリツコには確信するには十分の材料が揃ってしまった。

シンジは使徒のコアめがけて、ナイフで何度もきりつけ、振り下ろす。

追い込まれた使徒は、突然体を変形させると、初号機に巻きついて自爆を決行する。その瞬間、巨大な爆発が起こり、十字架の火柱が空高くまで立ち上る。

ミサト達は最後の圧倒的な力で使徒をねじ伏せた今の戦い方に唖然としていた。

リツコが声をかける。

リツコ「ミサト!」

ミサト「あ、現時刻をもって、使徒殲滅を確認

総員、第二種警戒体制へ移行。」

オペレーターの声が発令所に響く。

『了解、総員第二種警戒体制へ移行。

初号機は回収ルートB-17から回収』

 

次回

懐かしの天井

 

 

 

 

 

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