どうぞ
飛鳥と耀は賑やかな街並を並んで歩いていた。
しかし2人は手を繋ぐんでもなく、並んでいるのにどこかぎこちない。
「春日部さん。そろそろ、お昼にしない?」
「……うん。そうしよっか」
2人は六本傷のカフェに入ると、いつものネコ耳店員キャロロに席に案内される。
「ご注文はお決まりですか?常連さん」
「私はランチセットにするわ」
「パスタセットで」
「はいはーい、ランチセットにパスタセットですね。少々お待ちをー」
キャロロは注文を受け終わると中へ入っていく。
「……」
「……」
未だにぎこちない雰囲気が拭えない2人。とてもじゃないが、デートとは言えない雰囲気である。
「お待たせしましたー。ランチセットとパスタセットです」
「相変わらず早いわねこのお店は」
「うん。食べよっか」
ぱくぱく
つるつる
「春日部さん」
「っ、……何?」
耀の肩がビクリと震える。
「今日私は貴女と話をするために貴女を誘ったわ」
「う、うん」
カチャリとフォークを置き、姿勢を正す耀。
「……春日部さん。私は春日部さんが好きです。大好きです」
ボッと耀の顔が紅くなる。
「もちろん前から好きだった。でもそれはコミュニティの一員として、親友としての好きだった。でも今は、あの日からは1人の女性として、貴女を愛してしまった。……貴女は、あの時私に大好きと言ってくれた貴女は今、私のことをどう想ってる?」
「……飛鳥」
飛鳥は自分の服を掴みながらふるふると震えている。
「……何であの日の次の日からあんな感じになったの?気付いてる?皆の前では普通に話してるつもりかもしれないけど、1度も目を会わせてくれてない。私が何かした?不安なのよ。私はあの日嬉しかった。とても満たされた。でも、春日部さんは後悔してるんじゃないかって、ただその場の雰囲気に流されて、思ってもないことを言ってしまったんじゃないかって!」
飛鳥は目には涙が溜まっている。今にも零れそうな涙を何とか堪えながら言葉を紡ぐ。
「初めてなのよ、誰かを好きになったのが。だから不安なのよ」
「飛鳥。……ごめんね。飛鳥がそんなに不安になってるなんて思いもしなかった」
「…グスッ……うん……」
机を挟んで向かいに座っている耀がガガーっと椅子ごと飛鳥の横に移動する。
「飛鳥。ホントにごめんね。でも、私は後悔なんてしてないし、雰囲気に流されて好きって言ったわけでもない。飛鳥のことは大好き。1人の女の子として大好きだよ」
耀は飛鳥の頭を撫でながら優しい声で言う。
「……じゃあなんで?」
「……うん。あの、物凄く情けない話なんだけど、えーと、」
「な、何よ」
「……その、ハズカシカッタトイウカ」
「へ?」
耀は顔を紅くしながら小さな声で呟く。
「いや、だから、その、恥ずかしくて目が合わせられなかったというか、飛鳥の顔を見れなかったというか」
「」
飛鳥は赤くなった目を見開いて驚く。
すると、飛鳥は不意に俯くと再びふるふると震え出す。
あ、また泣いちゃったかなと思う耀。
「な、何よ!何よそれ!恥ずかしい!?そんなの私だって恥ずかしいわよ!」
「えぇ!?あ、いやごめんね。でももう少し声落とそっか」
また泣いたのかと思っていた耀は激怒している飛鳥に驚く。
「考えられないわ!私がこの1週間どれだけ、いったいどれだけ不安だったと思っているの?」
「ご、ごめん。でもホント恥ずかしくて」
段々声が小さくなる耀を見て、少し冷静になる飛鳥。
「……じ、じゃあ私たちは恋人よね?」
「……飛鳥。本当にいいの?私たちはその、女の子同士だし、一般的にというか」
「何を言っているの春日部さん。ここは人外魔境の箱庭よ。そんな一般的なんてないわ。それに……、それに私は例え現世で貴女と出会っていても好きになっていたと、今なら思うわ」
真剣な飛鳥に真っ赤になる耀。
「ありがと、飛鳥。それとこの1週間、ホントにごめんね」
「もういいわ。本当のこともわかったし。さ、食べましょう。すっかり冷めちゃったわ」
飛鳥は自分のセットを食べ始め、耀もうんと言いながら元の場所に戻る。
その後の食事は先程までとはうってかわって明るい雰囲気となった。
「飛鳥!このブレスレット飛鳥に似合うんじゃない?」
「あら、綺麗ね」
楽しくショッピングをする飛鳥と耀。
「このイヤリングなんて春日部さんに似合うと思うわ」
「……」
「春日部さん?」
しかし、プイッとそっぽを向く耀。
「あ、あれ?春日部さん?気に入らなかった?」
「イヤリングは可愛い」
「そ、そう」
「……」
「あの、では何で怒ってるの?」
突然不機嫌になる耀に首を傾げる飛鳥。
「飛鳥」
「は、はい」
「名前で読んで」
「へ?」
「名前で読んで」
「よ、耀、さん?」
「……」
まだ少し不機嫌である。
「……耀」
「ん」
耀は嬉しそうに微笑む。
「あ、じゃあ飛鳥はブレスレット、私はイヤリング。同じ色のを買わない?」
「いいわね。そうしましょう」
2人は買ったものをその場で着け、仲良く帰路についた。
「ねぇ飛鳥、今日の夜私の部屋に来ない?」
「……ええ。いいわよ」
耀は飛鳥の耳元に近づく。
「飛鳥の不安、全部取り除いてあげる」
「……私こそ、私を不安にさせた分、しっかりと償ってもらうわ。……でも、ごめんなさい耀。夜まで待てないわ」
「へ?」
飛鳥は耀の腕を掴むと路地裏に向かっていった。
恐らくあと2話
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