※この作品はR-18です。

奴隷邂逅   作:紙谷米英

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奴隷邂逅12

 

【22】

 

 涙で濡れた恋人の目尻を指で拭ってやり、そっと瞼に口付ける。少しの塩気と共に、にわかに上がり始めた体温を唇に感じた。依然として愚息は猛々しくいきり立ち、解放の時を今かと急いていた。感極まるブリジット――お前ならもっといい男がいただろうに――のなだらかな腰と膝裏に腕を差し入れ、慎重に抱え上げる。されるがままの彼女は何処かほうと夢見に浸っている様で、ただ胸の前で手を組むのみであった。その姿が余りに可愛らしくて、俺は彼女の頬に接吻を施した。

 腕の中で小さくなっているブリジットを二階の寝室へ運搬し、シーツの整えられたシングルベッドに横たえる。自分もその脇に腰掛けて息を整え、密かに口臭を確認した。うん、多分問題ない。新風の吹き抜ける爽やかさはないが、力強いジャガイモの臭いだ。

 変わらず指を絡ませているブリジットを見下ろすと、何とも気恥ずかしげにはにかんでいる。かなり珍しい反応に当惑するが、ともあれ悪感を抱かれていないのは確かだ。今更になって現状を招いた実感が湧くと、鼻の頭に脂ぎった水気を帯びてくる。連隊に入ってから初めてイラクに派兵されて、人生初の市街戦に臨んだ時よりも緊張している。こいつは手強いぞ。手の甲で額を拭い、意を決して最愛の少女に向き直った。

「本当に、俺でいいのか?」

 彼女は頬を緩め、その細い腕を伸ばして俺の脂の浮く頬に触れる。しっとりと温かみを持ちながらも適度に冷えた手が、男の持ち得ぬ素晴らしい癒しを与えてくれる。

「そうご自分を卑下なさらないで下さい。私、こう見えても面食いなんですよ?」

 明け透けな虚言には思わず苦笑してしまったが、お蔭で張り詰めた気分が幾らか解れた。塩気でふやけた両手をシャツで拭き、そうとブリジットの可愛い頬に触れる。短い産毛の生えた肌はほのかに温かく、それでいて全てを受け入れる柔らかさを備えていた。普段からこれくらいのスキンシップは経ていたが、この場における本行為は全く異なる意味を持つ。遂に訪れた性の時間に、俺は今一度、生唾を飲み下した。

 両者とも無言で互いを見つめ、ブリジットの艶やかな砂色の髪を撫ぜる。野太い指の間を清らかな流れが走り、煌めきが重力に引かれて音もなく落ちる。初見の時から綺麗な御髪だと感嘆していたが、こうして一人の男として、彼女の唯一の恋人としてこの金糸に触れ得られるのは、実際この上なく心躍る。頭を慰撫している内にブリジットの表情が緩んでいき、瞼が閉じられる。これは彼女なりの最大の求愛であり、最善の配慮だ。そのささやかな要望に応えるべく、狙撃銃の引き鉄の最後の部分を引き絞る様に繊細に、俺は彼女の桜貝を啄んだ。

「ん……ちゅ、んむぅ……」

 何を隠そうこの不肖ヒルバート・クラプトン、未だにブリジットに見つめながらだと、キスの一つもままならない。ここまでくると最早童貞の一言で片付けられる問題ではなく、不器用が過ぎるのが原因である。流石に経験あるヴェストに指南を仰ぐのも情けなく今日まで放置していた次第であるが、ひとえに彼女の面倒見がいいお蔭でこうして成り立っている。瑞々しい唇を食んでいる内に、ぴったりと合わさっていた二枚貝が開かれ、その奥から招きの手が伸ばされる。待っていましたとばかりに、ぬめりを帯びた舌が颯爽と俺の愚鈍なそれを捕らえ、自らの内へと引き込む。あたかも柔道の有段者の如く口内で俺の肉板を組み敷くと、ねっとりと甘ったるい唾液をまぶして嬲られる。柔軟ながらも時に硬く尖る舌が絡み付き、淫靡な罠にのめり込んでしまう。

「む、ちゅる、んふ……んぁむ、ちゅっ……ふふっ」

 十秒ほど濃厚なキスを続けて口を離すと、アルコール以外の熱に浮かされて、うっとりと悦に入ったブリジットが微笑む。完全に警戒を解いた面持ちと、究極の自然体とも取れる態度に、こちらも気を許してしまう。

「ヒルバート様、お願いします……」

 穏やかに語り掛ける彼女に無言で首肯し、ぎこちなくマウントポジションを取る。こんな体勢は、ついぞ格闘訓練の相手にしか取った事がなかった。それが今や眼下にいるのは、自分が最も好いている女の子だ。緊迫しない方が異常である。

「明かり、消すか?」

 俺の問い掛けに、最愛の娘は首を振った。

「そうすると、ヒルバート様のお顔が見えなくなるじゃないですか」

 この部屋に鏡がなくてよかった。もしそうでなかったら、きっと自らの旧ソ連国旗みたいな顔を見る羽目になっただろう。

 潤いある花びらに再び口付け、ブリジットの腰の下に手を差し入れる。気を利かせて上体を起こす彼女のエプロンを留める紐を探り当て、その戒めを解く。するりと軽い衣擦れ。耳許でブリジットの口より出でる粘質の音が、己が内の溶岩を滾らせた。彼女の手伝いを受けながら脱がせたエプロンが、脇へとよけられる。この時点で俺は緊張と過去への決別で視界が定かでなかったが、何とか彼女の上半身を包む上着のボタンに指を掛ける事が出来た。眼下のブリジットに戸惑いは見られず、単純に俺の動向を見守っている。ここで当惑の呼気や失笑の大息でも発せられていたら、一生その苦い記憶と寝食を共にしなければならなかっただろう。幼い印象の残る十代と思えぬ思慮深さには、平伏せざるを得なかった。

 上質な上着の前ボタンを全て外すと、その奥から機能性を重視したデザインのブラウスが現れる。飾らないフリルと清い輝きを放つ純白が、暗い色合いに親しんだ眼に眩しい。分厚い布が取り払われたお蔭で、その慎ましやかな丘の上下運動が見て取れた。ただ、ここで俺というやつはとんでもない事実に目を奪われた。決して薄過ぎない生地のブラウス、その下から浮き出る白ならざるただ一つの色――全ての明色を吸収する黒が、胸を覆う形で現れていた。おいおい、まじかよ。この子はてっきり白とか水色とかの清純な雰囲気の下着を身に着けているかと思えば、まさか大人の女性のマストアイテムを持ち出してくるとは。よもやこうなる事を予期して用意したのかとも思える選択に、下半身が尚の事昂ぶった。ちくしょう、十ばかり若返ったみたいだ。

「ブラウス、脱がすよ」

 ブリジットは不安をおくびにも出さず、穏やかに頷いた。了承を得た事で速やかにボタンに手を掛け、指先で慎重に小さなそれを弾く。こういった作業は慣れたもので、要は銃のセイフティを解除する様に機械的にこなせばいい。未体験の領域に脳が混乱していても、指がどうすればいいかを指示してくれる。

 童貞らしからぬ手際で滞りなくブラウスの前立てをはだけさせると、ようやく恋人の柔肌を拝むまでに至った。ブライトンの陽の注すビーチで眺めた事もあったが、眼下にあるのは水着にあらず。カップ周りの主張しないシックな装飾、本体と同色の細いリボンをあしらったモチーフが小粋な、紛れもない下着である。衣服として最終防衛ラインを担う装備品と、その色気にアンバランスな容貌に目を奪われる。いや、その幼げな風貌さえ、今や不相応な色香を帯びた感さえある。つい数分前まで無邪気に俺の世話を焼いていた少女は何処へやら、目下の彼女は妖艶な、しゃなりと濡れた気品を漂わせていた。頬にかすかに朱の差したブリジットの耳許で「綺麗だよ」と囁くと、両手で顔を覆って呻いてしまった。どうやらこの手の甘言には慣れていないらしい。そして俺は愛銃を相手に吐き慣れていた。

 何度目かのキスを交え、唇で彼女の頬をなぞる。ブリジットがくすぐったげに鼻を鳴らした。彼女が抵抗しないのを良い事に、そのまま小さな顎、細い首筋、美しい鎖骨へと舌を這わせ、滑らかな背中を撫でさする。指先に感じる肌の温もりが、自分が人である事を噛み締めさせる。これまで、この手で数多の罪なき人間を殺めたのに――。もう二度と、その呪いには縛られない。彼女の喉から漏れる掠れた喘ぎに、俺は無上の至福と充足を享受した。

 ブリジットのすっかり上気して染まった頬に今一度キスして、俺は切り出した。

「……見ても、いいかな」

 問い掛けというよりは確認といった意味合いの強い要望に、ブリジットは束の間の躊躇をちらつかせた。まあ、流石にここは戸惑う場面だろう。何せ、自身の最もデリケートかつ包み隠すべき部位を異性に晒すのだ。目尻に溜めた涙を脇に零しつつ、彼女は返事の代わりに、胸の前で組んだ手を腹の方へ下ろした。並みならぬ背徳感が肩にのし掛かるのを度外視して、俺は細心の注意を払ってブラのバックホックに手を掛けた。銃の堅牢な部品とは桁違いに脆い金属の輪。それを留める小さな突起を、確かな決意と共に弾いた。

 ぷちん。乾いた音を皮切りに、ナイロンだかレーヨンだかの下着の戒めが解かれた。ストラップを肩から抜かれて重力に捕らわれたブラが、音もなくブリジットの平たい腹に落ちてゆく。既に限界を訴える心臓が、主力戦車のディーゼルエンジンみたいに打ち震える。知らず内に滴る額の汗を拭う事もせず、俺は充血しているであろう眼で、一組の膨らみを見据えた。

 自分が何を見ているのか、須臾の間には理解が及ばなかった。昼白色の蛍光灯の光を強かに反射する、透き通る肌の胸。そこから延びるなだらかな丘を登り切ったその頂には、古今東西の軍事基地を巡っても相まみえられぬであろう色彩――くすみなきベビーピンクの蕾が、いじらしい自己主張を携えてそびえていた。そうか、こいつがおっぱいか――。息を呑んでようやく事態を認識すると、俺は多感な少女らしく緊張と羞恥を露にするブリジットを、下手くそなりになだめた。

「大丈夫、凄く可愛いよ。何処も変じゃあない」

「でも……私の胸、ちっちゃいでしょう?こんなの弄っても、面白くなんてないですよ……」

 全く、何を気に病んでいるやと思えば、年頃の女子らしい実に愛らしい懊悩であった。兵器と同じだ。おっぱいだって、でかいだけが全てではない。

「いいかい、ブリジット。確かに統計上は、お前さんのおっぱいはちっこいかもしれない。それはしょうがない、どうしようもない」

 ブリジットは唇を尖らせて恨めしげな視線を送った。そりゃあそうだ、ここまで聞くと喧嘩を売っているようにしか受け取れないだろう。傍から見れば、やはり俺は最低野郎だ。

「だけど、俺はブリジットのおっぱい好きだぞ。可愛いお前にお似合いだ」

 おどけて自分の絶好調な股間を指差してやれば、目を皿にしたブリジットが穴が空く程に凝視してくる。そこそこ恥ずかしいので、程々にして戴きたい。

「あの……これ、私のせいで……?」

 淡々と首肯すると、彼女は頭頂から湯気でも立ち昇らせる具合に赤面してしまった。酒を盛って誘惑したり、頻繁に性的なスキンシップを取ってくるくせに、自分が攻められると弱いらしい。ただ、無欠過ぎてもこちらが負い目を感じてしまうので、これくらい隙がある方がいい。

「ええと、さっきよりも大きくなっていませんか……?」

 ブリジットが愚息を指して物怖じする。事実、股間のそいつは先程より猛々しくそそり立ち、解放の時を切に待ち望んでいた。

「そうだな。久し振りだから加減が利かないんだろう」

 そして俺が出任せの言い訳を述べるや否や、ブリジットは出し抜けにこんな事を申し出たのであった。

「その……宜しければ、私にさせて戴けませんか……?」

 

 ああくそ、どうなっていやがる。額を押さえた俺は、現状に眩暈を覚えていた。ベッドの上で大きく脚を開き、肥大化した股間を無防備に曝け出す姿勢。そのすぐ前に、可愛い可愛いブリジットがちょこんと座っている。彼女は関心ありげに愚息を注視し、時に感嘆の息を漏らしている。おじさん、そういうの慣れてないんだ。勘弁してくれ。

「じゃあ、脱がしちゃいますね?」

 有無を言わさずベルトのバックルが解除され、瞬く間に〈ブラックホーク〉のチノパンを脚から抜かれてしまう。何というテクニシャン、今やパンツは綺麗に折り畳まれて枕元へと追いやられてしまった。哀れ、後には下着姿で股を晒す間抜けなヒルちゃんが残された。

「ふふっ、ヒルバート様?お山のてっぺん、何か濡れてますよ?」

 天衣無縫を体現する笑みを伴った彼女は、その繊細な指で布越しの我が分身をつつく。いっそ殺してくれえ!反射的に顔を手で覆った俺を、可愛い恋人は逃してくれない。

「駄目ですよ、ヒルバート様の大好きなお顔が見えなくなっちゃうじゃないですか」

 言うなり彼女は自分の胸が丸見えなのを歯牙にも掛けず、俺の手を顔から引き剥がす。俺の赤ら顔が再び蛍光灯の下に暴かれると、彼女はさぞ満足した風に微笑むのであった。ずるいよ、その笑顔。何があっても赦しちまう。

 主導権を握ったブリジットは屈み込み、俺の愚息に向けて語り掛けた。

「こんなところに閉じ込められて苦しいですよね?すぐに出してあげますからね」

 俺は言葉にならぬ叫びを上げたが、彼女は聞く耳も持たずに安物のボクサーショーツを取り去ってしまった。ぺいっ、と剥かれた黒い布切れはベッド外へと放り出され、はらりはらり地に落ちる。下着が展開に失敗したパラシュートよろしく不時着した後には、股を広げて無様に急所を暴かれた野郎が残された。何たる恥辱、俺にだって僅かばかりの尊厳くらいはある。それがついぞ今、遙か年下の女の子に跡形なく蹴散らされてしまったのだ。落涙したって蔑まれる道理はない。むしろ同性からは同情を寄せられるべき光景だ。

「これは……」

 股ぐらにそびえる御神木を注視しつつ、ブリジットは口許に手をやる。それが何を意味しているか定かではないが、ともかく俺の顔面から火が噴き出しているのは間違いない。助けてくれえ!

「あの、ええと……ご立派なご子息をお持ちの様で?」

 半ば引き気味の、ぎこちない表情から繰り出された感想がそれであった。仕方ないだろう、久々で僕の息子殿もリミッターがいかれているんだ。余り責めてくれるんじゃあない。唇を噛んで羞恥を耐え忍ぶ身に電撃が走ったのは、それから数秒後の事であった。ブリジットは意図不明な吐息を漏らすと、にわかに張り詰めた肉茎をちょんとつついたのだ。形容し難くも情けない、悲鳴めいた喘ぎが口より飛び出す。

「ふふっ、敏感さんなんですね。それに、ちょっと漏れてる……」

 そう囁くなり、ブリジットの白磁の指が熱した燃料棒に絡み付く。すべすべした掌が破裂寸前の亀頭を撫ぜ、鈴口に珠を成していた粘液を引き延ばす。つい今しがた躊躇いを見せていた少女の顔は霧散し、眼下には不相応な蠱惑的色香を漂わせる妖女が控えていた。そうか、これが性奴隷の実力か。

 肉茎を弄する為に前屈みになった事で、ブリジットの艶めかしい双丘が重力で下垂する。その情景が飽和状態の我が儘リビドーを尚掻き立て、正直な愚息はその直立姿勢を際立たせる。すげえ、おっぱいが手の届く所にあるよ。

 俺の興奮を手に取るように把握しているのか、ブリジットは容赦ない口撃を浴びせてくる。

「あらら、おちんちんから涎が垂れてますよ?」

 青黒い血管の浮き出るグロテスクな男性器を前に全く物怖じを見せぬ彼女に、いささかの不気味さを覚えた。恋人の小さな手の中で、にちにちとくぐもった水音を響かせるそれは次第に硬度を高め、高粘質のカウパー氏腺液を滴らせる。それが手とペニスの間で気泡を取り込んで白濁し、音もなくベッドシーツに染みを作っていく。悠長に解説なんぞしているが、十余年はまともに弄ってやれていない息子様だ。ぷにぷにした指の刺激だけで軽く達しそうになる。

「ん、直接触るとこんな感じなんだ……温かい……。痛くないですか?」

「大丈夫。凄くいい」

 歯切れの悪い感じで返すと、ブリジットはしたり顔で目を細めた。

「それじゃあ、そろそろしますね?」

 何を。そう口を開きかけた時、下半身に春が吹き荒れた。確かな温かみとぬめり気、強かなざらつきが、赤熱した肉を撫でる。言うまでもなく陰茎を舐られた訳だが、その感覚たるや一言に収めるにはいささか語彙が不足する。粘膜同士が触れた瞬間、下半身を濡れた炎が駆け巡り、神経が極限まで弛緩する感覚があった。戦場で分泌される種のアドレナリンでは、味わえぬ刺激だ。正直、そう長く耐えていられる自信は、おじさんにはない。鼻筋を脂汗が流れる瞬間、ブリジットは責めの手を速めた。

「ぴちゃ、れる……んぅ、ちゅっ……ん、ちょっとしょっぱいかも……」

「今までした事なかったのか?」

 純然たる疑問に、彼女は小さな口で応える。

「話してませんでしたっけ?私、施設にいた頃は避妊具越しにしか性器に触れてないんですよ」

 それが真実であれ彼女に対する俺の評価が変化する事はないが、どうやら奴隷販売企業というのはろくでもない点に配慮しているらしい。

「嫌いになりました?」

 そうして半月型の目で口角を上げる。こちらの気を分かっているくせに、生意気に大人を掌で弄びやがる。これがジェロームの野郎であれば頬を張っているが、相手が他ならぬこの子であるから、立てるべき腹もない。返事の代わりに、でかい手でブリジットの頬を撫ぜた。

「続けますね」

 至福を体現した面持ちで、ブリジットは再度、発色の良い舌をペニスに這わせる。

「ちゅる……んむ、ぴちゅっ、ちゅぷ……。ここ、気持ちいいんですよね?」

 亀頭下部の雁首を指先でつうとなぞり、彼女は肉棒に頬擦りを施す。同じ人間とは思えぬやわこい感触に、鈴口からの雄の臭気が増大する。それを嫌う素振りも見せず、ブリジットは肉竿を伝う細流を丹念に舐め取った。

「んんぅ……れる、んく……。まだ、我慢出来ますか?」

 亀頭を掌で包み込み、にちゃにちゃと下卑た音を立てる。この音響だけでも昇天しそうになるのだが、奥歯を噛み締めて耐え忍んだ。父ちゃん、この子テクニシャンだよ。

 ブリジットの攻勢は止まらない。苛烈ながらも俺の身を慮る愛撫に身を任せている内に、意識は半分ほど飛んでいた。お陰でブリジットの次なる猛攻に、俺は防御態勢を整えないままに望んでしまったのだ。

「中々頑張りますねぇ……。それなら、私も本気を出させて戴きます、よっ」

 瞬刻、陰茎の先端が消滅した。否、ブリジットのその小振りな口腔へと含まれた。手とは比較にならない、肉茎に隙間なく絡む熱い粘膜。くわえ込まれた陰茎が快楽にうち震えるのが分かった。

「んんっ、じゅる、くぷ……ちゅぶ、んはあ……。こういうのは、どうです?」

 素晴らしい趣向だと思います。可憐な唇が赤熱した亀頭にキスの雨を浴びせ、その間から覗く紅が、不定期に脈打つ竿にまとわり付く。唾液の付着した竿が、ぬらりと淫靡な照り返しを放つ。考えるが早いか、口唇がすっぽりと亀頭を収めて舐り回し、高速回転するブレンダーよろしくペニスを蹂躙する。次第に口内に溜まった淫らな汁を、小さな喉で嚥下する音が聞こえた。そう無理しなくともいいのに。せめてもの謝意として横頭をさすってやると、控えめにはにかんで、情に満ちた口淫を続けてくれた。

「ふ、ぁむ……ぴちゅっ、ぐぷ、じゅる、る……んぐぅ、ぷあっ。うう、顎が外れそう……」

「無茶するなよ。そもそも口に突っ込むもんじゃないんだ」

 ブリジットは慈愛に溢れた笑みを向けると、今一度その小さな花で性器を啄んだ。あたかも小鳥の如きさえずりに、かすかに白濁した欲望の滾りが噴火口から這いずり出す。我慢の利かない坊やだ。

「くぷ、んぐ、ぐちゅっ、じゅぷっ、んんぅ……。うん、ちゅぱ……そろそろ限界ですか?」

 こやつ、エスパーか。超能力者嫌疑のかかっている恋人は、子種で張り詰めた陰嚢をやわやわと揉み解しつつ、妖しく口許を歪める。

「んー。それじゃあ、一回ぱっとガス抜きしちゃいましょう」

 言うが早いか、ブリジットは片手で陰嚢を、対の手で茎の根本をリズミカルに扱き上げる。これに止まらず、躊躇いなく頬張った亀頭を、鞭の様にしなる舌で縦横無尽に嬲られた。

「じゅるぅ、ぐぷ、はぁむ、んふぅ……いつでも、いいですからね……?あぁむ、ちゅくぅ……じゅるるる……っ」

 堤防に、塞ぎ得ぬ亀裂が走る。歯止めの利かないダムの崩壊。生涯味わう機会のなかった感覚に、奥歯が小刻みに打ち鳴らされる。快楽に唾液を滴らせる姿は、傍から見れば狂犬に等しいだろう。大の男に人としての姿を失わせる程に、彼女の奉仕は男心を懐柔し切っていた。目の前でありもしない白光がちらつき、遂に欲望の奔流がほとばしる瞬間になって、俺は意図せずブリジットの肩を強く掴んでいた。

「……んぐっ!んんーっ……んぷ、ぐっ……!」

 臨界を超えてほとばしる膨大な性。それが使い古した尿道を通過して、俺の身から直接ブリジットの喉奥になだれ込む。

「むぐぅっ、ぐ……ん、む……んくっ、ん……」

「おいおい……」

 あろう事か、まともな呼吸のままならない苦悶に喘ぎながら、ブリジットは粘つく精液を嚥下し始めた。涙が目尻を経て頬を伝い、零れた白濁と混じってシーツに滴る。これはこれで中々に扇情的な光景だ。

「ふっ、ぐむっ……ん、んっく……」

 やがて口内を満たしていた種子を飲み下すと、ブリジットは満足げにはにかむ。

「やっぱり、あんまり美味しくないですね、これ……」

 少し枯れたその声と献身的な態度に、思わず感涙の滲む思いであった。

 

 溜め過ぎて、大部分が黄味帯びたゼリー化していた精液で汚れた口許を綺麗にしてやってから、再びブリジットをベッドに組み敷く。

「怖くないか?」

 眼下の少女は厳かにかぶりを振り、俺の頬に手を差し伸べた。

「私は、ヒルバート様を信じていますから」

 その台詞はずるいと思う。どうしたって、優しくしてやりたくなるじゃないか。

ガラス細工を扱う様に彼女の顎に触れ、溢れる愛おしさを口付けで小出しに表す。慣れない作業に内心冷たい汗を生しつつ、彼女の操に触れてゆく。脇腹、臍、鳩尾。そうして次第に指が胸の膨らみへと近付く。ふとブリジットの顔を見やると、やはりコンプレックスでもあるのか、かなり羞恥を感じているらしい。上気した頬が可愛そうなくらいに染まっている。

「触るよ」

 首肯の了解を得て、おもむろにブラウスの前立てから手を差し入れる。指先から伝わる柔らかみと温かな感触。自分の持ち得ぬ筋肉ならぬ柔らかみに、一種の感動を覚えていた。

「柔らかいね」

「そう……ですか?」

 怪訝に訊き返す恋人に、俺は相変わらず下手くそな作り笑いを向けた。慎ましい胸をふにふにと、指先が沈み込む程度に優しく揉む。ゴムの様な材質では再現不可能であろう若々しい張りが、指を押し返そうと抵抗する。それがまた、たまらなくいじらしい。

「く、ふっ……んん……」

 いつの間にやら、ブリジットの口からかすかな吐息が漏れ始める。施設とやらで既に身体を弄られていたのか、生娘にしては戸惑いなく感じている。でなければ、生まれ付き感度の高い娘なのか。何れにせよ、取るに足りない事だ。おっぱい柔らかいし。

「ふぁ、あっ……ヒルバート様?もうちょっと、強くしても大丈夫ですよ?」

 そんな真似をして、この工芸品をぶっ壊さないだろうか。緊張で手が尋常ならぬ具合に汗ばむ。だが、その酸っぱい水気をブリジットは度外視した。

 柔らかな椀型の乳房をもにゅもにゅと揉みしだいていると、段々とブリジットの体温が上がるのが分かる。少なからず、俺の稚拙な児戯に嫌悪感は抱いていないらしい。反発を受けないのをいい事に、そのまま指で可愛らしい蕾を探り当て、大事に転がしてみた。

「ひんっ……!」

 虚を衝く悲鳴に身がすくみ、探索の手が止まる。だが、すぐにブリジットが無言で次の行動を欲する視線を送ってきたので、慎重に慎重を重ねて胸に手を置き直した。

 掌に吸い着く心地の柔肌をこねていると、ブリジットの身じろぎでブラウスの生地がシーツに垂れて、彼女の上半身が文字通り丸裸になる。俺の語彙がケンブリッジの教授様並みに豊富であれば、目の前の芸術を口述するだけで文学賞が取れるだろう。それが今や、自分だけが堪能する事の出来る存在かと実感すると、この愛しい谷間に顔を埋める欲求を抑えられなかった。年甲斐もなく急に甘えを露わにする俺に、ブリジットは束の間戸惑ったが、その矮躯にたたえられた極上の母性を以て応じてくれた。

「普段から、もっと甘えてくれていいんですよ?その方が私も嬉しいですし」

 誘いは有り難いが、おじさん不器用なんだ。こういう時でもないと、感情を表現出来ないのよ。

 どれだけの間、そうしていただろうか。彼女の滑らかで温かな愛情を十分に味わうと、俺はようやく魅惑の谷間から鼻を引き上げた。

 ブリジットのすっかり火照った身体に触れ、その反応を愉しむ。何故か人を惹き付ける色味の乳輪をなぞり、両手で寄せ上げる様にしてこね回し、形の整った小粒の乳首を吸う。ほのかに甘い――多分、俺の頭はおかしくなっているのだろう――蕾を舌先で転がすと、ブリジットが足を電気ショックでも喰らったように突っ張る。その様子が個人的に面白いので、何度も乳頭に舌の味蕾を擦り付けた。舐めながらブリジットの顔を見やると、首まで真っ赤になって口許を押さえ、声を殺している。可愛いやつめ。快感に悶える声は聞きたいが、口を覆う手を引っ剥がすのは可愛そうなので止した。

 ひとしきり胸を味わい、今度は手を下半身へとシフトさせる。未知の体験に、自分の拍動が激化するのが分かる。言葉はなくとも俺の動作の意味察したのか、ブリジットの喉が小さな音を立てた。

 数分前とは逆の順に上半身の各部位を辿り、指先がしっかりしたスカートの裾に到達する。そこにマフィントップ――腰部分の、衣服に乗っかる贅肉の俗称――の見られない、程良く締まった腰のラインに目を奪われた。ここでようやく気付いたのだが、その安定感のある腰には男の衣類には見られぬ布が巻き付いていた。そこで俺はある種の推測と期待を込め、囁く様にして問い掛ける。

「下ろすよ」

 何度目かの落涙を伴いつつ、彼女は首を縦に振る。ここまで来てしまったのだ。双方、どの道後には退けまい。両者の覚悟が決まったのを確認して、俺は深みあるブラウンのスカートを留めるホックを無力化した。腰を浮かすブリジットの身から、高品質な衣類が引き剥がされてゆく。初めにブラと揃いの黒いショーツ――紐だ!――が姿を現し、次に兵士にとって命の次に大事な脚が――無駄毛の一本も存在しない、つるりと健康的なおみあしが眩しく輝く。だが、その上を走る黒く艶やかな線に、俺の脳味噌はぐらりと揺さ振られた。――ガーターベルト。人はその衣をこの様に呼称する。こやつめ、大人びた下着のみならず、こうもフェティシズムをくすぐる兵器まで忍ばせていたとは。一度役目を終えた男根が、再稼働して次の弾薬を装填した。こいつはエロい!

 彼女の隠し玉を目の当たりにして尚も赤熱するペニスをなだめつつ、スカートを脚から抜き取る。ブリジットは上半身は前がはだけ、下半身は色気満載の下着を晒すという、垂涎たまらない様相となっていた。いやあ、これは誰にも見せられんな。脱がせたスカートを軽く畳んで脇へよけ、改めてブリジットの臀部を検分する。大腿は美味しそうな適量の筋肉が付き、触れてみると確実な弾力が指を跳ね返す。運動には理想的な脚だ。そこから少し内側へ視線をずらせば、まさしく女の子の秘境が、外部との接触を拒絶する薄っぺらいヴェールに覆われて広がっている。とうとう来てしまったか。シャツの裾で額を拭う。これこそが俺の新たな戦場――おまんこである。

「……止めるなら、今が最後の機会だぞ」

 愛する少女は呆れて、それでも何処か予想していたかの様な顔で返した。

「こんなに待った私を、女にしてくれないんですか?」

 不細工なでぶの口からは、決して聞きたくない言葉だった。案ずるなかれ、他でもない俺の恋人は、類稀な美少女であった。

 自分の決意が鈍らぬ内にと、震える手でシンプルなショーツのサイドリボンに触れる。この戒めを解いた時――それこそが、彼女の全てを理解する瞬間だ。

「解くよ」

 深い首肯。緊張で首の皮膚がぴりぴりする。蝶結びの片一方を摘み、自分の方へと引く。するり。小さな結び目が崩れ、黒い隔壁が綻びを見せる。そのまま引き続けると、妖艶な布切れは遂にブリジットの身から引き離された。

 ――感動。包み隠さず言えば、正しくその一言に尽きる。野郎にとっては障害でしかない布の隔壁を覗いた先に、その聖域は横たわっていた。柔らかな起伏を描く恥丘と、その頂に僅かに繁茂する頭髪と同じ色の恥毛。クリトリスと見られる突起はひたすら小さく、黒ずみの一点も認められない純潔の証明たる秘裂は、その内側がほんの僅かに外界を覗いている。

「あの、流石に恥ずかしいので余り凝視されると……」

 ブリジットはそう言って目を背けるが、これが刮目せずにいられるか。指で大陰唇に触れれば、何とも柔和で独特の感触がある。スケベ心と一緒に巨大な探求心が芽生えたが、相手は大事な彼女のおまんこだ。考古学者が遺跡調査をする様に、慎重に事を進める必要がある。繊細な女性器に触れるには、俺の野太い指は硬過ぎる。そう考えて自分の右手に目を落としたが、どうやら先の考えは杞憂である事に気付く。既に汗でぐちゃぐちゃにふやけていたからだ。

「触ってもいいか?」

 口に出してから後悔したのは、どういう訳か自分の声が震えていたからに他ならない。情けないやつ!そんな俺を嘲る事もなく、ブリジットは微笑を浮かべる。「お好きな様に」了解は得られた。あとは俺がちゃんと責務を果たすだけだ。

 狙撃の直前の様に、肺に酸素を取り込んで一部を吐き出す。問題ない、俺ならやれる。そうして細動の止まらない両手を、そうと二枚の大陰唇に置いた。弾性の肉を両側に押しやると、男として実に欲求をそそられるサーモンピンクが現れる。触れる前から皮肉は愛液でとろりと煌めき、その細い穴ぐらに男性器を受け入れる手筈を整えていた。全く、いけない子だ。こんなブ男を相手に濡らすなんて。

 理性の手綱を離さない様に留意を払い、ブリジットに股を開かせる。うーん、従順過ぎるのも問題だなあ。開脚で出来た空間に身を割り込ませ、すっかり柔らかくなった指の腹で秘肉に触れる。単なる水ではない液体が己が指にまとわり付き、触れた部分のヒダが不気味に蠢く。その動きが別の生物のものに見えてきて、一瞬の不気味さを覚えたのはブリジットには言えないだろう。ともかく、自分の目を慣れさせる為にも、更に近距離での偵察を行う必要があった。職業柄、偵察は大の得意分野だ。

 ブリジットの陰唇を開いたまま顔を近付け、鼻を働かせる。……何というべきか……弱々しい発酵臭がする。はっきり言ってそう好きな類の香りではなかったが、これが愛する彼女の大事なところの個性だ。つまり、俺で言うところの「ちんこの臭い」だ。自分のナニを彼女の口に突っ込んでおいて、自分は嫌よとほざくのは、人として許されないだろう。ある意味で義務感に近い意志を以て、俺はそのピンクの粘膜に舌を伸ばした。

「ん、ひっ……!」

 ブリジットを辱しめぬ様、可能な限り音を立てない様に。そして、脆弱な粘膜を傷付けない様に、じっくりと愛撫する。舌先に微弱な酸味を感じる。これが、ブリジットの味。少々動物的で奇妙な感動を噛み締めていると、舌を突き入れている穴の奥から、新たな粘液が湧き出した。どうやら、ちゃんと感じてくれているらしい。これはこれで、中々に嬉しい。連隊に入って初めて敵を殺した時に似た興奮を抱きながら、今度は指を膣に挿入してみる。ゆっくり、それでいて産道を解す様に拡げてやる。その内に、ブリジットの声に余裕がなくなってきたのを察知した。

「あっ、く、んああ……っ!……ヒルバート様、もうそろそろ……!」

 頬を伝う涙が、彼女の感情を物語っていた。俺は指をそろりと肉壺から抜き、ブリジットの股ぐらから首をもたげた。

「そうだな、俺も辛抱たまらなかったんだ」

 我ながら、酷い口上もあったものだと後悔した。

 

 いいか、落ち着けヒルバート・クラプトン三十歳。ブリジットの鍛造中の鋼の如く熱を持ったペニスに添えた手が痙攣する。曲がりなりにも相手は処女、年上の俺が気後れしてどうする。そうは言っても、歓喜より恐怖が先立ってしまうのは仕方ない。何せ童貞、ここから先は手探りの五里霧中なのだから。

「怖いか?」

 その言葉を本当に向けて貰いたいのは自分だったが、余裕ぶって尋ねてみる。

「全くと言ったら、嘘になっちゃいますね」

 そして、ちょっとだけ引きつった笑みを差し向けてくれる。見よ、これぞ大人の余裕というやつだ。彼女の瞳に映っているであろう、みっともない自分の姿を考えない様に、俺は膨張した亀頭を花弁に押しあてがった。可愛らしくすぼんだ肛門の側から、射線をゆっくりと上に運ぶと、ずるりと導かれる様にして亀頭が肉に埋没した。分厚い皮膚に覆われた指では感じ得なかった、ある意味で暴力的なまでの刺激が、陰茎を通して全身に行き渡る。

「いっ、う、ぐ……!」

 勝手に昇天しそうになっていた意識が、その喘ぎで地上に戻ってくる。ブリジットの端正な顔立ちは苦痛に歪み、眉間に深い皺が刻まれるまでに力んでいた。脱力する様に諭しながら、時間を掛けて腰を進ませる。太い荒縄で締め付けられるかと感じられる程の圧力。侵入者を拒まんと、膣は全力で肉棒を押し返そうとする。猛烈な抵抗を受けながらも、ブリジットの苦痛を可能な限り短く済ませる為に、肉を引き裂く前進は止めなかった。

「あぐっ、ううっ……!ぐっ……!」

 開拓に犠牲は付き物――というのは、常に侵略者のエゴとして掲げられてきた。今の俺がその侵略者だ。股間の槍を通して、彼女の身体を傷付けているのが分かる。辛くて、苦しくて、涙が出そうだった。

「ヒルバート様、お願いします……」

 泣きじゃくりながら、ブリジットは彼女を痛め付ける俺に手を差し伸べてきた。全く、お前って女は本当に馬鹿だ。その馬鹿の期待に応える為に、俺はその手を取った。瞬間、彼女は安堵の表情を浮かべてくれた。

 そうして、最後の一押しがブリジットの身に収まった。彼女の矮躯に自分の粗暴なナニが呑み込まれたかと思うと、不思議と多幸感に包まれる。膣は今や柔らかくペニスを包み込み、程良い刺激を与えてくれている。一仕事を終えたブリジットの顔を見る限り、未だ痛苦の第一関門を乗り越えた事を知らないらしい。

「よく耐え切ったな。おめでとう」

 繋いでいない方の手で、ブリジットの頬を撫ぜる。珍しく、じっとりと汗ばんでいる。そのぼろぼろの姿でさえ愛おしいと思ってしまうのは、恐らく別の病に侵されているからだろう。

「分かりますよ……。ヒルバート様が、私の中にいます……」

「そうだな、ずっぽりだ」

 濡れて重みを増した髪を掻いてやると、飼い慣らされた犬の如く擦り寄ってくる。頭から立ち昇る香りが強くなっていて、吸い込むと前後も分からなくなるくらいに酩酊した。

「あの、動いて戴けませんか?」

「まだ痛いだろう。しばらく待った方がいいんじゃないか?」

 この提案に、彼女は強かに否定を示した。

「初めては、ずっと憶えておきたいんです。いけませんか?」

 こいつは多分、同性に嫌われるタイプだろうな。失笑しつつ、俺は片手でブリジットの腰を掴んだ。

「我慢出来なかったら、すぐに言えよ」

 言った傍からブリジットが余りに力強く頷くので、それ以上たしなめる気にもなれなかった。その言葉に従いってぎこちなく腰を引くと、薄くなった血液がぬらぬらとペニスにへばり付いていた。何だろう、えらい興奮する。

 元からしとどに潤っていたせいか、肉槍の抽送は大変スムーズだった。蜜壺に陰茎を潜り込ませる度に、なみなみと満たされた愛液が淫靡な水音を立てて劣情を誘う。出来るだけ優しくしなければならない。野蛮な雄になり切れない自分が恨めしいが、これが性分というものだ。致し方ない。依然としてブリジットのいたたまれなくなる悲鳴は止まないが、彼女は決して制止の要求を出さなかった。むしろ痛みに苛まれながらも、懸命に腰を動かそうと図らっていた。どうしようもなく愛いやつめ。

 片手を結んだまま、時に胸を揉みしだき、敏感なクリトリスを転がし、互いに唾液まみれになりながら唇を啄む。股間から響く、にちゃにちゃという音が下心を掻き立てる。マスかきとは明らかに異なる甘やかな快楽に、意識が沈みゆく。もっとこの娘を味わいたい。腰を密着させて亀頭でブリジットの最奥を擦ると、四肢をびくつかせてしがみ付いてくる。どうも不快ではないらしいので続けていると、猫の様な鳴き声を上げてぐったりとしてしまった。

「おいおい、まじかよ」

 ブリジットの呼吸は乱れて荒く、瞳はとろりと夢現に俺を見据えている。俺の予想が正しければ、彼女は……。

「ん、えへへ……いっちゃいました……」

 そんな風に茶化して舌を出す。どスケベ娘め!でも嫌いになれない!もしかすると、彼女は膣の傷の痛みさえも、快感として受容しているのやもしれない。そう考えると、そら恐ろしさに背筋が冷えた。

「ね、ヒルバート様。もっと近くに行っていいですか?」

 言うなり彼女は脚を俺の身に絡ませ、上体を起こして抱き着いてくる。膝の上に、幸せな重みを感じる。

「こういう、甘い感じはお嫌いですか?」

「いや、いいんじゃないか。恋人っぽくて」

 その響きに満足したのか、ブリジットはぐりぐりと俺の胸に頭を埋めてきた。大人びていたり、餓鬼っぽかったり、何と忙しいやつだろう。多少動き辛くはなったが、ブリジットの身体を跳ね上げる様にグラインドを再開する。

「はっ、んんぅっ、あうぅ……そこ、気持ちいいよお……っ」

 先程よりも腹側のヒダが擦れるせいか、ブリジットの嬌声が顕著になる。場所は定かではないが、予想が正しければGスポットを掠っているのだろう。これはもう一回くらい達したとしても不思議ではないぞ。

 ピストン運動で白く泡立った愛液が秘所から滴り、水音がより淫猥な響きを含む。無数のヒダが剛直を扱き、俺を再び絶頂へ導こうとぜん動する。ブリジットが俺の胸に、首筋に、唇にキスし、熱い愛を囁く。分かっているよ。こんなやつにここまでする女が、俺を嫌っている訳がないじゃないか。

「あっ、んああっ!くっ、ひぃ……!ヒルバート様ぁ、わたしっ、また……!」

「ああ、いいよ。ちゃんと支えてるから」

 格好付けてそう返したものの、俺とて悠長に構えてはいられない。再び精巣から薬室に装填された猛りが、発射段階に入っていた。点火のカウントダウンは始まっており、いつ暴発してもおかしくない。

「ひあっ、ぐうぅ……だめぇ、もう……っ」

 連隊で鍛えた腰の動きを速め、ブリジットへの責めを強める。破瓜の痛みに関しては、彼女の場合は考慮せずともどうにかなるだろう。決して耳障りではない、嬌声と呼ぶには少々上品な彼女の掠れた喘ぎを聴きながら、俺もまた高みへと上っていった。

「んあっ、く、ふぅっ……こんなの、わたしっ、初めて……!」

「独りで弄るのと違う?」

 そう訊くと、綺麗な髪を振り乱しながら赤面してしまう。普段から女の武器を行使するくせして、攻められると滅法弱いというのが、この日の大きな収穫だろう。

「ヒルバート様っ、キスっ……キスしてぇ……っ!」

 とうとう取り繕う余裕さえなくなったのか、肉欲を剥き出しに接吻をせがんでくる。達する時は少しでも近付きたいという、乙女心というやつだろうか。俺はブリジットの細い腰をしっかと抱き寄せ、彼女の最も深いところに一撃を打ち込んだ。

「んんーっ!あ、ああ――――っ」

 ブリジットが絶頂を迎えるのと時を同じくして、剛直を締め上げる膣がにわかに収縮する。それに耐え切れず、俺は二度目の、人生史上最大の幸福に包まれた射精を体験した。極限まで張り詰めた性器が激しく脈打ち、己が内に潜む渇望の全てを吐き出す。複数回に分けて放たれたそれは、ブリジットの身体の中に、確かに届いた。

 クラスター・スペルマを受けて往生したブリジットは、しばらく俺の胸の中で死んだみたいに沈黙していた。それから二分ほどであろうか、彼女はやおら頭をもたげると、軽く俺にキスしてから口を開いた。

「あの……ご満足、戴けましたか……?」

 至極満ち足りた面持ちであった。「凄くよかった」と応じると、にこと微笑んで、そのまま魂が抜ける様に寝入ってしまった。やはり十代の少女、体力馬鹿の特殊部隊員に付き合うのは無理があったか。大人しい寝息を立てる彼女をそっとベッドに横たえ、自分もその隣に横たわる。安心し切った顔で鼻を鳴らす恋人を前に、俺は明朝、どんな顔でこの子と向き合えばいいかを思案しなければならなかった。まあ、こんな苦悩もこの子がいなければ出来なかったのだ。今は面倒事も含めて、人生を精一杯楽しむのがよかろう。

 

 

【23】

 

ロンドン某所 二三時二五分

 精巧なカッティングの施されたショットグラスのスコッチを干すと、その男は書斎机のデスクトップを操作し、パスワードの掛かったフォルダーを開いた。ほの暗い室内に彼以外の人影はなく、しんと静まり返っている。空になったグラスにスコッチを注ぎ、男はどよんと曇った双眸でディスプレイを睨む。その先には一枚の画像ファイルが拡大されて表示され、中央には露出の少ない、アイボリーのメイド装束に身を包んだ少女が、日用品の詰まった紙袋を抱えて通りを歩く姿が写っている。男は忌々しげに少女を睨み、同じフォルダー内のPDFファイルをダブルクリックする。即座にA4用紙一枚分の文書が展開されると、彼はまたしても不快げに眉根を潜めた。

 文書には宛名や日時・作成者の名の記載はなく、題目さえも記されてはいなかった。そこにはただ、ヘリフォード郊外にあたる住所が一つと、二名分の顔写真付きの簡素な情報が綴られているのみであった。片一方は男性で、生年月日と職業――陸軍少尉・SAS所属――そして百八十センチを裕に超える身の丈や親類関係といった要素がまとめられている。隠し撮りされた様に写りの悪い顔写真からは、その顎に並ならぬ規模の傷跡が走っている事が窺える。

 傷跡の男性の下には、それより遥かに多くの記述を持つ少女の情報が載せられている。顔写真の彼女は人形の様に端麗であったが、双眸は暗く沈んだ色をしており、誰が見ても健康なイメージの抱かれない容姿であった。記述には彼女の瞳の色から血液型、通院歴や血縁関係等が網羅されている。だが、血縁関係を示す図には母方の親類しか記載がなく、しかもその名の全てに、赤い文字で『死亡』という単語が伴われていた。

 男が目頭を押さえながら何杯目かのスコッチを胃に流し込むのに合わせて、彼のいる書斎のドアが叩かれた。彼が不機嫌を露に――これが彼の常であった――応じると、ドアが静かに開かれる。書斎に足を踏み入れたのは、華美な装飾を施された衣服を纏った少女で、歳は二十にも達していないくらいに見える。その実、この少女はつい半年前に男に買われた性奴隷であり、その眼は絶望に打ちひしがれていた。

「何だ、今日はお前か。コリーン?」

 名を呼ばれた奴隷は深々と腰を折り、頭のヘッドドレスを揺らす。

「今宵のご寵愛を賜りたく、参りました。――アボット様」

 男――保守党議員が一人、マーティン・アボットはデスクトップをシャットダウンすると、光沢の強い革椅子から、その脂肪の乗った尻を浮かせた。そしてスコッチの瓶とグラスを片手に握ると、醜悪な笑みを浮かべて奴隷の顎を掴み、寝室へと向かった。数々の少女が涙を飲んだ、その部屋へ。

 

 

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