執拗に崩れた落ちた遺体にフランシスは発砲し続けていた。
「死ね、死ねェッ!! 俺の女によくも手を出してくれたな!! ああ!?」
幾度も撃ち込まれた弾丸で、元総務の頭部は粉々になり下顎より上が屑肉のようになっていた。
怒りで我を忘れていた。狼が、虚無へと消えた牡狼が今までに見せなかった怒りを露にしていた。
ぎろりと炯々と輝く赤い瞳がアイナを射抜いた。
狩をする野性獣の瞳だった。鷹の前の雀、蛇に睨まれた蛙とでもいうのか、脊椎の芯から凍え固まってしまう眼力だった。
「なんでここにいる、アイナ」
アイナの元まで来たフランシスが真上から見下ろす。
真っ暗で顔の輪郭も掴めないのに、真っ赤な二つの瞳だけが真上から見ていた。
「わたしは……あ、あの家から逃げ出して――」
「ヤツの臭いだ――抱かれたのか?」
「私は――」
「抱かれたのかッ!!」
怒鳴り訊いてくるフランシス。
頭を手で覆い肩を振るわせ怯えてしまう。
絶対的な序列、体の芯から理解する上下関係。フランシスはアイナを支配している。
あの家で静かに待っていれば良かったのに、逃げ出し。挙句ここで彼に見つかった。
殴られる、ひどい目に合う。
目許に涙がにじみ、年甲斐もなく小便を垂れてしまう。
「抱かれたのか、アイナ」
「口だけだ、純潔は……まだだ」
震えた声でアイナは言った。
フランシスの息づかいが聞えない。まるで無が目の前に立っているようであった。
虚無がアイナを見下ろしている。
フランシスの手が静かに伸びてくる。
「――ヒっ」
打たれる。
瞼を閉じ唇を噛み痛みに備えたが、温かな手が頬に触れた。
「馬鹿が、あの家にいればオレがお前を養ってやったのに。本当に馬鹿野郎だよ」
静かにアイナを抱きしめたフランシス。
大きな胸板に顔を抱き寄せ、
僅かに香る煙草と無煙火薬の匂い、それ以上に感じる彼の存在感。
全身を覆う彼の感覚が、アイナに失われていた「護られている」という感覚を与えられる。
父に抱きしめられているかのような、大きな、とても大きな彼の胸。
「帰ろう、あの家に。あそこに居てくれ」
初めて感じるフランシスの優しさ。
アイナは必要とされている。フランシスを撃ったにも拘らず、それが復讐の途中過程にあるものだったとしても、アイナは誰かに必要とされている。
一度として感じなかった自身の存在理由。
ニコラスに拾われたときも、大陸防衛警備機構に着任したときも、アイナ自身が必要ではなかった。必要なのは
今は違う、アイナ自身が必要とされている。
「う……うぅ、ウアアアアアアアアアァッ!!」
大声で泣いていた。
今まで耐えていたサルヴィエの調教がどれだけ心にヒビを入れていたか理解する。
精神的に疲弊していた。
あれだけ恐怖していたフランシスに、アイナは救われていた。
疼いていた情欲も雪がれ、フランシスに身を明け渡していた。
「帰るぞ、アイナ。オレたちの家に」
「スン……う、うん」
涙と鼻水でぐちゅぐちゅになったアイナの顔をハンカチで拭く。
フランシスは襤褸ではない大陸防衛警備機構のモッズコートをアイナの肩に掛けた。
不思議な余韻がアイナを包んだ。
フランシスの家に戻り、アイナは体に張り付いた穢れを濯いでいた。
風呂桶に張ったお湯に、肩まで浸かりこの家に軟禁されて初めての安らぎを得た。
筋肉を解す温かさ、心臓の辺りに伸し掛かる水の重み、今までに溜め込んでいた疲れが湯に溶け出し霧散しているようであった。
静かな吐息が漏れる。心安らぐ感覚に、目許も蕩けてくる。
欠伸が出そうになったとき、後ろより抱きしめる者がいた。
「細いな、お前の体は。折れちまいそうなほどに華奢だ」
「わ、私だって女だ。ゴリラみたいな筋肉だるまはいやだ」
共に浴室に入ったフランシスと禊をしているだ。
体に着いた血や、唾液を洗い流し。身を共にする準備をしているのだ。
フランシスはアイナを抱きこむようにして風呂に入り、アイナは膝の上で共に入浴していた。
風呂に二人、密着した状態で入っていれば自然とフランシスを意識してしまう。
「俺って言わなくなったのか?」
「へ、変かな?」
「いや、いいじゃねえか?
「――――ッ!!」
初めて言われる褒め言葉。
自覚できてしまうほど今のアイナはフランシスに
恥ずかしすぎた、フランシスはアイナを悶死させる気だ。
耳までちりちりと痛むほど血が上り、顔は真っ赤に染まった。
「か、
「そうやって照れ隠しをしているのがいつにも況してな」
「――――」
堪えられなくなったアイナは肘鉄で何度もフランシスを小突いた。
本気のものではない。猫のじゃれ合いのようなモノだった。
ばじゃばじゃと湯船が波打ち、顔を真っ赤に染めたアイナ、それを楽しげに笑うフランシス。
邪気のない。初めての二人の時間。
「よかった――お前が生きていて」
首筋に鼻を押し当てたフランシスは目を瞑り、静かにそういった。
少しだけ腰に回して腕の力が強まりきつくアイナを抱いた。
「あのままヨシワラ遊郭でお前が他人に買われていたなんて、想像したくない」
「逃げ出して――ごめん」
「いいんだ。このまま、このままお前がここに居て、お前と決着がついたらそれで」
淋しげな声でフランシスは言った。
このままここに居てほしい。だが
矛盾した欲望。生存を望みながらその者との死闘を望んでいる。
壊れた欲求に
どうかしているが、アイナはフランシスを受け入れた。
「――ん、」
フランシスと唇を重ね合わせた。
湯で火照るしっとりとした唇、理性的で愛を求める人間的仕草。
なんてことは動作であった。しかし今迄にない幸福感があった。
「ちゅ、ちゃ……フランシス、ん、あぁ、ちゅっ」
激しさのまるでないキス。元総務とは対照的な理性に満ちた接吻。
次第に舌を絡め、互いの唾液を交換するように口の中へと入っていく。
サルヴィエにフェラドールで改造された舌も、快感の受容体を抑制するシールデバイスをうなじに張り普通の味覚や感覚を通常に感じられる舌に戻っている。
「シュ、チュ……チュパ、ん、じゅる、くちゅ」
互いの舌が絡み合い、白い歯を舐めていく。
前歯の裏など普段は歯ブラシか自分の舌ぐらいしか触れない部分も他者に触れられている。
静まり始めていたあの甘美な疼きが蘇り、腰が浮いてしまう。
湯船の中でも感じる己の愛液が秘所より溢れ出る感触。ちらりとそちらに目をやった。
透明な湯の中に、ほんの僅かに白色の筋が湯の中を途切れることなくゆらゆらと漂った。
(うぅ……わ、私、キスだけで本気汁、漏らしてる――)
溜め込んでいた欲求が一気にあふれ出し、愛液をとめどなく溢れ続けさせていた。
フランシスの唾液を飲み込むたびに子宮が脈動し、血液が血管を打つ感覚がより鮮明に感じる。
するりと伸びたフランシスの手の平がアイナの胸を掴む。
「ん、ふっ……じゅる、まって、んん」
無垢な色の乳輪の縁を指でなぞり、弱い刺激を与えてくる。
くすぐったいような刺激に乳首は敏く反応する。小ぶりだった乳頭が徐々にだが勃起し平常時より明らかに大きな膨らみを恥ずかしげも無く露にした。
「こんな愛撫で乳首勃起させて、感じやすい胸だ」
「うんンっ! 違うっ、フランシスの手付きが厭らしいからだっ!」
「そいつはオレの愛撫が巧いって取っていいのか?」
「う――い、いわせないでっ」
恥ずかしがるように頬を染めて上目遣いでフランシスを見上げる。
その表情に気恥ずかしそうに同じように頬を染めていたフランシス。
そしてアイナはしっかりと感じ取っていた。
むくむくと熱く硬直した逸物がアイナのむっちりとした尻に火傷させんばかりに押し当てられていた。
「お前といるとEDも改善しそうだ」
「EDだったの?」
「相手がお前だとオレは違う見てぇだ」
ペニスがアイナの尻に脈を打ち、滾るそれにアイナの心臓が強く高鳴った。
これならいついつでも始められる。
わざと腰を少し浮かせ、尻に擦り付けるように動く。
「おいおい、積極的じゃねえか」
「こんな、はぁ、ガチガチにして……私とセックスしたかったんだろ」
湯船の中で体を捻りフランシスと向き合った。
いつもダックテイルにきめている髪形もお湯で解け、艶やかな輝きを放っていた。
海のようなアントワープブルーの瞳に引き込まれそうだった。
「
長い指がアイナの眼帯をやさしく外す。
「眼閉じてないで開けよ」
「……」
アイナはゆっくりと右目を開いた。
出来るだけフランシスの前では見せたくなかったこの瞳。
彼から
フランシスはアイナの頬を撫でる。
「綺麗な瞳だ」
「元の色だったら、
「今は言うな」
フランシスはそういい口を手で塞いだ。
アイナもそれを受け入れた。そして
湯よりも更に熱く感じる剛槍がアイナの柔らかな肉壺に宛がわれる。
トクントクンとリズムよく打つ脈、その存在感。
アイナの処女穴の中に、『初めて』の牡が張り込んだ。
「ん……入って、きたアアアアアぁっ!」
自分自身でも信じられない嬌声を上げて、柔らかな牝肉を押し分けて入るペニスを感じていた。
まだ亀頭のえら位までしか入っていないのに、貪欲にアイナの牝は快感を獲ようとうねる。
色鮮やかな肉襞がしっかりとペニスを掴んで放さず、更に奥へ奥へと誘う。
ペニスを中腹まで飲み込んだ恥部は唐突にその進行を阻んだ。
僅かに固い薄い膜がフランシスのペニスを押し止めた。
「卒業だぜ、覚悟はいいか?」
「はぁ、うっぐ、ん……きて、あなたのが……ほしいの」
アイナはその両目でフランシスの顔を見て懇願した。
目尻に涙を溜めて、許しを請うように願った。それはこの甘美な疼きからの解放の願いからか、過去の贖罪の解放からか、今のアイナにはどちらにも捉えれどちらでもなかった。
フランシスはアイナの腰と掴み、力強く奥の院へと押し入った。
ぶつっ、と肉の千切れる感触が骨を伝い鼓膜まで届いた。一瞬だが鋭い痛みを感じたが、それ以上にペニスの先が打ちつけた場所から途轍もない快楽が頭を弾けさせた。
「あ、あが……あぁ、ひゃ……ぎ――」
途切れた声を漏らすが言葉を構成できない。
風呂の中に赤い糸が漂い破瓜をという人生に一度きりであろう経験をアイナは体験していた。
初めては痛いものだと聞いていたが、アイナの痛みよりも先に特定の部位の快感のほうが勝った。
(お、奥が……子宮口が、痺れる――)
ジリジリと火傷のように広がる感覚、はじめて受けた快楽に熱っぽい吐息が漏れた。
フランシスがアイナと交わるたびに行っていた下準備の成果だった。
自称フェミニストのフランシスが行った下準備、それは――ポルチオの開発だった。
セックス終わりに毎回行っていた腹部への振動マッサージが未開拓の性感帯を徐々にだが開発していたのだ。未通のアイナは指を入れポルチオを直接揺らすという事が出来ない為に、長い時間を開発していた。その結果が今発揮され長年くわえ込んできた娼婦の如く、よがり狂っていた。
「くぅっ――! ひぎぃあぁアアっ!」
悲鳴にも似た声でアイナは絶叫していた。
未知の快感にアイナは堪えられず声を溢れさせ、浴室にその声を響かせた。
「スゴイ声だな。リビングでヤったら隣の家まで聞えるんじゃねえか?」
「ぃ、いやぁ、こんな、いやらしい声。聞かれたく――ひゃぁ」
聞かれてしまうという羞恥心から、「もしもリビングで」という場面想定にも拘らず本当に聞かれているかのように考えてしまっていた。
そのせいもあり一瞬の間、性の抵抗が薄れその隙を突いたフランシスの一撃がアイナの子宮を揺さぶった。
「――っ、ふッ、う……っ!」
必死で声を抑え、喘ぎを出さないように両手で口を押さえる。
健気で初心な反応にフランシスの加虐心のようなものが芽生え、さらにだらしなく恍惚に溺れるアイナの姿を引き出そうと腰の動きを早めた。
「っ! んっ、ふぅっ! ひっ……ふ、フラン、シス……ま、って、んひぃっ!」
「聞かれたくなのか? お前のいやらしい声」
耳元で囁きかける。柔らかな耳たぶを甘噛みし反応を確かめ。
してはいるが、実際のところするまでもない。アイナは感じている。
アイナの堪える反応にフランシスは愉悦に浸った表情で、湯船を波立たせ声を引き出そうとした。だが存外アイナは持ち堪えているのだから、フランシスも向きになる。
胸に手を伸ばし、桜色の乳首をつねり上げた。
「ひゃぅうううううっ! おっぱいぃいいいいっ!」
多少の事には堪える気持ちでいたが、ここまで強いものが来るとは考えていなかった。
ジリジリと差し迫っていた絶頂がすぐそこまで来た。
反射的に痙攣した膣が、擦り上げていたペニスを締め上げた。
「っ! いいぞっ、いきなり締め付けが強くなった」
「ああ、だめだめだめ……これダメぇ、ちくびもおマンコもぉ」
「駄目でも、もっと突き抜けれるだろ」
首筋に手を回したフランシスはうなじのデバイスに手をかけた。
「ふぅっ! んっ……ちゅぱ」
舌を絡め、おっぱいを摘み、子宮を突き揺らす。
そしてこれでトドメだ。
うなじのデバイスをアイナから引き剥がした。
「あがっ、んぁああああああああああっ!!」
舌がにわかに膣に感じた快感に近しいものを運んできた。
その瞬間にアイナは絶叫し、万力のようにペニスを締め上げた。
「う、っぐ……で、る」
フランシスも堪えられずに精を放出した。
信じられない量の精子をピッタリと密着した子宮口に流し込み、孕ませる為に小刻みに腰が動いた。
「ひゃあああああぁっ! ででりゅ、わたしの子宮にザーメンがビュリュビュリュ出てりゅうううぅううっ!」
チューブの先からゼリーが出るように、粘度の高い精子が止めどなく撃ちだされ、アイナの子宮を精液で満たしていく。止まる気配を一切見えず子宮を精子漬けにする勢いで破裂寸前まで詰め込んでいた。
子宮付近の下腹部が明らかに膨らみ、余りの苦しさに吐きそうになった。
だがそれ以上に快感が増さり、ずっしりと重い精液が恋しくて仕方が無かった。
「だ、だめぇ……これ以上はいらないぃ……赤ちゃんの素がおぼれちゃうぅ」
「排卵したなら、嬉しいね。オレとお前のガキができるんだ」
ずるずるとゆっくりと出てきたペニスがアイナの中から抜け出た。
今までに押し込んだ精液が、マンコから溢れ出て湯の中を白く汚していく。
「あぁ、体が汚れちゃった……」
「また洗えばいい。洗ってやるぞ?」
おちゃらけた言い方でフランシスは唇を重ねる。
絶頂の余韻も冷めやらぬ内に、舌は貪欲に快感を得ていた。
でも、その中には燃え上がるような劣情ではなく。幸せに満ちた幸福感があった。
「フランシスぅ……」
風呂場から抜け出した二人は寝室でも互いを求め合い、重なり合った。
どれだけ重なり合っただろう、世もすっかり深け込み深夜もいいとこだ。
二人とも疲れが見えはじめていた。ベットの上で倒れこんで息も荒く肩で呼吸していた。
「アナタ、激しすぎ」
「いいじゃねえか、ようやくお前を抱けたんだ。それに存外嫌がってねぇ」
「~~っ」
フランシスの胸板をか弱い力で叩く。
微笑を浮かべた彼はアイナの頭を抱き寄せて、髪の芳香を吸い込んだ。
幸せなときだった。何もかも忘れたくなるどのにフランシスはアイナにとって大きすぎる存在になりつつあった。
「もう銃なんて握りたくない。アナタといっしょにこうしていたい」
「だめだ、オレはお前とやり合ってどっちが上か決めねえといけねえ」
頑ななフランシスの意思にアイナは堪えられなかった。
「どうしてっ! 私はあなたより弱いっ! それはあの時からずっとそうだったっ!」
体を起こして彼を見て叫んでいた。
全力で私は叫んで、今が壊れようともこの先にある絶望を回避しようとしていた。
「あなたが
「本気でいってるのか?」
フランシスも起き上がり、おふざけなしの真剣な目でアイナを見た。
その表情は感情が抜け落ち、鬼気迫るものだった。
バリバリと頭を掻き毟り苛立ちのようなものを見せて、ぶつぶつと独り言を呟いていた。
「――それじゃぁ駄目だ……オレはお前と遣りあわなきゃいけねえだよ……」
「ふ、フランシス?」
やにわに喉許にフランシスの腕が伸びた。
「が……あっ、ぎっ……は」
馬乗りとなりフランシスはアイナの首を両手で
「オレとお前は撃ち合わなきゃいけねぇ。ずっとそう決めてきたんだ、そうしなきゃ採算が合わなくなっちまう」
「ひ、かっは、フ……ランシ……ス」
次第に力増していく。
このままでは殺される。そう感じられるほどの力だった。
そしてアイナの意識は黒い海に消えていった。
祝アイナ処女喪失!! という事でアイナの処女は風呂場で散りました。
次回、第二過去編に突入。
アイナがフランシスから二挺拳銃戦闘術の座を奪った事件を書き出します。