※この作品はR-18です。

金瞳の二丁拳銃 アイナ   作:我楽娯兵

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短いですがキリがよかったので投稿します。


自由なる殺し

 フランシスに生じた何かしらの溝。

 私と彼がどうこうという訳ではない、ただ私たちが成長し自然に生じたひび割れだった。

 男が女を意識するのと、女が男を意識するのと同じ。私たちは殺しにたいする認識の相違から自然と隔たりのようなものを感じていた。

 アイナは「人」を撃ち殺している。フランシスは「屑」をこの世から消している。

 やっていることは同じなのに、感じている私たちの考えが違う。

 何故なのか、徐々に離れていく私たちの心の距離。

 親を失ってから得た初めての精神的支えであるフランシス。

 同じ空気を吸い、同じ悪さをし、同じタバコを吸い、同じ死線を潜った。

 アヒルの子供のようにフランシスのケツを着いていき、フランシスと言う存在から何かを得たかったのかもしれない家族を得たかった――違う、多分ただ意味も無く馴れ合いたかったのだ。ただ一緒に居たかったのだ。

 だがフランシスの考えは違ったのだ。

 馴れ合うのではない。背中を預けられる絶対的な信頼をおける仲間を欲していたのだ。

 私がそれに最も近かっただけだ、アナベルやグレイグよりも強かっただけだ。

 いつか壊れてしまう事は知っていた。

 だがこんな風に壊れるなんてことはあってほしくなかった。

 

 

 

 私たちがニコラスに招集されて集まったの先は、アラバマに在る米連陸軍基地であった。

 ブリーフィングルームに立った四人しかいないのはどこか寂しい雰囲気がある。

 しかもその四人は軍属などではなく、ただの「死刑執行人(ハンター)」。少しだけ特殊な訓練を受けた一端の殺し屋たちだ。

 アナベルとグレイグは二人一組(パック)を組んでいるために隣同士に座っているが、私とフランシスは、まとまりなくバラバラの位置に座りガムを噛みタバコを吹かす。

 ニコラスの意向でアナベルとグレイグ、私とフランシスとで二人一組(パック)を組み死刑囚を殺しまわっていた。世界各地の米連に属す州に飛び回り二、三年になる。

 アナベルとグレイグは成長していた。

 アナベルは長身でアダルティだったがそれに一層磨きが掛かって見えた。もともとケア・テイカーのアダルトチルドレンでそれの逃避から薬に溺れた子供とは思えない。

 グレイグは初めてあった日からは、少しだけ大きくなったがそこまで変わってはいなかった。口寂しそうに親指の爪をボロボロになるまで噛んでいる。

 私とフランシスも成長している。

 フランシスは大きく背を伸ばし、少し体は筋肉質になり筋肉だるまとも違う成形の取れた肉体に変化している。より効率的に殺す事を追求した肉体美を作り上げている。

 アイナもアイナでそれなりに成長している、ほんの少しだけ割れた腹筋に引き締まった体。なのにここ最近シリ周りに肉が付き、胸もでかくなり始めた。ブラジャーを幾度も買い直さなくてはならず面倒だ。

 きつくなり始めたブラジャーに気を取られている間に、ブリーフィングルームに入る者がいた。

 ニコラスと現れた軍服を着ている男、偉そうに勲章を胸やら肩やらにふざけた数をつけている。

 

「狩人(ハンター)諸君、よく集まってくれた」

 

 重苦しい声音で重要事項としていっているようだが、私たちにはまるで緊張感が無かった。

 フランシスはタバコを吸い続け、アナベルはガムを膨らませ部屋中に聞えるほどの炸裂音を出していた。みなどうでもいいのだ、立場など狩人(ハンター)には関係がない。さっさと用件を言ってほしい。

 眉間に青筋を立ててそうなほど顔を引きつらせた軍人。一歩前に出たニコラスが話す。

 

「産まれたときから必要とされて無かった諸君。今このときが貴様らの命に価値を与える時だ」

 

 ふざけた言い方で私たちを鼓舞する。

 産まれたときからは知らないが、実際に私たちはこの世から必要とされていない。

 私たちにある価値といえば、この世に不必要な人間を消す事だけ。

 

「暗殺予定者(ターゲット)は?」

 

 フランシスが訊く。

 邪悪な笑みを浮かべてニコラスはプロジェクター着けて話を続けた。

 

「魔族の女狐一匹を撃ち殺すだけの簡単な仕事だ。そしてお前たちを一匹狼(ローンウルフ)にする最後の仕事だ」

 

 みなが意識を変えた。

 一匹狼(ローンウルフ)――即ち私たちがニコラスから処刑執行権(ハンティング)の権利を仮譲渡されている現在。私たち自身に処刑執行権(ハンティング)の権限を与えられる魔法の言葉だ。

 私たちが一端の処刑執行人になれるのだ。嬉しい限りだ。

 今まで制限の掛かっていた殺しの権利が自由に執行できる。一日に二人しかこの世から葬れなかったが、一匹狼(ローンウルフ)になれば無制限。連邦捜査局(サウザンツ)や中央情報局(ラングレイ)のブラックリストに載っているクズ共も処刑執行人は殺す事のできる。

 殺しの自由権(フリーキリング)を得た人間たちになれる。

 みなが心を躍らせた。ろくでもない権利であるが職権濫用で無実の連中も実質的に殺す事ができる。

 ここにいる四人の子供は少なくとも怨んでいる連中は二人三人は確実にいる。特殊技能者の権利がそれを許す。あらゆる罪を。

 

「敵の所在は南大西洋、アガラス岬付近を通過したズムウォルト級イージス、艦名『ハンニバル』を占拠した。魔族の種別は妖狐、個別名は天華と呼ばれている人型の狐だ」

 

 プロジェクターに表示されてるズムウォルト級イージス艦の見取り図。

 天華の姿を映した写真が数枚表示される。

 身に纏う衣服はかなり危ない面積の和服のようなもの。顔つきや仕草の調査表もありそれから想像するに東洋種の魔族であることは容易に想像ができた。

 

「最終試験だ。てめえらは強いが、魔族を殺した事はねえ」

 

 ニコラスのいう通りで私たちはまだ『人』までなのだ。

 生物的脅威を体験している範囲が人止まりではでは進化は得られない。

 生命の危機を得てこそ――更なる高みが待っている。

 

「いくら下級魔族でも魔族は魔族だ。想像もしていない手を隠し持っている」

 

 みなが自らの銃に手を掛け、隠しきれない殺意を剥き出しにしていた。

 強敵、自らを高める強敵。殺しの報酬は『殺しの自由権(フリーキリング)』の権利取得。

 

「どの狐も毛皮を剥がれなければならない。この女狐の毛皮を剥いで帽子にでもしてやれ」




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