※この作品はR-18です。

金瞳の二丁拳銃 アイナ   作:我楽娯兵

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正編
綻びの使徒


「う……うぅ、ぅん、」

 

 痛みと香ばしい匂いで意識が徐々に戻り始めていた。

 

(俺は、どこだ……?)

 

 アイナは真っ暗な視界の中ではっきりとしない記憶を思い起こしていた。

 どうしてこんなに目の前が暗いのか。目蓋を閉じて居る事に始めて気づく。

 朦朧としていた自意識が、眼を閉じて居る事に気づき瞳を開いた。

 薄暗い部屋だった。黄土色の光で間接照明が部屋を照らしている。

 未だに視界がぼやけていた。鼻の奥に食欲をそそる匂いが、漂っている。

 

「なんだ、これ」

 

 クリアになった目に映ったのは。中華の円卓だった。

 黒のテーブルクロスに赤色の回転テーブルがあり、円卓にはアイナを含め8人の箸が用意されており、かなりリッチな一室に一人取り残されていた。

 椅子に座って居る事にも気づかないほどに混乱していた。立ち上がり部屋を出ようとするが、手首にはチェーンの長い手錠が嵌められ、足にも嵌められていた。

 人の気配はあり、奥のキッチンでガチャガチャと何かを作っていた。

 警戒心を剥き出しにしホルスターの銃を抜こうとするが、愛銃はそこに収まっておらず行方知れずになっている。だんだんと記憶が蘇ってくる。そうだ、俺はコンビニで襲われたんだ。

 襲われて、なにが起こった?

 

「お、目覚めたようだな」

 

 キッチンの奥からそれは現れた。

 両手に湯気が立つ中華料理の大皿を持っていた。

 真っ白なワイシャツに黒のリクルートスーツのズボン。

 中肉中背、アントワープブルーの瞳、襟足が少し長めのダックテイル。

 精悍な雰囲気にも拘らず、どこか隙を作った立ち姿。

 

「嘘だ……」

 

 忘れはしない。忘れたことなどない。

『あいつ』だった。寝るたびに現れる悪夢、アイナを過去に縛り付ける罪。

 二挺拳銃戦闘術(トゥーハンド・コンバット)の本来の後継者。

 ――死んだ筈の男。

 

「少し痩せたんじゃねえかアイナ」

 

「フランシス――なんでだ、どうして」

 

 フランシスは円卓に大皿を置く。

 キッチンへと一度戻った彼はカートを引っ張ってくる。

 豪勢な食事を回転テーブルに配膳していく。

 

「こうして話すのはいつぶりだ? 二年、三年か?」

 

「四年――。俺はお前を四年前に撃ったはずだ」

 

「そうだ、そうだった。いやはや時の流れは暴力的に速い」

 

 配膳を済ませたフランシスはアイナの対面の椅子に座り、サーバーを器用に使い、円卓の料理を小皿に取り分ける。過去の事など水に流したような雰囲気でフランシスは食事を始めた。

 悪夢だった。死人が目の前に健常者のように食事を取っている。

 視線に気づいたのか食事の手を止める。

 

「どうしたアイナ。食べないのか? 手錠の長さは充分なはずだぞ」

 

「何で生きてる」

 

「生きてる人間に、生きてることを問うのは馬鹿らしいぞ」

 

「ふざけるな! 俺は確かにあの時お前の頭を撃ったんだぞ。脳味噌を吹き飛ばして生きていけるわけねえだろ!」

 

「そうだな。そうだった、でもその話は一部違う」

 

 箸を置き、彼はポケットからハンカチを取り出した。

 額をハンカチで拭き、それを露にした。

 

「脳味噌は吹き飛んでねえ、貫通したんだ。弾が脳の一部を貫通して大きな損傷を受けずに済むケースがあるのは知ってるだろ、それだったんだよ。――お前が撃った弾丸はオレの大脳縦裂をぶち抜いたんだ」

 

 メイクで隠していた額に残る銃創がそれを示していた。

 ちょうど真ん中に二センチの傷跡があり、その傷跡はアイナの放った銃弾がフランシスの大脳縦裂を打ち抜いていたことを示していた。

 

「オレは死ななかった。痛かったぜ、意識がぶっ飛んで拾われたんだ」

 

「ひろ……わ……れた?」

 

「魔科医の桐生美琴とかいったかな。生きのいい(フレッシュ)な死体が手に入ったと思ったら、オレは蘇生(リストード)した」

 

 笑いながら席を立つ。アイナの隣まで来て卓の上に腰掛けた。

 

「でもあの女、実験体(オレ)が生き返ったんでお冠だ。蘇生してやったんだから目を弄らせろってせがんで結果――」

 

 フランシスのアントワープブルーの瞳が色身を変えた。

 真っ赤な、血のように赤い瞳に変わったのだ。言葉を失ってしまう。

 拳銃格闘者(ハンド・トゥ・ハンド)たちは視覚弾道予測補助として眼球のガラス体にナノマシンを注入する事が多くある。変則弾道(トリック・トラジェクトリ)の再現のために全神経を触覚に回しているために弾道補助ナノマシンは大いに役立ち、アイナのように片眼を負傷し視力回復の為以外には基本的に不活動状態(パッシブ)となっており、活動状態(アクティブ)にすれば虹彩の色に影響を与え黄色に染まる。

 拳銃格闘者(ハンド・トゥ・ハンド)たちが狼(ウルフ)と喩えられる要因でもあるのだが、フランシスの両目は真っ赤に染まっていた。

 

「驚いたろ、ナノマシンを弄られた。弾道予測補助だったこの眼が進化して天気予報士並みによく当たる弾道予知能力が付与されたんだ」

 

「てめえ、そんなことまでしてなにがしたいっ!」

 

「なにを、何をしたいって?」

 

 心底馬鹿馬鹿しそうに笑いながらフランシスは血の色の瞳(ブラットアイ)を剥いた。

 

「復讐(リヴェンジ)だ。アイナ、お前たちにな」

 

 その言葉に背筋が凍る。腸が擦り潰れる様な痛みがあった。

 心臓が引き裂かれそうな激痛があった。全身が彼を、フランシスを拒否していた。

 

「お前は『あの時』負傷していたオレに銃を向けた。そして後継者の座を毟り取った。本来オレが継ぐべき二挺拳銃戦闘術(トゥーハンド・コンバット)を奪った!!」

 

 吼えていた。怒りながらその顔を愉しそうに歪めながら。

 その体に、その視線に、その言葉に。彼を構成するすべてがアイナを無意識に痛めつけていた。

 一呼吸置き、息を整える。

 

「はぁ、腹が立った。この屈辱を晴らすためにお前に会いに来た」

 

「また……撃ち合うのか……」

 

「今はやらない。お前が負傷しているからなあ」

 

 そうだ、そうだった。

 アイナは肩を撃たれていた。コンビニエンスストアでフランシスに肩を撃ち抜かれていた。

 小皿を一枚取り、汚れがないかを確認しくるりと回す。

 

「食べろよアイナ。この牛肉の巣籠盛りはよく出来ていている。巣籠はパン生地で旨いぞ」

 

 サーバーでフランシスはアイナの分を小皿に取り分ける。

 

「ほら、食べろ」

 

 言葉が出なかった。彼が隣にいることが、あの咆哮が恐ろしかった。

 無性に彼が恐ろしかった。親に怒られる事がわかっている子供みたいに、原因に対する恐怖よりも、それに怒りを表すフランシスと言う存在が、アイナを押し潰していた。

 いつまでも食べなかったアイナにフランシスは動いた。

 静かに伸びたフランシスの手の平がアイナの髪を掴み、小皿に無理やり頭を押し付けた。

 

「ぐッ、がぁああ!。あ、あぁ、やめ――」

 

「食べろ! アイナ。早く食って傷を治せ!」

 

 巣籠がアイナの顔で押し潰れ、片栗粉でトロみが付いたタレが顔に付く。

 力任せに食事を取らせようと素手で掴んだもう一つのものを無理やり口に捻じ込んだ。

 

「よく噛んで食べろ。消化に悪いからなあ」

 

「う、ウぅぐ、ゴック……ぐ……がはっ」

 

 咀嚼し、口の中を塞いでいたそれを飲み込んだ。

 アイナの膝はガタガタと震えた。過去のフランシスは消え失せていた。

 あまりにも暴力的にフランシスが変貌していた。元より暴力的ではあったが今の彼に暴力の正当性は一切無かった。私怨からどんな他者をも踏み躙る。倫理も何もない純粋な力であった。

 

「あ、はぁ……ああ」

 

「怯えるなよ。悪かった悪かった。ほら拭いてやる」

 

 おしぼりを広げたフランシスはアイナの顔に付いた食事を綺麗に拭いていく。

 優しく、赤ん坊が口の周りを汚したものを母親が拭くように。

 

「う、うぅウウぅ……」

 

「ほぅら、……綺麗になった」

 

 アイナにはもうなにもフランシスを理解できなかった。

 復讐に駆られているのに、時折見せる優しさ。他者を虐げる凶暴性と良き友人のような温和的な性格、そしてその落差がどういった要因で切り替わり襲い掛かってくるか。

 まるで狂気だった。

 狂った絵画を見たときのように、作者の理性を疑う映画を観たときのように。

 吐き気を催す恐怖がアイナを苛んでいた。

 

「落ち着けよアイナ。酒でも呑め、時間はもう少しある」

 

「時間?」

 

「ああ、食事会だ。各フラタニティ幹部連たちとの」

 

 理解した、制圧作戦で水面下で進んでいた暗殺計画の暗殺予定者(ターゲット)はフランシスだったのだ。

 子供を戦場に立たせる死神。地獄であった戦場を更に歪める指導者。

 楽しそうに彼は銀メッキ製の酒壺をとり酒杯に注ぐ。

 紹興酒の色合いが間接照明と合わさり黄金のように輝いていた。

 

「ほら、呑めよ。安い給料から捻出したいい酒だ」

 

 素直に受け取り、呑む。

 確かに美味しい酒であった。この様な状況でなければ何杯でも呼んでいただろう。

 グラスの酒を飲み干し、テーブルに置く。

 彼はまた紹興酒を注いだ。

 

「もう一杯どうだ?」

 

「……あ、ああ。もらう」

 

 グラスに唇をつけ、喉に酒を無理やり通す。

 その間、ずっとフランシスはアイナを見ていた。

 眼を見開き蛇がネズミを睨みつけているかのように、その命に噛り付こうとしている瞳で。

 ふいに酒の風味が変に感じた。グラスを見たら、底に僅かに白い粉末が混じっていた。

 意識がボヤけグラスが手から滑り落ちる。

 テーブルに倒れ込んだアイナにフランシスは健やかに微笑んだ。

 

「愛しい復讐(リヴェンジ)だ。お前の心も、体も、すべてを奪い(あいし)尽くしてやる」

 

 アイナの眠る頬をフランシスは静かに手の甲で撫でた。

 

 

 

 

 腕の痺れで目が覚める。

 目を覚ました先は、あの豪勢な一室とは違いただの雑多な物置であった。

 棚には洗剤や車用掃除機、壁際にはモップやランニングマシーンなのが置かれていた。

 ただ他より違うのはそこに拘束道具がある事だった。

 アイナは手首に手枷を嵌められ天上より吊るされており、つま先がギリギリ床に着くいた。

 鉄製の手枷には内側に裂傷防止のために布地になっており、ただ単にアイナを痛めつける為でない事を示していた。

 

「よう」

 

「……フランシスっ!」

 

 後ろに入るようで体がうまく動かせず彼の姿は見えない。

 

「撃ち合うのは俺の肩が直ってからじゃないのかっ……」

 

「ああ、治ってからする予定だ」

 

 すぐ横を通り、フランシスは目の前に現れた。

 ランニングウェアを下だけ穿き、上半身は汗が滴り照明で光り輝いていた。

 

「治ってからだが。待ってる間オレが暇じゃねえか、ちょっとした余興だ」

 

「っ……なにしようってんだ」

 

「綺麗な女がいて、男がいりゃあ一つしかねえよなぁ」

 

 ゆっくりと近づいてきたフランシスはアイナの体に手を伸ばす。

 黒のパンストにつ包まれた太ももに指を這わせ、徐々に上に昇って行く。

 子宮の上を伝い、へそを撫で、豊満な胸のラインを沿いながら頬へと手は伸びていった。

 

「お前をいつか無茶苦茶にしたかった」

 

 嫌悪感がアイナを震え上がらせた。男勝りの性格がこの手を放させるために働いた。

 唾をフランシスの顔に吐きかけていた。

 透明で所々泡立つ唾が、フランシスの左の頬に着き伝い落ちる。

 そのアイナの強情な態度にフランシスは激怒するかと思われたが、しなかった。

 

「お前のような女が一番愉しませてくれる」

 

 ひやりと笑った彼は、アイナの唇を強引に奪った。

 キスと呼ぶにはあまりにも野生的なもので、まるで餌を取り合っているようにも見えた。

 彼の舌が、アイナの唇を押し開き口内を探りまわる。

 

「ぐっっ……うぅ、ちゅう、は……ぱあ、んんっ!」

 

 激しく乱暴な舌づかいが徐々に優しく、恋人にキスをするようなものに変わっていた。

 意識が蕩けるような幸福感が僅かに芽生えたが、これがどのような存在かを思い出した。

 

「ちゅう……くちゅっ、――ッ!」

 

「グッ、があ!」

 

 唇から口をのけたフランシス。その口元から赤い筋が流れていた。

 唾を床に吐き捨てる。赤い、フランシスの血だった。

 

「てめえ……」

 

 フランシスはとうとう頭にきていた。

 ランニングウェアのポケットから携帯デバイスを取り出した。

 

「今度はなにしようってんだ」

 

「後悔させやるよ」

 

 スイッチを入れ、再度無造作にアイナの唇を奪った。

 何度でも噛み付いてやる、そう思ったが――

 

「んんッ――、じゅ……くちゅっ、ちゅぶ……んんぅぅぅ?!」

 

 口を付いて出たのは罵声ではなく、嬌声だった。

 体に駆け抜けた甘美な雷撃。キスを通して体全体に快感が溢れた。

 荒々しい接吻にも拘らず、体が火がついたように火照り股座は湿りを佩びた。

 

「くちゅっ……んぐっうぅぅぅっ、ぱあ、じゅる、ンンンッ――」

 

 顔を逸らそうと抵抗するが、フランシスはアイナの顔を押さえつけ唇を貪る。

 その舌が、ざらついた表皮が口の中を撫でるたびに体が痙攣するように震える。

 

(なんだっ――なんだよこれッ! 何でこんなに気持ちいいんだよ――)

 

 口を犯されているようであった。口の細胞がいっせいに快楽を受け入れだしたように、アイナの口は性器のように敏感な器官にすり替わっていた。

 長時間アイナの唇を犯し堪能したフランシスはようやくその赤黒い舌を口の中から引き抜いた。双方の口から唾液が糸を引き、アイナの胸元に垂れ落ちるがそれを気にする余裕はアイナにはなかった。

 

「俺の……はぁ、体になに……しやがった」

 

 

「気に入ってるみたいだな。なに、簡単な肉体錯覚技術の一つだ、――〈フェラドール手術〉」

 

 その術式名を聞き、血の気が引いた。

 〈フェラドール手術〉――一時期スラム街の娼婦の間で流行した肉体改造手術だ。

 舌に神経伝達の齟齬を発生させる薬液を注入し、ベロに接触する感触をすべて快感に脳を錯覚させるモノだ。食欲と性欲の結び付きが強い人間は、食すという行為と繁殖という行為の神経ルーチンは大体同じ経路を通っている。それを逆手に取り、食す行為を繁殖時の脳反応に人体を錯覚させるのだ。

 ただこの術式には欠陥があり、その欠陥は薬液そのものだ。代謝分解性の薬液ではなく旧式の化学物質由来の薬液だった為に体内に蓄積され、食事をする度に絶頂する娼婦が多く出てしまったのだ。そのためにどの国でも違法術式に認定された。

 

「あそこを犯されてるみたいに感じるだろ。――現に、アイナお前のこ(・)こ(・)は濡れてる」

 

「さっ、触るなっ! くっそおお!」

 

 フランシスはアイナの股座に腕をすべりこませ、割れ目に中指を食い込ませた。

 

「っふ……ふぅ、ヒっ――くっ」

 

「そう怖い眼で見るなよ。いい具合に濡れてぜ、素直に感じれば悪いようにはならねえよ」

 

 耳元で囁くように言う。

 アイナの愛液で濡れた中指を目の前で見せ付けるように、指に絡ませ糸を引かせた。

 すっぱい匂いのする自身の汁に、羞恥心を煽られる。

 

「恋人みたいだろ。アイナ」

 

「う、うるせえっ! 愛してんだったら吊り下げねだろ普通!」

 

「愛は人それぞれだ。痛めつける愛もあれば、歪んだものもある」

 

 後ろに回りこんだフランシスは、優しく抱きこんだ。引き締まったアイナの体に鉄のように硬い腕が包み込み、フランシスは鼻をうなじに押し当てその香りを忘れまいと深く真剣に嗅ぐ。

 

「オレの愛はお前を倒して、どっちが正当な後継者かを示してやる事だ」

 

 端末(モブ)を操作したフランシス。

 ピンと張られた鎖が緩まり、爪先立ちだったアイナが倒れ込んでしまう。

 注射器を取り出したフランシスは自らの首筋にそれを打ち込む。

 体が痺れいまだ立てずにいるアイナ。フランシスはその胸に手を伸ばしボディコンの穴に指を引っ掛けそのまま引き下げた。ブラジャーを兼ねていたボディコンから胸が飛び出す。

 

「ふっぐぅ……んっ……満足かよっ」

 

「この服体に合ってねえじゃねえのか。っと、効いてきた」

 

 眼をツリ上げ睨みつけられるが歯牙にもかけずランニングウェアを脱ぎ捨て、猛り立つペニスを突き出した。熱く昂ぶる牡槍をたわわに稔った乳房の間に埋没し肉矛をアイナの鼻先に突き出した。

 饐えた汗と尿の匂いが鼻につき、ペニスは胸に張り付くような感触があった。

 

(くッ……せえ、洗ってんのか。これ――)

 

 鼻につく生臭い匂いに顔を顰めてしまう。焼け付くような肉矛の先が目先に突きつけられたアイナは自然と牝であると理解してしまう。男の股にはこれが付いていることは知っている、画像で見たことも触った事もある、だがこうして内も外も知っている相手の秘部を見るのことは初めてで羞恥心がこみ上げる。

 

(こいつ、こんなに脈打って)

 

 腰を動かしだしたフランシス。肉棒が胸元をすり上げ、汗ばんだ肉体同士がにちゃにちゃと音を立てた。

 

「えらくしおらしいなアイナ? 抵抗してみたらどうだ」

 

「――っ! ああそうかい。なら希望通り抵抗してやるよ!」

 

 歯を食いしばっていたアイナは、抵抗を決意した。

 腕は封じられ、上に乗られている。ほとんど動けない状況であったが、口は動いた。

 フランシスのペニスを食い千切ってやる、そう思うが彼の考えが透けて見えた。

 わざわざアイナに〈フェラドール手術〉まで施した思惑がうっすらと覗いている。

 

(舐めやがって、舌を触れさせなきゃ感じねえ。一気に噛み千切っちまえば)

 

 熱い吐息が漏れ、意を決し僅かに口を広げた瞬間にフランシスはその愛らしい唇を冒した。

 

「んんッッ!!――ふんん、……ぐちゅっ、はふっ、ふんぅぅぅッ!」

 

 入り込んだペニス。これからしか臭わない独特の臭いと苦味とも違う味が、舌を痺れさせた。

 胃の奥からムカつき襲い吐き気すらする。だがアイナはそれを押し込んだ。

 

(噛み付けば……、消えてなくなる!)

 

 鼻と舌を犯されながら意識だけは強情に奮起し一矢を報いようとしていた。

 食い千切ってやる脳がそれを命令し、顎を動かそうとするが――

 

(なんで、――なんでだっ)

 

 顎に一切の力が入らず、出来ても唇を窄める程度の力しか入らなかった。

 体が脳とは命令を全く無視し、意図は反し舌先の芳しいな快楽を求めていた。

 フランシスの逸物は大きくふれ上がり、アイナの口を容赦なく犯す。

 先走りと唾液が混じり合い、ベトベトに胸元を汚し口元も汚し挙げる。

 

「ふっぅぅん、ん、ん、じゅるるぅ、ぐちゅっ……じゅぼっ、ふッうぅぅ!」

 

 息継ぎも許さないと口が、舌が、喉が、すべてが彼のペニスに犯されていく。

 意識が朦朧として、このままこの快楽を受け入れたほうが楽なのではないかと考える。

 それに応じるかのように舌が動きペニスの裏筋を微かに刺激し始めてしまう。

 

「っふ、なんだっ、えらく献身的になってきたな」

 

「んふぅぅッ、うる……しぇえ、じゅぷ......ふぅぅッ!」

 

 ペニスが舌をこそぎ上げるように突き上られ激しい刺激に腰が砕けてしまう。

 膝が震えるが、それ以上にアイナのあそこが疼き寂しさと期待感が出てきてしまう。

 きっと今挿れられたら狂ってしまう。

 せめて「はじめて」はこんな物置ではなくベットの上が良かった。

 フランシスは頬が裂けるほど口を歪めて笑う。

 

「はははははッ! いいぞ、その調子だ。そろそろフィニッシュだッ!」

 

 ビクビクとペニスが振るえ痙攣が何か耐えているようであった。

 それを理解するのに時間を要したが、理解する。

 

「出すぞッ! 呑み込めアイナッ……!」

 

「んんッ――」

 

 熱い迸りが咥内で溢れる。

 今まで味わった事のない味、喉に絡みつく感触、鼻の奥に抜ける生臭さ、そしてそれらすべてを的確に感じ取り総てを徹底して舌が快楽に変換していく。

 感覚のすべてが鋭敏になり刺激が思考を焦がして、脳を壊してくる。

 

(んぃひいいいい! なゃん、だ……これゃぇええっ! しりゃねぇ……きもひぃぃっ)

 

 凄まじい射精は収まることを知らず、幾度も口の中で精液を吐き出し続ける。

 歯の隙間にも、鼻から精液が溢れ鼻ちょうちんが出来るが、羞恥を感じる思考も失い始めていた。

 臭いが鼻を強姦し、胃に落し込まれる精液がその重みと共にアイナの器官を一つ一つ侵食する。

 ペニスが引き抜かれ、離れる事を惜しむかのように唾液と精液が糸を引いた。

 

「はぁ、あぁ、あ”ぁ……げえっ」

 

 吐き気と共にげっぷが込み上げ口から漏れてしまう。

 それと同時に胃に落ちた精液の匂いが再来し、頭がくらくらする。

 

「―――――」

 

 フランシスが目の前で何かを言っているが、すでに耳に届いてはいなかった。

 だらしなく舌が垂れ、それから唾液が床を汚していく。

 反応を示さないアイナにフランシスは頭を掻き、おもむろに舌先に手を伸ばしその舌先をつねり上げた。

 その瞬間、アイナの頭の中で何かが弾けた。

 

「ひゃぁッあああああああっ!!」

 

 股間の筋肉が緩み、洪水のように潮を吹き上げる。

 弾けた意識は徐々に霧散し、失禁しているのも気づかずアイナは気を失った。

 

 

 

 

 意識を失ったアイナにフランシスは静かに抱き上げ、首筋のシートデバイスを剥がした。

 

「よくできてる。いいなこれ」

 

 このデバイスが〈フェラドール手術〉の正体であった。

 脳にフェラドール手術を受けたものと同様の信号を送り、同じような感覚を与える装置だ。

 元は軍用の身体操作デバイスだったが裏に流れ、さまざまな違法手術の疑似体験装置として使われているのだ。本来の身体操作機能を残したまま。

 アイナがフランシスのペニスを食い千切ろうとしたのは感じ取っていた。顎が動かず四苦八苦している彼女の姿がフランシスの逸物を再度いきり立たせる。

 艶かしい肢体を晒すアイナ。フランシスは恥丘付近に手を沿え揺するように押さえる。うなじに鼻を押し当て、その香りを肺に満たす。

 

「ーーーはぁ、今夜のおかずだな」

 

 フランシスは彼女を抱き上げ、物置を出た。




人生初のHシーンの執筆、喘ぎがまったく書けぬ、勉強あるのみ。
 
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