士郎さんに恭也さんに勝つ方法を尋ねてから1ヶ月。
俺はマンションの屋上で練習に励んでいた。
「せぇええええええええ!」
くっ! また失敗か。
士郎さんに頼み込んで製作してもらった新しい武器! この武器の扱いはほんと難しい。
――けどこの武器を使いこなせれば、恭也さんの不意をつける!
はあ……。
まだまだ練習したいけど、もうすぐ朝ご飯だ。
きちんとあと片づけをしてからマンションの3階にある家に帰る。
「ただいま~」
「「おかえり~」」
靴を脱ぎ、廊下を通って、洗面所で手を洗う。
そしてリビングへ移動して、テーブルに着いた。お父さんとお母さんはすでにテーブルに着いていた。
今日はハムエッグとトーストか~。
「いただきま~す」
お父さんとお母さんに俺と家族そろって食事を始める。
トーストにハムエッグを乗せて食べていると、お母さんが話しかけてきた。
「そういえば、拓也」
「なに~?」
「今度の日曜になのはちゃんのところと一緒に温泉旅行に行く~? 去年は行けなかったでしょ」
「ん~、どうしようかな~?」
正直、温泉は好きだけど、女の子たちと一緒に行くのってちょっとな~。
去年はお父さんが急な出張になって、お母さんも具合悪くて、俺も1人で女の子と温泉旅行が恥ずかしくて行かなかったんだよな~。
だけどもうなのはやアリサ、すずかとも名前で呼び合ってるし、周りにからかわれるのも慣れたし、からかわれなくなったもんな~。
「今年はお父さんも行けるぞ」
「お父さんも!?」
「ああ、もちろん! 母さんとも久しぶりに温泉行きたいし、高町さんのところは美人ばっかりだしな~。すごく楽しみだ!」
「最後のほうはどうかと思うけど、まあ、許しましょう」
苦笑いのお母さん。どうしようかな~。お父さんもお母さんも行けるんだったら行こうかな?
「あ、そういえば!」
お母さんが突然両手をポンっと叩いた。そして、うふふっと微笑んだ。
「高町さんのところのなのはちゃんにね。絶対拓也を参加させるようにって、頼まれていたんだわ」
「なのはが?」
「ええ、そうよ、なのはちゃんが。それとアリサちゃんっていう子とすずかちゃんっていう子も参加するそうでね~。その子達も拓也にぜひ参加して欲しいんだって~」
ほっぺたを両手で挟んで喜ぶお母さんと、
「はははは、モテモテだな~」
と笑うお父さん。
正直、学校の女の子ばっかりと温泉行くの面倒くさいな~。
でも、行かないともっと面倒くさそうだな~。
だれか男子でも誘おうかな~?
「本当にどうしようかな~?」
◆
ゆっくり時間が過ぎていき、とうとう温泉旅行に行く日になった。
結局俺はなのは達と温泉旅行に行く事にした。
まあ、行かないとかいうとアリサあたりが騒ぎそうだからな。おとなしく参加するとなのは達に言っておいた。
一応、女の子ばっかりのなかに行くのも嫌だったから、クラスの男子を誘ってみたけど、お父さんやお母さんが休みじゃなかったりして皆ダメだった。
皆本当に……、本当に行きたそうにしていたけど、2泊3日で温泉旅行はいきなりすぎたみたい。せめて1週間前に言っておいてくれってすっごい形相で怒られた……。
だから現在はワゴン車に乗って、お父さんの運転で集合場所の高町家へ向って走行中だ。追加メンバーの男子はいない。
車に乗ってから10分もしないうちに高町家が見えてきた。
俺のうちと同じようなワゴン車が高町家の門に1台停まっている。
お父さんはその車の後ろに車を停車させた。
荷物だけ置いといて車から降りる。
「おはよう拓也くん」
車から降りてすぐになのはがやって来た。
「おはよう、なのは」
「ほんとに拓也くんも行くんだね」
嬉しそうに言うなのは。久しぶりに俺の家と高町家の合同温泉旅行で、すずかやアリサも参加するんだ。相当楽しみなんだろうな。
「おはよう、拓也。ふふっ、ちゃんと来たのね」
「おはよう、拓也くん」
「おはよう、アリサ、すずか」
アリサとすずかがひょっこり現れた。2人とも余所行きの服を着ていて、温泉旅行が楽しみなのか、楽しそうな空気が伝わってくる。
子供だな~と、思うけど実は俺も楽しみだったりするからな~。
「え~と、うちが3人と、なのは、アリサ、すずかの3人、士郎さんと桃子さん、恭也さんと美由希さんの4人で……10人か~」
「違うわよ」
「へ? なんで?」
訂正してくるアリサ。あれ? 俺、計算間違えた? でもさすがに足し算は間違わないと思うんだけど……?
俺の疑問に、すずかがニッコリ笑顔で答えた。
「私のお姉ちゃんや、え~と……お手伝いさんのファリンとノエルも参加するの。あと、アリサちゃんの執事の鮫島さんも」
「へ~、それじゃあほんとに大所帯だね~」
合計でえ~と、14人かな?
と、ここで玄関からぞくぞくと出てきた。
あいさつに行っていたお父さんとお母さん。それにいつもの士郎さんや桃子さん、美由希さんが出てきて、次にいっつもベンツの運転してる鮫島さん、紫色の髪の始めて見るショートカットのお姉さんと、肩のした辺りまで伸ばしたお姉さんの2人組みが出てきた。
そして最後に恭也さんが出てきて、あいさつしに行こうとした時、首筋に寒気を感じた……。
あ、あれ?
恭也さんと出てきたお姉さん……。
どこかで……、どこかで、見たような? ……あれ?
どこで、どこで……?
「……はじめまして、忍お嬢さま付きのメイドでノエルと申します」
「はじめまして~、すずかお嬢さま付きのファリンです~」
お手伝いさんってメイドさんだったのか~……ん? あれ? ノエルさんの視線になんか色々変なものを感じる?
――っ。
一瞬、すずかのお姉さんの――たぶん忍さんがこっちを見て驚いたような表情になった?
――っ!? あ、足がガクガクする!? な、なんで!?
いつの間にか目の前まで迫った忍さんっ!
ほ、ほんとに動けない!?
うふふっと微笑みながら自己紹介してきた。
「はじめまして。拓也くんだよね?」
「ひゃ、ひゃい! な、中村、たっ、た、拓也です!」
く、口が上手く動かせない!
「私はすずかの姉の月村忍。恭也と同級生なの。今回は私たちも参加させてもらうからよろしくね」
「ひゃい……」
なんで、こんなに怖いの~!?
「あははは! 緊張してるの? 可愛い~!」
頭を撫でてくる忍さん。……はっきり言って怖いです。なんか身の危険を感じる……。
温泉旅行……、こなきゃよかったかも……。
◆
恭也のところの温泉旅行に、妹のすずかとノエルとファリンも一緒に参加する事になったんだけど、この子と再会するとは思いもしなかった。
まさか、数ヶ月前に暴走して襲っちゃった子と……。
しかもこっちを見て明らかに怯えた様子を見せていた。
すずかと同い年の子供に怯えられたのは少しショックだけど、私がこの子にやった事を考えれば当然よね……。
なんせ有無を言わさず逆レイプしちゃったんだから……。
あの時の記憶はしっかり処理してるから、怯えているのは深層心理に恐怖心が宿ってしまったからなんだろう。
ノエルも私が襲った子だったことに驚きつつも、きちんとファリンと自己紹介を行なった。
怪しまれないように私も2人に続いて、自己紹介をするために彼に近づく。
輸血したあとに記憶処理して家に帰したのは私とノエルだから彼の名前は知っている。確か中村拓也くんだったはず。
「はじめまして。拓也くんだよね?」
「ひゃ、ひゃい! な、中村、たっ、た、拓也です!」
うん、拓也くんだったね。それにしても見事に怯えられてるわね~。
「私はすずかの姉の月村忍。恭也と同級生なの。今回は私たちも参加させてもらうからよろしくね」
「ひゃい……」
ふふっ、なんだかだんだん可愛いくなってきちゃったかも?
涙目で足をプルプル震わせるところなんか、小動物みたい。
それにこの匂い……。
いい匂いが拓也くんからしてる……。
「どどど、どうかしましたか?」
泣きそうな拓也くん。ふふっ、なんだかイジメたくなっちゃう子ね。
「なんでも~。ふふっ、それよりお姉さん拓也くんのこと気に入っちゃったなぁ」
「ええっ!?」
驚きなどの負な感情が入り混じった声。う~ん、そんな風に驚かれるとショックだな~。
「お姉さんと一緒に行こうか~」
「ヒッ……」
拓也くんを後ろからだっこする。夜の一族だからこれぐらい軽い軽い。それに拓也くんも完全に固まってるから持ちやすいわね。
「あ~、忍さん! 拓也くんは私と一緒に行くの~!」
「あらあら、なのはちゃんも? 拓也くんってモテるわね~」
と、ここで恭也がなのはちゃんのところに向った。
「ならなのはは俺と一緒に行こうか?」
いつもとは違う優しい微笑みを浮べて誘う恭也だったけど、なのはちゃんは、
「嫌! 私はアリサちゃんやすずかちゃん、それに拓也くんと一緒に行く!」
バッサリと切り捨てた。
「――ううっ……!」
なのはちゃんの言葉にショックを受けて地面に両手をついて落ち込む恭也……。いつものストイック&クールで寡黙な恭也では想像もできないような情けない姿だけど、家族大好き&シスコンでもある恭也なら仕方がないわね。私もすずかに一脚されたら落ち込むもの。
まあ、恭也は置いといて、
「じゃあ、なのはちゃんのところに私も入れてくれるかな~?」
「うん! それならいいよ」
こうしてどちらの車に誰が乗るかが自然に決定した。
アリサちゃんのお家が出した1台目のワゴン車には鮫島さん、士郎さん、桃子さん、恭也、美由希ちゃん。
中村さんのお家が出した2台目のワゴン車には、中村くんのお父さんとお母さんの美夏さん、ノエルとファリン。それになのはちゃんに、アリサちゃん、すずかに、拓也くんと私が乗り込んで出発した。
◆
士郎さんの知り合いの方が営んでいる温泉旅館に無事に到着した私達は、部屋に荷物を置いてまずは温泉に行く事にした。
士郎さんと桃子さんはまだお風呂に入らないという事で、行くのは2人を除いた全員で。
「温泉、温泉、温泉!」
拓也くんが嬉しそうにはしゃいでいる。ふふっ、車の中では私がずっと抱きかかえてきたからね~。その反動かしら?
ああ、それにしてもいい匂いだったわ……。
嗅いでいると安心するし、自然と微笑んじゃう。すずかもいい匂いがするって言っていたし、何か拓也くんにはあるのかしら?
……まっ、いいっか。
それよりも――。
「拓也く~ん」
「なっ、なんですか? し、忍さん……」
後ろから抱き着いて抱え上げる。うふふ、怯えちゃって可愛い~! すずかやその友達もなんか子供にしては大人びているから、この子みたいな純粋に歳相応な小学生が異様に可愛く感じるのよね~。
「お姉ちゃん達とお風呂入ろうか~?」
「ええ~?」
あからさまに嫌そうな声をだす拓也くん。
「俺、お父さんと……」
嫌そうな顔の拓也くんにアリサちゃんがつっかかってきた。
「なに? 私たちとお風呂入るのが嫌なの?」
不機嫌そうに呟くアリサちゃん。まあ、この年頃の子に男と女の違いとか羞恥心とか薄いわよね。大人びているのは表面だけで、本当の中身は子供みたいな。
「拓也くんも一緒に入ろうよ~」
なのはちゃんもか~。
「え? ええっ……」
すずかは~……、一族関係の事で色々教えてるし、恥ずかしがりだから、入りたいとは思ってないみたいね。
拓也くんはそんなこと考える余裕もない様だし。
「きょ、恭也さん!」
恭也に助けを求める拓也くん。拓也くんのお父さんは何故か羨ましそうな視線を拓也くんに送ったあと、ニカっといい笑みを浮かべたあとさっさと男湯のほうへ消えて行ったから、ここで頼れるのは恭也ぐらいよね。
恭也もなのはちゃんが小さいといっても、同い年の男の子と一緒にお風呂に入るのが許せないようだから、
「ほら、拓也を離すんだ、忍。拓也は男湯に入るんだからな」
と、男湯に連れて行こうとするけど……。
「別にいいじゃない恭ちゃん。ほら、看板にも10歳以下は大丈夫って書いてあるんだし」
美由希ちゃんが看板を指差して言ったことで、話が完全に傾いた。
「ならいいじゃない。拓也、背中流してあげるわね」
「久しぶりに拓也くんとお風呂だ~!」
「……え、あ……、ま、まあ、いいのかな?」
わきわきと手を動かして笑うアリサちゃん、嬉しそうななのはちゃん、戸惑い顔だったけど最後に諦めたすずか。
「………………」
「恭也さ~ん……」
「…………ふう……、風呂に行くか」
――恭也も諦めた。
◆
拓也くんと一緒に入ることになった私達は女湯の脱衣所で、はしゃぎながら服を脱いだ。
すずかも、なのはちゃんもアリサちゃんも早々に服を脱ぎ、体にタオルを巻いてお風呂に消えていく一方、3人が着替え終えて消えたところで、美夏さんが拓也くんに着替えることを許した。
「あははは……そういえば、そうだったね~」
美由希ちゃんが苦笑しながら頭をかいた。
「なにが?」
私が首を傾げると、美由希ちゃんは少し頬を赤らめ、耳元で呟いた。
「拓也くんって8歳でなのは達より子供っぽいんだけど、その……あ、あっちの方はもうほとんど大人サイズなんだよ」
「ええっ!? そ、そうなの?」
拓也くんのアレは体でたっぷり味わって知っていたけど、ここは小声でおどろいたようなフリをする。
「あはははは、5歳ぐらいまでは普通だったんだけどね」
話が聞えていた美夏さんが苦笑しながら拓也くんの腰にタオルをしっかり巻きつけた。
「よし、これでいいよ~」
「お母さんありがとう!」
「走っちゃダメよ~! あとかけ湯も忘れないようにしなさ~い!」
許可を貰った拓也くんは急いでお風呂場へ向った。美夏さんははしゃいでいる子供に注意して自分もお風呂場に向う。
「さてと……私達も行きましょうか」
「うん。そうだね」
残された私達も湯船へと向う。うふふ、さっき私から逃げるために急いだんでしょ? 拓也くん。
これからたっぷりお姉さんが可愛がってあげるわね。
◆
皆で湯船に入る前に体を洗い湯船へ入り温泉を楽しみ始めてすぐ。私はゆっくりと目標へ向って移動を開始する。
目標は拓也くん。距離は2メートル弱。周りにはすずか、アリサちゃん、なのはちゃんの3人と美夏さん。
ゆっくりと、ゆっくりと移動しながら拓也くんの後ろにまわる。
途中他の皆に見つかったけど、悪戯にのってくれたようで拓也くんに警告はしない。
射程範囲内に入ったところで両手を広げて拓也くんに抱きつく。
「拓也く~ん」
「ヒッ!?」
驚き怖がる拓也くん。というかヒッってなによヒッって。
湯船に背中を預けて、股の間に拓也くんを座らせて抱きしめる。そして顔を寄せて抱きしめている手を伸ばしてほっぺたをつつく。ん~、柔らかいわね~。
「なんでそんなに私のこと怖がるの~」
訊ねながら体を弄る。へえ~子供なのに意外と筋肉があるわね~。
「ひゃっ!? な、なに!? ――っ!」
あははは、夜の一族の本能かしら? ちょっと触っちゃった。まあ、濁り湯で他の皆には気づかれないから大丈夫。いざとなれば事故ですませればいいんだし。
「し、ししし忍さんっ……!?」
「お、お姉ちゃん! 離してあげないと可哀想だよ!」
怯えている拓也くんを無視してお湯のなかで色々触っていると、我慢できないとすずかが立ち上がって大声を出した。
あら意外ね。最初は幼なじみのなのはちゃんが止めると思ったのに。あと立ち上がった位置的に全部拓也くんから丸見えよ。まあ、拓也くんに見る余裕なんてなさそうだけど。
「にゃはは、そうだね。怖がってる? みたいだし」
「そうね。なんか怯えてるみたいだし」
なのはちゃんに、アリサちゃんがすずかに遅れてやんわり注意してきた。
なんていうか悪者みたいになっちゃったなぁ。
まあ、拓也くんが固まって、尋常じゃないぐらい震えているからかもしれないわね。
ん~……、でもこのままは嫌ね。
「ねえ、拓也くん」
「な、なんですか?」
「そういえばなんで私をそんなに怖がるの?」
「そ、それは……」
口ごもる拓也くんの代わりに、ゆったり温泉を楽しんでいた美夏さんが答えた。
「あ~、たぶんそれね。夢が原因だと思うわ」
「夢?」
「うん。何ヶ月前だったかな~? 今は見ていないらしいけど、満月の夜に吸血鬼のお姉さんに襲われる夢みるようになってね~。その吸血鬼さんが紫色の髪してるらしいから、同じ色の忍ちゃんも怖がってるのよ。この前はすずかちゃんを怖がっていたし」
「――っ」
あの時の記憶はしっかり処理したはず――。
「へぇ~、そうなんですか~」
自然に、自然に応対する。まさか記憶が残っているの? これは月村家の次期当主として確かめないと。
「ねえ――」
――拓也くん。と、訊ねようとした時、
「あんたまだ怖がってるの? まったく……本読んだり、ビデオ観たぐらいで吸血鬼が怖くなるなんて怖がりね~」
え? アリサちゃん?
「にゃはは、でもお兄ちゃんの貸した本ってすっごく怖いから仕方ないよ~」
なのはちゃんも?
「この前、恭也さんを倒したから、もう吸血鬼なんか怖くなくなったとか言ってなかったっけ?」
すずかまで? え、いや、それより恭也を倒したって?
「し、仕方ないだろ! 今まで忘れてたのに一気に思い出しちゃったんだから!」
大声で反論する拓也くん。
え~……と、結局記憶は戻っていないのかな?
「拓也くん」
「ひゃっ、……あ、は、はい!」
「本やビデオ見て吸血鬼が怖くなったの?」
「え、あ、そ、それは――」
真っ赤になる拓也くん。ぎくっとか、特に不信な様子もないから、純粋に恥ずかしいのかな?
「へぇ~、そうなんだ」
とりあえず納得しておくけど、警戒は緩めない。
そして拓也くんが本当に私の事を覚えていないか、色々と反応を見る事にしよう。
「んふふ~」
「し、忍さん?」
「なあに~?」
「あ、あの……、なんで抱きついてるんですか?」
「それは拓也くんが可愛いからよ~」
拓也くんが逃げないように両手でおなかを抱き寄せて、子供の小さな肩にあごを乗せて頬を擦りつけた。
「美由希さ~ん……」
拓也くんは美由希ちゃんに助けを求めた。
「あははは、好かれちゃったね」
美由希ちゃんは温泉に夢中だ。
「…………」
拓也くんはすずか、なのはちゃん、アリサちゃんに助けを求める視線を送った。
「が、がんばって」
「う~……、私も抱きつきたい……」
「まあ、がんばりなさい」
3人とも一定の距離から動かない。
拓也くんを助ける者はいなかった。
「おか、お母さ――」
最終手段。
「ふう~……、そろそろあがろうかな~。じゃ、忍ちゃん。拓也をよろしく~」
「はい。わかりました~」
不発。
私の天下となった。
「ん~……拓也くん~」
顔を摺り寄せて拓也くんの匂いを嗅ぐ。
ああ、本当にいい匂い……。なんでこんなにいい匂いがするのかしら? 香水のような酔ってしまいそう……。
「ん、はぁ……」
ヤバイわね……。なんだか体が熱くなってきちゃった……。
子宮辺りが疼く……。
首筋から目を離せない……。
今すぐ血を飲んで欲望を満たしたい……。
拓也くんの頬を汗が伝う。
「ペロっ」
「ひっ」
ああ……美味しい……。それに怯えちゃって可愛らしい……。
このまま可愛がりながら血を――。
「――忍お嬢さま」
「――っ」
ノエルに肩を叩かれ、私は正気を取り戻した。
――っ! ……はぁ……。危なかった。皆もいるのに拓也くんの血を飲みそうになっちゃった。
「忍お嬢さま、大丈夫ですか?」
「え、ええ。大丈夫よ。少し湯あたりしたみたい……」
ノエルの問いに、おそらく少し赤くなっているであろう目を手で隠しながら答えた。
本当にどうしたのかしら?
発情期もきていないし、輸血パックの血も飲んできたのに……。
先に温泉から出ていくすずか達3人を見送りながら、私は拓也くんを観察し続けた。
◆
まったく酷い目にあった。
吸血鬼のお姉さんにそっくりな人になぜか気に入られて、ずっと抱きつかれて温泉を楽しめなかった。
はぁ……。
いや、忍さんがただ夢に出てくる吸血鬼のお姉さんにそっくりなだけで、俺が勝手に怖がっているだけなのは分かるけど、なんでか俺は忍さんを怖がってしまうんだ。
温泉で見た忍さん体……。
胸のかたちとか、女の子の、あそことか。
それが、吸血鬼のお姉さんとほんとうにそっくりで、食べられそうな気持ちになるんだよな。
特に汗を舐められた時なんか怖くて怖くて泣きそうだった。
はぁ……。
しかも、お母さんもなのは達は先に温泉からあがちゃうし、そのあとずっと忍さんに体を触られ続けて……。
まあ、温泉から出たあとすぐに忍さんはノエルさんを連れてどっかに消えちゃったから、温泉旅行にきてはじめてゆっくり羽根を伸ばせて、恭也さんや美由希さん、なのは達と卓球が楽しめた。
楽しめたんだけど……。
現在、俺、ピンチ……。
旅館で前もって予約された部屋は、
お父さんとお母さん、それに俺で1部屋。
士郎さんと桃子さんで1部屋。
恭也さんと鮫島さんで1部屋。
忍さん、すずか、ノエルさんとファリンさんで1部屋。
美由希さん、なのは、アリサで1部屋。
だったんだけど……。
現在の部屋割りは――。
お父さんとお母さん。
士郎さんと桃子さん。
恭也さんと鮫島さん。
そして1部屋の仕切りを取り払って大部屋にしたところに、
美由希さん、なのは、すずか、アリサ、忍さん、ノエルさん、ファリンさんと俺が寝ることになってしまい。
そして夕食も終わって布団を敷く時。
ファリンさん、ノエルさん、忍さん、俺、すずか、なのは、アリサ、美由希さんの順番で寝ることになってしまったんだ。
何でこの順番!?
というか、お父さんとお母さんのところで寝たかった! それに男1人とか酷くない!?
しかもだよ……。
「う~ん……、抱き心地もいいわね……」
「いい……、匂い……」
忍さんとすずかに両方から挟まれてる……。
しかも両方とんでもなく力が強いっ!
忍さんが胸に顔を埋めさせようと頭を抱いてくるのに対して、すずかは腰に抱きついて顔をこすり付けてくるから、身動きがまったく取れないし、息し辛いし、おなかが締めつけられる!
どうしてこうなった!? どうしてこうなったんだ!?
この姉妹はどうして俺が逃げられないように挟んでるんだ!?
っていうか、おしっこ!
マジでおしっこしたい!
「ん~……」
あ、ぐうっ! す、すずかっ! 今締め上げるのはマズイ! マズイって! おしっこ漏れちゃうからマズイって! 俺にとんでもない黒歴史刻む気か!? ここで漏らすって人生最大の汚点になるんだって!
「は、はなせ~……」
両手を動かしてすずかの手を解きにかかる! まだ余裕があるけど、油断は出来ない! いくら巨大で強いダムでも決壊するときは簡単に決壊するものなんだから!
――っ!
ほんとにこいつはっ……! 力が強すぎだ! どんなゴリラだよ!?
ギュっ!
あぐっ!?
締めつけが増した!? く、苦しい! ほんとヤバイって!
「ん~……」
ん~じゃないよ! ほんとに離して! 痛いから! 肋骨折れるから!
「ん~……、うふふふ……」
と頭上から姉の声が。あなたもですか!?
ぐへっ!
両腕で抱きしめられて胸に頭を挟まれる!
ま、や……、い、息が出来ないって! く、苦しい! 誰か! ほんと誰でもいいから助けて!
「た……ぁ………て……」
もう意識がヤバイ……。
両手で忍さんを押して体を離そうとするけど動かない!
それどころか――。
「うふふ……お姉さんの体に興味があるの?」
耳元で囁く忍さん!
忍さんの雰囲気が夢のなかに出てくる吸血鬼のお姉さんと同じモノになった~!?
「まったく、私が寝てる間におっぱい触るなんて悪い子ね」
いや、俺……っていうか、あなたが悪いんじゃないの? っていうか、押しつけてきたのあなたですよね?
「ぃ、ぃや……お、俺……、お、おしっこに――」
――行きたいだけ。
「ん~? そうなの?」
相変わらず耳元で囁く忍さん。でも、首筋にかかる荒い吐息が、雰囲気がヤバイ……。
「そぅ……です」
なんとか口を動かしておしっこに行きたいことを告げる。
これで離してくれるはず――だったんだけど、忍さんは――。
「内緒よ?」
「えっ?」
布団のなかに潜り込んだ。
――え? ――っ!? ちょっ、ちょっと! 忍さん!?
布団のなかでパジャマのズボンとパンツが引き下ろされて……、ぱくっ。
「ううっ」
この感じ、またオチンチンを食べられた!?
ヌルヌルで熱いのがオチンチンを包み込んで、忍さんの生暖かい吐息が下腹辺りに当たる。
ううっ、へ、変な感じ……。
オチンチンが熱くて包まれて……、気持ちいい……のかな?
「はぁはぁ……、忍……さぁん」
「じゅちゅっ、はぁ……、さっ、遠慮しないで。私のお口に出していいのよ?」
「出してって!?」
小声で驚きの声を出すけど、忍さんはオチンチンを再び咥えて吸い始めた。
忍さんの包み込むような口の温かさとやさしい吸いつきにおしっこが漏れそうになってくる。
「し、忍さんっ、本当に出ちゃうよ!」
「うふぅ……、じぅちゅ……」
「ううっ、出、出るぅぅぅっ!」
我慢の限界を超え、おしっこが漏れてしまう!
奥から温かいモノが溢れ出して、次から次へと吸われていく!
「だ、ダメ……、そんなに吸わないで……、し、忍さんっ」
「じゅるるる……、ゴクゴクっ、ゴクッ……。はぁぁぁ……」
たっぷり、最後の一滴まで飲まれちゃった……。
それに、布団のなかで……、女の人の口におしっこ出すなんて……。
掃除するかのようにオチンチンを舐められながら、あまりのことに戸惑っていると、掃除を終えた忍さんが布団の中から顔を出して……。
「ごちそうさま」
と笑顔でつぶやいてきた。
本によくでてくる妖艶という言葉が似合いそうなエッチな笑顔で……。
「あ、赤い目……? ――っ!?」
夢に出てくる吸血鬼のお姉さんのような夜の黒に怪しく光る赤い目が見えたと思った瞬間、忍さんの谷間に顔を埋められた。
「ん、な、なに!?」
いきなり胸に抱かれて戸惑うけど、忍さんはやさしく微笑みながら頭を撫でてきた。
「今夜はお姉さんがサービスしてあげるわ。ほら、なんならおっぱい吸ってもいいのよ? 浴衣だから下着もつけてないし、吸いやすいわよ?」
ほらほらと浴衣を肌蹴させる忍さんだけど……。
「そ、それよりもさっき目が赤……」
「赤いのがどうしたの? もしかして目が赤かった? 拓也くんもおしっこでも目に入ったのかしら? まあ、そんなことよりもお姉さんがおっぱい吸わせてあげるって言ってるのよ? こんなこと滅多にしないんだから、ほら」
「むぐっ!?」
口の中に無理矢理乳首を差し込まれた!
体を寄せられて動けないように頭を固定される。
「うふふ、かわいいわね。このまま朝までしゃぶらせてあげるわね。――皆には秘密よ?」
忍さんの胸から顔を覗くと赤い目があって――。
「このことは皆には秘密なんだからね」
「秘密……」
「そう、お姉さんと2人だけの秘密。誰にも話したらダメ。――いいわね?」
「…………。……話さない。秘密……」
あれ? なんでうなずいてるんだ?
「うふふ、いい子ね。さあ、ご褒美よ。お姉さんのおっぱいを楽しみなさい」
「はい、忍お姉さん……」
「うふふ、本当にいい子ね。あんっ、うふふ、ちゅうちゅう吸って。赤ちゃんみたい……。ふふっ、気持ちいいわ」
「忍お姉さん……」
オチンチンがムズムズする……。
「あら、今度はこっちが反応しちゃったわね。私のなかで慰めてあげたいけど今はダメ。代わりに手で抜いてあげるからね」
「ううっ、忍お姉さん……」
「ああ、本当にいい匂い……。まるで発情期……、いえ、発情期のときよりも興奮しちゃう……」
「拓也……くん」
ん? すずか? なんで体を擦りつけてくるんだ?
「うふふ、すずかまで発情しちゃったのかしら? やっぱり拓也くんには何かあるみたいね。まあ、それはあとあと調べるとして、今は――」
「し、忍お姉さん……」
「私の手で気持ちよくなりなさい」
細く長い指でオチンチンを包まれて上下に擦られたり、握られる。
忍さんの胸に顔を埋めて乳首に吸いつきながら、オチンチンを弄られた俺は、そのまま何かを吐き出して、意識を手放した……。
◆
温泉旅行2日目の早朝。朝霧が出てきた頃。
私の目の前には、私のおっぱいに赤ん坊のように吸いつきながら寝ている拓也くんがいた。
さらに布団の中では拓也くんのパジャマのズボンが引き下ろされていて、下着まで脱げていて……、私の手から拓也くんの精液の匂いが香っていた。
その状況だけで私が何をしたか理解できた。というよりも、私はしっかりと覚えていた。
ま、まさか拓也くんのおしっこ飲んじゃうなんて……、しかも手コキしながらおっぱい吸わせるなんて……。
まるっきり痴女じゃない! 夜の一族だからって歳はもいかない拓也くんに何回悪戯してるの!?
「忍お姉さん……」
「――っ」
た、拓也くんのまだビクビクしてる……。もう5回は抜いてあげたのにまだ硬いままだし……、すごいわ。
――って、私は何を……。
夜の一族だからって私がここまで翻弄されるなんて、やっぱり拓也くんには何かあるの?
今度うちに呼んでじっくり調べてみようかしら?
「んっ……、ん」
寝返りをうとうとするけど、後ろから抱き着いているすずかが邪魔で寝返りをうてない拓也くん。
まだ起きないみたいだから、今のうちに体から拓也くんの臭いを消さないといけないわね。あ、それとズボンとパンツもなおしてあげないと。
…………。
…………おいしそう……って、落ち着くのよ! このまま襲っちゃったら本当にマズイから、そう! 早くお風呂に向いましょう!
はぁはぁっ、本当に……、私をここまで翻弄するなんて……、ぜ、絶対にし、調べてあげるんだから……。
そして調べたら……、私は――。